ECOさんが帰る場所

(有)ビオプラス西條デザインのエコハウス♪
住宅誌『住まいネット北海道』内の連載のつづきです。

WEBでもECOさん!⑱ Nさんファミリー

2015-01-08 | 日記
●WEB版 ECOさんが帰る場所⑱ 
◆家じゅうまるごと、安全地帯。

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あなたは新築の家やお店に入ったとき、薬品やビニールの匂いを感じて息苦しくなったり、目や頭が痛くなったりした経験はありませんか?

石油化学製品を使った建築資材やインテリアから揮発する、様々な化学物質。家電・電線・通信機器の基地局やアンテナなどから発せられる、電磁波。

そんな“文明の利器”に潜む人体への危険を敏感に察知してアレルギー反応を起こす“化学物質過敏症”“電磁派過敏症”に悩む人々が増加中の昨今ですが、今回訪問したお宅は、その二つの問題をクリアすべくビオプラス西條デザインさんが設計・施行した「健康住宅」。

ここで暮らすようになる以前、10年以上もの間、化学物質過敏症と電磁波過敏症に苦しみ続けてきたというこのお宅の奥さまは、「この家にいるとまったく症状が出なくて、自分が病気だってことを忘れちゃうんです」とニッコリ。

はてさてこの家には、いったいどんなしかけがあるのでしょう?

さっそくおじゃまして、そのヒミツに迫ってまいりましょう!

こちらは、無垢のまま使われている天然木と白壁のコントラストが美しい玄関先。

現代の住宅では、このような白壁はビニールクロス貼りの場合がほとんどですが、こちらはホタテの貝殻を漆喰風に有効利用した塗り壁。

よく見るとほら、職人さんが手で塗った、風合いのあるハケ目模様が。光の加減で、まるで木肌のようにも見えてきますね。

安価でナチュラルな塗り壁材として一般的な「漆喰」ですが、その主成分の石灰は、珊瑚や貝殻などの屍骸が積み重なって石化した堆積岩。

ホタテの貝殻は石灰によく似た性質を持ち、石灰に勝る利点も多いため、漆喰に代わる新たな自然素材の塗り壁材として使われるようになり、ビオプラス西條デザインも独自の配合で、オリジナルのホタテ貝殻塗壁材「うみびと」を開発しました。


「うみびと」は、ホタテの貝殻粉末に天然糊と紙すさを加えただけのシンプルな調合で石灰や樹脂接着剤を一切含まないので、石灰を扱うときに懸念される木材焼けの心配もなく、手についても安心。

ほどよい粘り気があって素人でも塗りやすく、色つきの壁にするための天然顔料を混ぜ合わせてもムラになりにくく仕上がりがきれい。

しかも、ゴミとしてやっかいモノ扱いされていた貝殻を有効に活用できる、とても理にかなったエコロジカルな道産“財”なのです。


こちらの格子の引き戸は、無垢材で作ったオリジナル。一見和風なのに和風すぎない、絶妙なセンスがステキですね。


玄関を進み、ゆったりした雰囲気のリビングルームへ。

全体的にウッディで心安らぎを感じるNさんのお宅ですが、実際、ビオプラス西條デザインの“木づかい”には、安らぎを生む方策がたくさん施されているのです。


リビングからつづくダイニングキッチン。

まず、使用している木材はすべて道産・国産の天然木の無垢材。できるだけ身近で信頼し合っている取引先から、防腐剤や殺虫処理をしていない天然木を調達。

化学的な接着剤で貼り合わせた合板や集成材の構造材は一切使わないのが信条で、表に見えない構造材をはじめ、壁・床・天井から建具や家具に至るまで、木材はすべて無垢の木を使用。

Nさん宅では断熱材にも、古紙の繊維断熱材木の繊維を分厚いマットレス状にしたものを二重に使いました。


アイランド型のオシャレな調理台。タイルの目地材も自然素材です。

呼吸をつづける木材である無垢材にこだわり、木が持つ自然なあたたかさや調湿効果を最大限に活かした森の安らぎ空間を再現する家づくりがビオプラス西條デザインのスタンダードですが、Nさん宅には敏感な奥さまの快適を目指し、さらにいくつかのスペシャルな対策が施されていました。



まず一つ目は、使う木材の種類。

天然木にはヒノキなど匂いの強いものも多く、化学物質過敏症の方にとっては天然の匂いであってもアレルギー反応を引き起こしてしまう場合があるため、この家には、匂いの少ない性質を持つ「タモ材」が多く使われているとのこと。

化学物質対策には、人工物対策に限らない様々な知識や配慮が必要なのですね。


白いカーテンは、電磁波カット効果がある布で作られたもの。「薄いのに一枚引くだけで違うんですよ」と奥さま。

また、このお宅には同じ平米数の通常の家づくりに使う2倍以上の木材で厚みを持たせ、外界の電磁波をがっちりブロックしているのだそう。

木は電気を通さない性質を持ちマイナスイオンを出しているため、森に行ったり生きている木に抱きついたりすると体内にたまった電磁波が“アース”されスッキリ爽やかな気分になりますが、切ってしまった木材も無垢のまま使えば、森で得られるような恩恵にあずかれるのですね。


オーガニックの畳+和紙の壁でできた客間。障子のデザインは奥さまの要望で設えたもの。「こうすれば桟を掃除する手間がかからないな、と思って、西條さんにお願いして作ってもらったんです」。

そして、もう一つの大きなスペシャル対策は、建物から発生する電磁波(電場)を導電性シートを使ってカットし、「オールアース住宅」にしていること。



現代の住宅では、以前は一家に一台あるかないかだったTVやエアコンなどの家電が一部屋に一台置かれるなど、家電のためのコンセントや照明のスイッチが部屋のあちこちに設置されるようになり、見えない壁の内側は電気の配線でいっぱい!



