ドイツにある世界遺産にバウハウスというものがある。
ドイツの都市、デッサウにバウハウスと呼ばれた学校の校舎があり、その建物が世界遺産の指定を1996年に受けたという。
バウハウスとは何かというと今から100年ぐらい前にドイツのヴァイマールというところで発足した前衛芸術の学校である。
それまでの芸術学校と違うのは、工業製品などの実用性を伴ったデザインを学ぶ学校だったという点だ。
その他、建築、写真、家具などに実用性と機能性を掛け合わせたデザインを求め発展していった。
飾りにこったデザインではなくシンプルではあるが見た目のいい姿のものをつくりだすことが主眼になった。
当時、日本人でバウハウスに留学した人は、それが茶道の「わびさび」に似ていると評したという。
質素でありながらも美しいものを作り出すことが重要になった。派手であれば美しいというわけではないということだ。
デッサウではその象徴として当時では珍しいガラス張りの建物が校舎として建てられ、現地の人は水族館みたいだと評した。
バウハウスはワイマール共和国のドイツで発展を遂げたもののナチスの台頭によりデッサウの学校は閉鎖され、ベルリンに移った翌年には閉鎖されてしまう。
前衛芸術は当時進歩的過ぎて保守派の反感をかったからという理由以外に、バウハウスに関わった人々がユダヤ系であったということもナチスの標的にされた理由としてあげられる。
戦後、バウハウスに関わった建築家や家具職人らはアメリカに渡り失われたバウハウスのコンセプトを復活させた。現代では近代建築や家具の定番になっているデザインを世界に広めていったのだ。
このバウハウスには、ある種の歴史的な事象として惹かれるものがある。
世の移ろいというものの象徴といえる事例だからだ。そして、バウハウスに関わった人々のことを想うと心に染み入る情感が湧く。
いつかデッサウにある世界遺産のバウハウス校舎を訪ねてみたい。