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半業界人による、独自の視点から見たホンネトークとゲームレビュー。

PSPソフトDL販売開始・・・ダウンロード販売はもうすぐ主流になるのか?

2008-08-26 15:33:29 | 業界のハナシ
10月以降発売のPSPタイトル、PS Storeにてダウンロード版も併売と発表

SCEが、10月以降に発売されるSCE販売PSPソフトについて、
パッケージ版に加えてダウンロード版の販売も開始すると発表しました。
インターネットが普及し、ゲーム機がネットに繋がることが当たり前になってきた頃から
家庭用ゲーム機においても「ダウンロード販売」の試みや噂は繰り返されてきましたが、
「SCEという大手パブリッシャーが全ての新作ソフトをダウンロード販売する」
という事実は、かなり大きい動きであると言っていいでしょう。

では今後、他のメーカーもこの流れに乗ってダウンロード販売が一般化し、
パッケージ販売よりも主流の販売方法として一気に定着するのでしょうか?
私は、「当分そのようなことはない」と考えています。その理由を挙げてみましょう。


(1)ダウンロード販売は意外とリスクが高い
メーカー側から見たダウンロード販売のメリットとして、
「在庫切れが無い」「流通にかかるコストが無くなる分、利益が大きい」
といったものが挙げられますが、実は大きなデメリットも存在します。
それが「リスクの高さ」です。
「DL販売ならリスクは低いのでは?」と思う方もいらっしゃると思いますが、
今の日本のゲームソフト流通システムから言えば、全くの逆です。
通常のパッケージ版ソフトの場合、ソフトメーカーは
小売店や問屋にゲームソフトを販売しています。
「メーカーはユーザーに販売しているわけではない」のがポイントです。
小売店や問屋にソフトを販売(出荷)した時点で売上です。
仮に、メーカーが10万本出荷したソフトが
実際の店頭でユーザーに2万本しか売れなかったとしても、
メーカー側の売上は「10万本」です。10万本分の代金がメーカーに入ります。
パッケージソフトなら、小売店・問屋から一定数の発注が確実に見込めますから、
「出荷本数と実売本数の差」が、メーカーにとって、ある種保険のようになっています。
いっぽう、ダウンロード販売の場合、実際にユーザーがDL購入した本数しか、
メーカーの売上になりません。「5万本は売れるだろう」と見込んで
制作費・広告費を掛けたソフトがもし5000本しか売れなかったら…?
ダウンロード販売は、セールス的に失敗したときのリスクが非常に大きいのです。


(2)ネット普及率、ターゲット
インターネットが普及したとはいえ、まだまだネット環境のない家庭は少なくありません。
また、ゲームファンのうち多くを占める学生の場合、ネット環境があっても
ダウンロード販売を利用する手段(クレジットカードなど)が限られているために
まだまだ敷居が低いとは言えない状況ですから、ダウンロード販売を中心とするには
現状、ターゲット層が狭すぎるといえます。(1)で挙げたようなリスクもあるので、
パッケージ販売を中心に据えて販売戦略を敷くほうが、効率もよく、リスクも少ないといえます。


(3)小売店との関係
新作のダウンロード販売を始めるということは、
当然、流通(問屋/小売店)の販売機会を奪うことになります。
前述のとおり、現状、ソフトメーカーは流通に依存している部分が少なくありません。
小売店は販売窓口としての役割だけでなく、新製品の周知に役立つ面も多分にあります。
そんな中で小売店との関係が悪化すると、自社製品の露出を減らされたり、
パッケージ版ソフトの入荷数を絞られる恐れがあります。
ダウンロード販売開始による関係悪化はできる限り避けたいところでしょう。



以上の理由から、DL販売が主流になるにはまだまだ時間がかかると私は考えます。



では何故SCEはPSPソフトのDL販売開始に踏み切ったのでしょう?
これについては以下のような理由が考えられます。

・他社に先んじてDL販売を開始することで、環境を整えつつ知名度をアップさせ将来に備えたい
・PSPソフトは開発費が安く、自社ソフトでロイヤルティ不要なのでリスクはさほど大きくない
・小売店との関係維持には何か手を打つ予定がある?


