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ECOさんが帰る場所

(有)ビオプラス西條デザインのエコハウス♪
住宅誌『住まいネット北海道』内の連載のつづきです。

WEBでもECOさん!⑦ 名田さん・山荘『春の樹』

2011-12-26 | 日記
●WEB版 ECOさんが帰る場所⑦ 
◆みんなが集える、オアシスハウス。

*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*

●大人気ドラマ 『北の国から』 を通じ
全国に名を知られた美しい田舎町、富良野。

第7回目の “ecoさん” の舞台は、
その高台に建つ 山荘 『春の樹』 。
知る人ぞ知るお宿 兼 ご自宅です。



●おぉ!
さすが普通の個人宅とはチョット一線を隔す風格の、
大きなおうち!

「おじゃましま~す♪」 と扉を開けると…

うわ~ひろ~~~い!!!
天井もたか~~~い!!!

家主の名田道子さんと
元気な植物たちのウエルカムスマイルに導かれ、
“春の樹” の内側に上陸です。

●道子さんに 
“さりげなくくつろいでいるポーズ” を取っていただいて (笑)、
まずは1Fのリビング全体を撮影。

どうです? この開放的な間取り!
やっぱり “山荘” だけあって、
一般家庭とは違うダイナミックデザインですね~

化学物質が染み込んでいない道産無垢材が
ふんだんに使われた空間だから、
本当に “樹の内側” に入り込んだような安心感です。

●暖炉風スペースの中にあるのは、
薪ストーブより簡単に火がつけられて、
薪ストーブ級に強力な暖が取れる 「ペレットストーブ」

接着剤などは一切使用せず、木屑を圧縮して作った
“木質ペレット” が燃料だから、焚けば焚き火のい~い香り。

暖炉のような炎と温もりを楽しめるから、
冬にこの宿を訪れる人々も、きっと大喜びですね。


●一般家庭はもちろんのこと、自然素材のお宿やお店は、
それだけで癒しへの配慮がある、ということ。

居るだけで五感が自ずとリラックスしてきて、
呼吸が深~くなる気がします。

●壁も、自然素材の “珪藻土”

植物の繊維を土に混ぜた “呼吸する壁” だから、
湿気や匂いを室内に溜め込むことなく、
室内環境をちょうどいい状態に調湿・調整してくれちゃうのです。


●こちらは、2Fの吹き抜けスペース。
大きな窓の向こうには、富良野を囲む山々の眺望が。

●廊下の先、はしごの向こうに並ぶ
お客様用の個室の扉を開けると……

自然素材の壁と無垢材の温もりに満ちた、
ゆったり静かなプライベート空間が。


扉の外のダイナミックな間取りとは一味違った、
ちょっとロマンティックな、落ち着いた雰囲気の空間ですね。

優しい光に包まれて、あ~気持ち良さそう!

こんなお部屋で眠ったら、
いつまでも寝坊してしまいそうです(笑)


この規模の山荘やペンションには珍しく、
なんと個室内に洗面とトイレも完備
小さなお子さん連れや、お年寄りでも安心ですね。

ヤヤッ?! はしごの先にも扉を発見!

この扉の奥には、
天井は低いものの広々とした屋根裏スペースが広がり、
お客さんが多いときは、ここも
“ひときわ落ち着く個室” になるとか(笑)。

子ども達や冒険気分を味わいたい方には、
うってつけのプライベートルームですね。

●そして…… ジャジャーン!

こちらが、「春の樹」 いちばんの贅沢空間 “VIPバスルーム”

山々を見渡す贅沢な眺望を楽しみながら、
誰にもジャマされることなく
くつろぎのバスタイムを堪能できるデザイン。

家族やお友達とワイワイ入るお風呂もいいけれど、
自然の風景と2人っきりで過ごすバスタイムも、
ちょっとした非日常ならではの
至福のヒーリングになることでしょう。

●そして、こちらが、“みんなのキッチン”

“春の樹” はB&B(ベッド&ブレックファースト)形式の山荘で
朝食は付いているのですが、昼食と夕食は自炊式。

いろんな食器や調理道具を自由に使えるので、
近所のスーパーや農協で地元の新鮮食材を調達すれば、
クッキングも存分に楽しめます。

●コーヒーメイカーも常備してあり、
コーヒー・紅茶は、いつでもフリー。

『春の樹』 いちばんの絶景が楽しめるこのパノラマリビングで、
コーヒーを飲みながら読書したり、
お酒を飲みながら語り合ったり、

訪れるお客さんたちは思い思いの出逢いに満ちた
“富良野タイム” を楽しんでいるとのこと。

「私もね、この部屋のこの位置で椅子に腰掛けて
 山々を眺めるのが、いちばん好きなんです。

 季節ごとに風景の変化が楽しめて、
 ちっとも飽きないの。


 読書も好きだから、ここでコーヒー飲みながら本を読んで、
 いつのまにかウトウト寝ちゃったりね(笑)」 と道子さん。

●ずっと愛媛で暮してきた道子さんが
この家に暮すようになって、来年で10年

何でまた、この北の大地で
山荘を営むことになったんですか?


