いよいよ今日からマークと僕のサーフショップがオープンする。正確に言えば僕らの店には1本のサーフボードも置いていないので今の段階では完全にボディーボード専門店なのだが、目標では最初の半年でボディーボードを売りまくって資金を稼ぎ、サーフボードを仕入れていく計画になっている。
アパートの引越しもアッキィーががんばって少しずつ車に乗せて荷物を運んでくれたり、荷物を梱包しておいてくれたおかげでスムーズに進めることができた。アンドレアスと二人で探したメインビーチのマンションから引っ越すことは僕の中で一つのステージが終わり、新しいステージに進む気分だった。アンドレアスと大騒ぎしながら酒を飲んだり、サーフボードを綺麗にリペアをしたり、ふざけあっていた沢山の思い出があの部屋には残っていた。アンドレアスが酔っ払って壁にあけた穴も、僕が焦がしてしまったキッチンの扉も、僕らがあの部屋でたくさんのことを経験した証だった。
アンドレアスは国に帰り、僕はマークとのサーフショップの仕事に没頭している。ふざけあってバカ騒ぎばかりしていた青年の時代が終わり、僕らは大人として次の段階を歩き初めている。人の人生に少年時代や青年時代、そして大人になっていく、それぞれの段階があるように僕らのオーストラリア生活の中にも、それぞれの進むべき道に向かって成長していく段階があるような気がする。
必要なときに必要な人と出会い、別れて、色々な経験をしていく、きっとそんなことを繰り返しながら、僕らは自分の進むべき道に向かって歩いていくんだ。全ての荷物を運び出して、空っぽになったメインビーチの部屋から出るときに、僕はそんなことを考えていた。
「今までありがとう。」
僕は最後の荷物を運び出しながら、楽しく暮らしたあの部屋に心の中でお礼を言った。
昨日から暮らし始めた、このシェブロンアイランドのアパートも快適だった。メインビーチのマンションは綺麗だけれどホテルの部屋のような冷たさがどこかにあった。でも、この新しいアパートは家の前には芝生があって裏にはバックヤードもある、決して綺麗ではないけれどちゃんと大地にくっついていて、しっかりとした生活があるような気分がした。
「おはよう、アッキィー。今日は何時頃にお店に遊びにくる?」
僕は自分の部屋を出て階段を下りて、リビングでテレビを見ながら牛乳を飲んでいるアッキィーに話かけた。アッキィーが見ているのはオーストラリアの朝の子供用の番組で、日本でいえばポンキッキのような番組だ。子供用の番組なので英語も分りやすく、絵や歌も多いので勉強になるらしく最近のアッキィーのお気にいりだ。
「今日は牧場の仕事が夕方まであるのでマークの店に行けるのは夜になると思いますよ。いよいよ今日からオープンですね、がんばってくださいね。」
「ありがとう、アッキィー。がんばるよ。」
僕は冷蔵庫から自分の牛乳を出してコップに注いで一気に飲み干した。自分の体の中に気合が入っていくのを感じた。急いでシャワーを浴びて、身支度をしてお店に向かった。
ネラング川の橋を渡りながら、川の水面を見ると太陽が反射してキラキラと金色に輝いていて、とても綺麗だ。きっと素晴らしい1日になるぞ、僕はそう思った。
お店に付くとマークが大きなダンボール箱をニコニコしながら開けていた。
「おはようマーク、いよいよオープンだね。昨日は嬉しくってなかなか眠れなかったよ。」
「おはよう永住ライフ、今日は学校を休んでくれてありがとうな。お前に見せたい物があるんだ、俺はこっちのダンボールを空けているから、そこに積んであるほうのダンボールを開けてくれないか。」
マークは手に持っていたカッターを僕に手渡した。僕は今日、荷物が届く予定なんかあったかなと考えながらお店の入り口の脇に詰まれたダンボール箱を開けることにした。お店に並べる予定の商品は一昨日までに全て届いて確認済だったからだ。
中の商品に傷をつけないようにテープの脇からカッターの刃を慎重に入れて、ダンボールを梱包してあるテープを綺麗に剥がした。ダンボールを開けてみると、そこにびっくりするような物が入っていた。
