手形の分類
手形とは、手形を振出した人、手形を受取る人、やりとりされる金額、期日等が書かれた紙片(紙切れ)の事であり、商品売買等の代金のやりとりの際に用いられます、手形は法律上、約束手形と為替手形に分類します。
受取手形とは、手形に書かれている金額を貰う事が出来る権利の事です、手形を換金すればお金が入って来るので資産の勘定となります、一方支払手形は、手形に書かれている金額を支払わなければならない義務を表しています、つまり、お金を支払う事になるので負債の勘定になります。
約束手形の仕組み
約束手形は、当事者が2名登場する手形です、手形を振出す人と手形を貰う人、或いは手形に書かれている金額を支払う人と、手形に書かれている金額を貰う人です、約束手形では、手形を作成し振出した人がお金を支払う事になり、手形を受取った人がお金を貰う事が出来ます、お金のやりとりは、手形に書かれた期日に行います。
手形の利点
手形をやりとりする事の利点に付いてもお話ししておきます、もしかすると、手形を遣り取りしてもどうせお金を貰う事が出来るのは先なのだから、わざわざ手形を振出さなくても売掛金、買掛金のままいいのではないかと思われるかも知れません、確かに、お金の遣り取りは期日が来なければ行わせませんが、手形を受取った人は期日前にその手形を銀行に持って行ってお金に換えてもらったり、商品代金の支払いとして使うことが出来ます。
通常、売掛金のままではその様な事は出来ませんからね、すなわち、手形を用いる事によって資金繰りを良くする事が出来るという利点があげられます、それでは実際に仕訳を行って見ましょう。
例題
「A商店はB商店より商品70,000円を仕入れ、代金は約束手形を振出して支払った、両商店の仕訳をすること」
A商店
先ず商品を70,000円仕入れたのだから仕入という費用が70,000円発生します、よって、借方は仕入70,000円となります、その代金は約束手形を振出して支払ったので支払手形という負債が70,000円増加します、ですから、貸方は支払手形70,000円とします。
(借)仕入70,000(貸)支払手形70,000
B商店。
商品を70,000円で売ったのだから売上という収益が70,000円発生します、よって、貸方は売上70,000円となります、代金はA商店振出しの約束手形で受け取ったので、受取手形という資産が70,000円増加します、よって、借方は受取手形70,000円とします。
(借)受取手形70,000(貸)売上70,000
例題
「A商店はB商店に対して以前振出した約束手形70,000円の期日が到来したので、当座預金口座を通じて支払った、両商店の仕訳をする事」
A商店
手形代金を支払ったので支払手形という負債が70,000円減少します、よって、借方は支払手形70,000円とします、代金は当座預金口座から支払ったので当座預金という資産が70,0000円減少します、ですから、貸方は当座預金70,000円とします。
(借)支払手形70,000(貸)当座預金70,000
B商店
手形代金を受取ったので受取手形という資産が70,000円減少します、よって、貸方は受取手形70,000円とします、代金は当座預金口座に入金されているので当座預金という資産が70,000円増加します、よって、借方は当座預金70,000とします。
(借)当座預金70,000(貸)受取手形70,000
手形代金の決済は簿記の試験での問題上は現金などで行われる事があります、しかし、実務上は一般的に決済を銀行に依頼して当座預金にて行う事が多いです、期日に支払人がお金を支払ってくれない場合があります、これを手形の不渡りといいます、手形の不渡りに付いては2級で勉強します。
当事者が3名登場する手形(為替手形)
為替手形の仕組み
為替手形は、基本的には当事者が3名登場する手形で、手形を振出す人、手形に書かれている金額を支払う人、手形に書かれている金額を貰う人の3名が出てきます、「この手形は、取引先の異なる売掛金と買掛金を同時に相殺する為に用いられます」。
