櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

風の教会、光の教会、、、(安藤忠雄さんの)

2020-10-22 | アート・音楽・その他

 

僕には信仰がないけれど、祈りはあります。

闇にさす光に祈ること、さまよう風に誓うこと。そのような、心の内側の行いについて、信徒でなくとも向き合うことができる空間を、安藤忠雄氏の「光の教会」で感じた経験は僕にとっては大きなものでした。

人の住まう街の光が十字架になっている。コンクリート打ちっぱなしの御堂の正面の壁に大きな十字のスリットが空いていて、そこから入ってくる街の光と風と気配が、十字架の役割を担うのです。

そこでは、コンクリートの肌触りや音の反響が、決して冷たくなく、むしろ余計な邪念を洗ってくれるような感じがしたのです。

教会は大阪にあるのですが、東京で行われた氏の展覧会では、実寸の建物が国立新美術館の敷地に建てられ、これがまた感動的でした。

それは展示物として再現されたのだけれど、やはり単にそういうことで収まるわけもなく、それこそ司祭も信徒もいないのに深く祈ることができるトポスが成されていて、そこでまた鮮やかな経験を持つことが出来たのでした。東京の光の教会)

この「光の教会」ともに氏の代表作のひとつとして有名だった『風の教会』が再生されるプロジェクトを伝えたショートフィルムを見ました。※監督をされていた小田香さんはタル・ベーラに学ばれた方だそうで新宿で上映会がありました。

「風の教会」は、六甲オリエンタルホテルの施設として建てられ、同ホテルの閉館とともに使用されなくなり廃墟化していたそうです。

このフィルムに描かれているのは、この廃墟化していた教会に新しい息吹が宿って再オープンしてゆく経過なのですが、僕は、それとは別のことを感じながら見つめていました。

僕は、奈良の古い街で生まれ育ったせいか、廃墟や、壊れかかったものや、古い建築物に言い知れぬ魅力を感じます。

人間がつくった建物でも、それが何かしらの事情で使われなくなったりして、人の手から離れると、思いがけない風化が進み始めることがあります。

風化したり、植物が侵入したり、朽ちていったりするとき、なぜかそこに人ではない別の魂が取り憑いたりし始めるようにも感じます。特別な物音が聴こえ始めるようにも感じます。

時間を吸い込んで、壁や柱や床が、本来に与えられた役割と異なる思いがけない個性を獲得してゆくというのか、廃墟ならではの感触や気配を発してじっと在り続けてゆく、そのような場所に、僕はなんだか魅力を感じるのです。

そんな僕にとって、この映画は、静々としているのですが、すごく無数の声に満ちたものに感じられる味わい深いものでもあるのでした。

ただじっと見つめているだけの時間や、じっと聴いている楽しみを、許してくれる映画とも思えました。

景色のような、いいえ、建築のような映画とでも言えばいいのでしょうか、、、。

12分ほどなのですが、たっぷりとした時を感じました。

 

 

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stage 櫻井郁也/十字舎房:公式Webサイト

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photo : 光の教会

2017-12-16 | アート・音楽・その他




安藤忠雄展にて。

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安藤忠雄展にて

2017-12-15 | アート・音楽・その他



安藤忠雄展がもうすぐ終わりですが、見応えがありました。

展示の多くは模型や図面や文字資料ですが、やはり初期から現在までを鳥瞰的に知る経験になり、安藤氏の一貫したそして膨大な仕事の軌跡から、すごく力強いメッセージを感じました。

たとえば絵本美術館は非公開ながらぜひ一度たずねてみたいですが、写真を見ていても子どもたちがうらやましくなるような建物ですし、以前ここに書いた小海町高原美術館 にしても、僕には安藤氏の建築は非常に落ち着いた、居心地への配慮を感じます。コンクリート建築では自由な造形性や素材感を感じることは多いけれど、安藤氏の建築の内部では他にはあまり感じたことがない温かみと自然な柔らかさを感じるのです。コンクリートは元が柔らかいから設計者や施工者の人柄を反映するのでしょうか、本当に様々な表情をしています。しかし安藤氏のように、たとえ大きな建物でさえコンクリートが暖かく人肌のように感じる建築は珍しいと思います。
住まいを沢山つくられて、暮らしまわりのことや家族のことに、しっかり向き合ってこられたからでしょうか。
根にはご自身のとても強い意見があるのだとは思うのですが、それが主張されなくて、こちらには優しさのほうがより強く届くように感じるのです。

展覧会のなかで特別な経験を与えてもらえたのは、やはり茨木春日丘教会いわゆる「光の教会」の実物大の再現です。

大阪に用があったとき見学を申入れたことがありますが何ケ月もの順番待ちでした。関西近くでもなければ大変ですが、それが見れますし内部に入って時を過ごすことができます。

インスタレーションと解説はありますが、それは完全に建築です。感動しました。
そして今回の展示では当初の構想のごとく、正面壁に開かれた十字架のスリットにはガラスがはめ込まれていません。だから、光だけでなくて、風が入ってくるのです。刻一刻と変容する「光と風」を肌で感じながら座っていると、わたしたちと時の流れが一体であることを改めて思いますし、大切になります。
新しい光の教会が、この六本木に出現したと僕は思い込んでしまいました。なんとか永久展示にならないものなのか、と思います。
晴れの日は特におすすめです。

展示は乃木坂の新国立美術館で18日まで。


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小海町高原美術館

2017-08-12 | アート・音楽・その他


先日、、、

北八ヶ岳に行ったあと、小海町高原美術館に寄ってみました。

長野県南佐久郡小海町。松原湖からすぐ。

いまの展示は、小海町が独自に招聘した作家が滞在制作したアートラリーという企画で、いくつかのコンセプチュアルな作品が展示されていました。

話題性のある作家や知名度のある作品や賞などで権威付けされたもので動員を見込んだ展覧会ではなく、企画そのものも、作品ひとつひとつも、思考プロセスのひとつとして感じ取れるような、デリケートな雰囲気でした。
その場で生じたもの、その場で初めて知ることができるもの、そういうものは案外なかなか、、、。

ところで、ここの建物は個性的。
安藤忠雄氏の建築です。

まさに、という感じですが、別世界に誘われてゆくような入口まわりから、新しい環境に溶けてゆくような、ゆるやかなスロープの廊下をわたって、カーブの美しい展示室に出ます。程よい外光の具合で、落ち着いた居心地。
ひとりっきりになるには最高かもしれません。
それから庭がさわやか。草地にコンクリートの壁が鮮やかなコントラストで、気持ち良いです。

美術館には、もちろん何かを観に行くのですが、僕の場合は建物の雰囲気や味わいがとても楽しみなのですが、そういう、居心地という点でも、ここはめっけものでした。

とても涼しい地域で、都内の暑さから逃れられます。
車なら蓼科などにも近いです。



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