オーストラリア永住権取得は難しくない!

5つの目標を作り始まった、永住LIFEの幸せなオーストラリア永住権への道

幸せなオーストラリア永住権への道 207 海が隔てた家族

2009-07-22 23:55:10 | Weblog
マークは僕をバックヤードに呼び出すと、イスに座るように言った。なんだか折り入って話があるようで何の話だろうと考えてみたが思い当たるふしはなかった。

「永住ライフ、相談があるんだ。お前、本気でこれから先もずっとオーストラリアで暮らしていきたいと思うのか?」

マークの顔はいつものおどけた表情ではなく何か思いをめぐらせているようで真剣な表情をしていた。マークの真剣な顔を見たからか、午前中バーガーショップで日本にいる妹のことを思い出したからなのかは分からないが、いつもなら即答でYESと答えるはずの質問に僕は一瞬躊躇をした。

ずっと、これから先もずっと・・・それって一生ってことなのかな?僕は一生、この国でオーストラリアで暮らしていこうって思っているのかな?マークが心配そうな顔で僕の顔をじっと覗き込むので僕は急いで答えた。

「うん、そう思っているよ。マークに始めて出会った頃から言っているはずだよ。僕はビジネスビザを取ってこの国でこの先も暮らしていきたいって。あらたまっていったいどうしたのさ?」

「うん、実はな日本に住んでいるカオルのお父さんが病気で倒れたんだ。それでなカオルや子供達に会いたいと言っているらしんだ。俺の考えではカオルと子供達だけを日本に帰らせればいいと思っていたんだが、もしかしたら次のチャンスはないかもしれないからカオルが俺も一緒に行って欲しいと言うんだ。

今の予定では2週間ほど日本に行こうと考えているんだが、その間シリンダーズをお前に任せたいと思うんだ。俺が留守の間、シリンダーズをお前に任せて大丈夫か?」

「それはカオルさんも心配だね。マークも一緒に行ってあげなよ。シリンダーズのことなら大丈夫、マークがいなくても僕がしっかり留守をあずかるから安心してよ。マサヤやターニーもいるし心配ないよ。でも、それとさっきの質問と何か関係あるの?」

「いや、それならいいんだ。ただ、お前にもお前の人生があるからな。あんまり頼りすぎて、この先シリンダーズや俺のために動けなくなるようなことがあったらいけないと思ってな。」

「なに言ってんだよマーク。僕はこれから先もシリンダーズで働いていきたいし、オーストラリアで暮らしていきたと思っているよ。ビザの申請の準備もしなければならないし、これからも社長にはお世話になるよ。」

「ありがとうな、永住ライフ。それじゃあ店のことはお前に任せることにするよ。俺は10年近く、そしてカオルや子供達も5年はおじいちゃんとおばあちゃん会っていないしな。よろしく頼んだぞ。」

マークはほっと安心した顔をしていつもどおりの表情に戻った、今まで僕はオーストラリアで暮らしていくためにシリンダーズでビジネスビザを取ろうとがんばってきたつもりだった。マークにもその気持ちは十分に伝わっていると思っていたし、今ごろになってそんなことを言い出すのが不思議だった。それでも今までマークが店を空けてどこかにいくことなんてなかったしマークもマークなりにいろいろ考えてくれてのことなのだろうと思った。

マークは早速、カオルさんに電話をかけて相談をすると明後日の日本行きのチケットを予約しに僕の学校の隣にある旅行会社に出かけていった。僕はマサヤとターニーに電話をしてシフトの変更と二人のスケジュールを確認した。カオルさんのお父さんの体調が良くないことを話すと二人とも快く応じてくれ、それぞれ自分達が追加で入ることができる時間帯や日にちを申し出てくれた。

通常はターニーは午後から夜のシフトが多いが、僕が学校に行かなければならない日中を中心にシフトを変更してくれた。マサヤも大学の講義がない時は昼間の時間帯にシフトに入ることも可能だし、どうしても人がいないときは講義を休んでもいいとさえ言ってくれた。

マサヤの大学と違い、僕が通っているのは語学学校だし以前から僕がビジネスビザを申請しようと準備をしていることもシリンダーズのマネージャーとして働いていることも、先生方や校長先生も知っていて応援をしてくれているので事情を説明すれば何日かなら欠席をしても目をつぶってくれるはずだ。それに確かホリデーを取ることができる制度もあるはずだった。僕は明日、学校にいったら正直に相談をしてみることにした。