 「ミイラ取りがミイラになっちゃったの。

  一番下の子どもが、 『ちょっと行ってくる』 と言って
  富良野に行ったきり帰ってこないので様子を見に来たら、
  すごくいい所でいっぺんで好きになっちゃってね(笑)。

  遊びに来た親戚たちも気に入って、
  『みんなの別荘を作ろう』 ってことになったんです」



●道子さんが住み込み管理役を担うその別荘は、
自然と友人知人の宿泊も受け容れる紹介制のB&Bに発展。

 ・心身ともにくつろげる自然素材の空間
 ・落ち着きと開放感に満ちた設計デザイン
 ・充実した快適な設備
 ・アットホームな雰囲気


……と4拍子揃ったエコホテル級のこの山荘の噂は
一度泊まった人々を通じてクチコミで広がり、

不景気の今も、冬はことさらウインタースポーツを
楽しみに来るお客さんで賑わうとのこと。

10人以上の宿泊も可能で、この9年間の間には、
さまざまな出会いも生まれているそうです。


●お話を伺いながら、
こんな贅沢空間がご自宅とはうらやましい!
と思うと同時に、

コミュニティの大切さが叫ばれる今、
道子さんのライフスタイルに、
新しい生き方・住まい方の可能性 を感じ、
ハッとさせられました。



「西條さんの会社は、
 富良野でステキな喫茶店をやっていた方に教わったの。

 監理設計士の山田さんとは、

 『私がもっと若い娘だったらよかったね』

 と笑うくらい、密に打ち合わせを重ねました(笑)。


 来年で建てて10年になるけれど、
 山田さんはこの家を
 自分の子どものように思ってくださってるんだろうな、
 と私は感じてます。

 今も何かと気にしてくださって、
 雪の降る前と降ったあとには必ず連絡をくださるし、
 
 私も頼りにしすぎるくらい頼りにしちゃっていてね、
 何かあるとすぐ電話しちゃうの(笑)。

 ほんと、お世話になってます。


 西條さんと山田さんは、違う面を持つ名コンビ。
 ふたりとも、それぞれに頼もしいですよ。

 私が言うのもナンだけど、
 お互いいいパートナーを見つけたなぁと思うわ(笑)」



……と、まるで
愛しい甥っ子たちのことを語るような様子の道子さん。

施工業者と施主、という関係を遥かに超えた絆が、
家を建てた後もずっと、
築かれ続けているように感じました。


家を建てる、ということは、
『住まい』 という題材を通して、
 自然環境や人間関係を、
 そして “生き方そのもの” を
“建築” すること
 なのかもしれないな……



今回の取材をはじめ、これまでの各取材を振り返り、
あらためてそう感じる、2011年の年末です。


●今年は3月11日の東北大震災や原発事故をはじめ、
様々な災害で “住まい” を失った方々が
たくさんいらっしゃいました。

心からお見舞いを申し上げるとともに、
復興に向けてできることの一つとして、

あらゆる暮らしの土台である 
「地球」 という住まいそのものを壊さない営み が欠かせない
とあらためて気づき、自分と世の中を見つめ直しています。


●1955年(昭和30年)頃から、
それまで一般家庭燃料の中心であった木炭や薪などが
石油系燃料に急速に置き換わっていき、

さらに、1964年(昭和39年)に
木材の輸入が全面的に自由化され、
輸入木材への関税がなくなったことがきっかけで、

1955年(昭和30年)には
94.5%だった日本の木材自給率が、
1965年(昭和45年)には45%に激減。
今では約20%にまで減ってしまいました。

国内の林業が廃れてしまったことで、
手入れされなくなった日本中の植林が荒廃し、
雪崩や地すべりなどの災害や生態系破壊など、
今、深刻な災害や環境問題が多発しています。

国産の無垢材を建材に利用することは、
その建物の中で過ごす人々の心身に心地良いだけでなく、
地球環境の改善にもつながってゆく大切な一歩。


自然界と人間の営みのつながりを知り、
広い視野でモノづくりやモノ選びをしていくことが、
真の意味での “防災” につながっていく。

そんな気づきを胸に、 
“自然や人々との絆を大切に築く建築” の実例を、
来年も楽しくお伝えしてゆきたいと思います。


●今年も1年、お世話になりました。

苦かったことも、辛かったことも、余すことなく養分にして、
2012年も、たくましく楽しんでまいりましょう!

来年3月、またここでお目にかかれるのを
楽しみにしています♪

各地で、それぞれに、よいお年を……!


◆取材:2011年10月 
◆photographer:蘒野孝行(GINO PHOTO WORKS)
◆designer:森川瞬(寺島デザイン制作室
◆writer:はらみづほ(旅するはらっぱ



WEBでもECOさん!⑥ 五十嵐さんファミリー

2011-09-24 | 日記
●WEB版 ECOさんが帰る場所⑥ 
◆我が家は、やすらぎ遊園地。

*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*~*

「今度取材させていただくのは、屋内遊園地みたいなお宅」
と西條さんから聞いてワクワク。

お、あったあった、アレだ~!

おっ、バギーバイク……?!
ヤヤッ?! 鉄棒やブランコもあるぞ~!


こんにちは~♪

うわ~ 木のい~い香り! 明るいですね~!

おっ、この右横の棚が、
ご主人のリクエストで作ったという、
“玄関横の郵便受けの新聞を裸足で取りに行ける、通路兼靴入れ”
ですね~

確かにいちいち靴を履いて郵便物を取りに行くのってめんどくさいし、
無垢の木棚の上を歩いて行けるなんて気持ち良くて楽しそう♪
ナイスアイデアですね~!

ではでは早速、おうちの中におじゃましま~す!

