源氏物語の男たち(4) 前坊(ぜんぼう)

2009-03-17 23:07:39 | 源氏物語
源氏物語では前坊(ぜんぼう)は六条御息所の夫を指します。

坊は皇太子(東宮、春宮)のことですから、前坊は「帝に即位することなく亡くなった皇太子」という意味になります。
六条御息所は16歳で皇太子に嫁ぎ、20歳のときに夫に先立たれて、娘(後の秋好中宮)と共に宮中を去りました。
実家が六条にあったため、六条御息所(ろくじょうのみやすんどころ)と呼ばれることになります。

前坊がどのような人であったかはわからないので、前坊の皇女である秋好中宮(冷泉帝の夫人)から推測してみましょう。

春よりも秋を好む・・・秋好中宮の名前の由来はここにありますが、前坊もそうだったとは言えないですね。
絵が上手だった・・・これはありそうです。 絵合の巻では、帝も秋好中宮も絵画が好きで自分でもお描きになったとあります。
母の六条御息所に画才はなかったようですから、これは父である前坊から受け継いだものと思われます。

光源氏は秋好中宮が美貌の持ち主であることを知って自分のものとしたかったのですが、
六条御息所の遺言・・・決して娘には言い寄らないで欲しい、には逆らえず、後見人の役目で我慢しました。

また光源氏は、紫の上との会話の中で「中宮はあまり才気走った人ではない」と洩らしています。
母の六条御息所は才気走った女性でしたから、似ていないと言っているんですね。
凡庸な人だから自分がきちんとお世話をしなくてはならない、ってちょっと失礼だと思います。

おっとりとした穏やかな人柄で、絵画に造詣の深い男性、私の想像する前坊はこんな人。
前坊は桐壺帝の弟か、あるいは朱雀帝の兄宮ですから、みかけは華奢な人だったと思われます。
早く亡くなったことを考えれば病弱だったのでしょう。
六条御息所にとっては少々物足りなかったかも。

未亡人となった御息所が、少なく見ても7歳年下の才気煥発な若い光源氏に惹きつけられたのは
仕方がないこと、運命だったんだろうなぁ。

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