3つ目は憶測ですが、何かしらの準備はあるでしょう。
ともあれ、今後のSCEを初めとした各メーカーの動向に注目です。

値崩れしたワゴン入りゲームは小売店の大損か?

2008-08-23 01:13:42 | 業界のハナシ
ネット掲示板を見ているとよく目にするのが
ワゴンで特価販売されているゲームソフトの話。
いわゆる「値崩れ」は「供給が需要を大きく上回った」ときに起こることは
説明するまでもありませんが、ゲーム流通で値崩れが起こるのは
いったいどういうときでしょう?
特価品は全て小売店が損をしているのでしょうか?

今回は「特価ソフト」の発生タイプについて少し紹介します。


(1)小売店が損をする特価品
小売店の仕入れ担当者が「20本は売れるだろう」と見込んで仕入れたものの
5本しか売れなかった。このまま通常価格で売っても売れそうも無い。
発売日に飛ぶように売れたからたくさん追加で仕入れたのに、その後は全く売れなくなった。
というときに、在庫を処分・整理するため、値段を下げて売るパターンがこれです。
当然、お店側は損をします。新品ゲームソフトの仕入れ価格は
通常70%~78%程度なので、それ以上の割引になると赤字ということになります。


(2)2次問屋が損をする特価品
2次問屋の「お客さん」は小売店です。
新作も小売店からの追加受注に備えて多めに在庫を持ちますので、
その見込みが外れてしまうと「不良在庫」となってしまいます。
この不良在庫を、「他で値崩れが起きて錆付いてしまう前に」と、
早めに特価で小売店に案内・放出し、在庫数を調整することがあります。
また、期末にも在庫処分や売上アップのために特価放出を行う問屋もあります。
そうして小売店に出荷された商品が、店頭で特価ソフトとして販売されます。
小売店は問屋から特価で仕入れているので、仕入れ値以上で売れば、
仮に一見激安であっても、ちゃんと利益は出ていることになります。


(3)メーカー系問屋が放出した特価品
メーカー系問屋は、小売店や問屋からの発注を受けて商品を出荷しますが、
発注を受けてから生産するわけにはいきませんし、新作に関しても
発注数だけ用意したのでは数が足りなくなり、機会損失が起こる可能性が高いです。
そのため、今後の発注を見込んで、多めに生産・追加生産を行い在庫を持ちます。
その見込みほどの発注が来なければ、「不良在庫」ということになります。
不良在庫が発生しても、その性質上、問屋ほどすぐに見切りをつけたりはしませんが、
メーカーによっては徐々に値段を下げたり、一気に特価で放出したりすることがあります。
これが小売店で特価品として販売されるわけです。
「これ、どこの店でも新品で安く売ってるなあ」というソフトがありますが、
それはこの(3)に該当する可能性が高いです。



特価品は小売店が損をするパターンだけではなく、
得をするパターンも存在するということがおわかりいただけたでしょうか。

ではここでそれぞれの特徴をまとめてみましょう。

(1)の特徴
・小売店が損をする
・メーカーや問屋は既に小売店に「販売」しているので、損はしない
・他の店では特価販売されないようなソフトが安売りされることがある

(2)の特徴
・問屋が損をする
・小売店はうまく売れば利益が得られる
・メーカーは既に問屋に「販売」しているので、損はしない
・その系列の問屋と取引している小売店で同じようなソフトが安売りされる

(3)の特徴
・メーカーが問屋や小売に特価で販売する
・小売店や問屋はうまく売れば利益が得られる
・規模が大きい場合が多いので、日本全国で同じようなソフトが安く売られる
・「よく放出するメーカー」がワゴンの常連になる