本日のロック

酸性雨ってまだ降ってるの?って聞かれたんだ。

本日の滋養

2007-05-14 20:35:38 | Weblog

『日本の公安警察』 青木理

著者は、オーマイニュースの創設に携わった、元共同通信記者。「公安警察」という組織が携わる「治安活動」とは一体何なのかという疑問に、正面から取り組んだ作品。その特性ゆえ、入手可能な情報が極端に限られており、読めば読むほど歯がゆい思いをするのも事実ですが、スパイ養成や諜報活動の実際については非常に詳細に書き込まれており、著者の取材力に感嘆させられます。特に、オウム捜査における公安と刑事警察との共同捜査の描写は迫力があります。


本日の滋養

2007-05-12 19:24:33 | Weblog

政商 昭和闇の支配者 二巻』 大下栄治

「国際興業」創設者、小佐野賢治の生涯を追った一冊。やったことを突き詰めれば企業買収による金儲けでしかないわけですが、一点だけ、バスやホテルなどの“実業”に対する執着が、現在のIT長者とは違うように思いました。


ハーヴェストとロック (「ハッピーサマーウェディング」編)

2007-05-11 20:37:44 | Weblog

降ったり止んだり変な天気が一段落した昨夜、帰宅途中に「ハーヴェスト」へ。カウンターには、金髪の書店バイト・コウヘイ君と、チョイ悪親父を地で行く芸能関係者・スドウさんの姿がありました。

3人で飲み干したコロナの本数を競っているうちに、コウヘイ君が「モーニング娘。」のファンだったことが発覚。安倍なつみと同い年で、誕生日も3日違いなんですよー、とか言い出して、ちょっと面倒くさくなったのですが、ここは飲み屋ですし、変に角が立つことを避けたかったので、スドウさんと目配せして、適当に受け流す方針を確認しました。

 

「自分のなかで、モー娘はデカい存在だったんですよ」と、コウヘイ君。

しかし、君は中学生の時にクラッシュと出会ってから、一貫してパンクスではなかったのか。

「テレビで観てても、モー娘だけはリアルっつうか。 歌とかはショービズに徹してて、でも、メンバーは生々しい感じがしたんすよね」

スドウさんも何となく乗っかります。

「どこにでもいそうな子ばかり集めてるのに、“あんたもあたしも”だけじゃなくて、“みんなも社長さんも”まで歌わせたところは凄かったよね」

「そうなんすよ! やっぱスドウさん分かってんなぁ」と、コウヘイ君も嬉しそう。

 

ちょっとムカついたので、辻希美の妊娠・結婚話を振ってみます。

 

「あれはどうなのよ?」

「まぁ、ああいうの含めてリアルっつうか」

「つーか、最近のミニモニ(2001年1月に矢口真理、辻希美、加護亜依の3人でデビュー)、ちょっとマズいんじゃないの?」

「でも、今度はメデたい話じゃないすか」

「つまり、ハッピーサマーウェディングであると」

「そうっす!」

「父さん母さんありがとう、と」

「はい」

「証券会社勤務の杉本さんではなくて、戦隊ヒーローだけども」

「ええ」

「その辺の生々しさも含めて好きだと」

「・・・」

「コングラチュレーション! ということだね」

「・・・」

「え?」

「・・・・すみません。 ちょっと涙出ちゃいました」

「えー!!」

「すみません・・・」

 

と言って席を立ち、トイレへ入ってしまったコウヘイ君。なんだこの展開。ふつうに今でも好きなんですか。マスターのタカシさんに「お前なぁ、 あんまり若いのイジメんなよな」と叱られます。スドウさんは苦笑い。

「まぁ、ほら、彼は愛をなくした後に、望みまで失ったわけだから」

「おぉ」

「そして、人生の真理を知ったわけだ」

 

なに? このミニモニナイトフィーバー。


本日の滋養

2007-05-05 16:25:56 | Weblog

『預言者ピッピ』 1巻

何人かの知り合いに薦められたのですが、ちょっと震えが来るほど面白かった。作者は『パパと踊ろう』の地下沢中也。可愛らしい絵柄と、オドロオドロしいストーリーのギャップから、手塚治虫的という指摘もありますが、個人的にはハードなSF志向も含め、藤子・F・不二雄の短編集に近い印象。

『誰も寝てはならぬ』 6巻

『モーニング』にて細々と連載中の作品。昨秋発売予定だったはずの第6巻がやっと書店に並びました。なぜか作者の過去作品(『大阪豆ゴハン』)の文庫(6巻中3巻までは03年に刊行されており、4年越しで全巻が出揃うという異常事態)も同時に発売。ワケ分かりませんね。本作の舞台は赤坂のデザイン事務所。酸いも甘いも知り尽くしたイイ大人である登場人物達の、どこか抜けた毎日を淡々と描写しているだけなんですが、それが面白いんですよ。大事件など起こらず、(というか、両親が事故死したり、妻が“女性”と浮気して離婚したりという、登場人物に降り掛かる“事件”は全て過ぎ去ったエピソードとして語られるのみで)ただ延々とアホらしい毎日が繰り広げられます。

『ミュージックマガジン』 5月号  特集 ビョーク


ハーヴェストとロック (「愛し愛されて生きるのさ」編)