Oh! リビングに いきなりグランドピアノ!

こりゃまた、ダイナミックなレイアウトですね~!


まぁ……!ピアニストは息子さん?!
こんな大きなピアノを、こんな小さな男の子が……?!

え?! 全国大会で優秀賞?!
ひゃ~恐れ入りました~(汗)

うわ! 今度はハンモック

こりゃ西條さんの言うとおり、
ほんとに屋内遊園地ですね~!

それにしても、みなさん、い~お顔!

お父さんも、お母さんも、お若いですね~
この若さでマイホームとは、スゴイなぁ……!

●奈央さん:
「私が化学物質過敏症で以前住んでいた社宅が辛かったので、
 自分たちで建てた方が安心だな、と思って」


●悟さん:
「家の資金を補助してくれる制度が会社にあったので、
 思い切って建てることにしたんです」

「でも経費削減のために、西條デザインの皆さんに教わりながら、
 壁の珪藻土も、柱磨きも、キッチンのレンガ貼りも、
 仕事の合間に通い詰めて自分でやったんですよ~

 大工さんのペースに遅れないように仕上げないとならないし、
 そりゃも~大変でした。
 みなさん嫌な顔一つせず親切に教えてくださいましたが、
 プロの足手まといにならないようにと必死でやりましたよ(笑)。

 けど、建材も壁材も自然物なのでイヤな匂いなどもなく、
 作業していても気持ち良かったし、
 自分で手をかけたぶん、やっぱり愛着はひとしおですね~。

 今でも外から家に帰ってくるとホッとします。
 なんだか空気が違う気がする。

 外がジメジメしているときも、
 家の中はジメジメがなく気持ちいいですしね。

 それも珪藻土無垢材のおかげかな。
 化学物質に毒されていないし、
 素材が呼吸してるからなのかもしれませんね。

 この家の気に入ってるところ?
 そりゃ全部ですよ~!!!」



「ビオプラス西條デザインさんは、
 最初は雑誌(『住まいnet北海道』)で知ったんです。
 次に伏古のモデルハウスに行って、
 『ここにお願いしよう!』とすぐ決めました。

 他のハウスメーカーもいろいろ見ましたが、
 家の材料などについて尋ねても、
 ちっともちゃんと答えてくれないんです。


 自分たちが売っているものなのに、
 どこのどんなものなのか説明できないんですね。

 けれど、西條さんのところは、
 どんなことを聞いても、すぐ答えてくださるんです。


 自分たちの扱っているものへの理解が深く、
 ちゃんと説明してくださるんですね。

 信頼できるな~!と実感しました。

 建て終えた今も、お願いして本当によかったと
 つくづく思っています」



お、こちらはサンルーム兼タタキ、という感じですね?
ここからお庭に出れちゃうんだ~便利だなぁ!

●奈央さん:
「子ども達が外と行き来しやすいようにしました。
 泥んこでもここで洗えるし、雨の日も遊べるスペース。
 3人とも気に入ってるみたいです。

 釣具店で買ってきた色とりどりの小石を、
 タイルの床にバーッと広げて遊んだりね(笑)」



こちらは、グランドピアノのリビンク裏に当たるキッチン。

ここを通って玄関に抜けられるようになっていて、
動き盛りのお子さんたちが自由に“回遊”できる設計です。

男の子3人ですもの、おうちの中でも
さぞかし動き回るんでしょうね~(笑)

「いつもここをグルグル走り回っています(笑)。
 お友達もうちに来ると大喜び。
 みんなでグルグル回遊してますよ(笑)」



うわ~このお風呂は、ヒノキの香りがいっぱい!
大人にも子どもにも嬉しい、ヒーリングルームですね~


で、1Fから延びる階段を上っていくと……


おぉ! これが噂の上り棒ですか~!
なんと、鉄じゃなく細い丸太なんですね~!
陸くんの足使いと来たら、まるで木登り上手の先住民みたい!

「上り棒を付けたいとリクエストしたら、
 建築士の山田さんが 『どうせなら木製にしましょう』
 と、国産の無垢材を持ってきてくださったんです。

 最初はみんなビックリしましたが、子ども達は大喜び。
 長男の陸は、間もなく上まで登れるようになったし、
 次男の青哉も最近天井タッチができるようになったので、
 3人が自由に上り下りするようになるのも
 時間の問題だと思います(笑)」


 と、奈央さん。

 これは、遊具と、はしごと、健康器具の
 3機能
を兼ね備えた、斬新インテリア
 今後流行るかもしれませんぞ~(笑)

 ……な~んてコーフンしている間に、
 陸くんはスルスルとロフトに雲隠れ。

 奥のはしご階段を登ってのぞきに行ってみると……

うわ~!ここはまたまた、キッズパラダイス!
五十嵐邸はトコトンお子さんたちに寄り添った設計なんですね~
ここの王子たちは、ほんとに幸せものだなぁ~ 

動き盛り、遊び盛りの子ども達がこんなにも自由に、
そしてこんなにもクリエイティヴに
自宅空間を楽しめるなんて……!

こんな家で育ったら、体力も創造力も、
毎日の暮らしの中で自然と育まれる
ことでしょう。

そうか、“自宅の空間設計”は、
“人格設計”にも直結する
重要なものなんですね~!