電気の使用量はこの40年で5倍以上になり、外の電柱から各室内へ電気を運ぶ配線も急増。

25年前は2階建ての住居1軒あたりで150mほどだった屋内配線が今は1000m以上(約7倍!)になったとも言われ、そのぶん電磁波による体調不良を訴える人も増えています。



が、Nさんのお宅ではこの室内配線を“オールアース”しているので、「電気の鳥カゴから開放された気分」だそう。


「寝たとき頭の近くにコンセントが来ないようにするなどあちこちに細やかな配慮もしてくださって、ほんとうに助かっています」とのこと。

心と技術、両方の成果が、笑顔と安らぎを生み出しているのですね。


2階にあるお子さんとだんな様のそれぞれの部屋には、吹き抜け部分に面してこんな小さな窓が。冬は階下の薪ストーブの暖気がこの窓から両方の部屋に流れ込み、夏は吹き抜けの窓を開けることで風が通ります。

「この家は外より呼吸がしやすくて、空気がいいように感じるんです。換気の努力は特にしていないのに、空気がよどまない気がするんですよね」


階段をのぼってきた先にあるここは、奥さまの「ホッとスペース」。吹き抜け窓の向こうに見える大きな松の木を眺めながらお茶を飲んだり、読書をしたりするそうです。

…という奥様の言葉を伝えると、設計の山田さんは笑いながら、「そこが設計士の腕の見せ所なんですよ」とのこと。


吹き抜けにはストーブの煙突が。二重煙突なのでここから出る暖気は微少ですが、真下から昇ってくる薪ストーブの熱が2階を暖め、壁や階段を伝って家の中をゆるやかに対流します。

「冬は空気が動くと寒く感じるので緩やかな換気が望ましいのですが、夏はその逆で、風の通りを感じる換気が涼しくて快適なんです。Nさんのお宅は、吹き抜けの窓がその調整に役立っているのではないかな」と山田さん。


薪ストーブは、だんな様の念願だったそう。薪は西條さんから建築廃材をもらっているとのこと。それなら化学物質もなく安心でオトク。ラッキーですね!

「建てたのは3年前ですが、冬はとっても暖かくて結露の心配もなく、夏はよく風が通って涼しくて気持ちいいんですよ」と大満足のご様子なので、山田さんの設計がバッチリ功を奏しているのですね。



「この家で暮らして3年。家にいると完治したような気分ですが、街に行くとまだダメでがっかり(笑)。でも、この家で暮らすまでの自分を思えば、信じられないくらい幸せです。家族にも本当に支えてもらったし、主人の理解があったからこその今だと思って、本当に感謝しています。

ここまで来るのに10年以上かかりました。以前はいつも頭痛やめまいがしていて、目はまっかっかでサングラスとマスクが手放せなかったし、特に発症したての頃は不調の原因がわからないのでとにかく不安で、毎日が地獄のようでしたね……

女性はホルモンバランスの崩れで免疫力が落ちると発症しやすいし、化学物質と電磁波へのアレルギーは連動しているので、たとえ発症していなくても、食べものや生活環境にはふだんからできるだけ気をつけているに越したことはないと思います。

西條デザインさんのことは友人からの情報で知り、話を聴きに行って建てられた家を見た結果、『ここでしか建てられない!』と思いました。めぐり逢えてほんとうによかった。施行の途中でお目にかかった暖房のスペシャリストの方が『ここに住んだら健康になるよ~!』とおっしゃっていたけれど、本当でしたね。

主に社長の西條さんと設計の山田さんには本当にお世話になり、家を建ててからもずっと、いろいろとおつきあいさせていただいています。

西條さんは率直でダマシがない人。
できないことはできないとハッキリ言ってくれるところも信頼できました。でも、山田さんには西條さんとは違う男気があって、西條さんがムリだと言ったことも『ぼくが何とかしましょう!』と言って、ほんとにものすごくがんばってくれるんです。あのお二人はいいコンビですね(笑)。

お二人ともずっとお忙しくて、以前からお願いしているガレージづくりが進まず困っていますが、西條さんが菜園で育てている美味しいオーガニックトマトやお野菜を持ってちょこちょこ顔を出してくださるので、今のところ許してあげています(笑)。

この家にいるとこんなに元気でいられるのだから、ここで暮らし続けたら少しずつ抵抗力を取り戻していって、いつか病気自体も治るかもしれない。そうなったらいいな、と思っています」



奥さまのお話をうかがいながら、ここまでの道のりを想い、胸がいっぱいになりました。心身ともにリラックスできる空間での生活は、きっとどんな薬にも勝る治癒の道ですね。

“過敏症”と診断された方々は、私たちが現代生活で多用している製品の多くが、自然物である人体と相容れないことを敏感に察知し、身を持って警鐘を鳴らしてくれている正常な感度の持ち主たち。私にはそう思えてなりません。

「取り込んできた化学物質や電磁波がその人にとっての飽和量に達すると、突然、誰でも発症する」と言われているこの現代病。

『この病気を治すために欠かせないのは、化学物質や電気に依存しすぎている現代人の意識と暮らし方が、少しでも自然に還ることだよ』。Nさんの家の自然素材たちが、そう教えてくれている気がします。

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こちらも合わせてお楽しみください♪
雑誌「住まいの提案~北海道」掲載ページ
ビオプラス西條デザインHPリンク

◆photographer:蘒野孝行(GINO PHOTO WORKS)
◆designer:森川瞬(寺島デザイン制作室
◆writer:はらみづほ(旅するはらっぱ


WEBでもECOさん!⑰ 加藤さんファミリー

2014-09-03 | 日記
●WEB版 ECOさんが帰る場所⑰ 
◆オーガニックアパート、誕生!