2007-05-04 21:19:39 | Weblog

先月から通い出した南阿佐ヶ谷のバー『ハーヴェスト』の店名は、言うまでもなくニール・ヤングの名盤に由来しているわけですが、いつも黒いキャップを目深に被っているマスターのタカシさんによれば、殊更にそんなことを訊いてくるお客はこの街にはいないのだそうです(惜しまれつつ約10年の歴史に幕を閉じた阿佐ヶ谷駅前の『ストロベリーフィールズ』にも、ビートルズファンと呼べるお客は数えるほどでしたから、そんな土地柄なのでしょう)。カウンター8席だけの小じんまりとした店構えと寡黙なマスター、そして、いつ訪れても空いているところ(大事)が気に入って寄らせてもらうようになりました。

で、昨夜。

 「女子高の保健体育の補助教員」兼「歌舞伎町のキャバ嬢」である、常連のヒトミさん(20代後半)と初めて同席。挨拶もそこそこに、まず何よりも、その二つの職業の掛け持ちは問題ではないのか、という当然の疑問を投げかけました。が、飲み屋特有の浮ついた雰囲気のなか「私立だし、別にいんじゃないの」という結論で終了。その後、最近の 女子高生に関するトーク。

 

「確かに、みんな体育は嫌がりますねー。 適当に生理とか言って休みますから。 こっちはそれだと仕事になんないので、うまいことノセますけど」

「僕なんか女子高生が集団でいるだけで怖いっすけど。 ノセるってのも大変でしょ」

「言葉が通じない子もいますけど、基本的に考えてることは単純なんです。 こっちはそれを利用すればいいんです」

「そんなもんですか」

「ええ。 例えば、『私も日焼けは嫌だから、バーっと走って終わっちゃおう』とか、『これやると、何キロカロリー消費するんだよ』とか、『二の腕を引き締める動きを教えてあげるからね』とか、です。 体育館の時には倖田來未のCDをかけたりね」

 

こちらとしては女子高生の操縦術を学んでも活かしようがないのですが。と言いますか、10歳下の世代と話す機会なんてあんまり無いですしね。先生は色々と気を遣っていて偉いなぁ。

 

「うーん、頑張ってますけどね。 でも、ギャップは感じますよ。 一回、オザケンを流したんですけど、本当に、誰ひとり知りませんでしたから」

「えー!」

「よく考えたら『LIFE』が出た頃(94年)、この子らまだ幼稚園児だっのかぁ、って」

「あー、そうか」

「オザケンが『いとしのエリー』なんて聴いてたのは20年以上前のことなんですよ」

「ハハハ。 なるほど」

「逆に、サザンのことはあの子達も知ってるんです。 桑田は憑かれたようにCMに出まくっますけど、今の子等に認知されてるだけでも凄い」

 

ふてくされてばかりの10代には、小沢健二も効くと思うんですけどね。

 


「バベル」とロック

2007-05-01 19:49:17 | Weblog

映画『バベルを鑑賞。画面がチカチカすることばかりが取り沙汰されていますが(実際、一緒に観ていたリエコも終演後に吐き気を訴えていましたが)作品自体はすげー完成度の高さ。ストーリーを簡潔に説明することは僕の筆力では不可能です。また、ネタばれに繋がるので以下の感想は鑑賞した方だけお読み下さい。

この作品では、モロッコ・アメリカ(及びメキシコ)・日本の三箇所でストーリーが同時(ではないのだけれど)進行します。通底するのは「バベル」という言葉から(非常に分かりやすく)想像出来るテーマ。 三つのストーリーは互いに関連し合い、各々のパートで「言語」・「宗教」・「文化」の違いに起因したトラブルが生じます。全ての登場人物は、善と悪、合法と非合法を分かつ、解釈すら曖昧な細い道の上を歩いており、時として足を滑らせてしまいます。

なかでも、菊地凛子が聾唖の女子高生を演じる日本のパートは最も象徴的で、だからこそ、日本人が見るべき映画ではないかと思います。身体的なハンディによって、一般的なコミュニケーションから阻害されているという条件付けは過剰な気もしましたが(後ほど述べるシーンでは大きな意味を持ちますが)、なぜ彼女が自ら「化け物」になっていくのか、ということは一考に価するものです。この日本編では、凛子は父親である役所広司と裕福な暮らしをしています。そして、このパートでは最終的にひとりの死者も逮捕者も出ません。しかし、役所のとった或る行為が、結果としてこの作品で起こる全ての出来事を誘発させたことは事実。また、距離感を図りかねている思春期の娘は「化け物」になってしまう。凛子と触れ合い、その闇を窺おうとする警察官も決してヒーローではなく、社会的立場としてはただの駒に過ぎない(それはモロッコで起きた事件を居酒屋のテレビで知る場面に現れています)。それと知らずに混乱の種を撒き、世界の動きには無頓着で、自らが傷つかない場所から俯瞰し、被害者面を決め込む。自称・日本通のリュック・ベッソンなどよりも、遥かに的確に、そして辛辣に日本を表現しています。この監督は本当によく取材していると思いました。ポケモン現象(そこまで狙っていたら凄いですけども)が言われる、クラブの場面での選曲も的を得ていました。リエコの言葉通りです。

「どんなにカッコつけたって、いまだに日本のクラブでは、アースウィンド&ファイアーの“セプテンバー”が一番盛り上がるんだから」(本日のロック語録)

凛子には爆音で響く『セプテンバー』が“聞こえていない”ことも含め、素晴らしいシーンだと思います。このことはワイドショーでは流れないでしょうし、最悪、この場面自体がカットされてしまう危険性もあるので書き留めておきます。

ラストシーンで、身内を傷つけられて初めて事の重大さに気付き、投降するモロッコの少年が描かれる一方、日本の親子は最後まで答えを見出せません。