◆土と植物繊維の呼吸機能で、湿気や化学物質を溜め込むことなく
 屋外へ換気してくれる、珪藻土の壁

◆接着剤や防腐剤などの化学物質に侵されていない、
 その土地の暮らしに最も適した、国産・地産の無垢木材

◆使用済みの新聞紙などでつくる、
 植物力を活かした断熱材……

呼吸する自然素材と、心と体が喜ぶ設計が、
子どもをのびのび育むことを基準に一体化
した五十嵐さんのお宅は、
親子みんなが心地よく地球の子どもに戻れる、
愛とアイデアがいっぱいの“やすらぎ遊園地”でした。

10年後、20年後、お子さんたちと一緒に歳を重ねた
このおうちと五十嵐家のみなさんに、
再会できるたら嬉しいな、と思っています♪


◆取材:2011年8月 
◆photographer:蘒野孝行(GINO PHOTO WORKS)
◆designer:森川瞬(寺島デザイン制作室
◆writer:はらみづほ(旅するはらっぱ


WEBでもECOさん!⑤ 大谷さんファミリー

2011-06-24 | 日記
●WEB版 ECOさんが帰る場所⑤ 
◆家の中まで、森の中。

今回のECOさん宅は、札幌市内を見下ろす、とっても急な坂の上。

後ろは、なんと原生林の一角。
うっそうとした山の香りがムンムンで、下界とは空気が違います。
おうちの中はどんなデザインなのかしらん…?
扉を開けて、さっそくおじゃましてみましょう♪


WOW!なんと、玄関先に薪ストーブ?!
これはビックリ。でも、冬はあったかそうですね~

「このストーブは主人の趣味なんです。
 薪ストーブは手入れがちょっと大変だけれど、
 冬は外から帰ってきてドアを開けると
 あったかくて、ホッとしますね。
 
 高台にある北海道の家は外階段が多いけれど、
 ここまで上がってきてやっと家に着いたのに
 また寒い中階段を上がるのはイヤだな、と思って、
 外階段の代わりに、家の内側に階段を付けてもらったんです」


と、奥様の智子さん。

なるほど、玄関を入るとスグ階段が。


無垢材のフローリングが目にも足の裏にも暖かく、
木の香りもして、気持ちいいですね~!


「建てて7年なのに、まだ木の香りがしますよね。

 毎日暮らしているとあまり気づかないけれど、
 道外の大学に行っている息子も、
 帰省すると 『まだ木の香りがするね』 って。

 やっぱり木は安らぎますね。
 このフローリングは道産材なんですよ」


細かな格子戸の和室を過ぎ、さらに階段をのぼっていくと……

おぉ!裏の原生林を見渡す、額縁のような大窓が。

「ここからは、季節ごとにいろんな景色が楽しめるんですよ。
 いろんな種類の鳥や、リスや、キツネも来ます。

 もう少しするとあの蔓草には紫の花が咲いて、
 一面紫色になるんですよ」

階段の途中に
森を眺めるための窓がしつらえてあるなんて、
なんて贅沢なんでしょう!

無垢材と珪藻土に包まれた家の中から眺める、原生林の風景。
こんなに心地いいのは、家の中にも、
自然素材の森のいのちがあふれているからですね。

階段に腰かけてボーッと景色を眺めながら、
ウトウトしたり、お茶したり、読書したり……
1日中でも過ごせてしまいそう(笑)

…と、しばし見とれてしまいましたが、
ここはまだ階段の途中。

先へ進むと…いよいよお宅のメインルームに到着です。


大きな窓と、ふんだんに使われた木材。
広々していて、明るくて、天井が高い!

モノも少なく、
何だか海外のお宅みたいに垢抜けた雰囲気です。

「建てて7年ですが、この家の全部が大好き!
 床は道南のブナ材で、国産無垢材をふんだんに使ってもらいました。

 深い色にしたくて塗ってもらったのも自然塗料だし、
 壁は家族で塗った珪藻土。

 家自体が呼吸してるから、
 『家も生きてるんだな、私たちと一緒に呼吸してるんだな』
 って感じますね」


と、智子さん。

窓は特に、いちばんのお気に入りとのこと。
高性能の二重ガラスで、冬も結露ゼロのスグレモノ。
回転式だから、お掃除もラクラクだそうです。

「今後予期せぬことが起きて
 万が一引っ越すことになったとしても、

 この窓だけは取り外して持って行こうと思っているくらい、
 最高に気に入ってる、大大大好きな窓です!(笑)」


う~ん、こんなに愛されて可愛がられていたら、
窓もきっと、本望でしょうね~(笑)
 


「主人の転勤で関西から札幌に来て
 最初は2~3年で戻るつもりが、
 北海道がすっかり気に入ってしまってね、
 結局、家まで建てちゃったんです(笑)。

 でも最初は、
 どのハウスメーカーのモデルハウスを見てもピンと来なくて、
 計画も進まず迷っていました。

 そんなとき主人がたまたまインターネットで
 西條さんのHPを見つけて、見たらビビッと来ちゃってね、
 私も主人も、ここで建てよう!って即決したんです。

 会いに行く前からここだ!と思っていたけれど、
 百合が原のオフィスに伺ってお話を聴いたら、
 ますます惚れ込んじゃった(笑)。

 だって、自然素材へのこだわりがホンモノでしょ。
 ここなら任せて間違いない!って直感したんです」


こんなに惚れ込んでもらったら、
窓同様、西條さんも社長冥利に尽きますね~(笑)

「大谷さん宅の断熱材は、古新聞のリサイクル材。

 新聞紙の原料はパルプ、つまり木材で、
 読み終えた新聞紙を江別の工場で加工するこの断熱材は、
 森の恵みを捨てることなく
 最後まで活かし切る有効手段なんです。

 このお宅は、内装だけでなく、
 見えない断熱材まで “森素材” なんですよ」


と西條さん。

ナルホド、確かに、
自然素材へのこだわりが伝わってきますね。


さて、こちらはキッチン。

シンプル&シックな智子さんの趣向が伝わってくる、
アイランド型の すっきりしたデザインです。


バスルームにも無垢材がふんだんに使われていて、
なんて気持ち良さそうなんでしょう!