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化学物質のしみこんでいない天然無垢の国産材と自然素材でできた家、というと、ほとんどが持ち家で賃貸物件はめったにないものですが、なんとこの北海道の、札幌駅からほんの40分電車に揺られた緑ゆたかな郊外に、そんな夢のオーガニックアパートが誕生しました。

その名も、菜園付きエコアパート「かたくりの里とうべつ」


ジャジャーン!
これが真正面から見たところ。シックな外壁に映える4色のアースカラーがステキですね~♪


一棟に4世帯が暮らせる、二階建てのメゾネットデザイン。


各世帯の外側には、菜園、縁側、雨水を貯めておけるタンク、カーポート、大きな物置き、木製のポスト……などが付いています。


↓こちらが、菜園と反対側、玄関口の前にあるカーポート。

上質な持ち家級の風格です。


↓こちらが玄関口。外壁も扉も、天然無垢の道産木材です。





中におじゃますると…おや?この家のお子さんと大家さんが。


「うちの子は大澤さん(大家さん)のことが大好きで、よく遊んでもらってるんです。ほんとによく面倒を見てくださって申し訳ないくらいで…いろんな面で親身になって相談に乗ってくださるので、とても助かっています」と、奥様の美沙さん。


「菜園と庭を隔てて向こう側の棟にぼくの部屋があるんですが、毎朝この子たちが『大澤さーん!、おはよ~!』って手を振ってくれるんですよ。それが嬉しくてね…まるで自分の孫みたいな気分で、かわいくてしょうがないんですよ」と、大澤さんもうれしそうに目を細めています。



美沙さんいはく、「ここのことは、私が偶然入ったお惣菜屋さんに置いてあった西條デザインさんのチラシで知って、『自然素材のアパートなんて、きっとステキだろうな~!』と憧れていました。

 待ちに待った見学会で初めてここに来て大澤さんとお話ししたら、それまであまりピンと来ていない様子だった主人も、大澤さんの熱いお話に一気に心動かされた様子で、『ここに住もう!』って、がぜん乗り気になってくれたんです」



「大澤さんは、嘘のない誠実な方。話してすぐそれがわかり、熱い想いに動かされました。入ってからもいろんなことを教えていただいています」と、だんな様の真郷(まさと)さん。

相思相愛のみなさんの表情に、第三者の私まで幸せな気持ちになりました。





↓ここは、だんな様のいちばんのお気に入りコーナー。


大きな窓から菜園やその向こうの風景を見渡しながらボーッとするのが、至福のひとときだそうです。


実はここ、菜園を見渡せるだけでなく、なんと畑からそのまま出入りできる土間になっているのです。


アパートなのに土間があるなんて、なんて便利でステキなんでしょう!土がついた格好で靴のまま行き来できてラクチン。

冬も外感覚で暖かい空間で自由に遊べる
ので、子どもたちにとっても嬉しいスペースです。


「うちの子たちは、ここにふとんを敷いて寝るのが好きなんですよ。自分で2階から枕とふとんを持ってきて寝るのがお気に入りなんです。自分のとっておきの場所、って思ってるみたい(笑)」と美沙さん。

さすが子どもは高感度!

実はこの土間には蓄熱性の高いタイルが使われていて、南向きの大窓から差し込む太陽光をたっぷりキープしてくれるよう設計されているので、夜はその熱がほどよく室内に還元され、まるでちょっとした天然の非電化オンドル(韓国式床暖房)のようになるのです。


菜園と室内をつなぐこの土間は、どうやらみんなの大切な和みスペースになっている様子。

しっかりしたペアガラス(二重ガラスの間にガスが仕込まれている、断熱性の高い窓)や、20センチもの厚さで壁に仕込まれている道産木材の繊維を使った断熱材、そして、このスペースの端に、炎が見えるペレットストーブが設えられていることも、ここが安らぎの温もり空間になっているゆえんなのでしょう。



この土間のもう一方の脇には、無垢板でできたステキならせん階段が。


この家の床には空気をたくさん含んだ温かな性質を持つ道産木材の無垢板が使われているので、素足にも優しい心地よさ。

断熱材もしっかり入っているので、冬も足元から冷えが来る心配がありません。


この階段をのぼっていくと…


キッチンや水周りスペースがないぶん、いい香りの無垢の木の温もり空間が1階の空間まるごとぶん広々と使える2階スペースが。


1階の土間部分の天上=2階のこの無垢木材のスノコ状の床になっていて、ペレットストーブの熱がダイレクトに上がってくるしくみ。

なんとこのスノコは取り外しも可能で、階下からベッドなどの大物もラクに上げられるようになっているそうです。

2階と1階の音や気配の流通もあり、子どもたちだけが2階で遊んでいても、様子がわかるので安心。

2階部分の片隅にある天井近くの壁には、目隠し用の無垢の木製扉がついた換気扇があり、上昇した暖かい空気を階下に下ろしてくれるつくりになっています。


実は窓の下に見える菜園の手前にある“アースチューブ”も、この換気扇と連動したこのエコアパート自慢の換気ツール。


冬の室内湿度を快適に保ち結露を防ぐためには、外気と内気の入れ替えが欠かせませんが、

ここから吸い込んだ外気を、床面から壁の内側を通り2階までつながる長いパイプの中を通して暖めながら室内に入れ、暖かい2階の空気をこの換気扇で吸い込み床下に下ろすことで、冬は暖かく、夏は涼しく過ごせるよう、工夫されているのです。


キッチン部分の床にも換気口が。家のあちこちに換気の流通をはかる設計が、さりげなく施されています。


持ち家でもなかなかないこのアースチューブは、シンプルなしくみながら、かなりのスグレモノ。設計を担当したビオプラス西條デザインの一級建築士・山田さんと大澤さんがこのエコアパートに込めた“こだわりポイント”のひとつです。

「備え付けられている小さなペレットストーブ一つで、冬も暖かく過ごせました」

夕食後はストーブを消して2階に上がると、朝までほんわり暖かく過ごせます」


と、奥様もだんな様も満足のご様子。


北海道産の木クズを圧縮して固めたペレット燃料は、石油ストーブとは違ってい~い匂い。デリケートな子どもたちの体にも安心で、暖かさも薪ストーブ並み。炎が見えるので、目にもあったかです。

「断熱がしっかりしているおかげもあるのか、うちの場合は、以前の住まいで石油ストーブを使っていたときより、ずいぶん暖房費が安くなりましたと美沙さん。

う~ん、イイコトづくめですね!



