みなさん。こんちには。今週は前回からの続き、当院の療育活動、リハビリ介入について話させていただきます。
まず、みなさん、療育活動とは何でしょうか。
療育訓練室の中にあるスヌーズレン室(ハロウィン仕様)
療育活動も私にとって初めて聞く言葉でした。
療育とは、治療の”療”と保育(教育)の”育”で『療育』です。肢体不自由児の父と言われた高木憲次氏に由来するといわれ、昭和17年から使われている言葉だそうです。
言葉通り、治療と保育(教育)なのですが、厚生労働省の児童発達支援ガイドラインによると、「児童発達支援は、障害のある子どもに対し、身体的・精神的機能の適正な発達を促し、日常生活及び社会生活を円滑に営めるようにするために行う、それぞれの障害の特性に応じた福祉的、心理的、教育的及び医療的な 援助である。」とあります。自立へ向けた支援と、共生できるような積極的な支援や援助であったり、社会が共生できるように歩み寄る環境作りをする、そのための活動が療育であるといえるのではないでしょうか。
その療育活動の一つとして、リハビリも関わっているわけです。
- リハビリの目的
重症心身障害児は、運動障害が重度であることに加えて、数多くの重複障害、二次的合併症が最大の問題点になると考えられています。
そのためリハビリの目的は
・変形・拘縮などの二次的合併症の進行を予防すること。生活障害の悪化を防ぐこと。
・リラックスできる姿勢や環境を作ること。精神的な安定を提供する。
・能動(自発)的な運動が増えること。楽しい遊びや成功体験の積み重ねていくこと。
・色々な体験をたくさんすること。社会性や情緒面の発達に着目した、人の交流を通じての働きかけを行うこと。
などが主なリハビリの目的となってきます。
実際、私がリハビリテーションを介入する際は、いかに彼らが安楽に日常を過ごせるかを念頭に関わらせていただいています。またコロナ禍でなかなか面会に来る事ができないご家族が、安心して任せていただけるように、ご意向に沿えるようなリハビリを心掛けています。
具体的には、①関節拘縮などを起こさないように関節可動域訓練、②呼吸循環がスムーズに行えるように胸郭の可動域維持拡大や呼吸介助、体位・姿勢からの排痰介助、③緊張をほぐすリラクゼーション、④臥位・寝返り・腹臥位・座位などのエクササイズや、そのためのポジショニングを作ること、を主に行なっています。
特にポジショニングはリハビリにとって重要な一つとなっています。
例えば、寝ている時の姿勢。簡単にいえば寝ている時に身体と床との接地面が多ければそれだけ安定感があり安心して寝られますが、彼らの多くは何らかの影響で背骨が変形したり、あるいは関節が脱臼していたり、ある特定の筋肉が強張ってしまって姿勢が崩れている人が多いです。そして自分で動けない人がほとんどです。そのような人たちにクッションなどを用いて、接地面を増やすことで安心して眠りを提供できるように行ったりしています。
また、座位姿勢ひとつとっても色々な座り方があるわけですが、頭の傾きや背骨の歪み方、あるいは骨盤の傾き加減一つで緊張の仕方がずいぶんと変わってきます。もっと細かくいうと日々のコンディションによって緊張の仕方が変化しています。そのなかで、いかにリラックスできる姿勢をつくれるかが自分に問われている、といつも感じています。また逆にわざと倒れそうに誘導して倒れないように立ち直ろうとする反応を引き出すように刺激したり、普段使っていない筋肉を使わせるように、なるべくアンバランスな筋肉の働きが是正できるような刺激や感覚を入れたりしています。
さらには、日常生活に必要な種々の姿勢をとることが困難な彼らに対し、姿勢の保持を補うために工夫された、姿勢保持装置の作成、調整なども行っています。コルセットなどの補装具の一つとして、臥位・座位・立位などの姿勢保持装置があります。
その姿勢保持装置の中には、車輪を付けて移動手段としても使用したりもしています。
さまざまな姿勢保持装置
座位保持装置の作製風景
重症心身障害児リハビリとは、整形外科リハビリとはまたちょっと違う、小児や呼吸器・循環器だったりと新しい知識や技術が必要になり、また彼らと毎日接していると新しいことをいくつも発見でき、私自身にとって刺激が多い毎日を過ごさせていただいています。リハビリは日々勉強だと改めて実感しながら、彼らの最高の笑顔をもとめて日々を送っています。
いかがでしたでしょうか?これを読んで、なんとなく重症心身障害児とリハビリの関わりってこんな感じというのがわかっていただければ幸いです。
当病院5階からの夕焼け(晴れると富士山も見られます)
―――引用・参考文献――――
江草安彦・岡田喜篤・末光茂・鈴木康之 重症心身障害療育マニュアル 医師薬出版;1998
金子断行・花井丈夫・平井孝明・染谷淳司 実践に基づく重症心身障害児者の理学療法ハンドブック ともあ;2021
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