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「吾沙鷺百式」主宰 ギター弾きのまつもとあきら

「食べる?食品セシウム測定データ745」 (著:ちだい)のデマ(1)。

2014-01-27 | 検証・まとめ・資料集

「食べる?食品セシウム測定データ745」 (著:ちだい)
という本が2013年末に発売されましたが、
この著書には放射性物質についてのでたらめが列挙されているので、
ここに添削をまとめていきます。

一部ネット上で広まってる放射能デマの添削回答例としてご参考にして頂ければ何よりです。


まず最初に。

当書籍の著者である「ちだい」という人物ですが、
元放送作家で科学の知識は持ち合わせておりません。

「科学というものは原子力ムラの理屈だから聞かない」
と明言し、何も学んでいない人間です。

また、次に書いたように、単位の扱いの間違いを指摘できるような人間が
出版側にいないこともわかります。
科学的な知識のある人間が監修についていません。

従って当書籍は科学的根拠には全く基づいておりません。


データ中の数値表記において、
「すべての検査データにおいて、Bq/kg単位を採用、煩雑さを避けるために/kgを省略しました」

とp8の凡例の欄に小さく書いた上で、「Bq/kg」を全て「Bq」と書いてあります。
Bq/kgとBqでは意味が全く違うので、この単位の扱い方はNGです。
食材ひとつ100gも一食に使わない場合も多いのに、
1kgあたりの数値なのか、総量なのか混同するような単位表記はあってはなりません。

煩雑さを避けるためなら、「単位:Bq/kg」と最初に書き、あとは数値の表記のみにすればよいだけ。
これは少しでも大きな数値に見せたい意図が表れているということです。


- 帯欄 -

×「福島第一原発で陸上に降下したセシウムは、広島に落とされた原爆の168発分。実際にはその数倍~数十倍」
この比較に意味なし。原爆の危険性は爆風・熱・半減期の短い核種の高線量被曝であってセシウムの量は関係ない。 

×「内部被曝の危険性については現代科学では未知の領域です」
現代の段階で確かにわかってることがまずちゃんとある。日本の食品の影響は人間が元々自然に持ってる放射性物質の100~1000分の一以下。被曝量と体内挙動、体内半減期などもわかっている。

×「子供の命や健康よりも経済が優先され、食品の安全を確認することさえ表向きにはタブーとされている」
基準値を、根拠も明確化した上で厳しくし、生産者はその基準値をも大幅にクリアしている。
現在の規制も実測値も事故以前より厳しく低い。タブーでも何でもない。


- p2~3 はじめに -

×「汚染された食べ物の流通を止めるどころかむしろ大々的に売り出すキャンペーンを始めました」
デマ。汚染されたものは流通を止めた。汚染されてない物の「生産者の命に関わる深刻な風評被害」対策としての「食べて応援」。 

×「現在の日本は「放射能の話」が宗教や政党の話と同じくらい異質で「場を選ぶべき話題」とみなされタブー視されるというメルヘンあふれる世界です」
むしろ専門分野である放射線の知識の一般化が進んだ。嫌われるのはデマと偏った思想論混ぜてる場合に限る。 

×「復興」が喧伝されるにつれ放射能に気をつけることがまるで愚かな振る舞いであるかのように非難されるようになりました。」
非難されているのは気をつけることではなく、福島をケガレ扱いし、農作物を毒物扱いし、生産者さんを殺人者扱いするなどの行為。 

×「ついには奥様たちの間で「放射能」という単語さえ口に出せなくなっていて」
福島では至る所に放射線の計測情報が公開され、一般の主婦の皆様の多くが普通に放射線の基礎知識を学び理解しています。これは福島に限らず東日本の多くでも見られることです。 

×「放射線による内部被曝の影響は現代の科学ではほとんど明らかになっていません」
放射線検査・治療ではMBq(100万)、GBq(10億)単位の放射性物質を投与、内部被曝の効果を扱う。自然レベルの微量な被曝での効果も現代では詳しくわかっている。 

