このままじゃ負け犬になる。
チュックの言った言葉は僕の心の内側にある触られたくない部分にいきなり手を突っ込まれたようにずしりと重く響いた。僕は何も言うことができずにショックで言葉を失った。すると隣で怒りを隠すことなく僕の話に賛同してくれていたジュンが、師匠であるチュックに僕の代わりに噛み付いた。
「おい、チュック。負け犬ってなんだよ。それは永住ライフに対してひどすぎないか?やつらがやろうとしていることはずるくて卑怯なやり方じゃないか、自分の大切な物を奪われそうになったら俺だって頭にくるぜ。チュックはちがうのかよ。」
ジュンは頭に巻いていたタオルをほどき、作業台の上に叩きつけた。普段は冷静でやさしいジュンが怒る時は、いつもひとつの理由だけ。それは自分の友達や仲間が傷つけられた時だけだった。
チュックはそんなジュンにかまわずに肩に担いでいたXXXXビールのケースを作業台に脇に備え付けてある棚にしまうと、フーッと深いため息をついてから、僕とジュンの顔を交互に見て言った。
「おっと、ここにも勘違いした犬っ子が一匹いたか。うちにはバレル以外に、もう一匹いたんだったな。そんなに吠えたかったら表にでて二匹でキャンキャン吠えていろ。」
もともと職人気質で腕はいいが決して気の長いほうではないチュックは、僕等二人にもう一度一瞥を加えると、ばかばかしいと言いながら部屋を出て行こうとした。ジュンが僕のためにチュックとケンカになるのは耐えられなかった。急いでチュックの前に回りこみ、僕はチュックに謝った。
「ごめんよチュック怒らないで、ジュンは僕のために本気になってくれたんだ。二人をケンカさせるために来たわけじゃないんだ。気を悪くしないでよ。」
「じゃあ、お前は何のために来たんだ。弱音や泣き言を言うために、ここに来たのか?ちがうだろ。俺はこう見えても誇り高きクラフトマンだ、自分の仕事がうまくいかないからって、それを誰かのせいにして愚痴や泣き言を言ったことはないぞ。お前も一人前の男だろ、ウォーターマンだろ、ちがうのか?俺は仲間として、お前の泣き言なんか聞きたくはないぞ。」
チュックは残念そうな顔をしながら、僕の顔をじっと見つめ、作業台の脇の丸イスに腰掛けてジュンのことを呼びつけ、自分の隣に座るように言った。ジュンは不満そうな顔をしていたけれど、本気で僕を怒鳴りつけたチュックの迫力に押されるように静かにイスに座った。
「いいか永住ライフ。お前は随分と腹をたてて怒っていたようだけどな、それは本当は怒っているんじゃなくて恐がっているんだ。お前がここで吐き出したのは怒りじゃなくて恐怖なんだよ、恐れなんだよ。分かるか?それを感じたから俺は相手にしなかったんだ。」
チュックの言う言葉に僕はまたショックを受けた。僕が新しいボディーボードショップのやり方に腹を立てていたのは本当は恐れなんだとチュックは言った。怒りではなくて恐れ、その言葉をすぐには受け止めることができなかった。
ショックを受けてぼーっとしている僕と、チュックの言う言葉の意味がよく理解できなかったジュンを諭すようにチュックが話しを続けた。
「相手がどんなやりかたでこようが本気でなんとかしてやろうと思っていたら怒りや不平なんてぶちまけているひまは無いんだ、どうしたらいいか対処を考え、行動しなきゃいけないんだ。よし、お前等に分かりやすいように話してやる。
海に入っていて大きな波が突然やって来たとき、自分が想像していたよりもはるかに大きなうねりがやってきた時、自分の背のたけの何倍もあるような大波が眼の前に迫ってきたとき、その巨大な波に飲まれないようにテイクオフして乗りこなしていくのに大切なことはなんだ。」
「びびらないこと、ためらわないこと、かな?」
ジュンが目をつぶり大波に向かってテイクオフしていく姿を想像しながら応えた。僕もジュンと同じように目を閉じて目前から巨大なうねりが入ってくるところを想像してみた。はるか沖から海水を高くもりあげながら迫ってくる大波、僕はまずその大波に乗ることを心に決意する、タイミングを合わせていつもより早く大波のスピードに追いつくようにパドリングをしながら海水をこぐ、大波に追いつかれないように、飲み込まれないように。
十分なスピードがついてきたところで僕は振り返る、すぐ背後には巨大な波がいまにも白波の大口を開けて崩れんばかりに迫る。次の瞬間に僕の体を波のトップへとどこまでも引き上げる、エレベーターで5,6階までひきあげられる気分、胸に迫り来る恐怖。負けるな恐怖に飲まれるな、失敗を考えるな、腕をまわせ、体を研ぎ澄ませ、ためらうな、ボードを押し込め、ゴーゴーゴー。いったぁー!
