寺子屋ぶろぐ

日記から身近な法律問題の解説まで。

自筆証書遺言の身だしなみ⑩‐1(開封と検認)

2010年05月20日 | 自筆証書遺言

今回は、開封のご説明です。
この手続は、次回ご説明する検認の手続と一緒に行われるのが通常です。
したがって、そちらと併せてお読みください。
なお、開封・検認ともに、公正証書遺言には適用がありません

では、本題です。

自筆証書遺言の保管は、自己責任です。
自宅の仏壇等の引き出しに入れて保管することも考えられます。

この場合、考えなければならない事は、改ざんの可能性へのケアです。
「改ざん」などと大げさに考えなくても、遺言書の内容は非常にデリケートなものです。

したがって、遺言書を作成したら
封筒に入れましょう
遺言書に押印した印鑑で封印もしましょう。

さて。
封筒に入れられ、封印が施された遺言書には、次の規定が適用されます。

民法第1004条3項
「封印のある遺言書は、家庭裁判所において相続人又はその代理人の立会いがなければ、開封することができない。」

「できない」と言われても、勝手に開けちゃう場合もあります。
その場合には、この規定が適用されます。

民法第1005条
「・・・家庭裁判所外においてその開封をした者は、5万円以下の過料に処する。」

過料というのは、民事罰の一種で、罰金のことだとお考え下さい。

なんだ、5万円かと侮るなかれ、です。
更に、家庭裁判所外で開封しちゃった人が相続人だった場合、相続欠格に発展してしまう可能性もあります。
「勝手に開けたってことは、偽造でもしたんじゃないの?」とか、「書き換えた(変造)んじゃないの?」などと疑われても仕方がないとですよね。

したがって、相続が開始し、封印のある遺言書が出てきたのならば、速やかに家庭裁判所での開封の手続をとりましょう。

また、上の条文(1004条3項)では、「…相続人又はその代理人の立会いがなければ」開封できないとされていますが、実際の運用は、ちょっと違います。

家庭裁判所に、封印のある遺言書を開封してくださいという申立てをします。
すると、家庭裁判所から相続人全員に、呼出状が発送されます。
「いついつを開封(検認)の期日に指定したので家庭裁判所に来て下さい」という葉書です。
これを貰った相続人が実際に家庭裁判所に来なくても、開封の手続は行えます。

「…相続人又はその代理人の立会いが(可能であるような機会をつくら)なければ」開封出来ないという事です。

要は、みんなに葉書で立会いのお知らせをしたのだから、あとは、来ようが来まいが開封しますよ、という事です。

また、冒頭でもご説明しましたが、この手続は、遺言書の検認の手続と一緒に行われます。

したがって、申立書や必要書類は、次回をご参照ください。

…「自筆証書遺言の身だしなみ⑩‐2(開封と検認)」につづく。