Dr. フロッガーのブログ

内科医フロッガーのブログです。

ノート下書きの転載

2024-02-18 | 雑記

4章 食す

その夜、友人と二人、部屋で新聞紙の上に取ってきた獲物を並べてみる。なかなか大きさも立派で形もきれいであるが、美味しそうではない。傷がついたところが青黒くなっていて、なんだか怪しいんである。
宿の部屋には自分で使える調理器具などはなく、いきなり台所を借りるのも変なので、この怪しいのを生食で行くしかないんである。
そもそも毒きのこなので、食べて具合が悪くなって病院に運ばれでもしたらどうしようという心配もある。
そんな心の葛藤もあるが、こういう時は勇気を持って、エイヤッと食べるしかない。とりあえず3本食べてみることにした。
まずかった。生のきのこ特有のカビ臭さ、生えてるところが生えてるところなので(どこなのかはググってください)その気持ち悪さもある。飲み込んだ後も胃からこみ上げてくるような気持ち悪さがあった。でも吐いたりはしなかった。お茶をたくさん飲んでなんとかごまかした。
しばらく20分ほど待つも、なんにも起こらない。友人と二人で、これ違うやつだったんじゃないの、なんて話していた。ふと外から波の音がするのに気づき、外の景色でも見ようかなと、がらっと窓を開けたところ、、、
自分が違う世界にいることに気がついた。

5章 体験する

窓の外の景色がやけに鮮明で、リアリティーが普段より数倍上がっている。隣の友人もどうやらそのことに気付いたようだった。これはキテるね、と二人で確かめ合い、部屋にいるのもつまらない感じだから、ちょっと海岸に行ってみようということになった。
海に向かう途中で、まず視覚が普段と違うことに気付く。色の明度と彩度が高くなっている。物の質感も変わって感じられる。やけにつるっとしてキラキラ輝いている。すべてのものが存在感を増し、自然の景色は美しさを増していた。
海岸に着くとそれは息を呑む美しさだった。その海岸は砂ではなく白いサンゴでうめつくされていたが、そのサンゴに月明かりが反射してあたかも銀河のようにみえる。つまり上も星空、下も星空と言う状況で、宇宙の中を散歩しているようだった。
月明かりに目がなれて海の方を見ると、水平線がまるごと地球、という大パノラマが目の前に広がっていた。空には明るい月がのぼり、月明かりが海水面にはしごのような模様を作っている。
海は普段よりも粘度を増しており、打ち寄せる波が流動するアメーバのように見える。ただそう見えるだけではなく、本当に巨大な生き物であるように感じられてくる。そして、その巨大な体の中に圧倒的な生命力を内包しているのが実感できる。そして自分がかつてそこから生まれでてきたのだということが感じられる。生命の誕生や海から陸に祖先が上がってきた時のビジョンが呼び起こされる。
空を見上げれば広大な宇宙に無数の星が輝き、どこまでも続く世界の奥行きが実感できて、その果てしなさに飲み込まれそうになり恐ろしくなる。すると星は輝きを増し、星と星が光で繋がり、星座が姿を表す。自分がいまここに存在している「世界」の偉大さと神聖さに畏怖し、自分もその中の一部なのだと確信を持つ。それは神秘体験であった。感情は今まで経験したことのない喜びに満ちてた。
何か重要で根源的な真実を理解したと感じた。
その時にどのくらい海岸にいたのかはわからない。時間の感覚はよくわからなくなっていた。そこにいる間に月の高さが変わっていたので数時間はいたのだと思う。
宿に戻り、友人とその強烈な経験についてお互いに話をした。6時間ほど経つと徐々に視覚の色鮮やかさが落ち着いてきて、少し眠たいような酔っ払ったような状態になり、バカ話をしてひとしきり笑った後に床についた。
(今思い起こしながらその経験を書いているが、言葉にできないことも多い。言葉にならなさも神秘体験の特徴というが、純粋な存在としての経験で、言語化された思考を超えているのだと思う。)


医療大麻の建設的な議論のための考察

2019-07-28 | 大麻-医療用


ツイッターで医療大麻についての議論を見ることがある。特に最近は医療者と大麻開放論者の議論が目を惹く。しかし、その議論は往々にして噛み合わず、しばしば両者が感情的となり後味の悪い結果となる。今まで接点があまりなかったところ、対話が行われるようになってきたのは有意義なことであり、出来れば建設的な議論が行われて欲しいと思う。

