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「パート代で夫を風俗に送り出す」北関東で貧困と男尊女卑に苦しむ女性の叫び2-2

2020-12-19 12:53:24 | ニユース

前ページより

■ジェンダー間の圧倒的な非対称性

 【中村】ただ逆パターンはあるかもしれない。新宿二丁目でカラダを売ったお金でミュージシャンを続けているとか、デザイナーになったという男性もいる。男性がカラダを売る場合、自己決定権になるわけですか。

 【藤井】もちろん、なりますが、やはり男性の自己決定権の行使であっても、現在の社会の構造のなかにおいて理解する必要がありますよね。その点は、女性の場合とまったく変わりはありません。

 ただ、なんといっても、ジェンダーは非対称的というか、対等ではなくて、男/女という区別はそれ自体で権力関係によって貫かれています。私たちの社会では、男性には社会的な選択の可能性が、女性に比べて圧倒的に開かれているのは紛れもない事実だと僕は思います。

 この社会は残念ながら未だに男性中心であり、学歴やスキルのない女性の選択肢は非常に限られている。

 【中村】北関東では男性と女性は圧倒的に非対称です。

 【藤井】フェミニストが本当に手を差し伸べるべきというか連帯すべきなのは、自立もできなければ競争にも自分にも弱い、依存的な人たちなわけでしょ。

 ただそういう人たちからすると、フェミニストは自分たちとは意見も違えば、生まれや育ち、生き方というかキャリアも違う、分かり合えるはずもないということで、当事者間で対立まではいかなくても、ディスコミュニケーションが起きてしまう可能性はあるのではないでしょうか。

■勝ち組リベラルには見えない貧困層の現実

 【中村】上流階級と人権派やフェミニストは相性がいいというか、言っていることが同じですね。で、風俗嬢や貧困当事者とは相性が悪い。まさにディスコミュニケーション状態です。

 【藤井】勝ち組のリベラル層はフェミニスト団体と折り合いが非常にいい。その象徴、ネオリベの勝ち組がヒラリー・クリントン、超スーパーエリートですね。フェミニストのリーダーって、基本的に能力が高くて、男性との競争に打ち勝ってきた人たち。

 だから競争への親和性が高いし、そもそも生き方とか考え方とかが自立的です。一方、性産業は依存型。男の欲望に依存することで成り立っている。

 【中村】いまの日本は与党も野党もみんなネオリベ勝者なので、貧困の現実が見えない。どっちに転んでも格差は広がるし、丸く収まらない。そうこうしているうちに貧困と格差が広がり尽くしてしまって手に負えないことになってしまった。

 【藤井】フェミニズムの内部からも当然、そこには批判はあります。

 歴史を振り返ると、たとえば、ブラックフェミニズムがあった。白人、中産階級出身で、高学歴なフェミニストに対して、黒人のフェミニストが批判するわけですよ、「あなたたちの主張する女性の権利と私たちのとは違う」って。

 女性としての差別だけではなく人種や社会階層としても差別されているのだと彼女らは訴えたんです。彼女らの主張によって、フェミニズムは運動においても理論においてもとても豊かになり、より洗練されましたが、対立あるいは分断は、相変わらず続く気がしますね。

■抽象的な「平等」にしか興味がないリベラル層の欺瞞

 【藤井】もう一つ問題だと思うのは、リベラルの形式主義的な面です。そもそもリベラルの前提とする人間観はきわめて抽象的で形式的です。権利は法律で保障します、公の場所での言葉を規制します、といっても、それは形式にすぎない。

 現実に手を付けるということは、社会の構造を変える必要が出てきます。それは大変なので、せめて言葉だけでもというわけです。

 リベラルのいう正義を実現しようとするなら、資本主義の問題、すなわち、この場合だと身体や労働の商品化の問題に踏み込まざるを得ない。しかし、近代に生まれたリベラルにはそれはできないと思いますよ。リベラルと資本主義は血縁関係にありますから。

 【中村】リベラル層のいう平等とは、あくまで形式上の平等ってことですね。

 【藤井】形式上の平等さえ法律でつくっておけば、実際がどうなっていようが無関心、放置しちゃう。それは欺瞞だと一九世紀のマルクス以降、ずっと非難されていますね。

 マルクスの『ユダヤ人問題によせて』なんかは、リベラリズムのそうした形式主義を徹底的に批判していて、今読んでも痛快ですよ。

■フェミニストや人権派が貧困女性を追いつめている

 【中村】岡村発言はリベラル層が岡村を集団リンチして、風俗関係者や底辺層の女性たちは現実をわかっているのでスルーかフォローした。当事者としては、まったくそのとおりだという話で。風俗に従事するのは現実に貧しい人であって、そこで追求されるのは目先の利益だけ。

 だから、岡村みたいにお金を落としてくれる人は、それだけでいいんだという発想が根底にある。丸く収まっていたその再分配機能を、先ほどの承認欲求を求めるリベラル層が正論で妨害したみたいな状況でしたね。

 【藤井】なるほど。それにしても、中村さんは承認欲求には手厳しい(笑)。

 【中村】リベラル層や女性団体、人権派の人たちは女性の人権を守ろうと言うけれど、上流階級である彼らの言うとおりの社会になってしまったら、結果、彼女たちの人生はボロボロになってしまう。

 認めてもらった価値が否定されて、賃金が減るわけですから。そうすると、もっと危険だったり、搾取の激しい違法な領域に流れてしまう。また、北関東みたいにお母さんたちの売春に姿を変えるかもしれない。そういうことがずっと繰り返されている。言葉だけで、現実はまったく動いていない。

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藤井 達夫(ふじい・たつお)
政治学者
1973年岐阜県生まれ。早稲田大学大学院政治学研究科政治学専攻博士後期課程退学(単位取得)。現在、同大学院ほかで非常勤講師として教鞭をとる。近年の研究の関心は、現代民主主義理論。共著に『公共性の政治理論』(ナカニシヤ出版)、共訳に『熟議民主主義ハンドブック』(現代人文社)など。
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中村 淳彦(なかむら・あつひこ)
ノンフィクションライター
1972年生まれ。主著に『名前のない女たち』『ワタミ渡邉美樹 日本を崩壊させるブラックモンスター』など。新潮新書『日本の風俗嬢』は1位書店が続出してベストセラーに。
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