旅行会社から戻ったマークにマサヤもターニも協力してくれてマークがいない間のシフトを埋めることができそうなこと、僕の学校の先生方にも相談をしてみることを伝えた。マークは一瞬、申し訳なさそうな顔をしてすまないなと言った後に思い直したようにありがとう、ありがとうと言ってニッコリと笑った。

マークがすまなそうな顔をしているよりも、ありがとうと笑って言ってくれて何百倍も嬉しかったし、マークとシリンダーズのために頑張ろうと思った。マークが頼ってくれたことも嬉しかったし自分がいない間の留守を僕に任せてくれたのも嬉しかった。それに一緒にシリンダーズを守る仲間達もいる。マークの笑顔を見ながら僕は幸せな気持ちになった。

その日の夜は家に帰るとすぐにアッキィーにも、その話をした。アッキィーはカオルさんのお父さんの病状を心配した後でカオルさんや子供達が5年、そしてマークは10年近くもお父さんに会っていないことに驚いていた。カオルさんの両親は仕事の都合でオーストラリアで暮らしていたが約10年前に引退して日本に帰ったようだった。それ以後は子供が生まれてから一度カオルさんと子供達が帰国をしただけで行き来はなかったようだ。

「永住ライフさん、信じられないですよね。そんなに長い間両親に会わないなんて。本当はマークと仲悪いんですかね。」

「いや、そんなことないみたいだよ。マークも心から心配しているし。ただ、ビジネスと子供を育てるのに精一杯でその余裕がなかったみたいだよ。いつだかマークが言っていたよ。ニュージーランドにいる自分の両親にも何年も会っていないって。」

リーン、リーン、リビングのキッチンカウンターの上に置いてある電話のベルが鳴った。壁にかけてあるリップカールのアナログクロックの針を見ると10時を周っていた。こんな時間にいったい誰だろうと思いながら立ち上がりかけたアッキィーを手で制して僕が受話器を取った。

「ハロー、もしもし。」

「あっ、にいにい?私よ、ゆきよ。」

僕の二つ年下の妹は小さな頃から僕のことをにいにいと呼んでいる。沖縄では一般的にお兄ちゃんのことをにいにい、お姉ちゃんのことをねえねえと呼ぶらしいが僕は沖縄出身ではなく両親も親戚にも沖縄出身の人はいなかった。ただ幼い頃、妹は舌たらずでお兄ちゃんと上手に呼ぶことができずに自然ににいにいと呼ぶようになったらしい。そのクセはお互いに二十歳を過ぎた今でもかわらずに僕は妹からすれば、にいにいだった。

「ああ、ひさしぶりだなゆき。元気にしている?急に電話なんかかけていったいどうしたの。」

「最近ね、すごく体調が良いんだ。気持ち悪くなったりどこか痛くなったりもしないし病院の先生もね素晴らしいって言ってくれたよ。ねぇ、だからさ私オーストラリアににいにいに会いに行ってもいいかな?お母さんも一緒に付いて行ってくれるって。」

「そうかぁー体調が良いのは良かったな。でも、ゆきやお母さんがオーストラリアに来てくれてもにいにいは学校もあるし、仕事もあるから結構忙しいんだよ。どこかに連れていってあげたり一緒に遊んだりはできないかもしれないよ。」

「大丈夫だよ、にいにい。私だってもう小学生の子供じゃないんだよ。お母さんも一緒だし、にいにいが付いていてくれなくたって二人で行動できるよ。」

「そんなこと言ったって、ゆきもお母さんも海外は僕が一緒に行ったハワイが1度あるだけで英語だって話せないじゃないか。それに自分達だけで飛行機とか乗れないだろ。」

「もうー、なんとかなるってにいにい。自分だって最初は飛行機の乗り方だって英語だって分からなかったんでしょう。とにかく、もう決めたしチケットだって取ったんだから変更はきかないからね。出発は1週間後だよ。」

「えー、一週間後!そんなの急すぎるだろ。」

「そう1週間後、だってあんまり先にしてまた体調が悪くなっちゃったらオーストラリアに行けなくなっちゃうから。だって私、一ヵ月後の体の調子が今と変わらずにずっと良いって分からないから・・・行ける時にいかないといけないの。ねっ、いいでしょ、にいにい。」