こちらは、床下収納や上部の棚も重宝な、気持ちのいい天然無垢材キッチン



何度もリニューアルできるホタテ漆喰の壁の一部には、こんな遊びを施すことも可能。

このエコアパートの、見えざるもう一つの大きな“こだわりポイント”は、北海道の噴火湾でとれたホタテの貝殻を活用したビオプラス西條デザインのオリジナル漆喰壁……の奥!

先ほどもチラリと紹介しましたが、一般の家づくりでも珍しい20センチもの厚い断熱材にあります。

その断熱材は、ドイツから技術を学び北海道の木材を使って北海道の工場でつくられた、木の繊維が原料の断熱材。

もともと断熱効果が高い木を繊維状にすることで空気がよりたっぷりと含まれ、断熱効果がアップ。

壁の内側に仕込む際に少し手間と技が必要ですが、つくるときも、廃棄されたあとも、化学的に製造された断熱材よりずっとエコロジカル

北海道の植林の森の木を活用することで森の荒廃を止め最後は土に還るという、一石何丁もの効果を秘めた素材なのです。


「断熱材の他にも、表面には見えない大きな工夫がもう一つあるんですよ」

と教えてくれたのは、ビオプラス西條デザインの一級建築士で、このエコアパートを設計した山田さん。

なんと、このアパート、壁の構造材の厚さも通常の2倍なのだそうなのです。

「木造の建物は鉄筋にくらべて音が伝わりやすいので、アパートの場合は隣同士の騒音がトラブルのもとになりかねません。大澤さんはその心配を軽減するために、構造材を2倍にする道を選んだのです。

 ふつうのアパート経営者はできるだけコストを削減しようとするので、こんなことはありえません。しかもこのアパートの構造材はすべて道産の無垢木材なので、一般的なアパートづくりより、もともとのコストも高いんです。

 大澤さんは環境への意識も高いし、コストより住まい手の健康や快適さを、未来への影響や自然環境ごと考え、優先している。ほんとうに希少ですばらしい施主さんであり、大家さんですね」
と、山田さん。 


壁材、断熱材、天井や床材、そして構造材……地元・北海道の土・海・森…にいただいた天然素材空間に満ちる空気は、ビニール・プラスチック・外国の木を接着剤で貼り合わせた合板や集成材などの、化学物質だらけの建物の中に満ちる空気とは大違い。

その違いは日々、住まい手の心身と、生きものすべての家である地球環境の両方に、目には見えないながら確実に影響を及ぼしてゆきます。



「以前住んでいた家は湿気や結露がひどくて、家にいるのがイヤで、外に出かけたくてしかたない毎日でした。

 でもこの家は、家にいても森の中みたいに気持ちよくて本当に幸せ。家にいるのが大好きになりました。

 雨水タンクが付いているから、『あ、雨水が貯まるな』と、雨の日もうれしくて(笑)」
と美沙さん。


だんな様も、「菜園づくりも楽しいし、会社に行かず家で仕事ができたらいいのに、と思うようになりました(笑)」とのこと。


「前からやりたかった家庭菜園を庭先に持つことができて、主人がいちばんハマッテいます。子どもたちが起きてくるとジャマされて作業できないので、朝いちばんで起きて作業したりして(笑)」


「子どもたちにとっても、この菜園と庭はいちばんの遊び場。まだ青いトマトを全部採っちゃったりと困ったこともありますが(笑)、土や虫や野菜に直接触れる日常になって、子どもたちなりにいろんなことを感じ、吸収していると思います」


「菜園の周りに広々とした空間があって、車を気にせず自由に走り回らせておけるのも、子育て中の身には本当にありがたいですね。

 ここに来る前は札幌に住んでいたのですが、当別に来たら空気はいいし静かだし、ご近所の方もみなさん本当に優しい方ばかり

 ご近所の方も、お店の方も、私たちの姿を見ると声をかけてくださるので、とても嬉しくて楽しい気持ちになります。

 しかも、今日も朝から、大家さんからは畑の小松菜、お隣さんからは食べきれないほどのサクランボをいただいたんですけれど、毎日いろんな方にいろんな作物やおかずをいただくので、ありがたくてビックリしています。

 田舎のくらしって、温かくて豊かなんですね


JRで札幌に通勤しているという真郷さんは、「通勤時間はひとりになれる貴重な時間。ラッシュもなく座れますし、ひとときの孤独を楽しんでいます(笑)」とのこと。


美沙さんの情報によると、JR石狩当別駅のすぐそばには、「当別ふれあい倉庫」という道の駅のようなお店があり、びっくりするほどおいしい地元産小麦のパスタ(乾麺)や、地産食品が並んでいるとのこと。

ここで無料でもらえる石狩当別のミニガイドマップをもらって町を散策するうちに、隠れ家のような絶品のケーキ屋さんや、こだわり天然酵母パンのお店など、通いたくなるスポットもいろいろ発見中だそうです。


実は大家さんの大澤さんも、長年の東京暮らしを経て、このアパートを建てるのを機に、実家に戻ってきたのだとか。

「当別には、長年培われてきた、都会にない豊かさとほどよい距離感の温かいコミュニティがしっかり息づいています。その風土と人間関係は、この土地の大きな財産

 私は、そこにこのエコアパートが、さらに新しい魅力を添える存在になれたらと思っているんですよ。

 そのために、この町の人々と一緒に、ワクワクする計画をどんどん実現させていきたい。考え語り合っている構想がいろいろあり、これからが本当に楽しみです」



これは建築中の一枚。実は、このアパートの棟梁を務めたのは、職人の技を大切にする武部建設で大工として働く、大澤さんの息子さん!