なぜ議論が噛み合わないのか、その大きな理由として、医師が考えている医療大麻と大麻開放論者(非医療者)が考えている医療大麻にズレがあるのではないかと考える。
医療大麻とは、、、大雑把に言えば病気の治療や症状緩和目的で大麻を使用すれば全て医療大麻なんだろうけど、その中にも色々なものが含まれる。それを上の図のように分類した。

A. 医療機関で処方される医療大麻
病院で処方される処方箋医薬品の様に使われる大麻、狭義の医療大麻といっても良いだろう。
例えば、難治性てんかん、多発性硬化症、神経障害性疼痛と言った専門的な治療が必要な疾患に対して、医者が診察して処方することを想定した大麻の使い方である。
B. 民間で入手される医療大麻
医療機関ではないところで使用者が入手して、主に自己治療的に民間療法薬として使われる大麻、これも医療大麻と言えるだろう。広義の医療大麻とも呼べる。
この利用法は医薬品として区分すると一般医薬品、すなわち町の薬局で購入できる薬となる。例えば、ガスターやロキソニンなどは町の薬局でも買えるが、病院に行くまでもないちょっとした不調の場合はよく利用する人もいるのではないだろうか。
これと同様に、ちょっとした不眠、痛みなどに大麻を利用することも想定できる。
c. 緩和ケアでの大麻
緩和ケアにおける大麻は少し特別な点があると考える。緩和ケアは良い最期を迎えるためにサポートする医療と言える。身体的な症状緩和とともにその人の精神面やスピリチュアルな面のケアも重要なのである。その点で緩和ケアでの大麻は痛み、不眠、食欲低下などの身体症状を緩和する目的だけではなく、より人間らしく暮らすために大麻の精神作用を利用する目的ももつだろう。ここは医療大麻とレクリエーション大麻の境界が曖昧な部分である。
分かりやすくアルコールの例を出すと、例えば最期に好きなお酒を飲みたい、という患者の希望に対して、身体的にはむしろマイナスかも知れないが、より人間らしく過ごしてもらうケアの一環でアルコールを適量飲むことを許す場面がある。大麻でもその様なことが想定されるだろう。

さて、ということで、なぜ 医師 vs 大麻開放論者の議論が噛み合わないのかに戻る。
それはフロッガーが思うに、ズバリ、医師は「A. 医療機関で処方される医療大麻」を想定し、大麻開放論者は「B. 民間で入手される医療大麻」を想定し議論しているからなのである。言い方を変えると、医師は自分が患者に処方することを想定し、大麻開放論者は自分が使うことを想定しているんである。

A. 医療機関で処方される医療大麻 について議論するのであれば、まず重要なのはその効果、その次が毒性である。その薬が処方箋薬として認可されるためには、臨床研究に基づいた効果の証明が必要なのである。いわゆるエビデンスに基づいた医療が重要となる。ツイッターでの議論では医師は大体においてエビデンスを持ち出す。1つの論文だけではなく、システマティックレビューやメタ解析も参考にして、本当にこの薬が効果的なのかを吟味する。既存の標準治療があればそれと比較する。また、医療機関で管理するので、毒性があっても利益が上回れば良いのである。

B. 民間で入手される医療大麻 について議論するのであれば、毒性や社会への害が最も重要になる。それを一般に売っていいの?ということである。これは嗜好目的大麻の議論と大部分オーバーラップするだろう。
医療目的で使用する根拠はエビデンスに基づく吟味ではなく、自己決定権や自己治療の権利である。ちょっとした不眠や落ち込みに大麻を使用して楽になった経験があり、害も大きくなく誰にも迷惑をかけていないので、自由に使わせて欲しい、という訴えなのである。
もちろん効果についてのエビデンスの蓄積も重要であるし、いわゆる素人判断の自己治療で重要な疾患の治療が遅れて悪化するリスクもある。ただし、メインの議題は害が許容範囲か否かなのである。

