「ニュルンベルク・インタビュー」

2006年01月18日 21時20分19秒 | 巻十六 読書感想
ニュルンベルク・インタビュー 上・下巻

河出書房新社

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ニュルンベルクで行われた、第二次大戦ドイツの戦犯に対する裁判。
その期間中に、拘留されている被告及び証人に対して精神科医が試みた、
個人対個人の「インタビュー」。

分厚い二分冊だが、字が大きいし、対話調でテンポがよいので、
意外とすんなり読めた。でも通勤の持ち運びは重い。

---------- キリトリ -----------

公判とは関連付けないことを前提とした精神科医の問いかけと、
それに対する被告たちの答え。
ゲーリング、シュペーア、ヘスとヘース(紛らわしい)、デーニッツ、”ゼップ”などなど、
終戦時に生きていた錚錚たる政治家・軍人・役人たち。

例えばユダヤ人大量虐殺について。
自分は知らなかった。終戦後初めて知って驚愕した。」
「聞いたことはあるが、自分にはどうにもできなかった。」
「全てはヒトラー、ヒムラー、ゲッペルス、ボルマンが考えたことだ。」
「むしろ自分はユダヤ人の命を救ったことがある人道主義者だ。」

…だいたいみんなこんな感じだ。

既に自殺して世にいない人間に罪を被せ、
開き直り、取り繕い、強弁…
それに対する精神科医ゴールデンソーンの反応も面白い。
努めて冷静に問答を進めているようで、実はムキになって追及したりする。
でもそれに対し、収監者たちは怒りを顕わにすることもない。
むしろ、孤独な収容所生活で、
個人的に話を聞いてくれる数少ない「お喋り相手」と考えてる場合が多そうだ。
実際、「彼ら」は、笑っちゃうほどに雄弁である。

それにしても、先に名前を挙げたヒトラー以下の「大罪人」が、
生きて裁判を受けていたら…と想像すると、残念な気も。

---------- キリトリ -----------

自分が古今東西で最も好きな軍人、マンシュタイン元帥も登場する。
東方領土(ロシア)において行われたドイツの残虐行為について、
知る由もなかったし、知ったとしても管轄外で何もできなかった、
というようなことを語る。
それが事実なのか彼の嘘なのか確かめようがないが、
文脈とか、他の囚人の思考パターンを考え合わせると、
かのマンシュタインでさえあざとい言い逃れをしていた可能性は高い。
残念といえば残念だし、
それが軍人の限界といえば限界。

---------- キリトリ -----------

みんながみんな同じ方向を向いて熱狂し、ともに焼き尽くされた当時のドイツ。
もちろん、「こちらの同盟国」も同様だ。
この書から学び取ることはたぶん少なくない。わが身の問題として。

隣の半島の北側のコソコソ外交している王様を擁くあの体制のことを、
我々は笑えるんだろうか。
窮屈な世じゃないだろうか。
「全て」が終わった後に、
「俺は知らなかった、どうしようも出来なかった」なんて、
醜い言い訳だけは自分はしたくない。
(それは言うほど簡単ではないかもしれないが。)
…だからせめて、時には声にしたい。

---------- おまけ -----------

映画「ヒトラー~最期の12日間~」と併せて読むと、相乗的に感慨深いかも。

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