10月以降発売のPSPタイトル、PS Storeにてダウンロード版も併売と発表SCEが、10月以降に発売されるSCE販売PSPソフトについて、
パッケージ版に加えてダウンロード版の販売も開始すると発表しました。
インターネットが普及し、ゲーム機がネットに繋がることが当たり前になってきた頃から
家庭用ゲーム機においても「ダウンロード販売」の試みや噂は繰り返されてきましたが、
「SCEという大手パブリッシャーが全ての新作ソフトをダウンロード販売する」
という事実は、かなり大きい動きであると言っていいでしょう。
では今後、他のメーカーもこの流れに乗ってダウンロード販売が一般化し、
パッケージ販売よりも主流の販売方法として一気に定着するのでしょうか?
私は、
「当分そのようなことはない」と考えています。その理由を挙げてみましょう。
(1)ダウンロード販売は意外とリスクが高いメーカー側から見たダウンロード販売のメリットとして、
「在庫切れが無い」「流通にかかるコストが無くなる分、利益が大きい」
といったものが挙げられますが、実は大きなデメリットも存在します。
それが「リスクの高さ」です。
「DL販売ならリスクは低いのでは?」と思う方もいらっしゃると思いますが、
今の日本のゲームソフト流通システムから言えば、全くの逆です。
通常のパッケージ版ソフトの場合、ソフトメーカーは
小売店や問屋にゲームソフトを販売しています。
「メーカーはユーザーに販売しているわけではない」のがポイントです。
小売店や問屋にソフトを販売(出荷)した時点で売上です。
仮に、メーカーが10万本出荷したソフトが
実際の店頭でユーザーに2万本しか売れなかったとしても、
メーカー側の売上は「10万本」です。10万本分の代金がメーカーに入ります。
パッケージソフトなら、小売店・問屋から一定数の発注が確実に見込めますから、
「出荷本数と実売本数の差」が、メーカーにとって、ある種保険のようになっています。
いっぽう、ダウンロード販売の場合、実際にユーザーがDL購入した本数しか、
メーカーの売上になりません。「5万本は売れるだろう」と見込んで
制作費・広告費を掛けたソフトがもし5000本しか売れなかったら…?
ダウンロード販売は、セールス的に失敗したときのリスクが非常に大きいのです。
(2)ネット普及率、ターゲットインターネットが普及したとはいえ、まだまだネット環境のない家庭は少なくありません。
また、ゲームファンのうち多くを占める学生の場合、ネット環境があっても
ダウンロード販売を利用する手段(クレジットカードなど)が限られているために
まだまだ敷居が低いとは言えない状況ですから、ダウンロード販売を中心とするには
現状、ターゲット層が狭すぎるといえます。(1)で挙げたようなリスクもあるので、
パッケージ販売を中心に据えて販売戦略を敷くほうが、効率もよく、リスクも少ないといえます。
(3)小売店との関係新作のダウンロード販売を始めるということは、
当然、流通(問屋/小売店)の販売機会を奪うことになります。
前述のとおり、現状、ソフトメーカーは流通に依存している部分が少なくありません。
小売店は販売窓口としての役割だけでなく、新製品の周知に役立つ面も多分にあります。
そんな中で小売店との関係が悪化すると、自社製品の露出を減らされたり、
パッケージ版ソフトの入荷数を絞られる恐れがあります。
ダウンロード販売開始による関係悪化はできる限り避けたいところでしょう。
以上の理由から、DL販売が主流になるにはまだまだ時間がかかると私は考えます。
では何故SCEはPSPソフトのDL販売開始に踏み切ったのでしょう?
これについては以下のような理由が考えられます。
・他社に先んじてDL販売を開始することで、環境を整えつつ知名度をアップさせ将来に備えたい
・PSPソフトは開発費が安く、自社ソフトでロイヤルティ不要なのでリスクはさほど大きくない
・小売店との関係維持には何か手を打つ予定がある?
3つ目は憶測ですが、何かしらの準備はあるでしょう。
ともあれ、今後のSCEを初めとした各メーカーの動向に注目です。