A社の取引先がB社で、B社に対する売掛金が50,000円あるとします、また、A社の仕入先がC社でC社に対して買掛金が50,000円あるとします、もしC社に対する買掛金を支払う為のお金なかったとすると、A社はB社に行って売掛金を回収しC社に支払わなければなりません、しかし、B社が本来A社に対して支払うお金をC社に支払ってくれればA社からしてみればB社に対する売掛金とC社に対する買掛金を一気に相殺する事ができます、それを可能にするのが為替手形です。
振出人(A社)の仕訳
A社は、B社に対する売掛金とC社に対する買掛金を相殺するために為替手形を作成し、B社に持って行きます、そして、B社に対して「私に対する掛代金を私ではなくC社に支払って貰えませんか、それを引き受けて貰える様であれば、この為替手形にサインしてください」とお願いします。
B社がこの申し出を受け入れてくれてA社の作成してきた為替手形にサインをする事で、この為替手形の効力が発生します、その後A社はC社に対して「おたくに対する掛代金は私の代わりにB社が支払う事になったので、宜しくお願いします」と言ってこの手形をC社に渡します、その結果、A社はB社に対する売掛金とC社に対する買掛金を相殺する事が出来るので、
(借)買掛金50,000(貸)売掛金50,000
と、仕訳することになります。
支払人(B社)の仕訳
B社はA社からの手形代金の支払いを求められそれを引き受けサインすることによって手形に書かれている金額を支払う義務が生じます、つまり、支払手形が増加することになります、その一方でA社に対する掛代金、つまり、B社からしてみるとA社に対する買掛金を支払わなくても済むようになるので、買掛金が減少することになります、よって
(借)買掛金50,000(貸)支払手形50,000
と、仕訳する事になります、なお、「為替手形では宛名の所に支払人が書かれるので支払人の事を名宛人と言います」。
受取人(C社)の仕訳
C社はA社からB社が支払う旨の為替手形を受取る事によって手形に書かれている金額を貰う事が出来る権利を得ます、つまり、受取手形が増加することになります、一方で、A社に対する掛代金、つまり、C社からしてみるとA社に対する売掛金が減少します、よって、次の様な仕訳をします。
(借)受取手形50,000(貸)売掛金50,000
例題
「D商店は仕入先E商店より商品80,000円を仕入れ、代金は得意先F商店宛の為替手形を振出し、F商店の引受を得てE商店に渡した、D商店、E商店、F商店の仕訳をする事」
D商店
先ず、商品を80,000円仕入れたのだから仕入という費用が80,000円発生します、よって、借方は仕入80,000円となります、その代金は得意先F商店宛の為替手形を振出したのでF商店に対する売掛金がなくなります、よって、売掛金という資産が80,000円減少するので貸方は売掛金80,000円とします。
(借)仕入80,000(貸)売掛金80,000
F商店
D商店より為替手形の支払いを依頼されそれを引受けたので、支払手形という負債が80,000円増加します、ですから、貸方は支払手形80,000円とします、又、為替手形の支払いを引き受けた事によって、D商店に対する買掛金がなくなるので買掛金という負債が80,000円減少します、よって、借方は買掛金80,000とします。
(借)買掛金80,000(貸)支払手形80,000
E商店
D商店に対して商品を80,000円売上げたので売上という収益が80,000円発生します、よって、貸方は売上80,000円とします、又代金はF商店が支払うという為替手形を受取ったので、受取手形という資産が80,000円増加します、よって、借方は受取手形80,000円とします。
(借)受取手形80,000(貸)売上80,000
三角形の図を書いて考える時は下に振出人、右上に支払人左上に受取人を書くようにしましょう、どの問題も振出人、支払人、受取人の場所を固定すると理解が深まります、掛代金の決済だけでなく商品売買時に為替手形を用いる事もあります、実務上はあまり用いられない為替手形ですが簿記の試験では頻繁に出題されます、実務上で為替手形を用いる際は3者間に信頼関係がある事が前提となります、いきなり知らない会社がお金を支払う事になったと言われても貰う方は困ってしまう筈です。