お分かりだろうか。イメージしている医療大麻が違うも議論の上での論点が全然違ってくるのである。これでは建設的な議論は出来ないだろう。お互いがどの様な使用法を想定しているのかをイメージすれば、論点は一致させていける。

その上で各論的な指摘をすれば、
A. 医療機関で処方される医療大麻
エビデンスレベルの高いデータがある疾患としては 多発性硬化症、難治性てんかん、神経障害性疼痛、次点としてはがん緩和医療 が挙げられるだろう。
真にエビデンスベースで考えれば、1st lineで用いるべき疾患は少ないだろう。2nd line以降の治療としては有用な疾患があるだろう。

B. 民間で入手される医療大麻
毒性や社会への害は日本国行政機関の見解よりも低いものである。
規制緩和をしている国や地域が増えており、絶対的に危険なものとは言えなくなっている。規制緩和した各地域の今後の動向を注目すべきである。害についてのエビデンスも蓄積されていくだろう。
自己決定権、自己治療権の主張はアングロサクソン系の国で強いだろう。一方日本では、お医者さんに任せる、という風潮がいまだに強い。しかし今後発展していくだろう概念であり、議論は重要と思う。
大麻がどの様な病気にも効くという主張には注意が必要であり、避けるべきと考える。その様なことはありえないし、オカルトやニセ医療の領域に入ってしまう。そうなると完全に議論は出来なくなる。

C. 緩和ケア領域については、人はどのように生きどのように死ぬのか、人間らしく生きるにはどうすれば良いのか、幸せに最期を過ごす権利について、といったスピリチュアルな議題が多くあるだろう。個人的には緩和ケアのスピリチュアルケアに大麻の精神作用を利用していく方法もあると思う。その辺も議論するには面白い点じゃないかなと思う。

などなど、皆さん仲良く喧嘩しなー。


小児がんに対する医療大麻の映画 Weed the people の感想

2019-04-25 | 大麻-医療用

大麻解禁を主張する人たちの間で weed the people という映画が話題になっていました。小児がんに対する医療大麻のドキュメンタリー映画です。

”はたして子ども達のがんは治るのか? 貴方自身の目で確かめてください。” と銘打っており、がん医療に携わるものとして見なくてはいけないなと思っていました。19年4/20に時間が取れたのでユーロライブというインディペンデント系の映画館で鑑賞してきました。

まず前提として、、、アメリカではがんの代替医療として大麻が行われることがあるようですが、最近の流行は大麻オイルのようです。Rick Simpsonという人が開発したRick Simpson Oil (RSO)と呼ばれるものがその源流です。高濃度で粘稠度が高い黒褐色のオイルをシリンジに詰めて用いています。また大麻の成分で重要とされるものはTHCとCBDですが、THCが主成分のオイルとCBDが主成分のオイルを2:1とか1:1とか症状に合わせてブレンドして使うようです。

大麻解禁論者の間では「大麻には抗がん作用がある」ということが広く信じられており、更には「がんに効く大麻が禁止されているのは製薬会社や医療業界が自分たちの薬が売れなくなるのを恐れて圧力をかけているためだ」とまで言う人が多くいます。私にはそれは真実とは思えませんが、映画も見ないで批判するのもどうかと思い、この映画をみて判断することとしました。

【総評】これは医療大麻のプロパガンダ映画だと思いました。5人の小児がん患者のドキュメンタリー部門が中核にあり、そこに医療大麻代替医療家、大麻医師、研究者のインタビューと、アメリカの大麻の規制についての解説などが挿入される作りになっています。病気と戦う子供の話であり見た人の心を揺さぶると思います。また、アメリカの大麻規制の矛盾について怒りを呼ぶ作りになっています。医療大麻問題の社会運動を盛り上げるプロパガンダ映画としては成功であろうと思います。しかし大麻の抗がん作用については弱いエビデンスしか示せていないと感じました。この映画から大麻が「奇跡のがん治療薬」というような結論は出せません。まあこれは映画であって医学論文ではありませんので当然ではありますが。