「わーすごいや!マーク、マーク、いつの間にこんな物を注文していたんだよ。全然知らなかったよ。」
ダンボールの中には色々な色のラッシュガードが入っていた。そしてそのラッシュガードの胸の部分には僕らのお店「シリンダーズ」のロゴマークが入っていた。
「かっこいいだろ永住ライフ。お前に内緒で知り合いの業者に頼んでおいたんだ、オープンに間にあわせたくてずいぶんと無理を言ったんだけれど、どちらも間にあわせることができたんだ。」
「すごい、かっこいいよ。内緒にしてるなんてずるいよマーク。えっ、でも、どちらもってどういうこと?」
「アハハ、いいから、いいから、じゃあそっちのダンボールも開けてみろよ。」
僕はもう片方のダンボールからはいったい何が出てくるんだろうと考えながら、一気にダンボールのテープを剥がした。
「わー、すごいよマーク。僕、感動だよ。」
もう一つのダンボール箱の中にはラッシュガードの胸の部分についているのと同じ、僕らの店「シリンダーズ」のロゴマークが入ったTシャツとステッカーが沢山入っていた。
「これに着替えようぜ、永住ライフ。今日は記念すべきオープンだからな、俺もお前もこのTシャツを着て営業しよう。そして、そっちのステッカーは今日お店に来てくれたお客さん全員にあげよう。」
「すごいやマーク。最高だね、でも来てくれたお客さん全員にあげちゃって大丈夫なの?」
「けちなこと言うなよ永住ライフ。今日はオープンだぜ、ステッカーをタダで配っても、つぶれるようなことはないから安心しろ。それにお客さんがサーフボードやボディーボード、車なんかに俺達の店のステッカーを貼ってくれればいい宣伝になるだろ。それにオープン記念でステッカーを配ってるて聞いたら、ステッカー欲しさにこの辺のガキどもが集まるかもしれないだろ。どちらにしてもいい宣伝になるぞ。」
「そうだね、さすがマークだね。だてにサーファーズで何年も商売してないね。」
マークは嬉しそうに笑いながら早くTシャツに着替えろと言った。僕が嬉しいのと同じように、いやきっと僕の何十倍もマークはこの日がやってきたことが嬉しいんだろう。僕がマークとお店を造り始めたのはここ数ヶ月のことだけれど、マークの頭の中にはずいぶんと前からあった夢だったはずだ。そしてビジネスや生活が忙しすぎてお酒に走ったりして、海の世界から離れてしまっていたマークが、大好きなサーフィンの世界にまた戻ってくることができたんだ。
「よーし永住ライフ。店を開けろ。シリンダーズ、オープンだ!」
その日は本当に忙しかった。サーファーズで初めてのボディボード専門店がオープンする噂はすでに街の人達にも流れていたらしく観光客のお客さんだけでなくローカルのオージーのキッズ達や、ワーキングホリデーの日本人サーファー達もたくさんやって来た。
水着を買いに来た女の子たちの中にもボディーボードに興味がある子が多く、僕らのお店の中には沢山の人達があふれた。用意していたステッカーもどんどん配ったので、マークが言っていたように近所のキッズ達が先にステッカーをもらった友達から話を聞いて、ステッカーをもらいにたくさん集まってきた。
僕らの店には1枚のサーフボードもないけれど壁一面には何十種類ものボディボードのフィンが、まるでオブジェのようにかけられているし、百枚以上のボディボードが店中にディスプレイされている。
本当に最高の気分だった。
僕が始めてマークの水着屋のショウウインドをのぞいていたのはたった数ヶ月前のことで、その時にはサーフショップも並べられた沢山の商品も、陳列のために作ったラックや棚も、まるっきり何も存在していなかったのに今はお店が出来上がり、今日もたくさんのお客さんが来てくれた。
数ヶ月前まではマークの頭の中にしか無かったサーフショップが今はこの街に現実に存在している。壁を壊し始めたときに諦めそうになった僕にマークが言った言葉を思い出した。