僕は胸の中に広がりそうな闇のような恐怖に打ち勝ち、ツナミのような大波にテイクオフをした。滑り降りる急斜面、岩のこぶのように固い水面、跳ね回るボードを両足と体中で押さえ込み、大きな白い大口につかまらないように走りぬけた。
「やったぁー!乗りこなした僕は恐怖に負けなかった。」
僕は思わず声をあげて、目を開けてイメージの世界からもどってきた。目を開けてチュックの顔をみると満足そうに微笑んでいた。その顔はいつものチュックと同じ、優しく、誇り高い海の男の顔だった。
「わかったよチュック、大波に乗るには恐怖に負けちゃいけないんだ。恐れは迷いになり全ての行動を狂わす、いつもの自分のライディングができなくなり結局は大波に飲まれるんだ。僕はツナミに飲まれる前に自分自身の恐怖に飲まれていたんだ。」
「さすが永住ライフ、そして俺の一番弟子のジュンだ。大切なことが分かっている。なかなか感がいいな。それじゃあ、もう一つ問題だ。どんなに腕が引きちぎれるほどパドリングしても追いつけないようなツナミのような大波が入ってきたらどうする。それでも、どうしても乗らなければならない、そんな大波がやってきたらどうする。」
僕は考えた、どんなに腕の筋肉や背中の筋肉を鍛えても自分一人の力では乗りこなすことができないツナミのような大波がやって来たとき。それでも恐怖に打ち勝ってツナミに乗らなければならない時、僕はそんな時どうするだろうか。諦めて逃げ出すか、大波に飲まれることが分かっていながら無謀にも一人で海に出て行くか。
その答えはいつか見た映画の中にあった、それはハワイに年に数回やってくるツナミのような大波で何十年も誰も乗ることができないと言われていた巨大な波に乗る男達のストーリーだった。彼等は一人ではなくチームだった、大波用の板を開発する者、体を極限まで鍛える者、みんなでたくさんのアイデアを出し合い、強大な波を制するために一つになった。そして今まで無かった方法で大波に乗ることを考え付きついに誰も乗ることができないと言われた大波にのることができた。
「わかったよ、チュック。一人ではとても太刀打ちできないような大波がきたら僕はチームを組むよ。そしてみんなで一つになって力を出し合うんだ。トーイングだよ、トーイングサーフィンをするよ。僕は恐怖に決して負けない。仲間を信じて大波がやってくる海に入る、そして仲間にジェットスキーで引っ張ってもらう、僕一人のパドリングじゃツナミにテイクオフすることはできないからね。
そして万が一ツナミに飲まれてもすぐに発見してもらえるようにヘリコプターから見ていてもらう、そしてたとえ波に飲まれても、もう一度チャレンジすることができるようにジェットスキーで救助をしてもらうようにするよ。一人では無理でも心から信頼できる仲間と一緒なら、きっと乗りこなすことができるよ。」
「そうだ永住ライフ。だからお前が恐怖を感じている場合じゃないんだ。お前が何があろうと大波に乗ると心に決めたなら俺達はいつでもジェットにでもヘリにでもなってやる。俺もジュンもお前達シリンダーズのチームだからな。」
NO FEAR 恐怖に負けるな。
僕達はチームだ、何があろうとツナミに乗ってやる。僕の心に本物の火が灯った。
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チュックの言った言葉は僕の心の内側にある触られたくない部分にいきなり手を突っ込まれたようにずしりと重く響いた。僕は何も言うことができずにショックで言葉を失った。すると隣で怒りを隠すことなく僕の話に賛同してくれていたジュンが、師匠であるチュックに僕の代わりに噛み付いた。
「おい、チュック。負け犬ってなんだよ。それは永住ライフに対してひどすぎないか?やつらがやろうとしていることはずるくて卑怯なやり方じゃないか、自分の大切な物を奪われそうになったら俺だって頭にくるぜ。チュックはちがうのかよ。」
