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妖しい亜熱泰

タイと東京、アジアと和の話題など。
出かけたついでに一枚をつづります。

江戸スタイル~呼吸する新築住宅の見学

2009-02-01 | Weblog
玄関に入った途端、ぷーんといい香りが漂ってきた。木の香りだ。思い出した。檜風呂に入ったときのあの香りだ。家中に充満していて心地よい。

江戸の自立循環型社会を参考にしながら、自然エネルギーを有効に利用した住まいを提供するのが江戸スタイルの家だ。江戸時代風の家ではなく、電化製品もあるので、一見外観だけでは普通の木造住宅のように見える。

最大の特徴は雨水の有効利用だろう。敷地内に2トンの雨水を貯めるタンクを設置して、1階、2階のトイレの水に再利用している。また、夏には西側に張ったネットに蔦のようにゴウヤを這わせて壁面を緑化し、そのネットに貯めた雨水を流して冷気を作り、1階の廊下下に設置してある通風孔や、吸気扇をから涼しい風を取り入れ、冷房料金の節約を計っている。下まで落ちた雨水は再びタンクに貯められて循環するというすごい装置だ。

使われている材料はすべて自然木で、床はカラマツ、天井はスギを使用。築3年以上も経つのに、木の香りが消えることはないのはこのためだ。
断熱材にも工夫がされている。ウールグラスという羊毛を柱と柱の間にびっしり入れ込んでいる。グラスウールなどの石油化学製品だと水が入ると駄目になってしまうが、自然素材だから時間が経つと乾くので問題はないのだという。壁には呼吸機能に優れた珪藻土を用い、壁紙には調湿作用のある月桃紙を使っている。
ダイニングから30cm上がった畳敷きのリビングは腰掛けるのにちょうど良く、床下は収納に利用されて無駄が少なく、狭い空間を広くみせるような形になっている。雨水が循環し、木が呼吸する力を使って夏は涼しく、冬は温かくなるようにと細かいところまでこだわっている。

大工さんには、梁に直接障子用の溝を切るなど、高い技量が要求されるそうだが、これからの住宅として注目を浴びそうだ。坪単価は80~90万円だそうだが、長く住むことを考えるとそう高くはないような気もする。

ただ天然木に囲まれてしまうと、釘一本、フックひとつつけるのにもキズをつけるのがもったいなくてためらいそう。
調度品などは、最初から一気に揃える必要がありそうで、それはそれでまたお金がかかってしまうのが悩みの種になりそう(と言ってみたかった、夢の住宅見学会でありました。)

中国少数民族の刺繍工芸

2009-01-29 | Weblog
飯田橋にある日中友好会館で、中国少数民族の刺繍作品80点あまりを展示した「刺繍でつづる母の愛」展が開かれている。

ミャオ族、チワン族、トン族、イ族など様々な少数民族の衣服、帽子、靴など色彩鮮やかで独特の図柄の作品が並んでいる。子守帯、子供靴などいずれもふだんづかいのものばかりなのに、技量が高く驚かされる。
赤、青、緑、黄、黒などを使った模様は東トルキスタン地方で作られているカーペットにも似ている。

ちょうど、ミャオ族の女性による刺繍の実演が行われていた。が、実演するテーブルの高さと見学用の椅子の高さがほぼ同じなので、2列目より後ろの人にはほとんど見えない。解説もしているようだが、声が小さくてよく聞こえない。しばらくして、耐えかねた観衆から「聞こえないんですけどぉ」「見えないんですけどぉ」と声が上がってくると、係りの人曰く
「こんなにたくさんの方が見えるとは思っても見なかったので…」

自国で同じような催事をやってもこんなには集まらないだろうと思っていたのだろう。
彼の国の文化とか少数民族に対する姿勢が垣間見られる発言だったように聞こえてしまう。

やっぱり、少数民族の人たちは「見世物」扱いされているんじゃないかと。
見学の日本人のおばちゃんたちは、織りかたの細部や模様についてかなりの知識で質問攻めにしていたけどなぁ。

タイでも少数民族はIDカードを持っていない人が多く、同様に冷たい扱いを受けている。あとからやってきた大国に勝手に国境線を策定されて、どうしたらよいかわからないうちに文明の波に飲み込まれてしまった人たちの思いはどんなものだろう。

