香港では地名が面白い。ここの地名には、ときとして三通りの呼び名がある。漢字名がある。英語名がある。それに通称だ。
当然のことながら、まずはこの国固有の言語である漢字名がある。その中国音(ここでは広東語だが)をそのまま英語読みしているものがある。
香港のHong Kongがその代表例だ。香港は北京語ではXiang Gangというが、広東語ではHeong Kongと発音する。英国人の耳にはこれがHong Kongと聞こえたのか。
次に、漢字名を英訳して呼称している例も多い。
深水湾 → Deep Water Bay
中環 → Central
その逆に、さきに英国人が名前をつけ、それを漢訳したものもある。
Queen’s Road → 皇后道
そうかと思えば、中国名と英語名がまったく関係ないものがある。
浅水湾 → Repulse Bay
これは1840年代、英国海軍の砲艦レパルス号がここを錨地としていたことによるという。
漢字名があって、英語名がある。これに通称が加わる。これだから香港の地名は面白い。地図を眺めているだけでも楽しくなる。特に面白いのは××街とよばれるストリートの名前だ。
女人街という街がある。どんな街か、その名称から想像するだけでも楽しい。
女人街、これはノンヤンガイと読む。正しくは通菜街トンチョイガイという。英語名もそのままTung Choi Streetである。古くは食材を扱う市場があり、多くの女性客でにぎわっていたことから、女人街の名をいまに残しているという。
出かけたのは夕食をすませたあとの遅い時刻だったが、その活気には驚いた。衣料品、小物、時計、アクセサリーなど、その名の示すとおり女性向けのマーケットであるが、ほかにも玩具、ゲームソフト、日常雑貨に古物屋らしき店まで軒を並べている。わが国でいえばひところの原宿竹下通りに新宿歌舞伎町のにぎわいを足したような街である。
女人街があれば、これに対称するかのように男人街という名の街もある。こちらはナンヤンガイと読む。正式には廟街ミャオガイ。近くに媽祖を祀る霊廟(天后宮)がある。廟街とはその門前街であったのか。英語ではTemple Streetとよんでいる。常設の店舗もあるが、夜店となる屋台の数が半端ではない。骨董などを扱う店が多く並び、その名にふさわしく男性客でにぎわっている。
女人街であれ男人街であれ、日本人であれば漢字は読める。漢字が読めれば発音はできなくても地図をみて迷うことはない。
地図を片手に、さあ、出かけよう。香港では地名が面白い。
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