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アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

ユルさが温かい台湾映画『甜・秘密(Together)』

2013-03-25 | 台湾映画

前の香港映画の記事を書いていて思ったのですが、台湾はどんどん若手男女優が出てきていますね。間もなく公開される『セデック・バレ』でも、主役モーナ・ルダオの若い時代を演じる大慶(ダーチン)に、モーナ・ルダオと対立することになってしまうタイモ・ワリス役の馬志翔(マー・ジーシアン/原名:ウミン・ボヤ)など、これからが楽しみな若手男優が何人も出ています。その馬志翔が出演する台湾映画『甜・秘密(Together)』を先日映画祭の上映で見ましたので、そのご紹介をちょっと。

監督は許肇任(シュウ・ジャオレン)。台湾ドラマ「愛情合約」(2004)などの監督だそうで、映画では楊徳昌(エドワード・ヤン)や蔡明亮(ツアイ・ミンリャン)らの助監督などを務めた人です。1本立ち監督作品としては、本作が初の作品となります。下は、上映終了後のティーチ・インに登場したシュウ・ジャオレン監督です。

ストーリーは、高校生小揚(黄邵揚)の一家が中心となって展開していきます。小さな印刷屋を営んでいる父阿寶(鍾鎮濤/ケニーB)、生ジュース店を開いている母敏敏(李烈)、そして、サンドイッチ店というか朝食店で働いている姉小蘭(李千[女那])の4人の一家なのですが、みんな「♪ この頃すこーし変よ~」なのです。

久しぶりにお顔を拝見したケニーB演じる父親(上写真左)は、結婚が決まって日本人のフィアンセを連れてきた隣の家の娘小莉(隋棠)がなぜかだんだん気になってきます。また更年期なのか何かにつけてイラついている母親は、ジュース店の隣に舞台衣装の店を開いている裁縫師の青年(馬志翔)にかまわれているうちに、彼を憎からず思うようになります。そして小蘭はイケメンのプレイボーイとつきあっているのですが、彼の不実な態度にじれています。そんな小蘭に恋をしているのは、サンドイッチ店のひょろっとした経営者。というわけで、小揚がつるんでいる友人たちや彼らが付き合っている女の子も入れると、たくさんの人が悩んだり、恋をしたりしている、というのが『甜・秘密』のストーリーです。

監督の意図としては、「台北で起きている一つの話として作りました。深刻ではなく、軽みを持って家族の関係を描いてみたのです」とのことで、夫婦が別々の人を好きになっても、離婚だ何だという深刻な展開にはなりません。まあ、大人の世界にはそういうこともあるよなー、という感情を、小揚とその友人たちの若々しい恋愛をはさみながら淡々と、そしてちょっと切なく描いていきます。昔、何かの作品を評して、「台湾映画は足湯の味」と書いたことがあるのですが、この映画もそういうほんのりと温かい、ユルさを持った作品でした。

馬志翔は画面に登場した時、「この男優はハーフの人?」と思ったほどで、ガタイも顔もとても格好良かったです。しばらく見ていたら、「あ、『セデック・バレ』の!」と気がついたのですが、自分の母親に近い年頃の女性を気遣い、かつ彼女に甘えもする青年を嫌味なく演じていました。あまりいいスチールがないので(香港国際映画祭様、もっとスチールがほしかったです~)、こちらの予告編で馬志翔の軽妙な演技をチラリとどうぞ。

なお、監督の言によると、30年ぶりに台湾映画に出演することになるケニーBに父親役を演じてもらったのは、あまり外見がよく見えすぎない人(笑)で、歌が歌える人(劇中で小莉が作っている歌を一緒に歌うシーンがあります)、そして感情表現が軽やかな人、ということで白羽の矢を立てたのだとか。ケニーBは1980年前後、ジャッキー・チェンの奥さんである林鳳嬌(リン・フォンチャオ)らとの共演で、台湾の青春映画をいっぱいヒットさせているのですねー。侯孝賢(ホウ・シャオシェン)監督の初期作品にも出ていたので、ご記憶の方もあるかと思います。元々は香港のグループサウンズ「ウィナーズ」の一員で歌手なのですが、台湾映画のあとは香港映画にもたくさん出ていましたね。この間60歳になったというのに、とても若々しいお父さんでした。

それからですねー、小揚とその同級生たちもイケメン&かわいい子を揃えてあるんですよー。まったく台湾は、美男美女俳優を生み出すことに関しては、香港に大きく水をあけています。監督が言っていたのですが、英語題名「Together」は分解すると「To Get Her」になるのだとか。なるほど、「追女仔」なんですね~。そんな「秘密」も隠されている、『甜・秘密』なのでした。

 


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2 コメント

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なるほど。 (michica)
2013-03-27 00:25:12
“足湯”とは上手いこと言いますねぇ~ははは。^m^
台湾映画は片意地張らずにリラックスして見れて、心地良いですよね。大好き。 
隋棠で気になっていた作品ですが、やはりノスタルジックでイイ感じ◎楽しみです(^^♪
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michica様 (cinetama)
2013-03-27 10:33:20
コメント、ありがとうございました。

台湾映画「足湯」論、おほめにあずかり恐縮です(笑)。まあ、『セデック・バレ』のようにピリピリ熱くて効き過ぎる作品もあるのですが、「足湯」的作品がやはり台湾映画の一番の特徴かと思います。

隋棠(ソニア・スイ)はこの作品ではとてもチャーミングでしたよ。阿Bならずともふらふらっとしてしまいそうな、心映えのいい美女役でした。
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