×「どれくらい内部被曝をするとどれくらいリスクが高まるのか、現段階での科学的に正しい答えは「わからない」です。」
正確には「わかっていないこともあるが、現代の科学ですでに明確にわかっていてその効果を生かして扱ってる範囲がまず相当ある。」

×「わからないのであれば危険かもしれないと考えてなるべく被曝を避けることが最も理にかなったリスク回避法です。」
影響がわかった段階で、避けることに伴うリスクを含めトータルを減らしていくのが適切なリスク管理。不要な防護のための苦労は余計な徒労。
 

わかってること
・今の食料中のCsに限った被曝がゼロ
・気をつける、気をつけないの被曝量の差はゼロ
・一定量の内部被曝は人間に必須かつ常態

×「どの食材が安心できて、どの食材には注意が必要なのかを、品目ごとにわかりやすくまとめたデータブックです」
この本の「注意」について、精神的な満足感等は別として、注意することによる実質的な効果は全くない。注意してもしなくても被曝量の差はゼロ。 

×「原発事故は生産者だけでなく「食」について不安を抱く消費者にも大きな苦しみを与えているのです」
危険性がないものについて、間違った根拠で危険だと喧伝し不要な不安を世間に広める人たちが、生産者にも消費者にも最も大きな苦しみを与えている。 
原発事故の被害を血のにじむような苦労でようやくクリアしてきた人たちに対し、それを無にする無慈悲な言葉を浴びせる行為がどれだけ怒りと悲しみを与えることか。
事故の被害は確かに甚大だし過失でもあったが悪意ではない。電力会社も謝罪と保障に奔走した。風評拡散者は非を認めず態度を改めない点で悪意といえる。

×「私たちは「自分自身で考えて食べるか食べないかを決める」必要に迫られています。そのための基準を作るうえでこの本を役立てて」
根拠の無い自分勝手な基準を元に「少なくとも実質的な必要性がない」ことを「必要だ」と勝手に喧伝した本ということ。


- p6~7 この本の使い方・基本的な用語の解説 - 

「食品に気をつけろとか食べてはいけないと強制するのが趣旨ではありません」
と書いてますが、食材欄に警戒レベルマークを付記し、本文あらゆるところで「気をつけましょう」「注意してください」「子供にはやめさせて」などと多数書いてあります。大嘘。

「流通してる食品には農薬、添加物、遺伝子組み換えなど他にもさまざまなリスクがありますが、本書では原発事故由来の放射性物質に話を限定しています」
いずれも流通食材において危険なレベルのものはないが、程度で言えばこれが最も無害。

× 「ストロンチウムとプルトニウムは、おそらくこの世で最も凶悪な核種です」 
毒性というのは何をおいても量次第。SuもPuも原発事故前から一定量存在し、その中で我々は生きてきました。

「ある放射性物質が一秒間に一回崩壊して放射線を出すと、1Bqになります」
日本語おかしい。
ベクレル(Bq)とは、放射性物質が1秒間に崩壊する原子の個数(放射能)を表す単位。 
「原子の個数」で数えるくらいの単位です。

「食品中の放射能の量(ベクレル)をSvに換算することには疑問が残ります」
こんなこと「用語の解説」に書いてはいけないな。
正→「出てきた後の放射線が物質や人体とどのように相互作用するのかはベクレルだけからは一切わからない。」

「内部被曝とは、体内に放射性物質を取り入れ超至近距離で被曝すること。」
「放射性物質には近づけば近づくほどリスクが増す」
前提として
・人間は通常0.4mSv/年ほどの内部被曝をしている。
・事故の影響はその1/100~1000以下。


×「体内に入っても多くが排出されるから問題ないと唱える人もいるが、全てが排出されるわけではなく、体内に残った一部は筋肉や骨に蓄積し放射線を出し続けると考えられています」
全て排出されることは科学的に実証されています。

