櫻井郁也ダンスブログ Dance and Art by Sakurai Ikuya/CROSS SECTION

◉新作ダンス公演2024年7/13〜14 ◉コンテンポラリーダンス、舞踏、オイリュトミー

上演感想:アペイロンのためのパフォーマンス(9/22,フランク・ミルトゲン×櫻井郁也)

2019-10-01 | 公演写真&記録(国内) dance works in JP(photo etc)

 

 

 9/22に行なった「アペイロンのためのパフォーマンス〜あるいは、知覚の会話」は、ルクセンブルクの美術家フランク・ミルトゲン氏との共同作業だった。依頼を受けて、わずか10日ほどで本番だったが、とても腑に落ちる作業だった。

 僕はミルトゲン氏がドバイで発表した作品写真を見て好感をもった。そして、氏の作品から僕が聴覚的かつ音楽的なイメージを刺激されたことを氏に話した。

物質と光によって美術は存在してあるのだろうけれど、必ずしも眼で見ているものが美術の全てではないと僕は思う。眼を通じて、視覚以外の感覚が目覚めることは多々ある。美術においての眼は、あくまで想像力の入口なのだ。即物的でありながら、多様な感覚を目覚めさせる力を、彼の作品はもっていると思った。

  出会う前、ミルトゲン氏は僕のダンス作品「白鳥」の記録映像を観ていた。それは2018年の作品で、大量の羊毛と羽毛からつくられた織物が舞台美術になった。その踊りを観たあと、コラボレーションが可能ならダンスのために火山灰か炭化ケイ素の粉末を準備してみたいがどうか、と連絡があり、最終的に採用されたのは後者だった。

炭化ケイ素は、隕石に含まれる物質だが、それはサンドペーパーの材料にもなる。磨く、傷つける、痛覚と関係する物質だ。痛覚は、僕の作品すべてにおいて、つねに大切な要素になっている。

  コンクリートの床一面を広く覆う炭化ケイ素のほかに、氏が用意したのは、空中から規則的なリズムで落下する黒い布、同時に、下方から起こる風圧によって空中に保たれるもう一枚の黒い布、そして、それらと身体を見つめるような位置に、大きな赤い絵が一枚。それが火山の岩肌にへばりつくようにして描かれたものだということが、会場の入口で映し出されているビデオから推察された。抽象画のように見えるそれは、岩肌そのものの表情だった。その「赤い絵」を見つめ、また、絵に見つめられながら、炭化ケイ素の細かい粉末にまみれて踊った。

  観客の方々の視線からは、身体と「もの」が絵画的な音楽関係を作っているように見えたかもしれない。それは生成でありながら痕跡でもあるのだから、時間性を感じさせたかもしれない。

落下する布は、僕のレッスンに氏が訪れたときスケッチして見せてくれたものだった。身体は重力に関わりながら時間を蓄積してゆくと僕は思っている。そんなことを話した記憶もある。

  ものごとはいかにして生まれ始まるのか。そもそも生命はなぜ生まれるのか。ということを、今回はとくに考えた。踊る前に、踊りのさなかで、踊りの終わったあともずっと、、、。そんなことを考えたくなる状況を、フランク・ミルトゲンの美術は、醸し出していた。

ひとに何かを考えさせる、という大切なハタラキを作品に宿すのは、それじたい素晴らしい成果だと僕は思う。作品の解釈を考えさせるのは当たり前だが、作品を通じて「ものごと自体」への思考を促すのは、より大切だと思う。

  ミルトゲン氏は、たぶん地球のことを考えている。僕は人体のことばっかり考えている。地球と人体に根源的な関係があるとすれば、私たちの考えはどこかで重なる可能性があるのかもしれない。環境や物から何かを読み取ろうとする氏の作業プロセスには特に共感できた。僕にとっては踊りもまた、ものとこと、との解読にかかわる行動だから、、、。

画像=フランク・ミルトゲン展カタログ掲載ページ(撮影=永田康祐)

 

 

 

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