基本は為替手形の当事者は3名ですが、場合によっては振出人と支払人が同じとか、振出人と受取人が同じというケースがあります、前者は自己宛為替手形、後者を自己指図為替手形と言います、自己宛為替手形や自己指図為替手形は難易度が高いので、基本的な為替手形の仕組みをしっかり理解してから学習しましょう、実務上は手形の利用が減少傾向にあるようです、その理由の一つとして手形の作成には収入印紙が必要となるのでその節約の為という事があげられます。
問題文で「得意先◯◯商店~」とあれば、例え売掛金に付いてはっきり書かれていなくても、その商店に)売掛金があると考えましょう。
為替手形は迷う恐れがありますので、どの様に考えたなら良いのか「質問」に対する「解説」を記載しますが、試験で第1問にこの為替手形の仕訳問題が出たならパニックにいなりますので、その時はその問題は後回しにして第2問からはじめましょう。
「質問」
為替手形の仕訳について 。
「A商店はB商店に対する買掛金8000円を支払うために、得意先C商店を名宛人とする為替手形を振り出し、C商店の引き受けを得てB商店に渡した」この場合のA商店の仕訳なのですが、なぜ貸方が(C商店に対する)売掛金になるのかよくわかりません。ですので、C商店の借方が(A商店に対する)買掛金になるのもよくわかりません。
「考え方」
A商店の仕訳
(借)買掛金(B商店)8,000(貸)売掛金(C商店)8,000
C商店の仕訳
(借)買掛金(A商店)8,000(貸)支払手形(B商店)8,000
B商店の仕訳
(借)受取手形(C商店)8,000(貸)売掛金(A商店)8,000
その前の仕訳は
A商店
B商店に買掛金があり
(借)仕入8,000(貸)買掛金(B商店)8,000
C商店には売掛金がある
(借)売掛金(C商店)8,000(貸)売上8,000
C商店
A商店に買掛金があり
(借)仕入8,000(貸)買掛金(A商店)8,000
B商店
A商店に売掛金がある
(借)売掛金(A商店)8,000(貸)売上8,000
問題
A商店から150000円を仕入れ、代金のうち40000円については同店より為替手形の引き受けを求められたため、これを引き受け、残額については同店宛の約束手形を振り出して払った。
私の解答は
仕入れ15万/買掛金4万
支払手形11万
で不正確
正解は
仕入れ15万/支払手形15万
なのですが 分かりやすい、解説を期待しています、為替問題ばかりやっていると、余計ややこしく混乱しています。
別問題で、
買掛金65000の支払いのために、同額の為替手形を振り出し、得意先の引き受けを得て、仕入先にわたした。
解答
買掛金65000/売掛金65000
苦手な為替手形を混乱しない覚え方はありますでしょうか?
「解説」
貴方の仕訳は
(借)仕入150,000(貸)買掛金40,000
,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,,支払手形110,000
11万円しか支払っていないという事になります、それだったならA商店から15万円を仕入れそのうちの11万円を手形で支払った、この時の仕訳をしなさい、という問題になると思います。
そこで、何故「為替手形」の引受を求められたのか、という事を考える必要があります、つまりA商店は◯商店に買掛金がありその支払として当店に為替手形の引受を求めたという形式が成り立ちます、でなければ約束手形15万円で良いのですから、でも、どんなに詳しく説明しても又迷います、ですから迷わない方法を教える事が大事なのです。
1,振出した(借)買掛金xxxx(貸)売掛金xxxx
2,引受けた(借)買掛金xxxx(貸)支払手形xxxx
3,受取った(借)受取手形xxxx(貸)売掛金xxxx
この様に言葉と結びつけたこの構図を覚えていれば迷う事はありません、この問題の場合は2,の「引受けた」ですので(借)買掛金xxxx(貸)支払手形xxxx,となるところ「仕入れた」で「掛けで仕入れた」ではないので借方の買掛金が仕入となり(借)仕入xxxx(貸)支払手形xxxx,あとは貴方の解答通りに約束手形を振出した(貸)支払手形110,000で支払手形同士ですので+して(貸)150,000となったのです。
「別問題に付いては」
買掛金65,000の支払いの為に同額の為替手形を「振出した」で1,の(借)買掛金65,000(貸)売掛金65,000これで為替手形は完璧です。