僕はこの時、妹がオーストラリアに来ることを正直、喜ぶことはできなかった。マークがいなくなりシリンダーズの仕事が忙しくなるからなのか妹の体が心配なのか。この時の僕には分からなかった。


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幸せなオーストラリア永住権への道 206 30セントコーン

2009-07-16 11:23:20 | Weblog
サーファーズパラパラダイスの正面の海で朝のサーフィンを終えた後、僕とアッキィーは街の中心にあるバーガーショップへと向ってエスプラネードを海沿いに歩いていた。昨日の夜、アッキィーとつまらないかけをして負けた僕はソーセージエッグマフィンのセットをご馳走することになっていたんだ。

オーストラリアの紙幣は日本のものとは違い薄いプラスティックでできている。そのため海の中に入って濡れてしまってもぼろぼろになることはないのでリーシュコードの鍵を入れるポケットに10ドル札を1枚しのばせておいた。ビールを飲みながら、どちらが先に日本にある全ての県を紙に書くことができるかという競争をしたのだが僕は最後まで香川県を思い出すことができなかった。別段、香川県に恨みはないが香川県のこと思い出すとなんだが無性に悔しかった。

「永住ライフさん、なんだか悪いですねー。朝からごちそうしてもらうなんて、まぁ僕のほうがちょっとだけ知識があるので仕方がないですけどね。あっ、そうそう海上がりは甘いものが欲しくなるのでデザートに30セントコーンも頂いていいですか?」

30セントコーンとは日本で言うソフトクリームのことだ。たぶん、子供のためや気軽にお店にきてもらいたいという狙いがあってのことだと思うが、僕らがいつも行くバーガーショップのチェーンではソフトクリームを1本30セントで販売をしている。いい大人が1ドルコインを握り締めてソフトクリームだけを買いにいくのはちょっと恥ずかしい気もするけれどアッキィーが言うように海からあがったあとの甘いものは格別で、いつも金欠の僕らはよく30セントコーンだけを買いにレジの列に並んでいた。

「だめだよっ!約束はソーセージエッグマフィンのセットだけだろ。なんで、コーンまでおごらなきゃならないんだよ。コーンが食べたければ自分で買えばいいだろ。まぁ、僕はデザートにコーンを食べるけどね。」

「わー、永住ライフさんのけち!どけち。見てくださいよ、あんな子供だって自分たちでコーンを買って食べてるじゃないですが。小学生が買い食いする程度のものをついでに買ってくれないなんて、なんて心が狭い人なんですかって。あー落としたぁー!」

アッキィーの声に驚いて振り返ると、小学生位の兄妹がコーンを持って立っていた。でも、その妹と思われるほうの小さな女の子の手がすべってしまったのか何かにぶつかってしまったのか熱く焼け始めたアスファルトの地面に買ったばかりの真っ白なコーンを落としてしまった瞬間だった。女の子はふくらんだほっぺと少し突き出たおでこに両手をあてて大声で泣き始めた。

僕はどうしたものかと一瞬かたまったまま二人を見ていると、泣き出した女の子より少しだけ年上にみえるお兄ちゃんと思われる男の子が自分の手に持っていたコーンを泣いている妹に握らせて頭をやさしく撫でた。女の子は最初はそれはお兄ちゃんの分だよというように首を左右に振っていたが、やはり目の前のコーンが気になるのか何度めかのお兄ちゃんの言葉の後にペロリと小さな舌を出してコーンを舐めた。

なんだかいいものを見たなという気分になって、そのままアッキィーと眺めていると小さな妹は数回クリームを舐めた後に握っていた手を離しお兄ちゃんにコーンを渡してニッコリと微笑んだ。お兄ちゃんも最初はお前が舐めろと言わんばかりに押し返していたが、やはり冷たくて甘いクリームの魅力にはさからえなかったようで数回ペロペロと舐めおいしい笑顔をすると妹と二人で仲良く笑った。