木の香りが立ち込めていて、天然のアロマ効果もありそう。
築7年とは思えないほどキレイで、清潔感いっぱいですね。


洗面所も、何だかヨーロッパの別荘みたい。
スッキリ、垢抜けた雰囲気です。


トイレ周りも、さりげなくオシャレ。
以前訪れた南仏やギリシャのこぎれいなペンションも、
こんな感じだったな~。


でも、大谷さん宅の一番の“ステキポイント”は、
何と言っても窓からの眺望!

階段途中の大窓からの原生林風景に始まって、
リビングダイニングの2方向の大窓の一方からは、
お隣の見事な桜の借景が眺められ、
プライベートなお花見スポット状態。

他方の大窓からは、
なんと、遥か札幌ドームまで札幌の街全体の、
日の出から日の入りまでを見晴らすことができちゃうのです。


こんなふうに絶景を眺めつつ家族団らんできるとは、
なんともうらやましい限り。

近所の高校に自転車通学しているという娘さんの怜奈ちゃんも、

「坂道の行き来は大変だけど、この家はとっても気に入ってます」

とのこと。

日々の生活習慣が人をつくるから、
日常的な“無意識フィットネス”で基礎体力が培われ、
3つの窓からの多様な絶景に情緒を育まれている彼女はきっと、
心身ともに豊かなパワーを持つレディに成長することでしょう。

そうそう、7年前、まだ小学3年生だった彼女は、
なんと自室の壁の珪藻土を自力で塗り切ったそうです。

自然の土に植物の繊維を混ぜた珪藻土は
子どもにも安全な素材だし、要領を覚えてしまえば、
子ども一人でも仕上げられるのですね。

自分で自分の部屋の壁を創ったとなれば
きっと人一倍愛しい部屋になり、自ずと大切にしたくなるはず。

考えてみれば、家族で取り組む“自然の家づくり”は、
「木育」にも「住育」にもつながる、
絶好の「生きた教材」なのかもしれません。


さて、最後に、本邦初公開のボーナスショットを(笑)。

「せっかくだから一緒に写りましょうよ」
という智子さんのお言葉に甘え、大谷家のお二人とともに、
当連載「ECOさんが帰る場所」の制作スタッフ
(ライター、グラフィックデザイナー、フォトグラファー)
である私たちも、“昭和な笑顔”で飛び入り記念撮影(笑)。

大谷さん、どうもありがとうございました!
みなさま、今後ともヨロシクお願いいたします♪

では、また次回まで、ごきげんよう…!(笑)


◆取材:2011年5月 
◆photographer:蘒野孝行(GINO PHOTO WORKS)
◆designer:森川瞬(寺島デザイン制作室)
◆writer:はらみづほ(旅するはらっぱ)


WEBでもECOさん!④ 稲川さんファミリー

2011-03-26 | 日記
●WEB版 ECOさんが帰る場所④ 
◆いい音楽が、育つ場所。

あれ…?
どこかから、きれいなピアノの音色が……



あ、このお宅からだ……


「ごめんくださ~い……

うわ~すごい!」



「ここ、音楽ホール?!
 KITARAのミニ版みたい!

 明るくって、のびのびしてて、
 何だかとっても気持ちいい~」



「あら、ようこそ♪
 ここは音楽教室ですよ。
 ピアノ、エレクトーン、フルート、バイオリン……
 いろんな楽器が学べるんです」


……というわけで、こちらが今回のECOさん、
千歳市の住宅街に、こんなステキな「音楽ホールのある家」
をつくってしまった、稲川智恵子さんです。


このお宅は、今年で7歳。
でも、まるで、できたばかりのお家のようにきれいです。

建物全体が静かな優しさに包まれていて、
とっても丁寧に使われている感じ。


小さなお子さんも含め、教室の生徒さんや親御さんなど、
いつも人が出入りしている場所なのに、
こんなにスッキリ美しい空間なのは、

ここがとっても愛されていて、
いつもお手入れされている証拠ですね。


それにしても、どうです?
床にも天井にもふんだんに使われた、この無垢材!

