11. Le physique (ル・フィジック) 「容姿」「肉体」「体格」
OT: (集英社文庫第3巻)
オスカル・フランソワ
「ジェローデル大尉…きみは… じぶんの容姿に自信があるか?」
ジェローデル大尉
「隊長、近衛隊に入隊するには、あるていど、ととのった容姿が必要とされます。 だから…入隊をゆるされたということは、すこしは自信をもってもいいということなのじゃないかと思っていますが…」
考察 : (読みやすくするために、解説がテクストの下に来るように投稿いたしました)
常々疑問に思っているのですが、何故、多くの皆さまが「ジェローデルは自信過剰」「ジェローデルは鼻持ちならないキザな男」だなどとおっしゃるのでしょうか?
このオリジナル・テキスト(日本語)を見るかぎり、非常に謙遜した物言いです。
筆者はアニメ版を見ていないのですが、第1話でオスカル・フランソワといきなり決闘したり、その他にもいろいろ「???」な行動があったともれ聞いておりますが…やはり、原点は原作・オリジナル・テキスト(日本語)。ジェローデルについて、正しく理解いたしましょう。
…と言いつつも…
Kana 版(フランス語)を見ると、自分の容姿について結構自信を持っていることを「断言」しております…
そして、ちょっと気になるのが、オスカル・フランソワの問い。
Êtes-vous sûr de votre physique ? (Tome 1)
「あなたはあなたの お体 に自信がありますか?」
などと、無邪気にジェローデル大尉※に問うています。
確かに physique は「容姿」「風貌」という意味ですが、同時に
「肉体」とか「体つき」とか、かなり具体的な方面の意味合いを持つ語です。
※④-テクストでも注釈を添えましたが、地位・身分のフランス語表記・表現①で、オリジナル・テキスト(日本語)とKana版のずれに触れてあります。
オスカル・フランソワが、「あなたは、自分の 容姿 に自信がありますか?」と聞いたつもりでも、ジェローデル大尉が 「 肉体 に自信がありますか?」と受け取ってしまわないか、ちょっと心配です。オスカル・フランソワ、文脈もなく、唐突に質問しておりますし…。そこにさらりと返答するジェローデル大尉、大人の余裕を感じるのは筆者だけでしょうか。
なお、オリジナル・テキスト(日本語)では、オスカル・フランソワはジェローデル大尉を「きみ」と読んでおりますが、貴族同士ですので、Kana 版では、vous で話しております。
オスカル・フランソワの問いに答えるジェローデル大尉、オリジナル・テキスト(日本語版)の返答と比べて、Kana 版では、論理的にきっぱりと答えていて、爽やかです。
Aであるためには、Bであることが必要である
上記の事実により、
Aである以上、Bであることは疑う余地がない。
Mademoiselle ! (マドモワゼル!)
もフランスっぽいですが、筆者は、ジェローデル大尉のこの論理性に、フランスらしさを非常に感じてしまいます。ジェローデル大尉、フランス語も数学も哲学も得意そうです。
突然の、意図不明のこのような質問、尚かつ密かに愛する、見目うるわしい女性からの問いとなれば、即座にこのような論理性をもって答えるのは、案外難しいのではないかと思います。自然に答えるジェローデル大尉、頭脳明晰であると同時に、育ちの良さが感じられる場面です。
なお、harmonieux(se)のほかに、symétrique (シンメトリック)にも「均斉のとれた」「釣り合いの取れた」という意味があります。
「シンメトリー」(仏:symétrie 英:symmetry )というと、「左右対称」のことですね。
『利己的な遺伝子』The Selfish Gene という書を著して、進化論に革命的な一石を投じたリチャード・ドーキンスという動物行動学者がいます。( しばらく前に、テレビドラマで「遺伝子:ジーン」を扱ったものがあったらしいですね)
そのドーキンスの説をわかりやすく解説し、独自の解釈を加えて科学エッセイとして発表している竹内久美子さんは、『シンメトリーな男』という興味深い著書を出しておられます。
オスカル・フランソワの行動についても、ドーキンス/竹内久美子さん理論で分析してみたら、非常に興味深いのでは、とかねがね筆者は思っております。
…これも、もし実現したら、怒りを覚えられるファンの方が多数おられることでしょうが…
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