ECOさんが帰る場所

(有)ビオプラス西條デザインのエコハウス♪
住宅誌『住まいネット北海道』内の連載のつづきです。

WEBでもECOさん!② 宇山ファミリー

2010-09-24 | 日記
●WEB版 ECOさんが帰る場所② 
◆住むと元気になれる家


今回のECOさん宅は、こちら。
外観からは思いも寄らないデザインが内側に広がる、
とっても個性的なつくりの二世帯住宅です。



玄関を開けると、こんな空間が。
無垢材と土壁がいい気持ち。家の中、というより、
大木の幹の内側にやってきたみたいな匂いと空気を感じます。

「おじゃましま~す」と言いながら、思わずちょっと深呼吸。
靴を脱いだ足ウラに、無垢材の温もり
い~気持ちです。



宇山さん宅は、なんと6層構造
こんな5~6段の短い階段で、以下のフロアがつながっています。

・1層目…駐車場、玄関、物置
・2層目…おばあちゃんの部屋(9畳)
・3層目…ダンナさまの書斎(6畳)、納戸、脱衣所、バス&トイレ、物置
・4層目…居間、シャワールーム&洗面&トイレ
・5層目…和室(兼寝室6畳)、子ども部屋(9畳)
・6層目…ロフト(兼仕事部屋8畳)

最近の建物は段差離れが一般的ですが、
変化に富んだこんな間取りも、
日常で何気なく筋力が鍛えられる
楽しいヘルシーデザインかもしれません。



こちらが、メインのリビングルーム。

左から、宇山由香さん(この家のママ)、長女の乃愛(のあ)ちゃん、
長男の大河くん、清水桂子さん(由香さんのお母さん)。

後姿の男性は、残念ながらパパにはあらず(笑)。
(有)ビオプラス西條デザインの、西條正幸社長です。



「西條さんや、山田さん(ビオプラス西條デザインの建築士)には、  
 自然建材の知識から住まい方まで、いろんなことを教えていただきました。
 
 私たちの希望に基づく設計プランも、たくさんご提案いただいて、  
 ワガママもいっぱい叶えてもらって……  
 おかげさまで、本当に楽しい家作りでした。  

 今もイロイロ相談に乗ってもらってるんですよ。  
 子どもが大きくなってきたので子ども部屋にロフトを作りたいのですが、  
 どうすれば快適で効率的か、智恵を授けてもらったりね」  

と、由香さん。



今はツルピカ美肌で元気イッパイの由香さんと大河くんですが、
この家を建てる5年前は、アトピーや化学物質過敏症で、
かなりヒドイ状態だったとのこと。

「大河は赤ちゃんの時  人相がわからないほど重度のアトピーだったんです。    
 それで検査のため病院へ行ったら、私の顔を見た医師が慌てて  
 『まずお母さんが検査してください!』って言うんです。  

 検査の結果、
 ガンになってもおかしくないほど重度の化学物質過敏症と診断され、  
 『普通に生活できてるんですか?』って医師に驚かれて。  

 子どもの頃から具合が悪いのが普通だったので慣れっこになっていたけれど、  
 出産後はなおさら体力も落ち倒れてばかりだったので、  
 私はやっぱり普通の状態じゃないんだ!と自覚して、  
 もうこれは腹を据えて根本的に取り組むしかないな、  
 と、このときやっと決意したんです」。



それまでのアトピーライフで、
化学薬剤の限界と副作用の恐ろしさに気づいていた由香さんは、
だんな様の理解のもと、暮らしの基本である「家づくり」から取り組むことに。

いちばん重要な基本は、毎瞬呼吸している空気。  
 いろいろやってみた結果、
 食べものを変えても、住環境が改善されなければ  
 根本解決にはならないと気づいたんです。  

 でも、西條さんに出逢うまでは大変でした。  
 知識も情報もなく一般住宅のモデルハウス回りから始めたのですが、  
 化学物質臭がひどくて具合が悪くなるし、過敏症についての理解もないし、  
 『夏に建てて時間をおけば化学物質は飛んで行きます』  
 なんてテキトーなことばかり言われて絶望の連続でした。  

