・砒素Arsenic ひそ
物理的性質は金属に類似するが化学的性質は燐に類似し分類上は非金属、重金属に、半金属に属する。
単体には灰色、黒色、黄色の3種の同素体が存在し、灰色ヒ素(比重5.73)が一般に知られる。単体ヒ素には毒性がないか弱いと考えられ、炭素を含むヒ素の化合物（有機ヒ素）は有毒で、炭素を含まないものを無機ヒ素（化合物）という。
元素記号As、単体、又は硫化物、イオウ化合物とし産出している。硫化物を熱して作られ、リンに似た性質を持つ。海産物に蓄積する砒素は火山から排出する無機砒素で、それらが海水中に広く約2ppbと微量に溶け海藻類は直接吸収し、魚介類ではプランクトンが無機砒素を取込み体内でメチル化して有機砒素となる。
食物連鎖により大型の魚や甲殻類の摂取、最終的に人に蓄積するが、毒性は一般に低い。海藻類に有機体(メチルアルソン酸 Methylarsonic acid)の砒素を含むが毒性はほとんどなく多くの食品にヒ酸、亜ヒ酸の塩類とし含む。ヒ素の水道水の基準値は0.01mg/L、普通の塩素消毒、ろ過でゼロにすることはできず凝集剤により凝集沈殿させ、ろ過して除去する。
経口摂取では亜ヒ酸で5～50mg、亜ヒ酸>ヒ酸>有機ヒ素で中毒症状の出現がみられる。ラットを用いた動物実験で、経口投与におけるLD50は、無機（3価）化合物の亜ヒ酸で14.6mg/kg、無機（5価）化合物のヒ酸で48mg/kg、有機ヒ素化合物のジメチルアルシン酸644mg/kgとしている。
無機ヒ素の致死量は、体重1kgにつき2～3mg/kg、成人では100～300mg/kgと推定する。WHOが1988年に定めた無機ヒ素のPTWI（暫定的耐容週間摂取量）は15μg/kg体重/週であり、体重50kgの人の場合、107μg【0.107mg;ひじき4.7g】/人/1日（750μg;ひじき33g/人/週）に相当する。
日本人では、毒性の低い有機砒素、毒性の強い無機砒素は概ね 0.18μg/kgとしている。日本人のヒジキ平均摂取量は、一日0.9g程度で生体への影響はほとんどないと考えられる。
砒素は、金属光沢のあるもろい灰色の結晶で、二硫化砒素（花火の着火剤、塗料用の顔料）の原料、硬さを高めるために合金（銅など）に添加、ガリウムGallium、インジウムIndium、アルミニウムとの化合物は、半導体の原料とし利用する。代表的な無機砒素化合物の三酸化砒素（亜ひ酸）は、無味無臭の白色の粉末または結晶で、ガラスの製造過程で気泡を消したり脱色に、ガス脱硫剤、木材の防腐剤、砒素や他の砒素化合物の原料、歯の神経を抜く際に使われる「亜ひ酸パスタ」及びシロアリ駆除などに使用している。
00無機体の砒素は、農薬、殺虫剤、防腐剤にも使用し食品に付着し中毒を起こすことがある。無味、無臭、白色粉末であることから食品に混入しても気がつきにくく、農薬(誤用を避けることから染色されている)の誤飲、誤用により食中毒を起こす。ヒ素は皮膚からも容易に吸収され、髪の毛、爪などのケラチン質にも血液を介して高濃度で蓄積する。
他に肝臓、腎臓、脾臓、消化管、肺などに分布するが神経、筋組織への分布は少ない。酸化を受け有機砒素化合物に変化して、主に尿から排泄する。体内でタンパク質と結合しやすく、タンパク質である酵素を阻害、タンパク質の合成に悪影響を及ぼす。摂取量は1日、諸外国では40～70μg(生体中には１mg/kg)、日本人では平均で200μg/日（ 15.8～1039μg/日:生体内は14～21mg）程度という。
ヒト体内の総ヒ素量は70kg体重で約２～５ｍｇ、腎臓・肝臓・筋肉などの組織には0.01～0.08mg/kg、また骨には0.03～0.3mg/kg、特に毛髪0.05～0.5mg/kgや爪0.6～1.5mg/kgに多く含む。急性、慢性中毒になると神経障害、虚脱状態、おう吐、咽頭、食道の収縮、胃痛、下痢、皮膚の色素沈着が現れ、ニンニク臭気が吐く息と排泄物からみられる。最悪の場合は皮膚ガン、肺がんの発生率が高くなり死に至る。
ヒジキの総ヒ素93mg/kg・無機ヒ素67mg/kg、ワカメの総ヒ素33mg/kg・無機ヒ素は0.15mg/kg、玄米は糠に多く総ヒ素0.23mg/kg・無機ヒ素0.21mg/kg、精米は総ヒ素0.14mg/kg・無機ヒ素は0.12 mg/kgを含む。
ご愛読戴きましてありがとうございます。よりよい情報をお届けしてまいります。