僕はなんだか自分が恥ずかしくなるとともに日本にいる自分の妹のことを思い出した。僕には二つ年下の妹がいる。両親は勤め人ではなく自分たちで仕事をしていたので、いつも忙しく僕ら兄妹にかまっている時間はなかった。だから、僕と妹はいつも一緒だった。僕が自分の友達とつりに出かける時も、木登りや壁のぼりをして遊ぶ時もいつも妹を連れていった。家のお風呂が壊れていて銭湯に通わなければならない時も一緒に男湯に連れて入ったし、お母さんが忙しくて料理を作ることができないときは僕がインスタントラーメンやレトルトのカレーを作って一緒に食べた。

僕らは子供の頃はいつもどこにいくにも二人一緒だったが、だんだんと成長し大きくなると二人で過ごす時間は少なくなった。そして、僕が地方の大学に進学して家を離れて少ししたころに妹は病気になってしまった。それは命に関わるような病気ではなかったが、それ以来妹は病弱になってしまい家を出ることはあまりなくなった。

僕がオーストラリアに旅立つことを告げた時に妹は言った。

「いいな。体が元気だからどこにでも行けて、今度は外国に行くんだね。小さな頃は一緒にどこにでも連れて行ってくれたし、私もついて行けると思っていた。けれど今回は無理だね。たくさん、いろんな物を見て、たくさんいろんなことを経験してきてね。きっと自分の望む生き方ができるね。」

僕は、なんだか不意に目頭が熱くなりバーガーショップの中に駆け込んだ。そして騒がしい喧騒の中で30セントコーンを4本買ってきて一本をアッキィーに一本をコーンを落としてしまった妹に、もう一本を妹を気遣った優しいお兄ちゃんに、そしてもう一本を自分で舐めた。二人の兄妹は突然のコーンのプレゼントに戸惑っていたが、僕にも君達みたいな妹がいるんだ、いつまでも仲良くするんだよと言うとありがとうと行ってコーンを持って二人で走っていった。

「おーい、あんまり走るとまたコーンを落としちゃうぞ。」

二人の兄妹は一度だけ僕の方を振り返るとエスプラネードの人波の中に消えていった。僕は手に持ったコーンをパクリと一口で食べてもう一度バーガーショップのカウンターの列に並んだ。今朝のソーセージエッグマフィンの味はなんだかいつもり少しだけ塩っからく感じた。

学校が終わり、いつものようにシリンダーズに出勤するとマークが僕をバックヤードのストックルームに呼び出した。

「永住ライフ、相談があるんだ。お前、本気でこれから先もずっとオーストラリアで暮らしていきたいと思うのか?」

僕はこれから先もずっと、という言葉に一瞬の戸惑いを感じた自分自身に驚いた。


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幸せなオーストラリア永住権への道 205 みんな誰かの天使なんだ

2009-07-01 10:06:32 | Weblog
マークはりえちゃんの手を優しく取りながらヒロ君がいるベンチの方に向けて歩いてきた。そして、僕らが立っている場所から5、6メートル離れた場所まで来ると立ち止まり少し下を向いたりえちゃんとは対照的にまっすぐにヒロ君の顔を見つめていた。

ヒロ君はベンチの上からすっと飛び降りるとマークと同じようにゆっくりと二人が立っている場所まで歩いていって白い手袋を着けたりえちゃんの手をマークの手から受け取った。二人が一歩、一歩足取りを合わせながら進んでくるの見ていると、お互い別々の人生を生きていた他人同士が出会い、惹かれあい、傷つき、信じ、愛し合い、これからともに歩んでいこうとする気持ちがそこに全て現われているようでなんだかとても美しく見えた。

ベンチの前まで来るとヒロ君が先にベンチの上に上がり、手を引き上げるようにしてりえちゃんの体をステージの上にあげ、ディーとエレナさんがウェディングドレスの裾を綺麗に広げて左右にはけていった。

「本来ならば今から何か偉大なものに二人の永遠の愛を誓うのですが、ヒロ君からの希望でここに集まってくれた仲間達とバーレーの海に愛を誓いたいそうです。その前にヒロ君からりえちゃんに渡すものがあります。今回、みんなの前でりえちゃんに手渡すのはリングではなくて腕時計です。これからは二人で同じ時を刻みながら一緒に生きていこうという想いをこめた時計だそうです。

あらかじめりえちゃんにもヒロ君の腕にあう時計をあずけてあります。もし、ヒロ君の愛を受け止め共に歩んでいく気持ちがあるのならヒロ君の腕に時計をつけてください。もし、今はまだ準備が整っていないのならその時計はその日がくるまでりえちゃんが持っていてください。」