ジュンは頭に巻いていたタオルをほどき、作業台の上に叩きつけた。普段は冷静でやさしいジュンが怒る時は、いつもひとつの理由だけ。それは自分の友達や仲間が傷つけられた時だけだった。
チュックはそんなジュンにかまわずに肩に担いでいたXXXXビールのケースを作業台に脇に備え付けてある棚にしまうと、フーッと深いため息をついてから、僕とジュンの顔を交互に見て言った。
「おっと、ここにも勘違いした犬っ子が一匹いたか。うちにはバレル以外に、もう一匹いたんだったな。そんなに吠えたかったら表にでて二匹でキャンキャン吠えていろ。」
もともと職人気質で腕はいいが決して気の長いほうではないチュックは、僕等二人にもう一度一瞥を加えると、ばかばかしいと言いながら部屋を出て行こうとした。ジュンが僕のためにチュックとケンカになるのは耐えられなかった。急いでチュックの前に回りこみ、僕はチュックに謝った。
「ごめんよチュック怒らないで、ジュンは僕のために本気になってくれたんだ。二人をケンカさせるために来たわけじゃないんだ。気を悪くしないでよ。」
「じゃあ、お前は何のために来たんだ。弱音や泣き言を言うために、ここに来たのか?ちがうだろ。俺はこう見えても誇り高きクラフトマンだ、自分の仕事がうまくいかないからって、それを誰かのせいにして愚痴や泣き言を言ったことはないぞ。お前も一人前の男だろ、ウォーターマンだろ、ちがうのか?俺は仲間として、お前の泣き言なんか聞きたくはないぞ。」
チュックは残念そうな顔をしながら、僕の顔をじっと見つめ、作業台の脇の丸イスに腰掛けてジュンのことを呼びつけ、自分の隣に座るように言った。ジュンは不満そうな顔をしていたけれど、本気で僕を怒鳴りつけたチュックの迫力に押されるように静かにイスに座った。
「いいか永住ライフ。お前は随分と腹をたてて怒っていたようだけどな、それは本当は怒っているんじゃなくて恐がっているんだ。お前がここで吐き出したのは怒りじゃなくて恐怖なんだよ、恐れなんだよ。分かるか?それを感じたから俺は相手にしなかったんだ。」
チュックの言う言葉に僕はまたショックを受けた。僕が新しいボディーボードショップのやり方に腹を立てていたのは本当は恐れなんだとチュックは言った。怒りではなくて恐れ、その言葉をすぐには受け止めることができなかった。
ショックを受けてぼーっとしている僕と、チュックの言う言葉の意味がよく理解できなかったジュンを諭すようにチュックが話しを続けた。
「相手がどんなやりかたでこようが本気でなんとかしてやろうと思っていたら怒りや不平なんてぶちまけているひまは無いんだ、どうしたらいいか対処を考え、行動しなきゃいけないんだ。よし、お前等に分かりやすいように話してやる。
海に入っていて大きな波が突然やって来たとき、自分が想像していたよりもはるかに大きなうねりがやってきた時、自分の背のたけの何倍もあるような大波が眼の前に迫ってきたとき、その巨大な波に飲まれないようにテイクオフして乗りこなしていくのに大切なことはなんだ。」
「びびらないこと、ためらわないこと、かな?」
ジュンが目をつぶり大波に向かってテイクオフしていく姿を想像しながら応えた。僕もジュンと同じように目を閉じて目前から巨大なうねりが入ってくるところを想像してみた。はるか沖から海水を高くもりあげながら迫ってくる大波、僕はまずその大波に乗ることを心に決意する、タイミングを合わせていつもより早く大波のスピードに追いつくようにパドリングをしながら海水をこぐ、大波に追いつかれないように、飲み込まれないように。
十分なスピードがついてきたところで僕は振り返る、すぐ背後には巨大な波がいまにも白波の大口を開けて崩れんばかりに迫る。次の瞬間に僕の体を波のトップへとどこまでも引き上げる、エレベーターで5,6階までひきあげられる気分、胸に迫り来る恐怖。負けるな恐怖に飲まれるな、失敗を考えるな、腕をまわせ、体を研ぎ澄ませ、ためらうな、ボードを押し込め、ゴーゴーゴー。いったぁー!
