おもちゃの海 洗濯ものの山

中学生から幼児まで、4人の子育て真っ最中のある母親の何気ないつぶやき(でも、誰かに聞いて欲しい)…。

うどんを食べて第九に行く

2006年11月27日 02時34分38秒 | Weblog
「年末は、いろいろと忙しいのよ。嘉穂劇場で息子と一緒に第九を歌わなくちゃいけないし…」
なーんて言うと、とってもセレブの親子のようなセリフである。実は、このイベント。例のごとく、しがらみの網にひっかかり、抜け出せなくなってしまった結果である。

思えば、9月末くらいに「年末恒例の嘉穂劇場で市民が集って第九を歌うイベントがあるのですが、参加者が少ないので、良かったらどうぞ」と知人からメールが届いたのが始まり。彼女は世話好きで人が好いため、いつも頭が下がるような苦労をしている。「あの人に比べたら、こんな私の苦労なんて、屁みたいなものだ」とつい思ってしまうような人だ。しかし、第九を歌うような歌唱力も興味も無かったので、すぐにお断りのメールを入れておいた。

その後、海凪の訓練で飯塚病院に行った帰りに、あまりにもお天気が良かったので、駐車場の岩の上に腰掛けて、ミルクを飲ませていたら、たまたま診察に来ていた彼女とばったり出会ってしまった。まるで計ったかのような偶然!! 体調が悪くて水にも触れず、メイクも出来ないという彼女の苦労話を聞きながら、こんなにツライ想いをしているのに、第九の事務局ボランティアとして奔走していることを知り、私も、のほほんと授乳している場合では無いような気になってきた。

「子どもが歌って良いんですか?」などと彼女に空恐ろしい質問をする。私は嫌だけど、子どもたちが歌うなら彼女も喜ぶかな?と思ったのだ。既に、何度か練習があったそうだが、小学生の子も来ているから、「ぜひ、どうぞ♪」と言われる。

そこで、家に帰り、大地と空矢に尋ねる。大地は「歌いたい」と身の程知らずにも即答。こういう場合、意外と空矢の方が嫌がる。目立ちたがり屋な性格だが、失敗や人前で恥をかくことを異常に怖れるために、余程自信がない限り、思い切った行動に出られない面がある。そんな空矢を、甘言の限りを尽くして説得し、とりあえず一回だけ見学を兼ねて練習に参加させることにする。

水曜日か木曜日の夕方6時半~夜8時半。それが週に一度の練習。楽しそうな大地と不機嫌そうな空矢をコミュニティセンターまで連れて行く。受付にいた彼女に「子どもたちは、楽譜が読めんのやけど…」と説明すると、「カタカナが読めれば良いですよ♪」と隣にいた女性がアッケラカンと答える。パラパラとのぞいたテキストには、ドイツ語の歌詞にカタカナのフリガナがふってあった。

終了時間に迎えに行くと、空矢は更に怒っていた。曲が早過ぎて、カタカナを読む早さについて行けず、最後までキチンと歌えなかったそうだ。「クウちゃんは、最後まで『フーンフーンフン』だった!」と怒っていた。歌詞について来れない人は「フンフン」と口ずさんでと言われたらしい…。

それでも、私と一緒なら参加しても良いと言うので、翌週は一緒に練習を受けることにした。練習の間は、お願いして友人のHさんの家で愛花と海凪を見てもらうことにする。さて、私たち親子にとって、初めての練習日。夕飯を作って食べさせる余裕が無かったので、帰ってきた大地たちにすぐに宿題をさせて、みんなでうどん屋に行く。平日の夕方、子ども4人連れて母親1人でセルフサービスのうどん屋に入るのに勇気のいること、いること。子ども2人という4人家族のスタイルが定着してきた日本社会に、今どき4人の子連れで店に入る勇気というものは計り知れない。しかも、平日の6時前。よほどの手抜き主婦か、酒乱の暴力夫から逃れてきた妻に見えないだろうか…?などと、いろいろ周囲の反応を気にしつつ、目立たない席にコソコソと座る。「あぐんちゃ」のうどんは、とても安く(かけ210円)美味しい。汁は薄い色だけど鰹のダシがしっかり効いて、コシの強いうどんとマッチして本当に美味。