 だから西條さんのモデルハウスに入った時は感激でしたね!  
 呼吸もラクで、とにかく気持ちよくて、ここに頼むしかない!って。  
 出逢えて本当によかったです」



「建てて5年ですが、この家の全部が大好き!  
 無垢材は生きているから、湿度の高い季節は膨張して、  
 作り付けの家具の扉が閉まらなくなったりするし、  
 乾燥してる時期はフローリングの間にスキマができたりするけれど、
 
 そんなこんなも全部が愛しい。家も生きてるんだな~って。    
 おかげさまで今は子ども達ともども、元気いっぱいです」。



こちらは居間上にある、秘密の小部屋のようなロフト。

ご自身の病気の経験をステップに、
今や心身を健やかに保つためもカウンセリングやヒーリングを
お仕事にしている、由香さんのお仕事部屋(ヒーリングルーム)です。

もともと仕事場にするつもりで建てた家ではなかったものの、
お客さんたちにも「気持ちいい~!」と評判だそう。

森林エネルギーいっぱい
こんなシークレット空間でアロママッサージを受けたら、
カラダもココロも、それはそれは元気倍増することでしょう!



このベランダは、子ども達イチバンのお気に入り。
夏は大河くんと乃愛(のあ)ちゃん二人で
ここにふとんを引いて寝たりもするんですって(笑)。



こちらは玄関から一番近いフロアにある、おばあちゃんのお部屋。

二世帯住宅と言っても、玄関は共通。
けれどフロアが違うから、お互いのプライバシーは保ちつつ、
数段の階段移動だけで行き来できる、安心構造です。

おや? よく見ると食卓テーブルに子ども用のイスが。
そうか~ ママがおうちでお仕事しているから、

このお部屋で、子ども達とおばあちゃんがお食事することも多いんですね~。

お部屋からウラ庭菜園にすぐ出れる設計で、
もぎたて無農薬野菜の調理は、おばあちゃんのお楽しみ。

ナルホドこれは、家族みんなに嬉しいデザインですね!



こちらは、海外出張も多いダンナ様がお気に入りの和室。

窓の内側に付いたカーテン代わりのふすまを閉めれば、室内は真っ暗。
スヤスヤ快眠できて、時差ボケも解消!というワケですね(笑)。



天然木無垢材の、床、天井、壁面、家具…。
お友達総動員で楽しく塗った、ホタテ入り漆喰壁。

自然パワーあふれる素材でできた空間で暮らし、
たった5年で生まれ変わるように元気になった
由香さんと大河くんの体験談は、

自然治癒力を高めるにはどうすべきか、
人間にとって何がいちばん大切なのか、


を、あらためて教えてくれる、
示唆に富んだ実例のように思います。



西條さんの調べによると、「1日に吸う空気は、約20kg」とのこと。

“成人が1回の呼吸で吸う空気量は約0.5ℓ。  
 1分間に20回呼吸すると、1日約15000ℓ=20㎏となり、  
 飲食物と比べると、約8:2の割合で空気が多い
 計算になる”

というデータがあるそうなのです。

食物だけでなく、室内の空気もオーガニックが一番。
心に留めて、日々暮らしたいものですね。



◆取材:2010年8月 
◆photographer:蘒野孝行(GINO PHOTO WORKS)
◆writer:はらみづほ(旅するはらっぱ)


WEBでもECOさん!① 五十嵐ファミリー

2010-09-13 | 日記
●WEB版 ECOさんが帰る場所① 
◆「いい空気」のつくり方

家族そろってアレルギー体質、という困難を跳び箱にして、
10年前、ステキなエコライフの入口に見事着地した、五十嵐家のみなさん。
(左から、五十嵐芳三さん、美帆さん、弘子さん)


