寺子屋ぶろぐ

日記から身近な法律問題の解説まで。

自筆証書遺言の身だしなみ⑨(訂正方法)

2010年05月19日 | 自筆証書遺言

民法968条第2項は言います。

「自筆証書中の加除その他の変更は、遺言者が、その場所を指示し、これを変更した旨を付記して特にこれに署名し、かつ、その変更の場所に印を押さなければ、その効力を生じない」

自筆証書遺言書の訂正方法の要件は、上記のとおり、4つです。

①加除その他の変更の場所を指示すること。
②その指示した場所を変更した旨の記載をすること。
③変更した旨の記載に加えて、署名をすること。
④変更をした場所に押印をすること。

と、書かれても分からないですよね。
なので、具体例です。

     遺 言 書

一、次の建物を妻に相続させる。

 所  在 市川市本八幡一丁目○○番地△△
 家屋番号 ○○番△△
 種  類 居宅
 構  造 木造かわらぶき2階建
 床面積  1階 123.00平方メートル
      2階 123.00平方メートル この一行六字削除五字加入
           29.25            野子詩 太郎

平成●年▲月■日

千葉県市川市本八幡一丁目○番△号

                遺言者 野子詩 太郎

赤い個所が訂正に必要な部分です。

①と②が「この一行六字削除五字加入」という部分です。
③が赤字の「野子詩太郎」の部分です。
④が「29.25㊞」の部分です。

自筆証書遺言の訂正の場合には、訂正箇所に訂正印をボンと押しておしまい、ではダメです。

そして、きちんと訂正方法に則ったやり方でないと訂正の効力が生じないとされています。
最悪の場合には遺言書そのものが無効になる可能性があります。

しかし、この訂正方法は、あまりにも厳格すぎます。

そこで、訂正方法が間違っていても遺言の効力に影響を及ぼさないと判断された裁判例もあります。

訂正方法の誤りがあるのが、
付随的記載又は補足的記載と考えられる部分についての場合には、その部分を除外しても遺言の趣旨に影響がないのであれば、遺言としての効力を否定することはしないという判断がされました。

とはいっても、訂正するのであればきちんと訂正をするようにしましょう。
また、できれば訂正はしないで作成しましょう。

遺言書は、何度、書き直しても構わないものです。
じっくり書いてみるのが良いかと思います。

・・・「自筆証書遺言の身だしなみ⑩‐1(開封と検認)」につづく。