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さめのくち

日常の記録。

噂通り|『スーパーカブ』

2017年09月05日 | 2017読書


バイク雑誌でプッシュされていたのでそのうち読もうと思っていましたが、無性にバイク小説を読みたくなったのでamazon.co.jpで購入。売り切れだったので入荷までしばらく待ちました──届いた本には「重版出来」「コミカライズ」など景気の良い惹句が印刷された帯がついていました。そのうちアニメ化もありますかね。

彼氏なし、友達なし、どころか親兄弟もいない、ないないづくしの主人公・小熊(女子高生)がカブに出会い、人生が少しだけ変化していくという物語。これまでスーパーカブには縁がありませんでしたが、バイクに乗り始めて自分の周囲のあらゆるものが変化したことを思い出して、一気に読み終えてしまいました。

VT-250にタンデムさせてもらってバイクに目覚めたこと、免許を取ってすぐにCBR250Fを──本当は発売されたばかりのCBR250Rが欲しかったけれど、お金が足りなくてFに。買った翌日に日本平の峠道で転び、東京までの帰路、下道でまた転び、それでも愛車とどこかへ向かうという気持ちが萎えることはなく、小熊と同じように訳もなく夜中に走り出したり。

『ばくおん!』10巻もあるあるネタ過ぎて爆笑しつつもほろりとさせられましたが、本作は純粋にバイクを好きになった頃のことを思い出して、縁あって今乗っているバイクをめでたくなります。次の日曜日はどこかへ行こう。

『スーパーカブ』(トネ・コーケン/角川スニーカー文庫)
個人的満足度: ★★★★

ビジネス書としても何とか|『アドバイス 指導者に明かす野球の本質』

2017年09月02日 | 2017読書
本書、特に野球について学びたくて購入したのではなく、ビジネス書としても読めないだろうかと思って買った次第です。「究極の采配は、『何もしない』ということだ」なんて、昨今のリーダー論に通じるものがあります。実際、落合博満が社会人野球における「考え方」を説くものであり、それならばビジネスの場で役立つ教訓を得られそうです。例えば、

「不調のエースか、好調の控えか ──勝つための起用法」では、チーム編成は投手の数に余裕を持たせることが推奨されています(通常6-7名のところを9名)。「エースで負けたら仕方がない」ではなくて、エースでも不調だと思ったら1回で交代させて最少失点で切り抜ける。エースが打ち込まれたら負け、というのではなく、その前に対処できるチーム編成をしておくことが大事というわけです。組織づくりにも同じことが言えますね。

「データだけで考えるのは“卓上の野球”にすぎない」では、データ至上主義に対する反論であり、確かに数字の上では無死一塁ではバントしないほうが得点率が高いかもしれませんが、それは状況による、と。実際落合は監督時代、タイロン・ウッズに「どうしてもバントが必要な場面は代打を出す」と告げていたそうです。指揮官がどういう野球をしようとしているのか、どれほど価値に執着しているのかを最初にわからせるのは大事なことです。

そのままビジネス・リーダーが使えそうなところでは、

「褒めるときは『具体的な表現』に注意する」ざっくりした褒め方では褒めたほうも褒められたほうも忘れてしまって意味がない。何がどう良かったのかを具体的に伝える必要があるそうです。相手が自分の言っていることを理解できているかを確認するため、復唱させるのも効果的とか。

「選手が指導者を値踏みする時代に、信頼関係を築く方法」これはそのまま引用すると、「勝利(成功)とは何か、敗戦(失敗)とは何かを、折に触れて監督が選手に伝える。その際、どんなに優秀な選手でもなんらかの失敗を経験し、それを克服するという道をとおってきたことを理解させる。選手がそれを踏まえて自分のプレーに専念し、結果を出していくことが、監督と選手の相互関係を築き、強いチームに進化していくパワーになるのだと思う」

乱暴にまとめると、リーダーはまず目標が何であるのかを見極め(落合GMの場合は「毎年優勝を狙えるチームづくり」が使命だったそうで、そのためのチーム編成と戦い方をしたのだとか)、それを実現するための適切な方法を編み出し、チームのメンバーに目標と達成するための方法を理解させる。それができれば後は放っておいてもだいたいうまくいくということになるでしょうか。言葉にすると簡単ですが、実現するとなると大変です。

『アドバイス 指導者に明かす野球の本質』(落合博満/ダイヤモンド社)
個人的満足度: ★★★

『熱沙奇巌城―魔大陸の鷹シリーズ』

2017年08月30日 | 2017読書
ウンゲルン・フォン・シュテルンベルクが登場すると聞いて購入。ウンゲルンが出てくるのは冒頭だけ、小説の登場人物とは絡みませんでした。

仏教に改宗したロシアのドイツ系貴族で、内戦では白軍に参加。しかし1921年になると赤軍の優位は確実となり、ウンゲルンは東へ逃れます。当時、外蒙古は中華民国(北京政府)軍に支配されていましたが、自らはチンギス・ハーンの生まれ変わりだと信じるウンゲルンはこれを解放するため、5倍の数の敵に戦闘を挑みます──それで勝ってしまうんだから素晴らしい。

もっとも、ウンゲルンは相当に問題の多かった人のようで、捕虜は虐殺するは、気に入らない味方も容赦しないはで、『熱沙奇巌城』でもその悪逆非道ぶりが描かれています。そこはフィクションにあらず。

