ジャックさんのピックアップトラックの荷台に座りながら、アッキィーと2枚のむき出しのサーフボードと一緒に知らない街を走っていた。自分たちがこれからどこに行くのかは分からないけれど、その分からないという感覚が体いっぱいで感じている風と合わさって不思議と気持ちが良かった。
「なぁアッキィー、僕たちこれからどこに行くんだろうなぁ。」
走る車のスピードに合わせて過ぎ去っていく町並みと、ビュービューと体を撫ぜる海風が僕の言葉をはるか遠くに置き去りにしてきたかのようにアッキィーの耳には届かなかった。
「えっ、なんですかぁー?よく聞こえないんですけれど。」
「だからぁ、今からどこにいくんだろうねー。」
「分かりませんよ。とりあえずワンコロみたいに荷台に積まれて運ばれてんですから、おとなしく運んでもらいましょうよ。」
僕もあれこれと考えるのは止めて目を静かに閉じた。トラックの振動と照りつける太陽の光が強く感じられて気持ちが良かった。
「おっとぁ。」
トラックが急に停まった振動で、前につんのめって舌を噛みそうになった。顔を出して外を覗いてみると1軒のTABの前に車は停まっていた。TABは僕らの住んでいるサーファーズパラダイスやクーランガッタにもあるバーとレストランとカフェが一緒になったようなギャンブルをするためのお店だ。
初めてクーランガッタのTABに仲良くなったローカルサーファー達に連れていってもらった時は、なんで昼間からこんな酒場みたいな店に行くのだろうと不思議に思ったけれどTABは地元民のギャンブル兼憩い兼の場兼、社交の場という感じになっていてランチやフードも割安で食べることができた。きっとこのTABもアレキサンドラヘッドの街の人々が集まる場所なんだろう。
ちょっと薄暗い店の入り口から中に入ると右側にバーカウンターがあり、その上には競馬を映しているテレビモニターが2台ほど設置してあった。奥にはスロットマシーンが何台か並んでいていかにもTABという雰囲気をかもしだしていた。ジャックさんはすれちがう何人かの人たちに挨拶をされながら店のさらに奥にある中庭のような場所に入っていった。
そこは中央に植えられた背の高い木を取り囲むようにテーブルが並べられていて明るいオープンテラスレストランのようになっていた。正面のテーブルにはいかにも海から上がってきたばかりのサーファーたちが7、8人座って食事をしていた。ジャックさんは彼らに声をかけ、今日の波のコンディションやサイズについてひとしきり話した後で僕らのことを紹介してくれた。
「このジャパニーズサーファー達はサーファーズパラダイスから人探しでやってきているんだ。だれかクレアというカナディアンの女の子のうわさを聞いたことあるか?」
「おい、ジャック。そのクレアって女の子はどんな女の子なんだ。名前を聞いただけじゃあ、いまいちピンとこないぜ。そのクレアって娘はいったい何をやらかしたんだ?」
「いや、別に何かをやらかしてゴールドコーストくんだりからわざわざ追いかけてきたわけじゃあないんだ。クレアはこの永住ライフの大切な人なんだ。だが今はオーストラリアにどこにいるのかは分からないんだそうだ。そのどこにいるのか分からない女の子を1週間で捜しだすって言うからこれは協力をしてやらなきゃいかんと思ってな。」
その場にいたサーファー達はみんな一同に笑った。でも僕の目が真剣なことに気がつくと、それ以上は誰も僕をばかにするようなことは言わなかった。僕は彼らにクレアのことを説明した。顔のわりに高くない背丈や、赤いアーモンドのみたいなねこっ毛の長い髪、くるくるとよく動く大きな瞳、明るくて自由で子供みたいな性格、僕が思いつく限りのクレアの特徴を伝えた。
「そうかぁ永住ライフ。そんなホットな娘がこのアレックスにいれば、すぐに俺たちがみつけるはずだからな。少なくともそのクレアという娘はアレックスには来ていないよ。」
彼らの中でも年かさでリーダー格に見える金髪の坊主頭のサーファーがそう言うと、