時間に急かされ、いつものように、がつがつ子どもたちに食べさせ、まずHさんの家に愛花と海凪を預け、練習会場(コミュニティセンター)まで急ぐ。既に練習が始まっていた。会場に入ってびっくり。年配の人が多い。この道何十年というような雰囲気の人もいる。声楽を囓っていたんだというようなサラリーマン風の男性(とってもお上手)もいる。高校生のグループ(コーラス部?)もいた。参加者が少ないと言うけれど、音楽室の中は、相当な人いきれでムッとするくらい。知り合いの親子も来ていた。ちょっと安心する。

とりあえず、子どもたちはテノールのパートに、私はアルトのパートに別れる。心なしか、第九の練習会場には不似合いな鰹ダシの匂いが私たち親子から漂ってくるような気がしてドキドキしてくる。しかし、いざ練習が始まると、そんなことを気にする余裕さえなくなってくる。

どこ?どこ?どこを歌ってるのーっ!? みんなーーーっ!
という感じ。譜面の上をさまよいながら、その時、空矢の感じた孤独を、私も感じた。

「Mのパート」「次は、Dです」矢継ぎ早に指示を出す指揮者の声に、隣の譜面をのぞき込み、ページ数を確認するのが精一杯。手前の老女(一体、何年間歌い続けてきたんやーっ!?という感じ)などは、楽譜など持たずに暗譜して歌っているではないかっ!楽譜の上で視線はさまよい、第九を歌う大衆の中で1人カツオだしの匂いをさせている緊張感。クラクラする。

ようやく、練習が終わり解放された時は、「久しぶりに大きな声で歌えてストレス発散になったわ♪」なんて境地にはほど遠い、疲労感と挫折感と「これから、どうしよう…」という困惑とで胸がいっぱいになっていた。

「クウちゃんの気持ち、よくわかったよ」とフグのようにふくれた空矢の頭を撫でる。空矢がそれ見たことかとばかりに、「クウちゃんは、今日で2回目やけど、やっぱり最後まで『フンフンフン』やったよ。」と言う。大地が不服そうに「えーっ、時々わかるところもあったやん」と文句を言う(時々かいっ!?)。

出口のところで、ニコニコ笑顔で「どうでした?無理言ってスミマセンでしたねぇ。」と労ってくれる彼女。まさか、「もう今日で止めます」とは言えなかった。

そして、現在。
挫折した空矢が、パパが帰ってくるまで、妹たちの面倒を見るという約束で、お留守番を担当。練習日は私と大地だけが、先に食事を済ませて出かける。夫もその日だけは7時前に帰ってくるように努力してくれるので、今のところ殆ど行き違いになる程度。

歌詞も段々わかってきて、一緒に歌えるようになってきたが、指揮者の「レニッケ先生(12/16本番当日の指揮者)は、この部分の発音をとても大事にされますが、僕的には古典の発音で行きたいと思ってます」などという高尚な説明や彼なりの苦悩などは、とても理解できず、まるで英会話を習い始めた人間が、外人講師の話にヘラヘラ笑うような感じで聞き流している。

一番、驚くべきは、「でも、昨年のレニッケ先生は…」などと、すかさず反論される参加者の方々。皆さん、一体何者??


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11 コメント

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Unknown (善mama)
2006-11-27 07:38:56
読むだけで圧倒されてしまいました…(;^_^Aそう言えば、うちのお義母さんが参加したい!歌ってみたい!(ちなみに経験なし)って言ってましたよ。誘われて、その場でちゃんと断りましたけど。歌うのなんて、合唱コンクール(中学)で卒業したし、私もいまいちついて行けそうにないので。

さきさんの行動力にいつも私は背中を押されてます♪どこにも1人では行けなかった私が、かてて!に参加するようになってからは善連れて、どこへでも行くようになりました。ありがとうございますm(__"m)