壁は、北海道の土と植物の繊維が混ざった呼吸する自然素材
“珪藻土(けいそうど)”
を、ご家族みなさんで塗ったそうです。

「予算の都合もあって、自分たちで塗ることになったんです(笑)。
 西條デザインの方々に指導してもらってね。
 大変だったけど、そのぶん愛着がありますね。

 デザインも私がしたんです。どうしても丸い空間にしたくて、
 難しかったけれど、いろいろ相談しながら進め、実現できました。

 夢をカタチにするには、たくさんの難関がありましたけれど、
 西條デザインのみなさんは、ビジネスライクを超えて
 親身につきあってくださったので、
 結果的に、不満なところが一つもない家ができました



いっしょに思考錯誤を重ね、いっぱい話し合ってつくっただけあって、
お宅のすみずみに、いろんなアイデアが散りばめられています。

ここも、ほら、可動式の客席で、中はモノ入れ。

向こう側のオシャレな扉は、
実は一枚扉にする予算がなかったゆえの結果だそう。

「可動式の客席も、あの扉も、
 西條さんのアイデアなんですよ。

 私の希望を何とか予算内で叶えるための
 苦肉の策だったんです(笑)」


一枚扉にするより斬新でステキに見えるのに
予算は少ないなんて、知恵を働かせると、
オトクにステキが実現するんですね。


「うちの家族は化学物質過敏症でもないし、アレルギー体質でもないので、
 特にエコハウスにこだわっていたわけでもないんです。


 でも、教室の生徒さんには子どもたちも多いし、
 友人から西條デザインさんのことを聞いて、
 どうせなら自然素材の健康住宅に越したことないな、と思ってね。

 実際、生徒さんたちも親御さんたちも、みなさん
 “ステキ!” とか、“気持ちいいね” と言って、
 喜んでくださいます。

 家は、毎日過ごす空間だし、ずっと暮らす場所ですから、
 やっぱり自然素材にしてよかったですね。
 出かけて帰ってくると、ホッとします。

 この家で暮らすようになってから、
 化学物質の匂いに、ものすごく敏感になりましたね




念願の家づくりに全力投球し、こだわりデザインが
あちこちに散りばめられている稲川邸。

音楽ホールから出たところにある
ドアも、ほら、一枚一枚、違うデザイン。

なんとドアも全部、智恵子さんが
ご自身でデザインなさったとのこと。

音楽だけでなく、
デザインにも長けていらっしゃるんですね。

そう言えば、西條さんも、
学生時代はバンドのベーシストだったとか。

音のアートも、空間のアートも、
根っこは一つなのかもしれません。


ホールのお向かいのドアを開けると、そこは洗面所。
洗面台が2つとは、さすが、お客さんが多い場所ならでは。

楽器を弾く前には、みなさん手洗いするんですね。

発表会のときなどは、
ここにも子どもたちの元気な声が響くんだろうなぁ~



おや? 何やら、漢字にふりがながふってある貼紙が。

「おねがい。きを たいせつにしたいので、
 せんめんだいに みずがかかったときは、
 そなえつけの タオルで、
 だいのうえを ふいてくださいますよう おねがいします」


な~るほど!

智恵子さんがおうちを大切にしている気持ちが伝わりますね。

きっとここに通う子どもたちは、音楽だけでなく、
自然のデリケートさや、モノを大切にする気持ちも、
自ずと学んいる気がします。



さてさて、洗面所を出て、いよいよリビングへ。
う~ん、やっぱりここも、デザイン違いの扉ですね。

何だか、おうち全体がアート作品という感じで、
ワクワクします。

リビングは、どんなかな~♪



うわぁ~ 広々、ゆったり、明る~い!

左側全体が窓だからかな、なんだかとっても開放的です。


向こう側の引き戸を開いたら、もっと開放的になっちゃった。

なるほど、奥は和室なんですね。
ほほ~ぅ、やっぱり、畳もオーガニックですか。

もし、そのまんま寝ちゃっても、
自然の草の上に寝てるみたいに、安心ですね。



さすが! ストーブも薪ですか。

「ありがたいことに、薪は近所の方がくださるので、
 燃料費がかからないんですよ(笑)」

なんと、それは うらやましい!