がんに対する効果には、腫瘍を縮小させる「抗がん効果」と痛みや吐き気などを取る「症状緩和効果」があります。
まず、抗がん効果がどうだったのかについて。2症例は最初に抗がん剤や放射線治療を行っていて、途中から大麻オイルを追加しています。最終的に腫瘍の縮小を認めています。また1症例は最初に大麻オイルのみで治療しましたががんが大きくなり、その後抗がん剤を追加したところ腫瘍が縮小しています。1例は抗がん剤を途中で中止しその後大麻を投与し腫瘍が縮小しています。1症例は大麻を投与するも残念ながら効果なく亡くなっています。
腫瘍が縮小した4例中3例は抗がん剤と大麻治療が併用して行われており、大麻単独の治療効果は不明です。1例は一度抗がん剤を中止してから大麻を使用しており大麻が抗がん効果を示している可能性もありますが、画像の経過や時系列の情報がないので前に行っていた抗がん剤の作用が影響したことも否定できません。以上から、大麻単独の効果は評価できないと思います。これらの症例から逆に抗がん剤が役立ったと主張も出来ます。実際に、小児がんは抗がん剤が効果的であることが多いです。Chemo the people-抗がん剤が救う命の物語、でも良いのではないでしょうか。
症状緩和については、抗がん剤の副作用や痛みでつらい状況で大麻を服用した2例において、患者が症状緩和効果があると述べており、有用である可能性があると思いました。彼らについては、大麻が抗がん剤の副作用を和らげることで抗がん剤をきちんと遂行でき、抗がん剤の奏効率を高めた、と言えるかも知れません。医療大麻はがん領域においては(というかあらゆる医療において)抗がん剤の代わりとなる代替医療というよりは、補完医療であると思います。
また、症状が緩和した症例のエピソードで、大麻医療家が「これで必ず良くなる」と患児を励まして寄り添う映像が印象的であり、大麻自体というよりはそのような献身的なケアが患者の心を癒した可能性もあるのかなと感じました。

大麻医療家の悪い点もあり、医療のトレーニングを受けていないのに医療者のように振る舞っている点や、効果が否定的なのに大麻にのみこだわりすぎて患者を大麻に縛り付けているかのような場面もありました。ここに出ていない症例もあるでしょうし、大麻をやることでかえって良くなかった例がある可能性も否定できず、客観的な立場からの研究報告が待たれると思いました。

 症例についての詳細を記憶とメモを頼りに以下にをまとめます。

【症例1】1才 神経膠腫(低悪性度) 脳腫瘍の症例。母親が抗がん剤に対して強い抵抗感を持ち、大麻医療家とともに大麻オイルによる治療を選択した。大麻オイルのみで治療を行うも、腫瘍が増大した。その後抗がん剤を行った。同時に大麻オイルを増量し併用した。映像では大麻オイル増量か抗がん剤の影響か、かなりふらついている様子であった。その後腫瘍は縮小し手術を行った。手術での病理検査で低悪性度である事が判明した。その後に化学療法を追加し、脳に嚢胞(水の詰まった袋状の組織)が残ったがサイズが変わらず経過している(1年間?)。なお母親は大麻が効いたと強く信じており、医療大麻のNGO活動を開始した。
考察 本症例は大麻のみで増大しており大麻単独の腫瘍縮小効果は認められていない。低悪性度の脳腫瘍であり基本的には手術が効果的であったと考える。また抗がん剤で縮小を認めたこともあり、抗がん剤も効果的であっただろう。
この子に大麻の効果があったのか疑問である。むしろ親の自己満足の面が大きいように思った。

【症例2】13才 骨肉腫 肺転移の症例。原発巣の骨の手術、その後に抗がん剤を投与した。しかし抗がん剤の副作用で食事が取れず痩せてしまった。その時に大麻オイルを試し、食欲が回復して元気を取り戻した。抗がん剤を遂行でき、肺転移は消失し元気に過ごしている。
考察 本症例はステージ4の骨肉腫、肺転移症例の5年生存率は10-40%である。厳しい予後ではあるものの比較的抗がん剤が効きやすい腫瘍であり、長期生存がないわけではない。
本症例における大麻単独の腫瘍縮小効果は不明である。注目すべきは抗腫瘍効果ではなく、大麻による吐き気と食欲の改善である。本人も直接効果的であったと述べている。これにより抗がん剤をやり抜く事が出来、治療が効果的になったのかも知れない。抗がん剤の副作用に対して大麻が効果的な可能性があることを示唆する症例である。