大澤さんの夢が、「ビオプラス西條デザイン」の設計力と、「武部建設」の職人技に結びつき、地元・北海道の健やかな天然エネルギーと職人魂が組み合わさって生まれた菜園付きエコアパート「かたくりの里・とうべつ」

そこで暮らす加藤さんご一家と、これから増えるであろう仲間たちが、大澤さんや地域の人々とどんなワクワクを響かせてゆくのか、私も今から、胸を高鳴らせています。

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菜園付きエコアパート「かたくりの里とうべつ」
 *賃貸料:78000円(2014年8月現在)
 *問合せ先:0133-27-5066(最新情報など、お気軽にお問合せください)

・設計:ビオプラス西條デザイン
・施行:武部建設


◆photographer:蘒野孝行(GINO PHOTO WORKS)
◆designer:森川瞬(寺島デザイン制作室
◆writer:はらみづほ(旅するはらっぱ


WEBでもECOさん!⑯ 大口さんファミリー(後編))

2014-07-31 | 日記
●WEB版 ECOさんが帰る場所⑯ 
◆道南の森へ、ようこそ。(後編)

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さて、後編では、陽平さんのご両親、治さんと静枝さんのお住まいにおじゃましてみましょう。

メインの玄関スペースを通って、息子さんファミリーの棟と反対側へ進むと、治さんと静枝さん世帯の玄関が。

こぢんまりとした空間は、静江さんのお気に入りが並ぶギャラリーコーナー。一つ一つにいろんな思い出物語が詰まっていそうな、楽しいスペースです。


こちらは、玄関からつづくリビングルームとダイニングキッチン。必要な空間がコンパクトにまとまっていて、お掃除もカンタンそうですね。


勝手口に通じるガラス戸には、目隠しも兼ねて切り絵の作品が。趣味のアートが暮らしにすんなり活かされていて、心がニッコリ和みます。

あとは、ゆったりした寝室と、必要充分な浴室とトイレが完備。息子さんファミリーの棟と違って、こちらは平屋。雰囲気もしっとりと落ち着いています。


キッチンとユーティリティー空間の間にある柱には、お孫さんたちの成長ぶりが刻まれていて、これもひとつのアート作品のよう。

お孫さんたちとの温かい交流が一目でわかる“くらしのオリジナルアート”だな~と、思わずほっこりさせられました。


この日はちょうど、ふだんはオーストラリアに住む次男の真治さんが帰国していて、ご両親の世帯に滞在中。にぎやかで和やかな大家族の雰囲気が増していました。


無口な父上、治さんも、
「この家ができて最初に足を踏み入れたときは、あったかくて、木の匂いがいっぱいで、本当に感激でしたねぇ…!」
と、しみじみ笑顔。

「実はね…同居の提案を持ちかけてくれたのは、嫁の香織さんなんですよ。『お父さん、いっしょに暮らしませんか』ってね。もともとそんな気はなかったし驚きましたが、うれしくて感激しましたよ」

「嫁にそんなふうに言われちゃ断れないわよね~!も~お父さんは香織さんにメロメロなの」と、オチャメに笑う静江さん。

「でもね、香織さんはほんとに、優しくてあったかくて、い~い人なの。子育ても大変なのに、仕事しながらがんばっててね。私らにも本当によくしてくれるのよ。

でも、最初は私は同居には反対だったの。同居って容易なことじゃないでしょ。いくら二世帯住宅とはいえね。

でも、結果的にはほんとうに良かったと思ってます。香織さんが仕事に行っている間、孫たちの面倒も見れたしね。お互いによかったんじゃないかしら。

一緒にいれば何かと安心だし、楽しいしね。この家は本当に幸せな家だな~って思います。ほんと、おかげさまですね」



なんと各世帯の施行費は、きっぱり各世帯それぞれ独立会計だったそう。

「私らは質素に抑えたんだけど、一つだけ後悔してるのは、床材。息子たちのとこと同じスギの床にすればよかった!って悔やんでます。

うちはスギより安いブナ材にしたんだけど、ブナはスギより冷たくてね…息子たちの家の方に行くと、あったかさが全然違うんですよ。

家は値段だけで決めちゃダメなんだなぁ!って、つくづく思いました」


なるほど~!同じ北海道で育った木材でも、木の種類によって性質が全然違うんですね~!


娘さんたちも、年中ハダシでこの家を大満喫しているご様子。

長女の結月ちゃんは、西條さんが来る日は「学校を休む!」と言うほど専務のファンだそう。

一人で何役もこなす万能イケメン専務は、西條デザインの一級建築士・山田さんともども、どこへ行っても子どもたち“にも”大人気です(笑)。


「社長も専務もすごく感じが良くてアドバイスも的確でね、西條さんの言うことを聞いていれば間違いない。建てて8年経った今も何かとおつきあいがあり、いつも頼りにしています」
とのこと。

このシリーズではこれまで西條デザインさんのたくさんのお客さんたちにお話をうかがってきましたが、毎回、どんなに皆さんが満足されていて、西條デザインの人々を信頼しているかを思い知らされます。

家づくりは人の人生に大きく関わる責任重大な仕事ですが、これほどまでに、毎日大きな喜びと安らぎを人々に与えることができ、くらしの根幹を担う仕事は、そうそうないかもしれません。

建ててからがお付き合いの始まりで、お客さんとは一生のお付き合い、というスタイルも、自然素材という生きた建材で家づくりをしている西條デザインならではのスタンスなのかもしれません。

生きた素材に技と情熱が注ぎ込まれて生まれた空間でこそ人が持つ本来の力は輝き、「生きることを活かす=生活」が実践できるんだ。

赤ちゃんからその大大先輩の年代の皆さんまでがイキイキ暮らす大口ファミリーの日常を拝見し、あらためてそう実感したひとときでした。

8年たっても木の香りいっぱいの温かな住まいと、そこで楽しげに暮らす皆さんの笑顔に出逢えたご縁に、心から感謝いたします。

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◆photographer:蘒野孝行(GINO PHOTO WORKS)
(★の写真は、はらみづほ撮影)
◆designer:森川瞬(寺島デザイン制作室
◆writer:はらみづほ(旅するはらっぱ



WEBでもECOさん!⑯ 大口さんファミリー(前編)

2014-05-03 | 日記
●WEB版 ECOさんが帰る場所⑯ 
◆道南の森へ、ようこそ。(前編)

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GWを迎え、北海道も桜の季節。 

今回ご紹介するエコさんは、大口さんご一家。親御さん世帯と息子さん世帯、ふたつの家庭が仲良く暮らす、木の香りいっぱいの二世帯住宅です。

取材にうかがったときは、まだ雪が。晴れてはいたものの、とっても寒い冬の日でした。


おじゃましま~す!