北海道は森林がたくさんあって、
木材を適切に使うことで森が元気になるとのこと。

薪ストーブや、木質ペレット燃料のストーブを使うには、
ことさらうってつけの土地柄なんですよね。

しかも、木質燃料は熱量が高いから、あったかさが違う。
これ一台でこの空間全部がまかなえるのは、魅力ですね。



リビングの向こうまで見晴らせるキッチンは、
導線を熟考した、これまた、智恵子さんのこだわり名所。

動作空間が135度の角度に開けているのが
最も動きやすいキッチンの形、
という説があり、
それを実現したそうです。



リビングからつながる2Fへの階段をのぼっていくと、
お子さんたちの部屋の手前に、ダンナさまの書斎空間が。

つくりつけの本棚も、アート作品のよう。
でもこれも、ちょっとした発想の転換による、
オトク設計なんだそうです。



ダンナさまは、体育の先生だとか。
ズラリと並ぶトロフィーは、スポーツマンの証なのですね。

廊下のスペースを書斎に、というのも、
空間を効率的に使う、智恵子さんのアイデア。

ここなら冬も、1Fの薪ストーブの熱が
そのままのぼってきて、ストーブいらずの暖かさですね。

う~ん、勉強になります。



一軒のお宅の中で、自然素材のアートな扉を開くたびに、
個性に富んださまざまな空間が広がる、稲川家。

でも、智恵子さんの心の中には、この空間がさらに輝く、
ステキなヴィジョンが潜んでいました。

この家を、この地域の文化の拠点にするのが夢なんです。

 地方は文化に触れる機会が少ないけれど、ここに来れば
 身近に文化に触れられる、という場所にしたい。

 
 回数はまだ少ないけれど、
 ここ何年かはプロの演奏家を招いて、
 親子で楽しめるコンサートも開いていて、
 地域のみなさんに喜んでいただいています。

 教室の発表会のときは、
 うちの家族にも総出で手伝ってもらって、
 簡単な食事も出し、ここが、音楽を通した
 地域の方たちとの交流の場
になります。

 そういうときはこのホール空間も、
 人でいっぱいになるんですよ」


智恵子さんは嬉しそうに、そう語ってくださいました。



心身にストレスを与えない自然素材と、
智恵子さんのアートセンスが、心地よく調和する空間は、
包まれているだけで、何だかほわっと楽しい気持ち。

まるで家全体が、優しい音楽を奏でているようでした。

森や山で何十年もの間、
風や鳥や虫たちの歌に寄り添い、
家と化してからも呼吸を止めない天然木材や土壁は、

人間よりずっと長く、深く、
自然の音楽とともに生きてきた、
言わば “長老アーティスト”。

そんな存在に包まれるこの空間で学んでいれば、
音楽センスが育まれるのも、
当然の道理かもしれません。



一方、一般の学校の音楽室では、
 
・有害物質を含む建材の多用、

・化学的な接着剤を使った
 合板や塗料を使用した楽器類、

・それらから出る化学物質やホコリを
 吸着しやすい遮光カーテン、

・天井の吸音板、

・防音用の機密性

……などが原因と考えられる
“シックスクール”の問題で、
具合の悪くなる生徒も多いとのこと。

大人の責任、本気で考えたいですね。

稲川さんのお宅のように、
いつの日か、この星のすべての建物が、
呼吸し、森の歌を歌う自然素材になって、

人と自然がお互いにストレスなく、
健やかなハーモニーを奏でられる日が、
訪れますように…!


◆取材:2010年10月28日 
◆photographer:蘒野孝行(GINO PHOTO WORKS)
◆writer:はらみづほ(旅するはらっぱ)

WEBでもECOさん!③ 阿部さんご夫妻

2010-12-26 | 日記
●WEB版 ECOさんが帰る場所③ 
◆あったかい。ムダがない。揺るがない。

この絶景をご覧あれ!


今回のECOさん宅は、こんな景色を望む、積丹岳のふもとの丘の上
に建つおうち。

教員生活にピリオドを打って新規就農し、
4年前、念願の自給自足的田舎暮らしに踏み出した、
阿部さんご夫妻のお宅です。


トントントン…と木の階段を上がり、
広々としたデッキを過ぎて


ドアを開けると…

こちらが玄関。
ふんだんに使われた道産材のやわらかな木肌が、
やさしく目に飛び込んできます。


2方向からの光を余すことなく取り込む個性的な丸窓で、
玄関先はぽっかぽかのサンルーム状態。


リビング側の広い窓からもサンサンと陽の光が差し込み、


玄関直結の住居スペースも、明るくてあったか。

吹きっさらしの丘の上に建つ一軒家にも関わらず、
「太陽の威力」×「天然無垢材の温もり」
×「セルロースファイバー(古紙利用断熱材)」のトリプル効果
で、
冬も薪ストーブひとつでOKとのこと。すごいです。


「外が吹雪でも、ひとたび玄関に入ると
 ホワッとあったかくてホッとするんですよ」
と、奥様の陽子さん。

「各階をつなぐダクトで暖気が家の中をめぐる設計にしてあったり、
 壁が珪藻土なのも、暖かさを逃さないポイントかな」
と、
だんな様の信哉さんもご満悦。
 (珪藻土は、ご自分たちで塗られたそうです)
 
 お二人は学生時代に体験した世界の旅で、
 モノのない環境で必死に生きる人々の暮しに触れ、
 自らもシンプルライフを目指すようになったとのこと。
 この家とライフスタイルは、長年の夢の結実なのです。


リビングダイニングに続くキッチンは、
「アイランド型」と呼ばれる、収納と調理スペースがたっぷりの設計。

各地から一定期間住み込みでやってくる援農者も受け容れているので、
農作業時期はフル回転のキッチンですが、
これなら誰が来ても使いやすく、ゆったり動きやすそうですね。

こちらは、信哉さんご自慢の図書室。

書棚は、建材の端材を利用した、信哉さんのお手製です。

新規就農する以前、教員だった信哉さんは、
ここから本を選び、地域の小学校で子ども達に
読み聞かせボランティアをしていらっしゃるとのこと。

児童書や絵本の名作に混じって、お二人のバイブルだという、
「自給自足の本」もありました。

以下は、リビングにつながる和室。

個性的な藍染め布の壁紙は、陽子さんのお見立て。
畳もオーガニックなので、安心で気持ち良さも格別です。

障子を閉めれば、丘のつらなりを見渡すひっそりとした和空間。
癒しの間にも客間にもなる、阿部家のスペシャルルーム。
こんなお部屋なら、ひときわグッスリ眠れそうですね。

そしてこちらは、薪炊き式の檜風呂
2方向の窓から見渡せる景色が、これまた格別です。

う~ん、薪で炊いたこんな湯船につかったら、
農作業の疲れも吹っ飛びそう!

でも、こんな農的田舎暮らしには、薪作りも欠かせないお仕事。
一冬分の薪を保管しておく薪小屋も必需品です。

「実はこの小屋は、
 山田さん(ビオプラス西條デザインの一級建築士)のお手製なんですよ。
 モリモリ働いてくれて、1日で建てちゃったんです」と、信哉さん。

「この家を建てる時は、西條デザインのみなさん総出で
 泊まり込みで働いてくださってね、ホントにお世話になりました。
 大変だったけど、楽しかったですよ~」と、陽子さん。

そしてこちらは、阿部家ならではのスペシャル小屋。
さ~て、いったい何が入っているのでしょう……?