【症例3】10-14才 横紋筋肉腫。詳細は語られないものの横紋筋肉腫の標準治療をやっていたようである。抗がん剤を行なっていたようだが副作用と痛みのためかずっとソファーで横になっていた。前の症例と同様、その時に大麻オイルを試し、症状が改善して抗がん剤を遂行でき、また痛みに対して用いていた医療麻薬を減らす事が出来た。それによりQOLが改善した。治療を遂行しその後は再発なく学校にも通えている。
考察 前症例同様、大麻の腫瘍縮小効果は不明だが、大麻による症状緩和効果があり、麻薬を減らせたようである。
横紋筋肉腫の標準治療は手術と抗がん剤であるが、その予後は悪性度により違い、5年生存率低悪性度 80-90% 中悪性度50-80%程度である。本症例も抗がん剤をやりきれた事が良かったと考える。
【症例4】3才 腎芽腫 肺転移再発の症例。 抗がん剤を途中でやめて大麻オイル使用、肺転移消失した。
腎芽腫は小児腫瘍でも予後が良い。標準治療は手術、抗がん剤、放射線治療で、5年生存率は90%とされる。しかしこの症例は一度病気が消えた後に、しばらく経ってから肺に再発した。その後に抗がん剤治療を行うも副作用で中止し、大麻オイルによる治療を行った。幸運なことに腫瘍は消失し、元気に暮らしているようであった。
考察 腎芽腫は予後良好であるが、再発した場合の標準治療は定まっていない。通常は抗がん剤治療を行う。5年生存率は50%程度のようである。
本症例は途中で抗がん剤をやめている。その後大麻オイルを内服し、肺転移が縮小したとのことである。途中まで行なっていた抗がん剤が効いたのではないか、また、肺転移が本当に転移だったのか(肺炎などではなかったのか)など疑問な点はあるが、大麻が効果的であった事が否定できない症例である。詳細な経過を知りたいので症例報告してほしいと思った。5症例の中で一番気になる。

【症例5】8-10才 脳幹部膠芽腫
膠芽腫 が脳幹部にでき、主治医より予後が厳しい事、緩和的な放射線治療しかできないことを告げられ、大麻医師を訪問した。その後に大麻オイルによる治療を行なったが残念ながら亡くなった。
考察 膠芽腫非常に予後不良な脳腫瘍で、5年生存率は10%程度である。小児では脳幹部に起こる事があり、その場合は手術も困難である。放射線療法や抗がん剤が行われるが効果は限定的である事が多い。本症例では大麻オイルの効果も認めなかった。


性犯罪者に対する抗男性ホルモン療法

2018-07-22 | 自分メモ

調べた理由:新潟県議会が性犯罪者にGPSをつける意見書を可決。朝日記事
先日の凄惨な事件を受けてのことと考える。GPSの効果には異論があるようだ。
一方、性犯罪を病気として治療する試みも海外ではあり、カウンセリング、認知行動療法、抗男性ホルモン剤も行われるらしい。抗男性ホルモン療法の効果はいかほどなのか気になった。

キーワード 性犯罪者、抗男性ホルモン療法、化学的去勢、sex offender, chemical castration, parahiliacs, medroxyprogesterone

Effects of chemical castration on sex offenders in relation to the kinetics of serum testosterone recovery: implications for dosing schedule. Koo KC, Ahn JH, Hong SJ, Lee JW, Chung BH. J sex Med. 2014 May;11(5):1316-24

リュープリンを用いている。3ヶ月と6ヶ月の治療群がいる。両群とも性的な考えの強さや頻度が減少、マスターベーションの回数も減少、Wilson's Sex Fantasy Questionnaire (SFQ) scores も減少。3ヶ月群は中止後に反動あり。

Does sexual offender treatment work? A systematic review of outcome evaluations.
Schmucker M1, Lösel F. Psicothema. 2008 Feb;20(1):10-9.