…とメインの玄関を入ると、左手に親御さん世帯の玄関が。そして正面には…

うわ~!ご家族みなさんおそろいでお出迎え、ありがとうございます~!本日はお世話になります~!


おや?!冬なのに、みなさんハダシ…?!


★大口家のご長男・陽平さん(左)と、奥様の香織さん(右)。

「この床は道南杉の無垢板なので、ハダシでも冷たくないんですよ。スギは空気をたくさん含んでいるので、あったかいんです」


大口さんのお宅は、2005年に完成。柔らかな無垢のスギの木肌には、ヤンチャっ子たちの8年分のエネルギーが刻まれた、愛しい傷跡がいっぱい。

古くなるほど味わいが深まるのも、無垢の木の家の大きな魅力。この無垢材の床は大口ファミリーの歴史とともにみんなの素足に磨かれ、年々飴色に変化してゆくことでしょう。

「家の中に古民家のような日本的な空間がほしかったんです」とおっしゃる陽平さんのご希望通り、古材や地元の木をふんだんに使い、趣のある日本家屋デザインになっているこの玄関ホールは、親御さんご夫妻の住まいと陽平さんご夫妻の住まいをほどよい距離感でつなぐ“余白の間”

お子さんたちにとっては遊びの間で、お友達と一緒にゲームをしたり、走り回ったり、なんと縄跳びまでしちゃうそう。

大人たちにとっては、訪れたお客さんと話し込んだり、暑い夏の日差しを避けてゴロンと横になり、高い天井の梁を眺めつつくつろいだり。また、玄関との間の引き戸を閉めてふとんを敷けば、お客さんの宿泊ルームにも早変わりするとのこと。フレキシブルな七変化ルームとして活躍しているのです。


日本的な建築デザインには、情緒や美しさだけでなく、風土に合った実利もいっぱい。

珪藻土の壁、木目と格子の障子、道南スギの無垢材床と天上…と、断熱性や調湿効果を備えた土・木・和紙がふんだんに使われているので、冬あたたかく夏涼しい、湿気がたまらず通気がいい、など、実用性もバッチリなのです。

家の顔である玄関スペースがこんなに充実しているなんて…!と、はじまりからビックリですが、ここはまだ序の口。さて、次はまず、陽平さんと香織さん世帯のお住まいから拝見してまいりましょう。

うわ~明るい!大きな窓!床も天井も広々として、なんて気持ちいいんでしょう!

「以前はこの手前の低いテーブルを食卓として使っていて、ここでごはんを食べていたのですが、子供たちも大きくなってきたので少しレイアウトを変え、奥をダイニングスペースにして、こっちはゆったりつくろげるリビングにました」

なるほど~
壁で仕切られていない広々としたデザインだから、レイアウト替えもしやすそうですね。


「このテーブルの木の板は、隣町に住むおじさんからもらった新築祝いなんです。地場の木で家を建てる、というぼくらの想いを聞いたおじさんが、そういうことならぜひ使ってほしいとプレゼントしてくれてね。

おじさんは山を持っていて、自分でも山の手入れをしている人なんです。一枚板に見えますが、そう見えるように丁寧に木を接いである板でね、西條さんに頼んでテーブルにしてもらいました。

この家ができて以来、みんなでごはんを食べたり、子どもたちもここで宿題をしたり、このテーブルを毎日フル回転で愛用させてもらっています。おかげでもう傷だらけだけど、家族みんなの思い出が刻まれている大切なテーブルです」


うれしそうに語る陽平さんの言葉に、山の手入れをするおじさんの姿が目に浮かびました。



この部屋の床や天井も道南スギ。陽平さんご一家は、道南スギの森の中に住んでいるようなものですね。空気がやわらかく澄んでいて、心も体もラクチンです。

「望みどおり明るく広々した空間になって、とても満足しています」

とおっしゃる陽平さんに「この家は100点満点で言うと何点ですか?」と尋ねると、「100点です!」と力強い即答が。う~ん、スバラシイ!


こちらはキッチンスペース。すっきりしていて、使いやすそうな対面式です。

「月に2回くらいはこのキッチンの向こうのダイニングスペースで2世帯一緒にジンギスカンをするんですけれど、珪藻土の壁のおかげか、翌日にはすっかり匂いが消えてるんですよ」
と香織さん。

壁に油がハネても跡が残らないしね。西條デザインの専務が『オレも塗るのを手伝うから珪藻土の壁にしましょう!』とススメてくれた意味が、住んでみてよくわかったねぇ」
と、静枝さん(陽平さんのお母さん)も大満足のご様子。

珪藻(藻類の一種)の殻の化石を原料とする珪藻土の壁材は、天然成分より混ぜ物が多い商品などもたくさん出回っていて品質はピンキリだそうですが、大口家では上質な天然素材だからこその結果が、バッチリ出ているのですね。いや~これぞ自然エネルギーです!