ジャジャ~ン!

薪の横にあるこれは、何と排水の浄化槽!
キッチン、お風呂、トイレの汚水を、ここで浄化しているのです。

「これは“BMW”と言って、バイオ、ミネラル、ウォーターという
 自然な物質によって汚水を浄化するシステムなんです。

 赤い網袋の中に、小石や炭や、微生物が生きている腐葉土が入っていて、
 それらの自然物と水が入ったいくつかのタンクに汚水を通し浄化して、
 また自然界に戻します。

 真水には戻りませんが、汚物はほとんど浄化され、
 匂いも問題もない状態に戻すことができるんですよ。

 この手法は農的田舎暮らしを勉強する過程で知り、ぜひ取り入れたかったので、
 西條さんや山田さんに相談し、資料をもとに、試行錯誤しながら作りました。
 作るのは大変でしたが、今のところうまくいっています」 と信哉さん。


「浄化槽を出た水は、穴を掘って作ったこの池に貯めてるんですよ。

 夏の猛暑で水が若干富栄養化して水面に少し苔が発生したりしたものの、
 特に問題はないようです。

 水辺に集まってくる虫を狙って鳥が来るようになったり、
 周りには草花も生えてきて、いろんな命が共生する場になっているみたい。
 今後が楽しみですね」 と、陽子さんも嬉しそう。

 自然の中で暮らすからこそ、
 できるだけ自然に負荷をかけないように。


 そんなご夫妻の理念が伝わってきます。

さて、階段を下りて、阿部家のもう一つの
ご自慢スペースにもおじゃましてみましょう。


メインの住居空間の下に広がるのは、
ひんやり広々とした農家ならではの作業スペース。
右に見えるのは、
大きなシンクや様々な道具が置かれた農産物の加工場です。

“加工”は、実りをムダにしない、という意味でも大切な作業。
こんな清潔で快適な加工場があれば、作業もはかどりそうですね。

加工室の向こうには、
外から車ごと直接作物を運び込める収納スペース。

冬は外の雪を入れ、気温0度・湿度100%の状態で、
ジャガイモやニンジンを美味しく保管する雪室にもなる、
スグレモノの保管庫です。

格別に美味しい「のんのんファーム」さんのオーガニック“雪の下”野菜。
秘密は、この雪室にあったんですね。

泥だらけでも気兼ねなく畑から直接入ってこれる作業場は、
農家には欠かせない空間ですが、
阿部さん宅はスッキリ清潔に整頓されていて、いい気持ち。


壁面には遊び心たっぷりの、こんなステキな飾り棚も。
思わず気持ちが和み、忙しい作業の励みにもなりそうです。


床にもこんな、お洒落なナチュラルモザイクが。

これは陽子さんのリクエストだそう。
ニクイ演出、ステキです。

阿部さんご夫妻のステキなオーガニックファームは、
都会暮らしの若者たちや、海外からの援農者にも人気。

「今まで行った農家さんの中で一番ステキ!」
という声が上がる、というのも、ナットクです。

ここはそんな助っ人たちの宿泊スペースにもなるという、ロフトスペース

こんなステキな空間と美味しい健やかごはんがあれば、
キツイ農作業もがんばれそうですね。

田舎暮らしは、やることだらけ。
 ある程度の年齢になってから取り組む生業としての農作業は、
 体力的にも経済的にも生半可ではありません。
 
 ここは丘の上なので水も電気でポンプアップしているし、
 街から離れているぶん、車も欠かせない。
 ここに家を建てるに当たって、まずは荒野を切り拓いて、
 丘の上への道を造ることから始め、電気などのインフラも引きました。

 そう考えると、田舎暮らしがエコだなんて言えないかもしれない。
 その責任を踏まえた上で、どう暮らすかだな、と思っています」

一言ずつ噛みしめるようにそう言う信哉さんの傍らで、
しみじみうなずく陽子さん。

なるほど、自然の中で暮らす、ということには、
キレイごとだけではない、こんな現実の側面もあるのですね。


家の前に広がる収穫が終わった冬支度前の畑は、
今でこそキレイになっていますが、

阿部さんご夫妻がここに住む前は、挫折した農家に打ち捨てられ、
土の中にはたくさんのビニールマルチが埋まっていたとのこと。

「それを掘り起こして片づけるところから始めたから、
 ただでさえ大変な農作業が、なおさら一苦労だったの。

 でも、農作業するようになってから心身ともに鍛えられて、
 風邪も引かなくなったのよ」
 と陽子さん。

「僕もずいぶん丈夫になって、体も引き締まったよね」
 と、メタボとは縁遠い信哉さんもニッコリ。

私たちが暮らす北海道をはじめ、
いま人間が暮らす土地はすべて、
もともと自然を切り拓いてつくった宅地。


どんな土地に暮らそうとも、肝心なのはその根本を忘れず、
恵みの源である自然界を壊さない生き方を考え、実践すること。

阿部さんご夫妻と積丹岳に、そう教わった1日でした。

◆取材:2010年11月 
◆photographer:蘒野孝行(GINO PHOTO WORKS)
◆writer:はらみづほ(旅するはらっぱ)