「永住ライフ、できないって思うことは、お前がまだやり方を知らないだけだ。この店が出来上がる頃にはお前にもできるってことが信じられるようになる。」
今なら人がやっていることで本気でやりたいと思えばできないことなんて何もないって思える。
「おつかれ!永住ライフ。店を閉めて飲みにいこうぜ。」
鍵を閉めて外にでると月がとても綺麗だった。
本当に最高の夜だった。
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アンドレアスは国に帰り、僕はマークとのサーフショップの仕事に没頭している。ふざけあってバカ騒ぎばかりしていた青年の時代が終わり、僕らは大人として次の段階を歩き初めている。人の人生に少年時代や青年時代、そして大人になっていく、それぞれの段階があるように僕らのオーストラリア生活の中にも、それぞれの進むべき道に向かって成長していく段階があるような気がする。
必要なときに必要な人と出会い、別れて、色々な経験をしていく、きっとそんなことを繰り返しながら、僕らは自分の進むべき道に向かって歩いていくんだ。全ての荷物を運び出して、空っぽになったメインビーチの部屋から出るときに、僕はそんなことを考えていた。
「今までありがとう。」
僕は最後の荷物を運び出しながら、楽しく暮らしたあの部屋に心の中でお礼を言った。
昨日から暮らし始めた、このシェブロンアイランドのアパートも快適だった。メインビーチのマンションは綺麗だけれどホテルの部屋のような冷たさがどこかにあった。でも、この新しいアパートは家の前には芝生があって裏にはバックヤードもある、決して綺麗ではないけれどちゃんと大地にくっついていて、しっかりとした生活があるような気分がした。
「おはよう、アッキィー。今日は何時頃にお店に遊びにくる?」
僕は自分の部屋を出て階段を下りて、リビングでテレビを見ながら牛乳を飲んでいるアッキィーに話かけた。アッキィーが見ているのはオーストラリアの朝の子供用の番組で、日本でいえばポンキッキのような番組だ。子供用の番組なので英語も分りやすく、絵や歌も多いので勉強になるらしく最近のアッキィーのお気にいりだ。
「今日は牧場の仕事が夕方まであるのでマークの店に行けるのは夜になると思いますよ。いよいよ今日からオープンですね、がんばってくださいね。」
「ありがとう、アッキィー。がんばるよ。」
僕は冷蔵庫から自分の牛乳を出してコップに注いで一気に飲み干した。自分の体の中に気合が入っていくのを感じた。急いでシャワーを浴びて、身支度をしてお店に向かった。
ネラング川の橋を渡りながら、川の水面を見ると太陽が反射してキラキラと金色に輝いていて、とても綺麗だ。きっと素晴らしい1日になるぞ、僕はそう思った。
お店に付くとマークが大きなダンボール箱をニコニコしながら開けていた。
「おはようマーク、いよいよオープンだね。昨日は嬉しくってなかなか眠れなかったよ。」
「おはよう永住ライフ、今日は学校を休んでくれてありがとうな。お前に見せたい物があるんだ、俺はこっちのダンボールを空けているから、そこに積んであるほうのダンボールを開けてくれないか。」
マークは手に持っていたカッターを僕に手渡した。僕は今日、荷物が届く予定なんかあったかなと考えながらお店の入り口の脇に詰まれたダンボール箱を開けることにした。お店に並べる予定の商品は一昨日までに全て届いて確認済だったからだ。
中の商品に傷をつけないようにテープの脇からカッターの刃を慎重に入れて、ダンボールを梱包してあるテープを綺麗に剥がした。ダンボールを開けてみると、そこにびっくりするような物が入っていた。
「わーすごいや!マーク、マーク、いつの間にこんな物を注文していたんだよ。全然知らなかったよ。」
ダンボールの中には色々な色のラッシュガードが入っていた。そしてそのラッシュガードの胸の部分には僕らのお店「シリンダーズ」のロゴマークが入っていた。
「かっこいいだろ永住ライフ。お前に内緒で知り合いの業者に頼んでおいたんだ、オープンに間にあわせたくてずいぶんと無理を言ったんだけれど、どちらも間にあわせることができたんだ。」