レビュー。ホルモン療法は効果あり。

Medroxyprogesterone treatment for paraphiliacs. Kravitz HM, Haywood TW, Kelly J, Wahlstrom C, Liles S, Cavanaugh JL Jr. Bull Am Acad Psychiatry Law. 1995;23(1):19-33

メドロキシプロゲステロン(MPA)もよく使われるようだ。女性ホルモンの一種で合成黄体ホルモン製剤である。MPAも性衝動を抑えるとのこと。

ざっくりと調べた限りでは、完全ではないものの男性ホルモンを抑えることで性衝動は抑えられるようだ。認知行動療法などと併用して行うとよいのかもしれない。MPAとLH-RH analogがよく用いられている。


ブログ再開

2018-07-22 | 雑記

久々にブログを再開することにします。
以前は大麻関連がメインでしたが、そっちはちょっと控えめにして、気になった事や調べたことの備忘録的なものにします。


精巣腫瘍と大麻の関連

2015-04-19 | 大麻-その他

【2009年2月記事のupdateと修正】

大麻と精巣腫瘍についてのニュースがあった。

大麻使用、睾丸癌のリスク高まる可能性=米研究 ロイター

 シアトルにあるフレッド・ハチンソンがん研究所のスティーブン・シュワルツ氏らは、同地域に住む18―44歳の男性を対象に、睾丸がんを患う369人と、そうでない979人を比較。現在マリフアナを使用している人は、使用していない人に比べ、睾丸がんにかかる確率が70%高いことを突き止めた。
 10年以上マリフアナを使用している人や、週1回以上使用する人、18歳未満から使い始めた人が、最もリスクが高いとみられるという。

この原著はAssociation of marijuana use and the incidence of testicular germ cell tumors. Cancer誌. 著者はDaling JRらである。

この報告は、case-control studyである。
精巣腫瘍患者の大麻使用率と精巣腫瘍ではない対照群の大麻使用率を比較し、精巣腫瘍患者の方が現在の大麻使用率が高かった。オッズ比(OR)が1.7とのこと。(ORは相対リスクの近似値である。)
精巣腫瘍と大麻の関連について報告されたのはこれが初めてであり、インパクトがある。

2015年4月 update! 

他の施設より続報があった。

2011年NCIよりTrabertらが報告。
Marijuana use and testicular germ cell tumors. Cancer. 2011 Feb 15;117(4):848-53. 
187例のケースコントロール研究。上と同様の試験デザインである。大麻を日常的に使用しているもので精巣腫瘍が多いとの結果。オッズ比 2.2。

2013年University of Southern CaliforniaよりLacson JCらが報告。
Population-based case-control study of recreational drug use and testis cancer risk confirms an association between marijuana use and nonseminoma risk.2012 Nov 1;118(21):5374-83.
163例のケースコントロール研究。大麻経験者と非経験者の比較で大麻経験者で精巣腫瘍が多いとの結果。オッズ比 1.94。特に非セミノーマと関連するとのこと。

いくつかの報告で同様の結果が出ていることから、大麻使用と精巣腫瘍の関連はありそうである。
注意が必要と考える。
ただ、精巣腫瘍の発症率は人口10万人あたり1-2人と稀である。2倍程度増えることが真実とすると、男性人口の全てが大麻を喫煙した場合10万人あたり1-2人程度増える可能性があるということだが、これは実際の大きなリスクとは考えにくいだろう。

睾丸癌(精巣腫瘍)


アレロケミカル

2009-11-24 | 雑記

 この世界は弱肉強食であるとよく言われるが、それはある一面にすぎないと思う。植物を動物が食べる。いわゆる食物連鎖であるが、植物は弱いから食べられているわけではない。植物と動物はただ餌と捕食者の関係ではなく、そこにはコミュニケーションが存在すると思う。それは互いに閉じた自己ではなく、相手のことを考えているかのような共存関係がある。

 人間のコミュニケーションは言語であるが、自然界では化学物質によるコミュニケーションもある。個体内ではホルモンや神経伝達物質で細胞が「会話」している。同種間では、フェロモンというものを分泌して「会話」している。そして、異種間でも植物-昆虫などで化学物質を介した「会話」をしている。アレロケミカルと言うようだ。

アレロケミカル
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%A2%E3%83%AC%E3%83%AD%E3%82%B1%E3%83%9F%E3%82%AB%E3%83%AB