僕は胸の中に広がりそうな闇のような恐怖に打ち勝ち、ツナミのような大波にテイクオフをした。滑り降りる急斜面、岩のこぶのように固い水面、跳ね回るボードを両足と体中で押さえ込み、大きな白い大口につかまらないように走りぬけた。
「やったぁー!乗りこなした僕は恐怖に負けなかった。」
僕は思わず声をあげて、目を開けてイメージの世界からもどってきた。目を開けてチュックの顔をみると満足そうに微笑んでいた。その顔はいつものチュックと同じ、優しく、誇り高い海の男の顔だった。
「わかったよチュック、大波に乗るには恐怖に負けちゃいけないんだ。恐れは迷いになり全ての行動を狂わす、いつもの自分のライディングができなくなり結局は大波に飲まれるんだ。僕はツナミに飲まれる前に自分自身の恐怖に飲まれていたんだ。」
「さすが永住ライフ、そして俺の一番弟子のジュンだ。大切なことが分かっている。なかなか感がいいな。それじゃあ、もう一つ問題だ。どんなに腕が引きちぎれるほどパドリングしても追いつけないようなツナミのような大波が入ってきたらどうする。それでも、どうしても乗らなければならない、そんな大波がやってきたらどうする。」
僕は考えた、どんなに腕の筋肉や背中の筋肉を鍛えても自分一人の力では乗りこなすことができないツナミのような大波がやって来たとき。それでも恐怖に打ち勝ってツナミに乗らなければならない時、僕はそんな時どうするだろうか。諦めて逃げ出すか、大波に飲まれることが分かっていながら無謀にも一人で海に出て行くか。
その答えはいつか見た映画の中にあった、それはハワイに年に数回やってくるツナミのような大波で何十年も誰も乗ることができないと言われていた巨大な波に乗る男達のストーリーだった。彼等は一人ではなくチームだった、大波用の板を開発する者、体を極限まで鍛える者、みんなでたくさんのアイデアを出し合い、強大な波を制するために一つになった。そして今まで無かった方法で大波に乗ることを考え付きついに誰も乗ることができないと言われた大波にのることができた。
「わかったよ、チュック。一人ではとても太刀打ちできないような大波がきたら僕はチームを組むよ。そしてみんなで一つになって力を出し合うんだ。トーイングだよ、トーイングサーフィンをするよ。僕は恐怖に決して負けない。仲間を信じて大波がやってくる海に入る、そして仲間にジェットスキーで引っ張ってもらう、僕一人のパドリングじゃツナミにテイクオフすることはできないからね。
そして万が一ツナミに飲まれてもすぐに発見してもらえるようにヘリコプターから見ていてもらう、そしてたとえ波に飲まれても、もう一度チャレンジすることができるようにジェットスキーで救助をしてもらうようにするよ。一人では無理でも心から信頼できる仲間と一緒なら、きっと乗りこなすことができるよ。」
「そうだ永住ライフ。だからお前が恐怖を感じている場合じゃないんだ。お前が何があろうと大波に乗ると心に決めたなら俺達はいつでもジェットにでもヘリにでもなってやる。俺もジュンもお前達シリンダーズのチームだからな。」
NO FEAR 恐怖に負けるな。
僕達はチームだ、何があろうとツナミに乗ってやる。僕の心に本物の火が灯った。
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