瞬刊★差楽部

ジャンルに特筆しない雑記です( ´,_ゝ`)

ビッグイシュー

2005-06-15 16:15:29 | 社会

20年来の友達のカミサンは子供と公園デビューしてないんだという。
うちのカミサンも幼稚園に入るようになれば自ずと他のママ連中と知り合う機会が増えたが、嫌ったらしいのもいたそうだが、公園でなんとか友達をつくっていたっけ。

その友人のカミサンが言うには浮浪者がいっぱいいるんで気持悪いそうだ。
確かに公園って浮浪者が多い。
ホームレスなんていう横文字に変換すると普段眼にしない人には当たり障りのない存在に思えてくるが、それこそ子供と公園に遊びに行くような人にとってはホームレスなんかじゃなくて浮浪者といったほうがピンと来るはずだ。

家の近所の公園も多聞に漏れず、浮浪者だらけだ。
ベンチを占領してコミュニティーをつくっている。
自宅から街とは逆方向に少し離れた博物館を擁する大きな自然の残った公園に夜中にクワガタを取りに行った時など浮浪者だらけだったので薄気味悪くなってしまった。
マグライトを向ける先、むける先のベンチには浮浪者が寝ている。
最寄の駅の裏にある大きな公園などは展望のいい高台があるのだが、そこのベンチは昼間から浮浪者のベットと化している。

先日、側の図書館にカミサンを置いて子供を連れて遊びに行ったところ、浮浪者がベンチで寝ていた。
こともあろうに5歳になる息子が「公園で寝てる人はお家がな~い!」と大きな声で言った。
びっくりしてしまった。
「駄目そんなこと言っちゃ!」とも言えないので、「今日は御天気がよくてポカポカしてるから御昼寝してるだけだよ」と取り繕ったが、本当に困ってしまった。
そんなこと教えていないし、教えるはずもないので幼稚園で覚えてきたのだろう。

社会弱者に対して暴力や言葉の暴力を振るう子供にはなって欲しくないが、あまり浮浪者を子供の眼に触れさせたくないのも親としての心情。
反面教師として「あぁなっちゃ駄目だよ」とも言えないし、説明するのも大変。

そういった浮浪者を自分が子供の頃と比べ物にならないくらいに多くなってきたのをみて、今の日本社会が抱える病魔を見た気になる。
やむ得ない理由で浮浪者になってしまった人も少なくないだろうが、なんか最近の浮浪者は奥ゆかしさがないように思える。
駅に行けば数人で利用者の妨げになるようなところで横になって昼間から酒を煽って騒いでいるし。
駅でゴミ箱を漁って仕入れた雑誌を売って酒代としているらしい。
すぐ側でダンボールを並べて商売をしているが、普通のサラリーマンのおっさんがキオスクで買うより安いからって購入しているのをよく見かける。

そうやって日銭を稼いでは酒を呑んでるようなヤクザな浮浪者が多い中、ビッグイシュー(Big Issue)を売っている人はちゃんとしている。
ベンダーと呼ばれる販売員は行動規範に則って、販売者番号の入った身分証明書を身につけて雑誌を販売している。
雑誌自体のクオリティーも結構高いので見かけたときは表紙の特集タイトルを見てからではあるが購入する機会も多い。

彼等は通りにダンボールを広げるようなことはせずにちゃんと立って、歩行者の邪魔にならないようにしていて、言葉使いも正しく、なにより酒に酔っていることは絶対にない。
『ビッグイシュー日本』とそういった約束に同意した浮浪者だけがビッグイシューを売ることが許されている。
浮浪者と書いたが、彼等を見ているとオブラードをかけてホームレスと呼んであげたくなる。
日本なんだから浮浪者でいいことはいいんだけれど。


順番が前後するが、ビッグイシューとはイギリス生まれのホームレス救済雑誌で、何が素晴らしいかというとチャリティーではなく、仕事を生み出している点だ。
安易に手を差し伸べるのではなく、仕事を与えて社会復帰への道しるべを与えているのだ。
ビッグイシューの規範に同意して、認められると200円の雑誌を10冊与えられ、それを売る。
その売り上げを元に次回は1冊90円で仕入れて売る。
そうして初回以降は1冊販売するにごとに110円の収入を得るというシステムだ。
日銭をすぐ呑んじゃうような精神構造の人間ではとても勤まらないだろう。

真摯に社会復帰を目指しているような人物だけがビッグイシューを売っていると言っても過言ではない。
見かけたら購入しないまでも是非気にしてどんな雑誌なのか見て欲しいと思う。
販売員は紳士だから、なにも心配は要らない。

もう解散してしまったが、イギリスにストーン・ローゼズ(THE STONE ROSES)というロックバンドがいた。
もう、眼が廻るんじゃないかと思うくらいに傾倒してその音楽を聴き続けたものだ。
伝説的なファーストアルバムをリリースした後に醜いモンキービジネスの渦中に投げ出されてセカンドアルバムを発表するまでに5年も要してしまった。
イギリス中の音楽メディア、しいては極東のとある島国でもそのニュースは駆け巡ったが、彼等はビッグイシュー以外の雑誌のインタヴューには一切口を開かないという手法をとってかの雑誌、ホームレスを支援した。
日本でももうちょっと有名人がビッグイシューを気に掛けてくれるといいんだけどね。
販売員はそれこそ昼間は人通りの多いところで“仕事”をしなければならないので、公園や駅前で我が物顔で寝転んでいる連中とは違うと信じたい。

事実、浮浪者、ホームレス、もうどっちでもいいが、彼等の多くは何らかの仕事をしている割合の方が多い。
朝から日雇いの仕事にありついて、その金で暮らしている。
浮浪者、ホームレスといってもその心内は様々だ。
国もだらだらと自堕落な生活を続ける人間に手を差し伸べろとは言わないが、社会復帰という目標を持って生活をしている人たちにはビッグイシューのような労働、見返りの賃金での仕入れと手法などを用いて何か仕事を与えて上げて欲しいと思う。

拾った雑誌を通行人の邪魔になる公共の場で売っている連中は乞食となんら変わりがない。
買う奴も買うほうで恥を知って欲しい。

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