「すごい、かっこいいよ。内緒にしてるなんてずるいよマーク。えっ、でも、どちらもってどういうこと?」
「アハハ、いいから、いいから、じゃあそっちのダンボールも開けてみろよ。」
僕はもう片方のダンボールからはいったい何が出てくるんだろうと考えながら、一気にダンボールのテープを剥がした。
「わー、すごいよマーク。僕、感動だよ。」
もう一つのダンボール箱の中にはラッシュガードの胸の部分についているのと同じ、僕らの店「シリンダーズ」のロゴマークが入ったTシャツとステッカーが沢山入っていた。
「これに着替えようぜ、永住ライフ。今日は記念すべきオープンだからな、俺もお前もこのTシャツを着て営業しよう。そして、そっちのステッカーは今日お店に来てくれたお客さん全員にあげよう。」
「すごいやマーク。最高だね、でも来てくれたお客さん全員にあげちゃって大丈夫なの?」
「けちなこと言うなよ永住ライフ。今日はオープンだぜ、ステッカーをタダで配っても、つぶれるようなことはないから安心しろ。それにお客さんがサーフボードやボディーボード、車なんかに俺達の店のステッカーを貼ってくれればいい宣伝になるだろ。それにオープン記念でステッカーを配ってるて聞いたら、ステッカー欲しさにこの辺のガキどもが集まるかもしれないだろ。どちらにしてもいい宣伝になるぞ。」
「そうだね、さすがマークだね。だてにサーファーズで何年も商売してないね。」
マークは嬉しそうに笑いながら早くTシャツに着替えろと言った。僕が嬉しいのと同じように、いやきっと僕の何十倍もマークはこの日がやってきたことが嬉しいんだろう。僕がマークとお店を造り始めたのはここ数ヶ月のことだけれど、マークの頭の中にはずいぶんと前からあった夢だったはずだ。そしてビジネスや生活が忙しすぎてお酒に走ったりして、海の世界から離れてしまっていたマークが、大好きなサーフィンの世界にまた戻ってくることができたんだ。
「よーし永住ライフ。店を開けろ。シリンダーズ、オープンだ!」
その日は本当に忙しかった。サーファーズで初めてのボディボード専門店がオープンする噂はすでに街の人達にも流れていたらしく観光客のお客さんだけでなくローカルのオージーのキッズ達や、ワーキングホリデーの日本人サーファー達もたくさんやって来た。
水着を買いに来た女の子たちの中にもボディーボードに興味がある子が多く、僕らのお店の中には沢山の人達があふれた。用意していたステッカーもどんどん配ったので、マークが言っていたように近所のキッズ達が先にステッカーをもらった友達から話を聞いて、ステッカーをもらいにたくさん集まってきた。
僕らの店には1枚のサーフボードもないけれど壁一面には何十種類ものボディボードのフィンが、まるでオブジェのようにかけられているし、百枚以上のボディボードが店中にディスプレイされている。
本当に最高の気分だった。
僕が始めてマークの水着屋のショウウインドをのぞいていたのはたった数ヶ月前のことで、その時にはサーフショップも並べられた沢山の商品も、陳列のために作ったラックや棚も、まるっきり何も存在していなかったのに今はお店が出来上がり、今日もたくさんのお客さんが来てくれた。
数ヶ月前まではマークの頭の中にしか無かったサーフショップが今はこの街に現実に存在している。壁を壊し始めたときに諦めそうになった僕にマークが言った言葉を思い出した。
「永住ライフ、できないって思うことは、お前がまだやり方を知らないだけだ。この店が出来上がる頃にはお前にもできるってことが信じられるようになる。」
今なら人がやっていることで本気でやりたいと思えばできないことなんて何もないって思える。
「おつかれ!永住ライフ。店を閉めて飲みにいこうぜ。」
鍵を閉めて外にでると月がとても綺麗だった。
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