8/27 シベールアリーナ C列
<作>井上ひさし
<演出>栗山民也
<出演>藤原竜也 北村有起哉 大鷹明良 松田洋治 朴勝哲
熊谷真美 内田慈 吉田鋼太郎
雪の降る寒い夜更け。両国橋にある蕎麦屋『二八そば』の障子を叩き駆け込んで来た2人の男。
狂言作者の新七(吉田鋼太郎)とざる売りの五郎蔵(藤原竜也)は、お互いが川に身を投げようと
していたのをお互いに引き留めあったと言う。蕎麦屋の主・とら(熊谷真美)に自分の境遇を話す
うちに次第に心を通わせた2人は、1年後の同じ日に『二八そば』で再会しようと約束する。
そして1年後、『二八そば』に集まったのは新七と、売れない噺家の三遊亭円八(大鷹明良)、貧乏
浪人の及川孝之進(北村有起哉)、五郎蔵が無実の罪で島送りになり、そこで五郎蔵の弟分だったと
言う久次(松田洋治)。その日、店におせんと言う少女が置き去りにされており、とらはみんなで株仲間を
作りお金を出し合い、おせんを育てようと提案する。
月日は流れ、おせん(内田慈)は美しく成長し万博の手伝いでパリへ、株仲間たちもそれぞれ出世し
全てがうまく行っていた。しかし時代が明治へと変わり、他の株仲間たちが洋服に着替え開化だと
浮かれていても、新七はその変化に疑問を感じ、徐々に仲間たちや時代との間に距離が生まれていった。
しかし、株仲間で作った銀行が破綻し、全てを失い川へ身を投げようとした株仲間たちを温かく迎え
入れたのは、新七ととらの後を継いで『二八そば』を切り盛りするおみつ(熊谷真美)だった。
折りしも株仲間を作った日と同じ寒い夜、外では置き去りにされた赤ん坊の泣き声が聞こえていた…。
6月初めに友の会の先行予約のチラシをもらってから、ずっと楽しみにしていたこまつ座公演
フライング気味に申込のFAXを送ってみたり、チケット取れたか確認のメールをしてみたり…
かなり迷惑なお客だったなと今は反省
とにかくどうしても見たかったので必死だったのです
もとは鋼太郎さん、藤原さん、北村さんで新作を上演する予定だったのが、井上さんが病に倒れたため
急遽『黙阿彌オペラ』の再演になったそうなんですが。
掛け合いのテンポの良さが素晴らしく、チームワークが感じられる素敵な舞台でした
こまつ座の舞台を見るのは3作目ですが、私が見た作品はどれも普通の人たちが普通の生活を一生懸命
生きていて、井上さんの、人に対する温かい目線が印象に残っています
主人公の新七も、日々の生活を送るのに精一杯な庶民を主人公にした作品が多いらしく、時代の流れに
翻弄された株仲間たちを優しく見守る新七は、井上さんと重なるところが多いのかもしれません。
そんな新七役の鋼太郎さんは“
ガマザリ”以来2回目。
大貫の時は憎たらしい頑固じじいでしたけど、今回は優しくて思いやりに溢れた狂言作家。
優しい鋼太郎さんも素敵です(笑)
でもシリアスなシーンでの迫力はやっぱりすごかった
五郎蔵役の藤原竜也さんも“
ライフ・イン・ザ・シアター”以来2回目。
いや~圧巻でしたよ
血の気が多くてお調子者の五郎蔵。今までの私の中での藤原さんのイメージにぜんぜんない役
でしたけど、藤原さんの、演じることの熱みたいなものに引き込まれる感じでした
ただやっぱり、銀行家になった時が一番しっくり来て格好良かったですけど(笑)
及川孝之進役の北村有起哉さんは初見。前から気になる役者さんだったので拝見するの
楽しみにしてました
手足が長くてスタイル良し!声がまた低くて渋くて格好良し!
テレビでは冷たいとか暗いとかそんな役が多いような気がするんですが(偏見?)
舞台では全体的にコミカルな動きや表情が多くて、またそれを飄々とこなしてしまう器用さもあって
テレビとは違った魅力全開の素敵な役者さんでした
今回はフライング気味のチケット申込が効いたのか結構前の席で見れまして(笑)
役者さんとの距離が近い分、力も入ったけど熱気も感じてわくわくしました
お芝居の中に、おせんが言う“ご恩送り”って言葉が出てくるんですが
自分が受けた恩を別の誰かに送る。その人はまた別の誰かに恩を送る。そうして恩が世界を回っていく。
何のために生きているのかと思うとき、自分が何の気なしにしたことが自分でも気付かないうちに誰かの
ためになっていて、そういうことで世界中が回っていると思えれば素敵なんじゃないかと思います