 人類は自然界とコミュニケーションできているだろうか?弱肉強食をキーワードに、ただ搾取するものと思っていないだろうか?
植物は我々に語りかけているのではないか。かつては、シャーマニズムやアニミズムの場で精神に働きかける植物を取り、精霊たちと交信をしただろう。

 煙草から神聖さをとりあげたのは誰なのか?
 http://native.way-nifty.com/native_heart/2009/02/post-95c2.html
 ペヨーテ伝説
 http://www.entheo.org/blog/?p=422

そして、花の香りはいつだって人を優しくするだろう。

それは、人間に対する植物の化学物質による語りかけ、アレロケミカルだと思いたい。

 人類は地球上で話し相手のいない孤独な存在なのか?地球のがん細胞でよいのか?
環境破壊が叫ばれる今だからこそ、植物の言葉ではないささやきを感じ取ることが必要となるのではないだろうか。

写真は、キダチチョウセンアサガオ。エンジェルストランペット、ダチュラの名でも知られる。ナス科で、アトロピン、スコポラミンなどのアルカロイドを含む。


生命システム

2009-05-11 | 医療

Self Artificial life and multiagent system. 人工生命モデル(多分)
 

生命とは何か、という事を考える。

生命はいくつもの遺伝子を持ち、その遺伝子は科学的に証明しやすい比較的単純な役割を持っている。その遺伝子がお互いに相互作用を起こしつつ、マクロな(より高次な)生命としての振る舞いが表れ出ている。マクロでの振る舞いがさらに下位の遺伝子に作用し、また外界や他の生命ともかかわりあっており、開いたシステムでかつ自己を維持している。
それは複雑系であり、おのおのの遺伝子の機能がわかったからと言って、生命の振る舞いの説明は出来ないだろう。分子生物学の発展により、単純な要素としての、ミクロな生命現象が日々解明されているが、それと実際の生命の振る舞いとは大きなギャップがある。簡単に言えば、木を見て森を見ず、といった感じである。

そのギャップを埋めるには、いくつもの要素が自律的に、そして互いに干渉しつつ、更に大きな秩序を作り出す(創出、現れ出る、と言った方が良いのかもしれない)ことのメカニズムを考える必要があるだろう。そのモデルとして、コンピューターによるシミュレーションを行っている研究者たちがいる。

たとえば、セルオートマトンという計算プログラムなど。これは数学的なことで、僕の頭では具体的な事はよく分らないが、簡単な規則の組み合わせにより、複雑な生命が織り成すものに似た図形が描けると言うものらしい。その規則がもつパラメータ(これがよく分らないが)により、ある秩序をもったパターンが表れ出て、また無秩序なカオス状態になってしまったりするようだ。カオスになってしまわずに、複雑な秩序を持った状態となることをカオスの縁と呼ぶようである。さらに発展しコンピュータ上などで人工生命を作り出す試みもなされている。

このカオスの縁が生命と相似なのかは、議論の分かれるところだが、直感的には似ているように思う。生命はカオスの中から生まれ出てきたと思われるし、死というのは秩序が崩壊しカオスに向かう事に思えるから。
その表れ出た生命は振動のようなもので、出ては消える、すなわち生と死を、繁栄と絶滅を繰り返す。これは、カオス研究におけるカオス的遍歴と似ているように思う(といいつつあまりよく分っていないが・・)。

僕は癌の研究をしているが、この複雑系の中で癌を考えると、癌と言うのはただそこに悪い出来物が出来るというだけではなく、人体の生命システムの破たんと言う側面があるように思う。つまり、いくつかの遺伝子の機能不全が、生命システムの秩序を壊し、カオスになっていく現象なのではないか。逆に言えば、癌とは生命システムを崩壊させるような遺伝子異常の組み合わせであろう。これは、癌細胞だけに起こることもあるだろうが、正常な部分の機能不全、例えばある種の免疫系の異常なども要因となりうるだろう。

達観してしまえば、生命とは生と死を繰り返すもので、遺伝子がある一定の不安定性を持つ以上癌が出て来るのは自然現象でありしょうがないのかもしれないが、やはり人間の業と言うものが抜け切れないため、何とか癌を克服したいと日夜頭を悩ませている。
その為には生命システムを知ることが必要である。複雑系の考え方も大きなヒントになるかな、思った。