確かに、今の社会、子供は2人みたいな感じですよね…。沢山欲しいけど、正直な話、6月に出産したらどうするか?と話しています。周りに言われることばに、社会の目を感じる日々です…。5人はやっぱり無理なんかなぁ…(´・ω)…
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なんの、なんの (管理人・福)
2006-11-27 12:55:32
■善mamaさんへ

大丈夫だよ!先週末、同窓会に出かけてきましたが、5人の子持ち母もいたよ(全然、所帯やつれしてなかった)。外食の時は、確かに子どもが多いと視線が痛かったりする。誰か連れがいればいいんだけど、母親1人っていうのが気になるのかなぁ。パパ1人だったら、もっと悲惨か!? (今度やらせてみよう

子どもは授かりもの。こればかりは、自分の思うようには行きません。水の流れに身を任せるように、力を抜いて待ってみるのもいいと思うよ。とは言え、まずは6月に出産予定の赤ちゃんを楽しみに待たなくちゃね。善mamaさんもご家族もお体を大切に。用心して下さいね。(うちは、そろそろロタウィルス性の兆しが…
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お久しぶりのコメントです (ふぅ(こうたママ))
2006-11-29 00:21:36
嘉穂劇場ではそんなことも行われるんですね。
飯塚に来てもうすぐ1年になりますが
嘉穂劇場だけでなく結構いろんなイベントがあるなぁ…と驚いています。
下関もあったのかも知れないけれど
友達もいたし親元も近かったせいか
知ろうという気持ちがなかったのかもしれませんね。

善mamaさんと同じく、ブログを拝見したりして私もいつもさきさんの行動力に頭が下がる思いでいます。
すこし引っ込み思案な性格が開けてきた気もしています。いつも勇気をもらっています。ありがとうございます。

この場をお借りして…
善mamaさん、さきさんの言うとおり子供は授かりものだからほんと自分の思ったとおりにはいかないですよね。
でも子は宝だと思います。体力の許す限りあと経済力の許す限り頑張って目標5人達成してください!
私は今お腹にいる子が生まれるときには31歳になっているかも(予定日が2日違いなの)しれないので、ちょっと年齢的に厳しいけどやっぱり3人はほしいなぁ…と考えています。コウノトリさんが来てくれれば3人頑張るつもりです。とはいえまずはお互い元気な赤ちゃんを産むことが今は一番大切!お互いに気をつけましょうね。

さきさんもお忙しいようですが体には気をつけてくださいね。我が家では最近こうたと旦那が下痢嘔吐を伴う風邪でくたばりました…2人とももう完全復活しましたが、ニュースにもなっているとおり下痢嘔吐が流行っているみたいです。十分お気をつけください。
ちなみに私は大丈夫でした

それでは長々と失礼いたしました。
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Unknown (クマー)
2006-11-29 17:10:30
福さんを困らせてるのは指揮者はだれですか?MたさんとかTしまさんだったらもうちょっと手加減するようにつたえておきますけど?(笑)
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ありがとうございます☆ (管理人・福)
2006-11-30 00:59:01
■ふぅさんへ

長レスありがとう。来月は、パパさんのお店にみんなで押しかけるので「今の内に養生していて下さい」とお伝え下さい。(ブランド地鶏“天草大王”と早く会いたい←晃屋のHP見たよ♪)

私も、以前は、善mamaさんやふぅさんのように、精力的に走り回っているママさんを見て、「うわぁ、自分には真似できない…」と、ため息まじりに(半分あきれて?)眺めていました。でもね、ある時を境に、いろんなコトが押し寄せてきて、相撲の張り手のようにドンドン背中を押されて「あれよあれよ」と言う間に、世界が一気に拡がってしまいました。「これでいいのか!?」「こんな生活を送っていていいのか!?」と常に疑問を抱きながら、毎日走り回っています。

でも、こんな毎日でも、結構楽しかったりします。第九に誘って貰えたのも、選挙事務所の手伝いに行ったおかげだし、わらしべ長者ではないけれど、何処にでも首を突っ込んでいくと、そこで新たな出会いや人脈ができて、その後の人生に大きく変化をもたらしてくれるようです。「かててひろば」での出会いも然りですよね。(忘年会会場が晃屋になるなんて!!)