「キッチンにいても和室の様子をうかえるので安心」と香織さん。客間のはずが、今はすっかりお子さんたちの遊び部屋になっているそう(笑)。


地元のもの、北海道のもの、日本のものに愛着を感じるという陽平さんに、「家づくりで西條さんに特に注文したことは?」と尋ねると、“地場材”を使うことですね」という答えが。


階段を上がったところに本棚が。1階のダイニングスペースは、吹き抜けで2階につながっています。

希望通り構造材も床も天井も地場材が使われましたが、実は大黒柱は、当時はふさわしいものが北海道産では手に入らず、やむなくカナダ産のものを使用することに。

「大黒柱が地場材じゃないのはショックでしたね。日本語が通じない!って(笑)。でも、この柱ももう8年もウチで暮らしてるから日本語を覚えたかな(笑)」
と陽平さん。

今では、日本の植林の森の活性化や、輸送エネルギーの節約を念頭に、まるごと北海道産の木の家づくりを実現している西條デザインさんですが、社長いはく、「昔は北海道産だけではなかなか理想的な材がまかなえず、安全基準を満たしている外国産の無垢材も使っていたんだよ」とのこと。

西條デザインも、大口さんのようなお客さんたちに育てられながら進化してきたのですね。


ビオプラス西條デザインと大口さんとの出会いのきっかけは、雑誌とホームページ。家のことを調べていた香織さんが見つけたのだそうです。

「問合せたら、遠いのに札幌から道南の我が家へ社長と専務がすぐ訪ねて来てくれて、伊達の専務の家や、設計士の山田さんの家を見せてくれたんです。

建てるなら木の家がいいと思っていろんなモデルハウスを見に行ったのですが、ピンとくるのがなくてね。

そんなときに西條デザインさんを知って、実際に人が住んでいる家をいくつか見せてもらって、見るたびにピンと来て、どんどんハマッていきました(笑)。

家と一緒に西條デザインの方たちの人柄も見て、やっぱりここだ!と決めたんです」
と陽平さん。


2階の子ども部屋。勉強机も、西條デザインによるオーダーメイド。


スライド式の木の扉を開くと、作り付けのタンスや棚が内臓された収納スペース。扉を閉めればお部屋スッキリです。

「最初はそれほど自然素材にこだわっていたわけではないのですが、いろんなモデルハウスを見に行くとイヤな匂いで頭が痛くなることもあり、自然に越したことないな、と思うようになりました。

西條デザインさんが建てた家は木の匂いがして、本当に気持ちよくて…。見せてもらうたびに『やっぱりこういうのがいいな』という想いが募りましたね。子どもたちを育てるのにも安心だし、自然素材の家にして本当によかったです」

と香織さん。


強力な子育てサポーターの母上、静枝さんも、
「赤ちゃんがいるから、ハイハイして床に口をつけたり、どこをナメても安心なのが助かりましたね」とのこと。

ナメても安全な家、という静枝さんの言葉に、自然素材の家の恩恵をリアルに実感。
化学物質がしみこんだ家が多いという現状は、考えてみれば恐ろしいことですね。


では、ひとまずここらで一区切りつけ、後編へ続くことにいたしましょう。後編では、静枝さんと治さんのお住まいを拝見します。

どうぞお楽しみに…!


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◆photographer:蘒野孝行(GINO PHOTO WORKS)
(★の写真は、はらみづほ撮影)
◆designer:森川瞬(寺島デザイン制作室
◆writer:はらみづほ(旅するはらっぱ



WEBでもECOさん!⑮ 石田さんファミリー

2014-01-11 | 日記
●WEB版 ECOさんが帰る場所⑮ 
◆どんな空気が、読めますか?

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お待たせしました! 

今年最初にご紹介するエコさんは、
ヤンチャ盛りの2人の男の子がいらっしゃる、石田さんファミリーです。


お、自然塗料のかわいいオレンジ色の扉と、
お庭の雰囲気がピッタリですね~

こんにちはぁ~(^O^)/

おぉ~ 木のい~い香りがしますね~
おじゃましま~す!

こちらの木材は、やっぱり国産材なんですか?

「ええ、国産というより道産材ですね。

 我家には、湿気に強いハルニレとか、
 この地域でとれた木材がふんだんに使われているんですよ」



なるほど~
西條さんのところで使っている天然木の道産無垢材は、
殺虫剤や消毒薬などが浸み込んでいる輸入材や、
薄くはいだ木を化学的な接着剤で張り合わせている合板と違って
安心ですし、雪国の厳しい環境に負けず丈夫に育った木
だと思うと、なんだか愛しいですね。



あら、おぼっちゃん、こんにちは。
ハダシなのね~ 気持ちよさそうだけど、冷たくないの?


ねぇ、そこで何してるの…?


何を持ってるの?

「息子が持っているのは、温度計です。
 床と天井の空気の温度を計ってるんですよ。
 
 ウチは空気の循環にこだわった設計をしているので、
 天井が暖かくて床が冷たい、ということがなく、
 家中どこでも常に温度が一定に保たれるように
 考えられているんです」


へぇ~ ほんとだ! 
床も天井も、20℃くらいですね。

ふつうはどうしても、床は冷たくなって、
天井の方に暖かい空気が行ってしまうものですが、
空気の流れを読んで設計すれば、
上も下も一定に保つことができるんですか~?!

それなら、冬の暖房や夏の冷房も、きっと節約できますね!




「そうなんです。ありがたいですよ~!
 
 これはペレットストーブで、
 実は、最初は、こことは反対側の階段の下に置こうとしていたんです。
 ちょうど、これを置けるくらいのスペースがあったんでね。
 
 でも、西條さんが頼んでいた空調に詳しい設備会社の方に、
 そっちに置くと空気の循環に反していて、
 いくらストーブを焚いても暖かくならないから絶対ダメ
だと反対され、
 窓の近くのこちら側に置くことになったんです。

 でもね、本当にその方の言うとおりで、こっちに置いて大正解でした。
 ちょっと焚くだけで部屋中あったかくなるし
 断熱と空調がしっかりしているので、
 パネルヒーターだけ微小につけておけば、
 真冬でもストーブはほとんど焚かなくていいくらいなんですよ」



「この家を建てて一番よくわかったことは、
 空気の流れを考えて設計することの大切さです。

 それまでは思いもよらないことでしたが、今は
 家づくりは、空気づくりなんだなぁと、つくづく実感しています。

 空気の流れを読んだ設計だと余分な設備もいらず
 快適性も段違いだと知ってビックリしました」



うわぁ~
換気や空調が大切なことは何となく知っていましたが、
そこまで重要だったとは…!

