浅田 次郎「蒼穹の昴(4)」

2007年12月02日 08時39分00秒 | 巻十六 読書感想
あ、そこで毛沢東か!
うーん、ちょっとゾクッときた。
読む人によっては無理矢理感が漂うところかもしれないが、
私は「やられたなあ」と感じた。

第1巻はこちら
第2巻はこっち
第3巻はこれ

この小説を読んでいて感じたのは、
日清戦争や戊戌の政変や
そういった重要なポイントが
リアルタイムの描写ではなく「後日談」として描かれていることだ。
最初は「ん?いきなり話が飛んだな」と思ったが、
この語り口はむしろアリじゃないかと思う。
歴史に入り込んだり、俯瞰したり。
そんな多様な視点が面白い。
袁世凱のその後を描かなかったこともよかった。

主人公、というか
追っているテーマがたくさんあったと思う。
文秀や春児の出世物語。
西太后の虚像と実像。
変法派と反変法派のせめぎ合い。
虎視眈々たる列強の侵略。
歴史の転換点に生きた、
ジャーナリストや芸術家。

もちろんフィクション込みを承知の上だが、
数多くの有名無名の主人公たちに
「歴史」の動く時をみた、
…なーんて言ったらカッコつけ過ぎかな(笑)

---------- 以下余計な話 -----------

私の名前の由来である朱厚照(明の武宗)は、
伝統に抗った不良皇帝と、後世評価されている。
でも、ひょっとしたら実像は
この小説に描かれている光緒帝さながらの進歩派だった可能性もある。

それが、歴史を記す側に握りつぶされ(或いは理解されず)、
史実として認識されない結果になってしまうことも有り得るのだ。

何が言いたいかと言えば、
歴史評価とか常識的史実などというのは、
歴史記述者の筆のフィルター越しの結果。
後世の我々は、
少なくともそれをマトモに受け入れることには慎重になるべきだ、
と、そんな感じです。

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