【2009年2月記事のupdateと修正】
大麻と精巣腫瘍についてのニュースがあった。
シアトルにあるフレッド・ハチンソンがん研究所のスティーブン・シュワルツ氏らは、同地域に住む18―44歳の男性を対象に、睾丸がんを患う369人と、そうでない979人を比較。現在マリフアナを使用している人は、使用していない人に比べ、睾丸がんにかかる確率が70%高いことを突き止めた。
10年以上マリフアナを使用している人や、週1回以上使用する人、18歳未満から使い始めた人が、最もリスクが高いとみられるという。
この原著はAssociation of marijuana use and the incidence of testicular germ cell tumors. Cancer誌. 著者はDaling JRらである。
この報告は、case-control studyである。
精巣腫瘍患者の大麻使用率と精巣腫瘍ではない対照群の大麻使用率を比較し、精巣腫瘍患者の方が現在の大麻使用率が高かった。オッズ比(OR)が1.7とのこと。(ORは相対リスクの近似値である。)
精巣腫瘍と大麻の関連について報告されたのはこれが初めてであり、インパクトがある。
2015年4月 update!
他の施設より続報があった。
2011年NCIよりTrabertらが報告。
Marijuana use and testicular germ cell tumors. Cancer. 2011 Feb 15;117(4):848-53.
187例のケースコントロール研究。上と同様の試験デザインである。大麻を日常的に使用しているもので精巣腫瘍が多いとの結果。オッズ比 2.2。
2013年University of Southern CaliforniaよりLacson JCらが報告。
Population-based case-control study of recreational drug use and testis cancer risk confirms an association between marijuana use and nonseminoma risk.2012 Nov 1;118(21):5374-83.
163例のケースコントロール研究。大麻経験者と非経験者の比較で大麻経験者で精巣腫瘍が多いとの結果。オッズ比 1.94。特に非セミノーマと関連するとのこと。
いくつかの報告で同様の結果が出ていることから、大麻使用と精巣腫瘍の関連はありそうである。
注意が必要と考える。
ただ、精巣腫瘍の発症率は人口10万人あたり1-2人と稀である。2倍程度増えることが真実とすると、男性人口の全てが大麻を喫煙した場合10万人あたり1-2人程度増える可能性があるということだが、これは実際の大きなリスクとは考えにくいだろう。