Self Artificial life and multiagent system. 人工生命モデル(多分)
生命とは何か、という事を考える。
生命はいくつもの遺伝子を持ち、その遺伝子は科学的に証明しやすい比較的単純な役割を持っている。その遺伝子がお互いに相互作用を起こしつつ、マクロな(より高次な)生命としての振る舞いが表れ出ている。マクロでの振る舞いがさらに下位の遺伝子に作用し、また外界や他の生命ともかかわりあっており、開いたシステムでかつ自己を維持している。
それは複雑系であり、おのおのの遺伝子の機能がわかったからと言って、生命の振る舞いの説明は出来ないだろう。分子生物学の発展により、単純な要素としての、ミクロな生命現象が日々解明されているが、それと実際の生命の振る舞いとは大きなギャップがある。簡単に言えば、木を見て森を見ず、といった感じである。
そのギャップを埋めるには、いくつもの要素が自律的に、そして互いに干渉しつつ、更に大きな秩序を作り出す(創出、現れ出る、と言った方が良いのかもしれない)ことのメカニズムを考える必要があるだろう。そのモデルとして、コンピューターによるシミュレーションを行っている研究者たちがいる。
たとえば、セルオートマトンという計算プログラムなど。これは数学的なことで、僕の頭では具体的な事はよく分らないが、簡単な規則の組み合わせにより、複雑な生命が織り成すものに似た図形が描けると言うものらしい。その規則がもつパラメータ(これがよく分らないが)により、ある秩序をもったパターンが表れ出て、また無秩序なカオス状態になってしまったりするようだ。カオスになってしまわずに、複雑な秩序を持った状態となることをカオスの縁と呼ぶようである。さらに発展しコンピュータ上などで人工生命を作り出す試みもなされている。
このカオスの縁が生命と相似なのかは、議論の分かれるところだが、直感的には似ているように思う。生命はカオスの中から生まれ出てきたと思われるし、死というのは秩序が崩壊しカオスに向かう事に思えるから。
その表れ出た生命は振動のようなもので、出ては消える、すなわち生と死を、繁栄と絶滅を繰り返す。これは、カオス研究におけるカオス的遍歴と似ているように思う(といいつつあまりよく分っていないが・・)。
僕は癌の研究をしているが、この複雑系の中で癌を考えると、癌と言うのはただそこに悪い出来物が出来るというだけではなく、人体の生命システムの破たんと言う側面があるように思う。つまり、いくつかの遺伝子の機能不全が、生命システムの秩序を壊し、カオスになっていく現象なのではないか。逆に言えば、癌とは生命システムを崩壊させるような遺伝子異常の組み合わせであろう。これは、癌細胞だけに起こることもあるだろうが、正常な部分の機能不全、例えばある種の免疫系の異常なども要因となりうるだろう。
達観してしまえば、生命とは生と死を繰り返すもので、遺伝子がある一定の不安定性を持つ以上癌が出て来るのは自然現象でありしょうがないのかもしれないが、やはり人間の業と言うものが抜け切れないため、何とか癌を克服したいと日夜頭を悩ませている。
その為には生命システムを知ることが必要である。複雑系の考え方も大きなヒントになるかな、思った。