×「内部被曝によってどのような健康被害が生じるかは現代科学では未知の領域」
・人間は日常0.4mSvほどの内部被曝をしている。
・医療ではMBq(100万Bq)~GBq(10億Bq)単位を投与しSv単位の内部被曝を使い治療する。
こういうレベルは現代科学では明らか。

「預託実効線量:内部被曝の影響は無視してかまわないと主張する人が必ずといっていいほど口にする言葉です」
用語の解説に載せる文じゃないね。放射線の影響を考える上で通常扱う数量に過ぎない。

×「預託実効線量:魔法の数式によってBqがごく小さな数値になるので気にする必要がないかのように見せ付ける効果があります」 
原子一個単位を数えるような量を換算したら小さい数値になって当然。
逆に放射能デマは極微量のBqという単位を過剰に使うことで、放射能量が多量であるかのように見せ付ける効果を活用してるのよな。

「預託実効線量:食品中に含まれる放射能の量を推測上の係数を用いてSvに換算し、内部被曝の影響の大きさとみなした数値です」
科学的根拠を以て扱われてる係数について素人が「推測上の」っていうのは科学に失礼です。

×「預託実効線量:最大の問題点は、これが本来成人に適応される考え方であり、体重の軽い子供を大人と同列に扱い同じ係数を用いるのは大きな間違い」
預託実効線量の計算には、年齢別に違う換算式を使います。ということを知らないんだね。

 
×「預託実効線量:核種ごとに特定の臓器に集中しやすい性質があることが指摘されている、そのような性質も踏まえた上で果たして内部被曝を測るのに役立つかどうか」
実効線量は部位ごとに測られる。事故影響は「全身」の単位で話することが多いだけ。 

×「検出限界値以下で不検出(X以下についてはあってもなくても有意な差はなくNDと扱っていい、という意味です。 

×「検出限界値:たとえ不検出と書かれていても、数値として示せないだけで、X以下のセシウムが入ってるということはわかるという場合もある」
検出限界以下とは、あってもなくても一律「不検出」として扱って全く問題ないほど小さく無意味な数値。 

 「食品の基準値:厚生労働省が2012年4月に新しく設定。~しかしそもそもわずかなサンプル検査で「この地域のこの食品は安全」と言い切るのには無理があります」
福島産に限っては検査が数十万点にものぼるので安全と言い切っていいですね。 

 「食品の基準値:しかも、これは生産者に架せられた基準であって、消費者が食べるかどうかは別問題です」
通常生産側は、あらゆる面で一般消費者が普段考えてるよりはるかに厳しい基準管理で食品を扱ってます。日本の食品基準は世界で最も厳しい。 


以上、裏表紙の帯欄、「はじめに」の2頁、「この本の使い方・基本的な用語の解説」の2頁まで、の冒頭部分を添削しました。
ここまでのチェックだけでも、当書がどのくらいでたらめな認識に基づいて書かれているかは十分示せていると思います。

以降の頁についてはまた随時更新します。

なお、コメント欄は開放しますけど、
この頁については、質問以外のコメントには一切お返事致しません。
予めご了承ください。 


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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
Unknown (Unknown)
2016-06-15 23:48:11
自分に子供がいても同じ事が言えますか?
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Unknown (あきら@管理人)
2016-06-17 13:42:43
>自分に子供がいても同じことが言えますか?

名乗りもしない方にお返事する義理はありませんが、質問者に向けてではなく、不特定多数の読者の方に向けてこの質問にお答えしておきましょう。

なぜ「いない」前提なのかがわかりませんが、この記事を理解できる読解力がある人は全員責任もって言えると思います。次の世代に間違った理解で差別をさせないために書いてるんですけどね。

こういうことから目を背けて、間違った情報を流布することや我が国の生産者さんに悪評ぶつける方が子供に対し無責任だと考えております。
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