光のみちしるべ ~愛だけが現実~

私たちは皆、神様の子供。
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プロフェッショナル ~オリジナルこそ命~ ⑥

2007年02月23日 06時54分34秒 | プロフェッショナル
それはまさしく20分間の攻防だった。


限られた時間を有効に使うためには、
念密に準備から訓練終了までの段取りを行なう。
そのシュミレーションが確立されていないと事故につながる。
片麻痺の人が車椅子から降りてマットに横になるという行為だけでも、
技術的な修練を要する。
方法を間違えれば頭からマットに落ちてしまえかねない。
お互いの信頼関係がなければ出来ない。
ホットパックでさえも気をつけなければ低温火傷を起こしてしまう。
常にリスクと隣り合わせの訓練だった。

そのリハビリ訓練の内容は地味だ。
拘縮し固まってしまっている肩関節、肘関節、膝関節などの各関節をホットパックで温めたのち、
ゆっくりと可動域訓練を行っていく。
マット上で行う訓練はざっと以下の通りだ。

① 関節可動域訓練
② 体幹(たいかん)のひねり
③ 左右の寝返りから起き上がり
④ 筋力アップ訓練(腰上げ等)
⑤ バランス訓練(膝たち、膝歩き、座位バランス、起き上がり、立位バランス等)
⑥ 平行棒内歩行訓練(平行棒内での立ち上がり、歩行、方向転換)

訓練のメニューとしては多彩だ。
20分間ですべてが出来るわけではない。
その日の体調によって数を減らしたり、ときには休んだり、
とにかく無理しないことを心がけた。
その結果、日常の介護の場面にどんな変化をもたらしたか。

まず、ベッド上での寝返りが容易になったことで、
オムツ交換が楽に行えるようになった。
さらに腰を少し上げられるようになったことで、
さっと交換が可能になり、時間が短縮された。
(この時代、まだ紙おむつは登場しておらず、すべて布おむつだった)

次に寝返りから起き上がり、車椅子への移乗動作(トランスファー)介助が楽になったこと。
力まかせに本人を抱きかかえて起こさなくともよくなった。
ベッドで端座位になるときの位置と車椅子を置く向きをちょっとだけ工夫すれば、
ほとんど本人の力だけで立ち上がり車椅子に乗り移ることが出来る。
その応用は、車椅子からトイレでも可能だった。
こうなると寮母さんたちは適切な声かけと見守り程度の介護でよくなった。

また麻痺側の拘縮していた各関節が少し動く(開く)ようになったことで、
衣類の着脱が楽に行えるようになった。
浴槽の中でも握ったままの手指をゆっくり開くことで、清潔を保つことが容易になった。

他にもいろいろあるが、このように各介護の場面で、
その効果は目に見える形で現れ始めた。
このことに驚嘆したある寮母さんは、
いつしか私と一緒にリハビリ訓練を行うようになっていった。
またベッドサイドでのトランスファーの教えを乞う人も現れた。

このように施設内リハビリテーションは大きなうねりを起こし、
少数派から多数派となり介護の柱となっていった。
そして私は“出る杭”から、“出すぎた杭”となり、
打とうという者は誰もいなくなった。
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