何より思うのは、人生の黄昏時にいる男の、底知れぬ深い悲哀。
そのことをベースに作りあげられている点に、全編を通じての切なさ、物悲しさを感じて止まない。
優しいタッチで丁寧に描いているが、実のところ、残酷なテーマを扱っている。
そしてラストに、一筋の光明を残しているあたり、優しさに溢れている
監督の手腕は、お見事に尽きる。
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インドの大都会ムンバイでは、家庭でつくった“できたて”のお弁当をオフィスに届ける配達サービスが充実していて、1日20万個のお弁当箱がダッバーワーラーと呼ばれる配達人5千人によって家庭とオフィスを正確に往き来しているという。本作はそんなムンバイのお弁当事情を背景に、めったに起きない誤配が縁で繋がった一組の男女が、そのお弁当を介して互いの心の隙間を埋めていく姿を心温まるタッチで描いたハートフル・ドラマ。出演は「ライフ・オブ・パイ/トラと漂流した227日」のイルファン・カーンとニムラト・カウル。監督は、これが長編デビューのリテーシュ・バトラ。
ムンバイに暮らす主婦のイラ。すっかり冷めてしまった夫の愛情を取り戻そうと、お弁当作りに精を出す。ところが、その丹精を込めた4段重ねのお弁当が、なぜか早期退職を控えた男やもめ、サージャンのもとに届いてしまう。その日、お弁当箱は、きれいに空っぽになって帰ってきた。それを見て喜ぶイラだったが、ほどなく夫が食べたのではないと気づく。そこで次のお弁当には、きれいに食べてくれた見知らぬ誰かへのお礼の手紙を忍ばせるイラだったが…。