その場にいた全員が大きくうなずいた。
「あんたたちまた女の話をしてるの。毎日、毎日よく飽きないわね。」
TABのウェイトレスがやってきて誰かが注文をした山盛りのフィッシュアンドチップスをテーブルの上に投げるようにして置いていった。ショートヘアーで黒髪のいかにも気の強そうな男の子みたいな女の子だった。さっきジャックさんについて店に入ってきたときに彼女がジャックさんに声をかけていた。そのすぐ後に彼女と目が合ったので軽く挨拶をしたけれどすぐに目をそらして何の返事もなかった。それでもジャックさんやこの店に集まっているサーファー達に接している態度を見ると彼女とジャックさん達は親しい中であることは感じられた。
「手がかり無しか。ついでに飯でも食っていくか。」
ジャックさんが大きな声でウェイトレスを呼んでモーニングスペシャルを注文したので、とりあえず僕もアッキィーも同じものを頼んだ。しばらくするとトーストとビーンズと目玉焼きにベーコンがたっぷり乗ったプレートディッシュをさっきのウェイトレスがやっぱり投げるようにテーブルの上に置いていった。
ビーンズの味は塩辛くて美味くなかったけれど、海あがりのサーファー達にはこのくらいでちょうどいいのかと納得した。
ジャックさんの店に戻りお礼を言って店を出ようとすると、せっかくだから夕方にビーチに行って一緒にサーフィンをしながら、もう一度サーファー達にクレアのことを聞いてみないかと誘ってくれた。僕らはこの後、どこの街に行けばいいのかも決まっていなかったのでジャックさんと夕方にビーチで会う約束をした。
その日の夕方、アッキィーとアレキサンドラヘッドランドのビーチへ行くとジャックさんと他に5人のローカルサーファー達が僕らを出迎えてくれた。内心、朝にもめたホワイトクリームのような色をした長髪のサーファー達がいたら気まずいと考えていたけれど、ビーチにも海の中のラインナップの中にもそれらしき人影は見当たらなかった。
ジャックさんの仲間は全員、この街で生まれこの街で育ったローカルサーファー達でジャックさんが紹介をしてくれたこともあってフレンドリーでとても気さくだった。全員と握手をして一緒に海に入ると今朝よりも大分サイズがあがっていた。セットで頭半くらいある大きな波をさすがこの海を知り尽くしたローカルサーファーと賞賛の声を贈りたくなるくらいスムーズに力の抜けた感じで全員が軽々とテイクオフをして乗っていった。
最初は僕もアッキィーも今朝のこともあり遠慮をしていたが、ジャックさんもその仲間達も大きめのセットが入ってくるたびにゴーゴーと言ってよい波に乗せてくれようとするので、ついには我慢しきれなくなり奥の方から入ってきたその日一番の大きなうねりに僕とアッキィーは同時にテイクオフをした。
朝とは反対のポジションで、僕がアッキィーに前乗りすることになる場所からのテイクオフだった。今回の追いかけっこは僕がアッキィーにつかまらないように全力で逃げ、アッキィーが僕を追いかける立場になった。
僕らが乗った波はかなり大きくジャックさんやこの街のローカル達もゲストである僕らのライディングを見ているはずなのでただ一直線にアッキィーから逃げるだけではなく僕らも波に乗ることができるんだということを見せたいという思いが自然にわいてきた。テイクオフからボトムにすべり降りながら一瞬アッキィーの顔を見て合図をしたのでアッキィーも分かっていてくれたはずだった。
僕はギリギリまで加速を溜め込んで深いターンをして波のトップまでかけあがった。そして2回ほどターンを繰り返し自分でも驚く位にスピードが乗ってきたのでアッキィーとの距離を気にしながらも思い切りボードをリップに当て込んだ。その瞬間、海水が大きな弧を描いてズバッと飛んで行ったのを背中で感じた。体を大きく反転させた瞬間、僕の板が押し返されて降りる位置にその女の子は突然に現れた。
間に合わない!