ヒロ君はポケットからさっきりえちゃんに渡した箱よりも少しだけ小ぶりな箱を取り出して想いをこめてりえちゃんの腕に時計を着けた。りえちゃんはヒロ君が自分の腕に時計を巻いてくれるのを少しうるんだ大きな目で見つめていた。そして、少しの間を置いてからヒロ君の顔を見て微笑むと時計を取り出し同じようにヒロ君の腕に時計を巻いた。

「それでは拍手をもって二人が夫婦になったことを承認してください!」

僕がこれ以上出せないという歓喜を込めた声でそう叫ぶと会場からも大きな喝采とともに暖かい喜びの拍手が起こった。そして、嬉しそうな幸せそうな二人の新しい夫婦への拍手はバーレーへッズの夜の海と風の中に溶けていった。

エレナさんとディー、そしてターニーが手を貸しながら50センチはあろうかという大きなケーキが二人の前に運ばれてきた。ケーキの上は真っ白なクリームで綺麗に化粧をされ、砂糖細工で作られた小さな天使たちがチョコレートの文字でHAPPYWEDDING HIRO&RIEと描かれ横で横たわっていた。ターニーがケーキカット用の銀のナイフを手渡すと二人は手を合わせるようにして、ケーキの端にナイフを入れた。

もう一度、会場から大きな拍手が起こり最前列にいたアッキィーやノリがキスをしろとヒロ君をからかうと周りにいた仲間達も同じようにヒロ君とりえちゃんにキスをするように言った。ヒロ君は少しだけ困ったような照れ笑いをうかべた後に、本当に恥ずかしがっているりえちゃんのくちびるにキスをした。

その後も何回もの乾杯とお祝いの言葉や喝采の拍手が続き、喜びと祝福に溢れたヒロ君とりえちゃんのウェディングパーティーは続いた。夜もふけてきてバーレーの芝生の広場が使うことができなくなると場所をチュックの家に移して夜中まで今日という最高の日を祝った。二人のシークレットウェディングはこうして幸せに行うことができた。

次の日の朝、ゴールドコースト全域に約一ヶ月ぶりに大きなスウェルが入った。街中のサーファー達が待ち焦がれていた波がゴールドコーストに帰ってきたのだ。サーファー達はサーフボードを手にそれぞれのビーチへ走った。バーレーへッズのローカル達も例外ではなく昨夜は遅くまで飲んでいたにもかかわらず、水平線が赤く光り朝日が金色に輝き始めるころにはみんなバーレーの丘の上に集まっていた。

昨日、チュックに誘われたヒロ君も日本からこの時のために持ってきた大波用のサーフボードを持って僕と一緒にバーレーの丘にやってきた。昨日の昼ぐらいからゆっくりと入り始めていたスウェルが一晩で急激にサイズアップをして頭オーバーのファンウェーブになっていた。沖の方から1枚、1枚の大きな美しい壁となってこちらに入ってくる姿は朝の澄んだ空気と一緒になって神々しくさえ感じられた。

「おい、ヒロ。ゴールドコーストの女神と海の女神達もお前らのウェディングを心から祝福してくれているみたいだぞ。こんなに美しい波はいつぶりだろう。さぁ、いくぞヒロ、永住ライフ。」

チュックの掛け声を合図にして、僕たちはバーレーの丘を下りジャンプオフロックの前まできた。そしてチュックを先頭にしてバーレーローカル達はジャンプオフロックの上から打ち寄せる波にむかって飛び立ち始めた。僕はヒロ君を先に飛ばして、最後にジャンプしようとしたがヒロ君がチュックや僕の飛んでいく様を見てからその背中に続きたいと言うのでそのとおりにした。

僕は、次々に入ってくるバーレーの波の鼓動に自分の鼓動を合わせいつものように飛び立った。海の中に抱かれ少しパドリングをしてから振り返って岩の上のヒロ君をみると、今まさに空と海に向って飛び立とうとする瞬間だった。サーフボードを体の前にかまえ少しかがんでから飛び立ったヒロ君の左腕につけた腕時計に金色に輝く太陽と海の光が反射して、まるでダイヤモンドのように眩しく輝いていた。ヒロ君はりえちゃんと一緒にバーレージャンプオフロックから新しい世界に飛び立ったんだ。

