goo blog サービス終了のお知らせ 

アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

3Dの『Padmaavat(パドマーワト)』@ムンバイ

2018-03-15 | インド映画

ムンバイに移動して来ました。しかし何だか、ムンバイでは騙されることが多くて、私にしては負け続き、という感じです。初っぱなは、プネーから移動してきたバスの終点、ムンバイのダーダルでつかまった、タクシーの運ちゃん。メーターの所の端を布で隠していておかしいなあ、と思っていたら、最終的に最後に見た金額よりも100ルピーぐらい多い金額がメーターに提示されていて、「違うでしょ!」と抗議したら、端数を引いた「400ルピーでいい」ということになりました。ムンバイのタクシーは、メーターがギアのハンドルのちょうど向こう付いていて、すごく見にくいのです。初乗りは22ルピー(約38円)と安いのですが、いったん上がり始めると1ルピー単位でどんどん上がっていきます。それにしても、長距離バスの終点で待ち受けているタクシーは下心あり、というのは常識なので、もっと注意すべきでした。どうりで、行く道々、観光案内もどきのことをしてくれたと思った...。


そして、2回目はヒット中の映画『Padmaavat(パドマーワト)』を見に、ナリマンポイント(ムンバイの南端地区)のINOX(アイノックス)というシネコンチェーンの映画館に行った時のこと。上写真の左が建物の外に設置してあるチケット売り場で、映画館は3階にあります。INOXは豪華座席のスクリーンを設置しており、3Dの『Padmaavat』はそこで上映されていたので、通常料金の約3倍、630ルピー(約1070円)でした。3Dでの上映がすばらしく、つい休憩時間もリッチな気分が支配していたため、注文を取りに来たウェイターにホットコーヒーを頼んだところ、しばらくしてコーヒーとスプーン、追加の砂糖、ナプキン、ウェットティシューなどを持ってきてくれました。その後、映画が再開してから請求書を持って来、席のテーブルに載っていたメニューで170ルピーとあったので、その額を用意していたところ、160ルピーの請求書にその額ちょうどに減らして渡したのでした。すると、さらにしばらくして、「マダム、あなたのくれた10ルピー札が破れているから受け取れない」と持ってきたのです。普段ならここでけんかするのですが、映画が始まっていたのと、「ははあ、チップをあげなかったのでいやがらせだな」と気がつき、その10ルピー札を受け取って20ルピー札を渡し、「おつりはいいわ」と帰しました。「サンキュー」とご機嫌よく帰って行ったウェーター君、計略が成功してよかったですね。


白状すると、その時私の財布には真ん中がちょっと裂けた100ルピー札があり、これで払ってしまおうか、という悪い考えが頭をもたげていたのです。でも、いくら暗くてわからないから、と言っても、それはいかんだろう、ということで、慎重にきれいな札を確かめて、用意していたのでした。インドでは、少しでも破れていたり、インクがべたっとついていたりする札は受け取りを拒否されるのが普通です(ホッチキスで綴じた跡や、計算が手書きしてあったりするのはOK)。銀行に持って行くと換えてくれる、という話ですが、どこの銀行ならOKなのか不明で、とりあえずはそういうことにならないよう、換金やおつりを受け取る時によくチェックして、これはNGと思ったら相手に「このお札は駄目だから換えて下さい」と言うのです。ヒンディー語なら、「イェー・ナヒーン・チャレーガー(これはいけません)」と言えば通じます。先に述べた100ルピー札はどこでつかまされたのかわからず、自分のうっかりミスを後悔したのですが、そんな私なのでひんぱんに「イェー・ナヒーン・チャレーガー」をやっており、INOXのウェイターが持ってきたような10ルピー札は私の財布には存在してなかったのでした。INOXさん、二度とこんなことはしないようにしてね、と言うと、マダム、チップをあげるのを忘れないようにして下さいね、と言われそうですが、皆様もご注意下さい。

Deepika Padukone in Padmaavat (2018)