今は、二人とも出産を控えチビちゃんたちのお世話で大変だけど、もう少し手が離れると、やるコトはたくさん待っているから、指折り数えて待っていて下さい。いざ、その時が来たら「あぁ、こんな感じだったのね」と、初めてご理解頂けると思います。その時、お二人が“後悔する”ではなくて、その状況を楽しんでくれたら嬉しいなぁと思います。(パソコン使える人材は人財です♪)

■クマーさん

えーっ、どなたでしょう?
ひょっとして、クマーさんは、同じく第九の練習に来られている方ですか?だとしたら、おわかりだと思うのですが、途中参加の上に、毎回遅刻で顔を赤らめながら、コソコソ練習室に入ってくるのが私たち親子なものですから、指揮者のお名前も、未だに存じ上げないのですよ。
でも、とても盛り上げ上手な方だと思います。全然厳しくはないですよ。でも、レニッケ先生に対して、ものすごーく気を遣っているのは素人でもわかります。レニッケ先生は、更にスゴイ人なんでしょうね。「権威」が洋服を着て歩いているような? ドキドキ。

「12/16は、暗譜でいきますから」とハッキリおっしゃられたので、かなりプレッシャーにはなっています。明日は(あ、もう今日か!)は練習日です。頑張ります。
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Unknown (クマー)
2006-11-30 12:14:35
元クマの中の人です。第九の練習には参加していませんが、教えている若手はT森先生の教え子だらけでしてじつはぼくと同門だったりするのです。
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今日は… (ふぅ)
2006-11-30 22:50:25
「かてて」でお世話になりました。
ホント、忘年会がうちの旦那のお店になるなんて…
これも何かの縁だし、こうして人の輪ってつながっていくんですね。こうやって少しずつ人との関わりが増えていけばいいなと思っています。

それから…ごめんなさい
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また失敗… (ふぅ)
2006-11-30 23:00:34
またしても失敗してアップされてしまいました…

天草大王は今回の忘年会では出てきません。
なぜなら原価が高いのとなにしろ入荷する量が少ないんです。なのでちょっと無理なのです
でも別の地鶏での鍋は用意します。天草大王に負けず劣らずいいだしが出るのでおいしいですよそんなわたしもまだ天草大王は口にしたことがありませんが…
それとご希望のキムチ鍋はちょっと無理かもしれません。旦那に聞いたら「後で私も食べたかったとか言う人もおるしみんな同じにしたほうがいいと思うよ」と言っておりました。ただ準備が面倒なだけかもしれませんが…他はなるべくご希望に添えるようにと思っています。要望があれば言ってくださいね。

それではまたまた長々と失礼しました。
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どうも、ありがとうございます (管理人・福)
2006-12-01 23:23:49
■クマーさんへ

ええっ!? あの着ぐるみ隊の方ですか? その節はお世話になりました。子どもたちが喜んでいましたね。てっきり水泳関係と思っていたのですが、音楽関係の方だったんですね。失礼致しました。
いよいよ、明日の強化練習にはレニッケ先生が登場です。次回のブログ記事のタイトルは『噂のレニッケ先生来たる!』と、秘かに決めています。お楽しみにーっ!!


■ふぅさんへ

正直に書かなくても良かったのに…。私は、ブラジル産鶏肉でも「これが例の天草大王です」と言われて出されたら、「うんうん、やっぱり味が違う」なんて言いかねない人間なんですよ(えせグルメ)。
キムチ鍋の件は了解です。パパさんの言うとおり。ここは、地鶏の味がわかるように、水炊きでさっぱり頂きたいと思います。変なお願いしてゴメンね。
では、また。 
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ごめんなさい… (ふぅ)
2006-12-02 00:01:39
黙っておけばよかったかしら(笑)

私も味音痴でなんでもおいしいと思う幸せな人です。
こうたの方がグルメな舌を持っているかも知れません
旦那に似たのかもしれませんね。
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