ウンゲルンはモンゴルを起点にアジアの力を結集してロシアに対して「十字軍」を行うつもりでしたが、



味方に裏切られ、赤軍に引き渡されたそうです。詳しくは下記のサイトで紹介されています。

参照先: ロシアの男爵の外モンゴル征服記(ロシアNOW: 2017年8月22日付)

小説はシリーズ第2弾。大正時代を舞台にした「冒険活劇」なのですが、物語よりも時代背景の描写に気を取られてしまいました。そのくらい設定がしっかりしており、また楽しめる内容になっております。

『熱沙奇巌城―魔大陸の鷹シリーズ』(赤城毅/祥伝社)
個人的満足度: ★★

驚きの鮮度98%!! 海外でも高評の『このせか』

2017年08月29日 | 2017読書

制作時のクラウドファンディングには出遅れてしまいましたが、監督を海外に送り出すプロジェクトには参加できました。

参照先: 映画『この世界の片隅に』の海外上映を盛り上げるため、片渕監督を現地に送り出したい(Makuake)

正直、このプロジェクトは微妙な内容なのですが、制作プロジェクトに投資したつもりで2人分10,800円コースを選択しました。予定では今年6月に報告会が開催されることになっていましたが、つい先ほどメールが届いて大阪では11月26日(同じ日夕方から名古屋でも開催)なのだそうです。前日は広島。強行軍です。

「アメリカでの評価はいまいちだったらしいよ」と家内に聞かされまして、確かにそういう声を集めた恣意的なまとめサイトもありましたが、どうしてどうしてRotten Tomatoesでは鮮度98%とたいへんフレッシュ。レビュー・カウントは50とまだまだ少ないですが、そのうちの腐ったトマトのレビューを全文読んでも、決して腐しているわけではありません。

参照先: ‘Corner of the World’ a coming-of-age story set in WWII(San Fransisco Cronicle: 2017年8月10日付)

ミックさんのレビュー、本作が描いている時代の認識とずれがある気がしますが(映画のほとんどは1944年以降の話)、かなとこ雲のシーンで原爆によるきのこ雲を連想してどきりとしたり、玉音放送を受けてのすずさんの反応を外国人ゆえに受け止められなかったりと、鋭い指摘が散見されます。

それはさておき、レビューの抜粋を読んでいるとまた泣けてきて、そのうち出るのではないかと勝手に思い込んでいる完全版(りんさんのエピソードを追加したもの)を待たずして、円盤を購入してしまいそうです。


フィクションだけど日波関係の歴史も学べる|『また、桜の国で』

2017年08月28日 | 2017読書
物語ポーランドの歴史』でその存在を知ってamazonで購入しましたが、先日、書店で平積みになっているのを目撃しましたから、中高生の夏休み読書感想文の対象作品になっているのかもしれません。何と言っても「高校生直木賞」受賞作ですから。

白系ロシア人の父と日本人の母を持つ棚倉慎がワルシャワの大使館に赴任するところから始まるこの物語、のっけからナチスの対ユダヤ人政策と日本が立たされている外交上の微妙なポジションが語られます。さらにはシベリアのポーランド孤児救出に極東青年会との結びつきなど、『物語ポーランドの歴史』のおさらいをしながら主人公とともにワルシャワの情景を楽しみつつ、日波関係の歴史に思いを馳せることになります。

しかし運命の日、1939年9月1日を避けることはできません。

主人公をハーフにすることでことあるごとに「日本人とは何か」というアイデンティティ上の問題を提起し、それに何度も国家を消滅させられたポーランド人の思いを交錯させることで、読む者に多くのことを考えさせます。例えば、ポーランド人は愛国心を持ってそのたびに立ち上がってきたわけですが、果たして日本が同じ目に遭った時、日本人は愛国心を持って抵抗することができるだろうか? 主人公は次のように考えます。

「国を愛する心は、上から植えつけられるものでは断じてない。まして、他国や他の民族への憎悪を糧に培われるものであってはならない」

サミュエル・ジョンソンが言う通り「愛国主義は不埒なやつらの最後の隠れ家」であり、大戦中も、そしい現在も怪しい愛国主義が上から横から押しつけられています。

「今、僕の国では、いまだかつてないほどに、武士道や大和魂という言葉が使われているよ。でもね。覚えておくといい。濫用される時は必ず、言葉は正しい使い方をされていない。みな、意味をわかっていないんだ。だから簡単に間違ってしまう」

借り物の思想だから最後まで責任を取れない、というわけです。

第二次世界大戦では、ドイツと同じ枢軸国の日本はポーランドと戦争状態に入ります。ワルシャワの大使館員が東欧へ避難する中、主人公はいかなる形で正義を、あるいは「国を愛する心」を貫こうとするのか。自分の思想に責任を取ろうとするのか。高校生直木賞に本作が選ばれた理由「『桜の国』は読んでもらえるかどうかさえ自信がない。でも、自分が薦めて、読んでもらえて、その誰かの胸に残ってくれた時、本当に嬉しいのは『桜の国』」に合点がいく作品です。

参照先: 歯ごたえのある小説『また、桜の国で』が“高校生直木賞”に決定するまで(文春オンライン: 2017年5月22日付)

今、知りましたが本作、オーディオドラマ化されたのですね。配信も始まったばかり。書店で平積みされていたのはこのせいか。

また、桜の国で
個人的満足度: ★★★★