さて、3Dの『Padmaavat』ですが、最初のクレジットタイトルから、前面のクレジット文字と最奥のミニアチュール風スケッチ画の間に火の粉が飛ぶ画面にやられてしまいました。物語は歴史上の出来事を元に、サンジャイ・リーラー・バンサーリー監督が構成した誇り高い王妃パドマーワティーの物語になっており、こう言っては何ですが、様式美を追求したあまり、生身の人間劇としての面白さが希薄になってしまったという、最近のバンサーリー監督作と同じ出来上がりになってしまっていました。でも、その様式美や、私がいつも悪口で言う「無駄に豪華」という各部分が3Dにはぴったりで、目の正月であったことは否めません。3D作品に仕上げるためのツボがよく押さえられており、デリー・スルターン王朝のうちキルジー朝(日本では「ハルジー朝」と表記されたりする、1290年から始まる王朝)を打ち立てたスルターン・ジャラールッディーン・キルジー(ラザー・ムラード~まだお元気で嬉しい限り)の娘メーヘルンニサー(アディティ・ラーオ・ハイダリー)を、ジャラールッディーンの甥アラーウッディーン・キルジー(ランヴィール・シン)が娶るシーンから始まって、森の中で狩りをするパドマーワティー(ディーピカー・パードゥコーン)とメーワール王国の若き王ラーナー・ラタン・シン(シャーヒド・カプール)との出会いのシーンなど、画面の奥行きがすばらしい効果をあげていました。

Padmaavat (2018)

ただ、アラーウッディーンが女たらしで、妻を娶ったもののパドマーワティー王妃の美しさの評判を聞けば彼女を手に入れんとしてメーワールまで攻めていく、というこの映画の軸となる動機は、その描き方に難があって、映画のストーリーを弱いものにしています。アラーウッディーンの寵臣で、のちに実権を握るマリク・カーフール(ジム・サルブ)も道化か宦官のようなキャラになっていますし、歴史物はやっぱり難しいなあ、と思いました。最後、アラーウッディーンとラタン・シンが一騎打ちをするも、マリク・カーフールの奸計でラタン・シンは倒されてしまい、未亡人となったパドマーワティーはアラーウッディーンの手が及ぶ前に火にその身を投じてサティー(夫への殉死)を行う、というのがストーリーなのですが、なぜこれが、ヒンドゥー至上主義者たちの非難の対象になったのかよくわかりません。公開前、抗議活動がいろいろ起こっている時に監督は「映画を見てもらえばわかる」と言っていましたが、まさしくその通り。でもまあその騒動がかえって観客の興味をあおり、1月25日の公開から2ヶ月近く経つ現在もロングラン中、というのはすごいですね。すでに興収も56億ルピーを超え、歴代興収トップ10にランク入りしました。予告編はこちらです。なお、当初『Padmaavati(パドマーワティー)』というタイトルだったのが『Padmawat(パドマーワト)』に変わったのは映画検定局(CBFC)の指示で、詩人の書いた物語に依拠する、ということを示すためにその詩のタイトル通りにしなさい、ということのようです。

Padmaavat | Official Trailer | Ranveer Singh | Shahid Kapoor | Deepika Padukone

この予告編ではわかりませんが、ディーピカー・パードゥコーンが演じるパドマーワティーは、時々語尾に「現代の女の子」的なニュアンスがこぼれて、こちらは現実に引き戻される、ということが何度かありました。そういう点では、メーヘルンニサーを演じたアディティ・ラーオ・ハイダリーの方が、ぴったり役にはまっていたと思います。また、メーワール王朝のラタン・シンにはすでに妃がいて、パドマーワティーを第二妃として娶るのですが、この最初の妃役のアヌプリヤ・ゴーエーンカーも高貴さが皆無で今ひとつ。サンジャイ・リーラー・バンサーリー監督の前作『Bajirao Mastani(バージーラーオとマスターニー)』(2015)でのプリヤンカー・チョープラーの演技の素晴らしさを思い知らされた次第です。もうちょっと、ストーリーに深みを持たせてくれると、日本での上映にも可能性が出てくるかも知れませんよ、サンジャイ・リーラー・バンサーリー監督作品。


INOXでは未だにカメラを持っていると、バッテリーを抜いて預けさせられます。でも、スマホではバンバン写真が撮れる時代なのに、しかも3D映画なのに、カメラを持って入ったってどうということはなかろうに、と思ってしまうんですけどね。バッテリーは台帳に書き込んで入り口のセキュリティーの人が預かったあと、トークンをくれます。鑑賞後にそれを渡してバッテリーを返してもらい、「大丈夫かどうか撮るわね」と言って撮ったセキュリティ担当のお姉さん。笑顔が素敵です。

あとは、1本、明日公開の『Raid(強制捜査)』ぐらいしか見るものがなく、ホテルでのパソコン相手の仕事が多くなりそうなムンバイでした。



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 『ダンガル きっと、つよく... | トップ | インド版『Raid(強制捜査)... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

サービス終了に伴い、10月1日にコメント投稿機能を終了させていただく予定です。
ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

インド映画」カテゴリの最新記事