そして、ヒロ君と僕らは自然と海の神様からの贈り物をみんなでシェアしながら楽しんだ。残りの2日間、長年の夢だったオーストラリアでのサーフィンを楽しんでヒロ君とりえちゃんは日本へと帰っていった。

空港で別れるときにつながれた二人の腕にはおそろいの腕時計が巻かれ、胸の中にはおそろいのキラキラした時間と思い出がたくさんつまっていた。これからも二人は同じ時間を分け合って共に生きていくんだろう。重なった二人の針がたとえ再びずれてしまったとしても何度でもまた針を巻きなおして合わせて欲しい。

そして、二人にとって夢の町だったサーファーズパラダイス、ゴールドコーストはもう夢の中の街ではなくヒロ君とりえちゃんの仲間が待っている現実の街なんだってことを忘れないで欲しい。僕は二人の腕時計と笑顔を見ながらいつまでも手をふった。





「おーい、永住ライフ。りえちゃんから手紙が届いたぞ。こっちに来て読んでくれないか。」

サーフショップサイドで店番をしていたマークの声がバックヤードで作業している僕を呼んだ。チュックが2ヶ月前から作り始めたバレルブランドのサーフボードが今朝、初めて入荷したのだ。今までチュックが作ってきたコンセプトのサーフボードとはデザインもシェープも違っていて70年代のサーフボードと現在のサーフボードを融合させたような不思議な形のサーフボードにヒッピーのようなサイケデリックな色彩がつけられたものだった。

僕はチュックの魂をボードラックに丁寧に立てかけるとマークの呼んでいるカウンターに急いだ。えりちゃんから届いたという封筒は若草色で北海道の草原をイメージさせた。

「えーっ、なになに・・ゴールドコースト、サーファーズパラダイスの天使達へ。みなさん、お元気ですか。こちらはとても元気です。今日は私にとって人生で2度目の結婚式でした。」

「えーっ!人生で二度目の結婚式?あの二人、いったいどうしたんだ。」

「2度目の結婚式をあげたといっても、相手はヒロなので安心してくださいね。あれから日本に帰って二人できちんとお互いの両親に報告をしました。ヒロのお父さんはとても喜んでくれたし、私の両親も最初はいい顔はしなかったけれどこれからもヒロが牧場で働くと約束すると、できれば私と二人で牧場をついでほしいと言い、逆にヒロに私と牧場のことをよろしく頼むと言ってくれました。今ではヒロとお父さんはとても仲良くなりました。仕事が終わった後に、よく家の前のベンチで二人でビールを飲んでいますよ。

今日はうちの牧場の芝生の上でジンギスカンをしながら家族や親戚、牧場の仲間達、大好きな町の人たちに集まってもらい2度目の結婚式をしました。お父さんやお母さんがどうしてもと言ったのとみなさんにしてもらった自然の中でのウェディングパーティーで集まってくれたみんなが、とても楽しそうにしてくれていたので私達の大好きな人たちにも喜んで楽しんでもらいたいと思ったからです。

これもみなさんに出会い、話しをし、素敵な結婚式をしてもらったおかげです。みなさんは私達にとって二人を結びつけてくれた天使たちです。サーファーズパラダイスは綺麗な海と最高の波と自然、そして優しくて暖かい天使たちが暮らす夢の街です。

私達の町もとても素敵な町です。海も自然もあたたかい人たちもたくさんいます。この町に訪れてくれた人たちにとっての天使になれるように私もヒロも頑張ります。本当にありがとうございました。

りえ、ヒロより


追伸、 おなかの中に新しい命をさずかりました。天使たちの住む街で授かった、私達の天使です。」

僕とマークは歓声をあげ、お互いの手を叩きあい喜んだ。
僕達はみんな生まれた瞬間からきっと誰かにとっての天使なんだ。

今日もたくさんの人たちがゴールドコースト、サーファーズパラダイスの街に訪れるだろう。僕達はそれぞれの夢を胸に抱きながら今日も精一杯、生きていこう。


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☆次週の永住ライフの物語は都合により1週間、お休みをさせていただきます。次回は7月15日から新シリーズで更新しますので楽しみにしていてくださいね!

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