鷽替え神事

2009-01-25 | Weblog
長い長い行列が出来ていた。「ここからだと1時間半ぐらいですって」
近くからそんな声が聞こえてきた。目指す赤いテントはすぐ先の路地を曲がったところにあるようだが、どうも違うようだ。なるほど、こっちを向いて行列している人が見えた。つまり、行列は先で右折するのではなくて、境内の突き当たりまで延びて、そこから折り返しているのだった。

毎年1月24,25日は、各地の天満宮でうそ替えの神事が行われる。「うそ」は幸運を招く鳥とされ、毎年新しいうそ鳥に替えるとこれまでの悪いことが’うそ’になり吉兆を招くのだそうだ。

今年は運良く週末と重なったので亀戸天神に駆けつけたのだが、太鼓橋の手前にある「うそ替えはこちら」の案内板に沿ってちょっと進んでいくと大行列にぶち当たってしまった。昨年は経済的にも社会的にもよくないことばかりだったので、ゲンかつぎで参詣に訪れる人も多いのだろう。

とにかく折角来たのだから、と寒い中覚悟を決めて並ぶことに。こんなに寒いのに早咲きの梅が紅、白とも開花していて寒い心にちょっとだけ、温かさを分けてくれているのでした。そして並ぶこと70分、ようやく「うそ」を入手。

天神様、今年1年よろしくお願いします。

交差する眼差し~日仏交流の足跡

2009-01-22 | Weblog
毎週歩いているのに、今まで気づかなかった。銀座二丁目の交差点は、世界のブランドに囲まれているのですね。松屋隣にヴィトン、道を挟んでブルガリがあり、その向かいがカルティエで、松屋の向かいはシャネル。

今回、そのシャネルに無謀にも突入。「いらっしゃいませ」というご挨拶にも聞こえないふりをしてエレベーターに直行。4階にある、ネクサスホールで「交差する眼差し」という展覧会が開かれているのだ。

江戸時代末期から明治時代にかけての、日本が見たフランス人、フランスから見た日本をテーマにした絵画やポスターなどが並んでいる。クリスチャンボラック氏の収集品だ。
西洋人版画は当時「横浜絵」と呼ばれ、かなり流行ったようだ。絵師を派遣して描かせたと解説にあるが、何故かフランス人女性の顔立ちが観音様ふうなのがおかしい。中国人召使を雇った女性や、フランスから導入された鉄道馬車(日本橋、浅草)、和服姿のフランス女性などの作品が目を引く。絵にわざわざ佛蘭西人と描かれているのがいかにも世相を反映している。

一方、日本人も1867年には早くも、軽業師・奇術師の一行がフランスで公演を始めていて、ポスターが残っている。その後も続々と日本関係の展覧会などが催されて数多くのポスターが作られた。こちらは、日本女性の顔立ちが西洋風で、お互いさまですな。その後日本の風俗を描いた絵はがきのようなものが出回るようになり、徐々にイメージと現実の溝が埋められていったようだ。

歴史では文明開化を西洋人というひとくくりで扱っているが、フランスに絞って光を当てるというのが面白い視点だと思う。

浅草橋界隈で雛人形

2009-01-18 | Weblog
中国から伝わった上巳(じょうし)の節句と日本古来の人形(ひとかた)流しの風習が融合して発達したという、桃の節句まであとひと月あまり。人形店が集中する浅草橋界隈では、客引きまででるほどの商戦真っ只中でした。

今回の目的は、吉徳で行われている「春を彩るおひなさま展」を見るためだった。店内に設けられた一角に、雛祭りが庶民に広がった江戸時代後期から明治時代あたりまでの資料を展示していた。江戸時代から、すでに段飾り様式だったとか、たち雛や流し雛も現在まで伝統を受け継いでいることがわかる貴重なものだった。
古くは男雛が右に女雛が左並んでいたが、昭和天皇即位の写真が公開されてから、それに倣って左右逆転の並び方になったそうだ。

店内の豪華な段飾りを見ていると、眺めているだけも楽しい。いまなら、外国のお客様を案内するなら、浅草なんかよりも浅草橋に連れて行ったほうが喜ばれそうだ。

折角なので、久月ものぞいてみた。ちょうど伝統工芸士の方が実演をしていた。桐のおがくずをかためた型に木目こんで作るから、木目込人形というのだそうだ。この型のおかげで大量生産が可能になったとも解説していた。丁寧な手作りだからこそ、祖母から母へ、そして、孫へと受け継いでいけるものなのだろう。


最近では百貨店での催事も少なくなってしまったが、伝統行事としての雛祭りは後代にしっかりと続けていってほしい。