アルコール

2009-04-25 | 雑記

アルコール。

人類にとって最も身近で、いろいろと語られることの多い嗜好品だろう。例えば、百薬の長という人もいるし、適度のアルコールは動脈硬化を防ぐと言われている。

一方、アルコールは多くの病気のもとともなる。
メルクマニュアル アルコール
健康診断などで肝障害(γGTPが高い人など)はほとんどアルコールによるものだし、アルコール依存症も思いのほか多い。

アルコール依存症。
いわゆるアル中。
例えば、こんな人は珍しくない。
ひどいアルコール性肝障害で入院。1-2日経つと、禁断症状(振戦せん妄)が出現し、手足は震え、幻覚・妄想状態になり、家に帰ると言って暴れる。(家に帰ると酒を飲んで暴れる・・・。)
ひどい場合には、食事もとらずに酒を取り続け、ビタミンB1欠乏のためウェルニッケ=コルサコフ脳症となり生命の危険にさらされる人もいる。
アルコール依存について知るには、中島らも氏の自伝的小説「今夜、すべてのバーで」が良い。この本は、自身のアルコール依存症について赤裸々に綴ったものだと思うが、深刻なことをユーモア交えて描かれており、ほろ苦くも面白い内容である。

ちょっと前に中川昭一氏が話題となったが、彼は依存症の可能性がある様に思う。

急性アルコール中毒
救急で良く出くわす。毎晩誰かが飲み過ぎで救急車で運ばれている事だろう。
バッカス状態でさんざん暴れて手に負えない人もいる。さらにひどい場合は、まったく意識がなくなる。(意識を失い、便失禁した若い女性を見たことがある。)
時々、転んで頭をぶつけていて、ただの酔っ払いかと思ったら脳出血だったという話も良く聞く。

アルコールの効果は、基本的に、脳神経の抑制であろう。それが、まず大脳から起こってくるように思う。つまり、最初は理性が抑制され、普段抑えられている下位の脳(本能)が現れ出てくる。これは、脱抑制といい、抑制が抑制されて興奮することをいう。(ややこしい。ブレーキが取れる感じか。)
場合によっては記憶をなくして暴れる。この状態は逸脱・犯罪行為のもととなる可能性がある。
その後、脳が全体的に抑制され、意識が消失する。さらにひどくなると、呼吸が止まり死にいたる。

草なぎ剛氏はおそらくアルコールの脱抑制によりせん妄状態に陥り、本人の意識なく動き回ってしまったのだろう。事故がなくてよかった。

僕も飲みすぎる事が良くある。失敗もある。ともかく、ほどほどが大切だろう。


NHKスペシャル 象徴天皇 素顔の記録

2009-04-11 | 雑記

昨日、NKHで天皇陛下ご結婚50周年を記念する番組が放送されていた。

象徴天皇 素顔の記録
http://www.nhk.or.jp/special/onair/090410.html

僕は天皇陛下に特別の思い入れがあるわけではないのだが、番組を見てその生き方に対してとても感動した。

天皇陛下は、政治に関わらない象徴天皇としていかに国民と関わるかについて、熟考され信念をもって行動されていると感じた。その背景には、昭和の初期から終戦までの時代、天皇陛下万歳と叫んで多くの若者が戦争で散った時代を心に刻みつけてのことであるだろう。

天皇陛下が第一とされていることは、国民の為に何をすべきかということであるが、政治に関わることは出来ない。
そして、その信念のもとの行動は、被災地を訪れ、困っている人に直接会い語りかけること、サイパンで慰霊し、被害者の家族や戦争孤児の人に直接会い語りかけることであった。
天皇ご夫妻は苦しんでいる人の苦しみを自分のことのように共感し、その辛さや悲しみを分担しようとしているようだった。その献身的な態度は、真に高貴な人間性を示すものであろうし、見習うべき精神であると感じた。

天皇は、日本を象徴し、また、象徴するべく信念を持って行動されている。
それは、日本国民を象徴する精神、目指すべき精神であろう。
天皇陛下の行動を見る限り、その精神は、まったく、国権的・右翼的思想とは異なるものである。
その精神は、傷つき苦しむ人の苦しみを共感し、ともに背負っていくという精神であり、それを象徴と出来るとは、なんと素晴らしいことであろうか。