今日は建物の位置、基礎の高さ、水平を決める作業である「地縄張り・水盛り・遣り方」を見学させてもらった。この記事をまとめるに当たって、『和風デザイン図鑑 CD-ROM付改訂版』(p52-54)や『棟梁に学ぶ家 図解 木造伝統工法基本と実践 第二版』などを参考にした。
地縄張り
まず、敷地の境界線に張った糸から、配置図に基づいた建物の大きさに水糸を張る。今回は基準にした境界線(写真右下の境界標からの線)がちょうど直角に交わっていたため、境界線に張った糸から平行の線を引くだけで、比較的簡単に地縄張りができたようだ。
遣り方
次に、建物の大きさから約2尺外回りに遣り方の四隅の杭を打ち水糸を張る。そして、貫板(12尺)を糸にそって継ぎ目を確かめる。継ぎ目に必ず杭を打ち込み、間隔を見ながら杭を打っていく。今回は継ぎ目の間に1本ずつ杭を打った。
水盛り
古くは水盛り台や鴨居に水を入れて水平を見たそうだが、今回は赤外線レベルを使った。まず、高さの基準となるベンチマークを選ぶ。今回は向かいのマンションの花壇を使用。受光器の高さを調整して、ランプが緑、ブザーが連続音になれば、本体と水平になる。レベル棒を固定すれば、棒の下端がベンチマークと同じ高さになる。
この後、地盤面の高さをベンチマークから何ミリ下げるかを棟梁と設計士さんが話し合って決めた。台風の時、敷地に水たまりができたので、地盤面を少し高めに設定してもらった。地盤面から基礎の高さ300mm+100mmを測れるように、レベル棒を切って短くした。後は、赤外線レベルの本体と受光器を通信させて、全ての水杭に水貫上端の印を付ける。
水杭の印の位置に水貫を回して、固定する。補強のため筋違い貫も取り付ける。
水貫を回して固定
直角を出すには、三平方の定理を利用した大矩(おおがね)ではなく、カネピタを使っていました。底辺が同じ二等辺三角形の頂角を結ぶと底辺と直角に交わる原理を利用している。
遣り方に柱芯墨を印して、釘を打ち、水糸を釘に引っかけて張る。最後に、2つの対角線の長さを測り、同じなら完了。この家は正方形なので、遣り方は四隅のL字型部分だけあればよいのだが、基礎屋さんが型枠をセットしやすいように、四角形にして910mmごとに印をつけていた。
最後に冬の渡り鳥「イスカ」に会えるかと思ったが、最近は遣り方から基礎工事まですぐに終わってしまうこともあり、あまり重要視されておらず、建築業界では絶滅危惧種に指定されているらしい。
遣り方完了