化学物質を極力使わない建物のクリーンな空気でも、
室内循環がスムーズでなければ、
くらしているうちによどんでしまいますものね。

空気が自然と室内をめぐっていれば、家の呼吸もスムーズで
湿気もたまらずイキイキ長持ち、というわけですね。

「実は以前はこの同じ場所に建っていた古い一軒家に住んでいたのですが、
 その時は湿気に悩まされましてね…

 カビもひどくて、ほんとうに大変だったので、
 この家の快適さが身にしみてありがたいんです」



なるほど、同じ土地でも、まったく違う家になったんですね!
それはビックリ。

空気の流れを考えた設計かどうかで、
くらしも気持ちも、大きく変わるものなんですね~!


さて、ではちょっと階段をのぼって、2Fを拝見してみましょう。

あら、2Fの3部屋は、一応壁で仕切られてはいるものの、
天井部分で一つにつながっているんですね。


こちらは、いちばん端の子ども部屋。
明るく広々シンプルで、使い勝手がよさそうですね。

天井部分に壁がないので、その下に仕切りがあっても
広々とした印象
で空気の流通も良さそう。

これも、空気循環のためなのですか?

「いえいえ、これは、息子たちが大きくなって家を出て行ったら、
 壁をとっぱらって一つの空間にしようと思っているからなんです。
 友人たちを大勢呼んで、みんなで盛り上がれるようにね(笑)」


おやおや、なんとも楽しそうな計画ですね!

地域交流や、福島の子ども達を受け入れ保養してもらう支援など、
人と人をつなぐいろいろな活動をされている英人さんですから、
きっとお友達も多いのでしょうね。

みなさんが集まっている楽しそうな様子が、
もうすでに目に浮かぶようです(笑)

時の流れやお子さんたちの成長とともに、
この家もまた、進化を遂げてゆくのですね。

なるほど、そんな未来の住まい方を見通した設計も、
家を建てるときの大切なポイントかもしれません。


こちらは、廊下を挟んでお向かいにある、英人さんの書斎。
壁の珪藻土は、ご自身で塗られたそうです。

窓の向こうからは外が見晴らせ、男の隠れ家、という感じ。
足元に小さなパネルヒーターがあるだけですが、
冬も充分、暖かいとのこと。

「夜、この部屋で酒をチビチビやりながらレコードを聴くのが、
 至福のひと時なんです」


…と英人さん。
なるほど、棚の片隅にターンテーブルを発見。
この空間はオーディオルームにもなる、というわけなのですね~


2Fの一番奥にあるこちらのお部屋は、奥さまの智子さんの和裁部屋。
着物の「裁ち板」や桐の箪笥が、凛とした空気をかもしだしています。

お子さんたちが生まれる前までは、
和裁のプロとして呉服店から注文を受けていたという智子さんは、
なんと、息子さんたちの肌着や服などもお手製だそう。
いや~さすがです!

もちろん、衣類のみならず、食品も手づくり派で、
智子さんのたっての願いは、「食料庫を持つこと」だったのだとか。

1Fのキッチン横にある扉を開けると…

念願叶って、そこは、食品庫。

電気を使っているわけでもないのに、
北側に配置していることや、
この空間だけ断熱材を使わない仕様にしたこと
などで、
空気がヒンヤリしています。


梅干し、お味噌、お漬物…など、お手製の保存食がズラリ。
おいしいお宝部屋ですね!


何を使ってどう作られたかわからない商品を買ってくるより、
 自分で作る方が気がラクなんです。


 子育てって“食べさせること”だな~ってつくづく思うんですね。

 今はとにかく、少しでも安心なものをきちんと食べさせることが
 私の仕事だと思っています。

 和裁は、子育てが終わってからのお楽しみですね(笑)」





そんな智子さんに影響を受け、
結婚前は全く関心がなかった草木染めや畑作業
智子さんとともに始めたことがきっかけで、
だんだんエコライフに目覚めてきたという英人さん。

お庭にももちろん家庭菜園があり、
草木染め用の藍も育てているそうです。


西條さんのことも、
「自然染料作り講座」の主催者から紹介されたのだとか。

知り合ってすぐ自然素材のタンス作りを依頼したことがきっかけで、
前の家のリフォームから今回の新築に至るまでの
おつきあいが始まったそうです。


「西條さんの会社に家づくりをお願いしてよかったことは、
 何といっても、“ほんものの家づくり”
 身近で見れたことですね。

 家にかかわるいろんな分野の職人さんたちの手仕事や技量
 を目の当たりにし、感動しました。

 それぞれのプロが、一生懸命つくってくれた家に住んでいる。
 そのことが誇らしく、とても嬉しいです」


と英人さん。

地産の天然木材や、ほたて漆喰など、
自然から生まれたさまざまな建材たちの息吹、
大工さんや設備屋さんなど、それぞれの職人たちの呼吸、
それらの資質を一つの空間に結実させる、設計士の手腕…。


活力あふれる様々な息遣いと手仕事エネルギーが溶け込むこの家の空気は、
ここで呼吸を重ねる石田家のみなさんにも、
きっと影響していることでしょう。

「空気の流れを読む」大切さが、新しく胸に刻まれた気がします。

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◆photographer:蘒野孝行(GINO PHOTO WORKS)
(★の写真は、はらみづほ撮影)
◆designer:森川瞬(寺島デザイン制作室
◆writer:はらみづほ(旅するはらっぱ