「心身ともに安らげる場所が欲しくて、自然素材の家づくりを目指したものの、
 健康住宅を謳うモデルハウスでさえ、室内のケミカル臭に息が詰まる始末。

 主要なハウスメーカーに問い合せても希望に叶う情報はなく、
 化学物質との同居に甘んじるしかないのかとあきらめかけた時、
 エコハウスデザイナーの西條さんと出逢ったんです」。



 防腐剤や接着剤を極力使わない無垢材、オーガニック畳、珪藻土、天然紙、コルクタイルなど、
 厳選の自然素材による、ケミカルフリーの家づくりがスタート。

 希望して、壁・床・天井の塗装係となったご夫妻は、
 「安心な素材だし、手をかけた分、愛着も格別!」 と、
 10年後の今もご満悦。

 アレルギーのおかげで、人にも地球にも優しい、深呼吸の名所が生まれたのです。



どんな家を見ても、ウチが一番!って思う。
 西條さんには、菜園作りから娘のお店のアイデアまで、
 今も何かとお世話になってます。
 発想が新鮮で、ナルホド~と目が開かれることばかりなの!」 と弘子さん。

“エコ=ガマン”ではないんだ!
ってことも教わったね」 と芳三さん。

なるほど、西條さんは家だけでなく、
“ライフスタイルのデザイナー”でもあるのですね。



玄関から居間への入り口には、
吹き抜け窓からの自然光がスポットライトのように差し込む、
こんなウエルカムコーナーが。

五十嵐家は、
和室、居間、キッチン、バストイレ&洗面空間、プチアトリエ空間…が
グルリとドーナツ型につながる、個性的なデザイン。

「光を最大限に取り込み、間仕切りのないのびやかな空間を楽しみたい」
というご家族のリクエストで、結果的にご家族のキャラクター同様、
明るく、開放的で、空間ごとに個性が際立つ、ユニーク設計になりました。




インテリアのように空間に溶け込み、絵になっているこの洗面台は、
ビオプラス西條デザインのイケメン専務が、
古道具店で見つけてきてくれたものだそう。

仕切りのない空間にピッタリの、オシャレで気持ちのいい水周りデザインです。




洗面コーナーを過ぎると、これまたユニークな形のキッチンが。

製菓専門学校で腕を磨いた長女の美帆さんの夢は、
“リクエストに合わせたパーソナルなスイーツ”
を作るパティシエになること。

「このキッチンは、母がリクエストしたデザインですが、
 動きやすくて、すごく使いやすいんです!」



「この空間が大好きだったから、母の手伝いだけでなく、
 中学生くらいからは一人でお菓子づくりをするようになって……
 このキッチンがなかったら、パティシエは目指していなかったかも」 と美帆さん。

日々暮らす空間は、知らず知らずのうちに人に影響を与え、
生活習慣や未来をも変化させるチカラがある。


人は親だけではなく、家にも育まれるものなのですね。



エコとは、自分らしく生きること。 ウチは一人ずつがホントに個性的で、
 長年一緒に住んでても毎日発見があって、ビックリするのよ」 と笑う弘子さん。

毎日いい空気を呼吸し、自然の家で暮らしていると、
心も自ずと自然体になり、自分らしくいられるのかもしれません。



この2F吹き抜け部分を含め、五十嵐家の壁は、
土と植物でできた“呼吸する壁材”の珪藻土。



階段をのぼった突き当たりにある、
吹き抜け窓からの自然光を活用したプチライブラリィコーナーをはじめ、



内装や家具も、化学的な接着剤で張り合わせた合板ではなく、
自然の無垢材なので、家自体が “天然空気清浄器”状態なのです。



「体を覆う最初の膜が皮膚。次は服。その次は家」。

西條さんがドイツのエコロジー建築から学んだ、
家が人体に与える影響を言い得た言葉だそうです。

つまり、「家は第三の皮膚」ということ。

心身の病が急増している今、
“住生活”の質やデザインは人の心身にとって、
実は食生活と同じくらい、重要なのかもしれません。


◆取材:2010年4月 
◆photographer:蘒野孝行(GINO PHOTO WORKS)
◆writer:はらみづほ(旅するはらっぱ)