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さっちゃんの源氏物語

「源氏物語」の楽しみ方、お伝えします

源氏物語の「災害記事」

2011-04-29 20:27:14 | 源氏物語

 源氏物語に災害の場面なんてあるのか? というと、2つあります。「野分」の巻に台風の後の六条院、「須磨」「明石」には、大暴風雨・雷・高波に襲われる光源氏の姿があります。そっちの方を見てみます。

 3月初めの巳の日に「上巳の祓え」というのをやりました。今の雛祭りはその進化したものです。流し雛などは、穢れを雛に託して流してしまうもので、祓えの意味を現代につなげています。
この「上巳の祓え」、亡き霊魂を呼び寄せ、その力で災いを祓うというのですから、ちょっと怖いこともあります。下手をすると、亡魂が手に負えなくなるかもしれません。

 須磨にいる光源氏は、鬱々としていますから、気分転換の意味も多分あって、都落ちの陰陽師を呼び、形ばかりの祓えを行わせます。天気はいいし、時期はいいし(今年でいうと4月8日)、遊び感覚でしょうね。

 それが、突然の、大暴風雨・雷・高波です。一行は、雷鳴と波に追われるように、やかたに走り帰ります。「高潮というもので、人命が失われることもあるそうだ」など語るうちに、落雷、やかたの一部は焼け落ちます。源氏物語としては、稀に見る自然災害の場面なのです。

 ところで、地元の漁民たちがこのやかたに集まって来ます。高貴な存在への信仰みたいなもの、と説明されることもあったり、作者がどんなつもりでこのことを書き加えたのかわかりませんが、今読んでみると、光源氏級のやかたは高台にあるに決まっていますから、避難の感じがします。食料も貰えるかもしれませんしね。

 瀬戸内海に津波が起きるのか、ネットを見るとテーマのひとつですね。その受け売りですが、江戸時代に2m程度のものがあったとか。
 ならば平安時代にもあり、その詳細を作者が伝聞していたこともあり得ることです。光源氏の遭遇したものは、地震や津波ではなさそうですが、都の女性である作者にとっては、海の自然災害をリアルに描くことはそう容易ではないし、求められたことでもなかったことでしょう。

 ともあれ、優雅な物語の中の荒々しい自然災害です。
 


光源氏という存在

2011-04-26 21:14:02 | 源氏物語

 光源氏という人物、現代ではあまり人気がありません。まぁわからないでもありませんが、紫式部は理想の男性を作り上げようと意図したことは確かでしょうから、彼の一生に時々触れながら、その「実像」も想像してみましょう。

 好感をもてるかどうかは別として、そう女ばっかり追いかけている男でもないのですね。『源氏物語』って、書かれていることはあったことだけれど、書かれていないことは無かったのではなく、語り手(ほんとは作者だけど)が興味がなかったり、言わなくたって常識なんだからわかるでしょ?ということです。だから、平安時代の常識なんかわからない現代人には見えないことが多いのです。

 私感を言えば、理想化の「化」が薄まるにつれて、欠点もありながらなかなか魅力も生じてきていると思っています。

 それに、若いときもそれなり、かわいい。自己中のところなんかもね。

 

 当初の光源氏の人物設定は、こうです。

 

1 帝が寵愛したあげくに亡くなってしまった桐壺更衣の忘れ形見

              →父帝の溺愛

  これが彼の政治生命の根底ですから、父帝の死、即危険です。

2 正妻は、左大臣の姫、葵の上。

  母は桐壺帝と同腹の皇女で、臣下では最高の生まれの姫。 

3 恋人は沢山いるが、秘密の恋の対象は父の妃、藤壺の宮。

4 この上ない美形。

5 多彩な才能。お勉強は勿論、音楽(各種楽器の演奏)書 絵

  和歌 漢詩 手紙 会話 服装センス 香のセンス 建築関係

  センス 等々、語られる時にはいつもNo.1.

6 性格がよく、特に女性に優しく裏切らない限り絶対捨てない。

 

「超自然的存在」です。作者が、新しい物語を創造するといっても、読者が憧れ求めるのは、あの「業平さま」に匹敵する恋のヒーローであり、そうでなければ、わくわくしながら物語に耽溺してくれません。対するに、美女揃いのヒロインたち。

 

 また、光源氏に出てもらうことにして、今回はこんなところで。