サーフボードがそして僕の体が何か硬いものに当たるのを感じた。大きな洗濯機の中に放り込まれたように僕の体は海の底に引き込まれていった。海に落ちる前の最後の瞬間に見えたあの女の子は無事だろうか・・・
★★★お知らせ★★★
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「えっ、なんですかぁー?よく聞こえないんですけれど。」
「だからぁ、今からどこにいくんだろうねー。」
「分かりませんよ。とりあえずワンコロみたいに荷台に積まれて運ばれてんですから、おとなしく運んでもらいましょうよ。」
僕もあれこれと考えるのは止めて目を静かに閉じた。トラックの振動と照りつける太陽の光が強く感じられて気持ちが良かった。
「おっとぁ。」
トラックが急に停まった振動で、前につんのめって舌を噛みそうになった。顔を出して外を覗いてみると1軒のTABの前に車は停まっていた。TABは僕らの住んでいるサーファーズパラダイスやクーランガッタにもあるバーとレストランとカフェが一緒になったようなギャンブルをするためのお店だ。
初めてクーランガッタのTABに仲良くなったローカルサーファー達に連れていってもらった時は、なんで昼間からこんな酒場みたいな店に行くのだろうと不思議に思ったけれどTABは地元民のギャンブル兼憩い兼の場兼、社交の場という感じになっていてランチやフードも割安で食べることができた。きっとこのTABもアレキサンドラヘッドの街の人々が集まる場所なんだろう。
ちょっと薄暗い店の入り口から中に入ると右側にバーカウンターがあり、その上には競馬を映しているテレビモニターが2台ほど設置してあった。奥にはスロットマシーンが何台か並んでいていかにもTABという雰囲気をかもしだしていた。ジャックさんはすれちがう何人かの人たちに挨拶をされながら店のさらに奥にある中庭のような場所に入っていった。
そこは中央に植えられた背の高い木を取り囲むようにテーブルが並べられていて明るいオープンテラスレストランのようになっていた。正面のテーブルにはいかにも海から上がってきたばかりのサーファーたちが7、8人座って食事をしていた。ジャックさんは彼らに声をかけ、今日の波のコンディションやサイズについてひとしきり話した後で僕らのことを紹介してくれた。
「このジャパニーズサーファー達はサーファーズパラダイスから人探しでやってきているんだ。だれかクレアというカナディアンの女の子のうわさを聞いたことあるか?」
「おい、ジャック。そのクレアって女の子はどんな女の子なんだ。名前を聞いただけじゃあ、いまいちピンとこないぜ。そのクレアって娘はいったい何をやらかしたんだ?」
「いや、別に何かをやらかしてゴールドコーストくんだりからわざわざ追いかけてきたわけじゃあないんだ。クレアはこの永住ライフの大切な人なんだ。だが今はオーストラリアにどこにいるのかは分からないんだそうだ。そのどこにいるのか分からない女の子を1週間で捜しだすって言うからこれは協力をしてやらなきゃいかんと思ってな。」
その場にいたサーファー達はみんな一同に笑った。でも僕の目が真剣なことに気がつくと、それ以上は誰も僕をばかにするようなことは言わなかった。僕は彼らにクレアのことを説明した。顔のわりに高くない背丈や、赤いアーモンドのみたいなねこっ毛の長い髪、くるくるとよく動く大きな瞳、明るくて自由で子供みたいな性格、僕が思いつく限りのクレアの特徴を伝えた。
「そうかぁ永住ライフ。そんなホットな娘がこのアレックスにいれば、すぐに俺たちがみつけるはずだからな。少なくともそのクレアという娘はアレックスには来ていないよ。」
彼らの中でも年かさでリーダー格に見える金髪の坊主頭のサーファーがそう言うと、
その場にいた全員が大きくうなずいた。
「あんたたちまた女の話をしてるの。毎日、毎日よく飽きないわね。」
TABのウェイトレスがやってきて誰かが注文をした山盛りのフィッシュアンドチップスをテーブルの上に投げるようにして置いていった。ショートヘアーで黒髪のいかにも気の強そうな男の子みたいな女の子だった。さっきジャックさんについて店に入ってきたときに彼女がジャックさんに声をかけていた。そのすぐ後に彼女と目が合ったので軽く挨拶をしたけれどすぐに目をそらして何の返事もなかった。それでもジャックさんやこの店に集まっているサーファー達に接している態度を見ると彼女とジャックさん達は親しい中であることは感じられた。
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ジャックさんが大きな声でウェイトレスを呼んでモーニングスペシャルを注文したので、とりあえず僕もアッキィーも同じものを頼んだ。しばらくするとトーストとビーンズと目玉焼きにベーコンがたっぷり乗ったプレートディッシュをさっきのウェイトレスがやっぱり投げるようにテーブルの上に置いていった。
ビーンズの味は塩辛くて美味くなかったけれど、海あがりのサーファー達にはこのくらいでちょうどいいのかと納得した。
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その日の夕方、アッキィーとアレキサンドラヘッドランドのビーチへ行くとジャックさんと他に5人のローカルサーファー達が僕らを出迎えてくれた。内心、朝にもめたホワイトクリームのような色をした長髪のサーファー達がいたら気まずいと考えていたけれど、ビーチにも海の中のラインナップの中にもそれらしき人影は見当たらなかった。
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朝とは反対のポジションで、僕がアッキィーに前乗りすることになる場所からのテイクオフだった。今回の追いかけっこは僕がアッキィーにつかまらないように全力で逃げ、アッキィーが僕を追いかける立場になった。
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僕はギリギリまで加速を溜め込んで深いターンをして波のトップまでかけあがった。そして2回ほどターンを繰り返し自分でも驚く位にスピードが乗ってきたのでアッキィーとの距離を気にしながらも思い切りボードをリップに当て込んだ。その瞬間、海水が大きな弧を描いてズバッと飛んで行ったのを背中で感じた。体を大きく反転させた瞬間、僕の板が押し返されて降りる位置にその女の子は突然に現れた。
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