アジア映画巡礼

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歌が導く豊穣の世界『タゴール・ソングス』[その②]♫Ekla Cholo Re♫

2020-04-10 | 日本映画

緊急事態宣言で公開が延期になったドキュメンタリー映画『タゴール・ソングス』ですが、この機会に登場する歌をいくつかご紹介しましょう。その前に、[その①]をアップしたのがだいぶ前なので、本作の基本データと簡単な紹介文を載せておきます。

『タゴール・ソングス』  公式サイト
 2019/日本/105分/ベンガル語、英語/ドキュメンタリー
 監督:佐々木美佳
 製作・配給:ノンデライコ
※4月18日(土)よりポレポレ東中野ほか全国順次公開予定→延期/公開日未定

非西欧圏で初めてノーベル文学賞を受賞したラビンドラナート・タゴール。イギリス植民地時代のインドを生きたこの大詩人は、詩だけでなく歌も作っており、その数は二千曲以上にものぼります。「タゴール・ソング」と総称されるその歌々はベンガルの自然、祈り、愛、喜び、悲しみなどを主題とし、ベンガル人の生活を彩りました。そしてタゴール・ソングは100年以上の時を超えた今もなお、ベンガルの人々に深く愛されています。なぜベンガル人はタゴールの歌にこれほど心を惹かれるのでしょうか。歌が生きるインド、バングラデシュの地を旅しながらその魅力を掘り起こすドキュメンタリー。

監督は佐々木美佳。若干26歳、ドキュメンタリーの制作自体が今回初めての佐々木監督は、東京外国語大学在学中にベンガル文学に魅了され、その文化を知ってゆく過程でタゴール・ソングと出会いました。アカデミックなアプローチとは全く異なるドキュメンタリーという手法によって、過去と現在、さまざまな人々を繋ぐ“歌”の真の姿に迫る重層的な作品に完成させました。(以上、本作チラシより)

『タゴール・ソングス』の中には実にたくさんのタゴール・ソングが登場するのですが、インド映画ファンにとって嬉しいのは、「これ、知ってる!」という歌が1曲出てくることです。それが、『女神は二度微笑む』(2012)で主題歌のように使われていた「Ekla Cholo Re(エクラ・チョロ・レ/ひとりで歩め)」です。

『女神は二度微笑む』は、身重の女性ヴィディヤ(ヴィディヤ・バーラン)が連絡を絶った夫を捜しにロンドンからコルカタに赴き、地元警察の若い警官(パラムブラト・チャテルジー)や本省から来た警部(ナワーズッディーン・シッディーキー)と共にその謎を解いていく、というサスペンス映画です。後半、人が信じられなくなったヴィディヤが、窓の外をドゥルガ・プジャの祭りの場へと運ばれていくドゥルガ女神像を見つめるシーンで流れるのが、この「Ekla Cholo Re」で、歌っているのはヒンディー語映画界の大物俳優アミターブ・バッチャンです。そのシーンをまず見ていただきましょう。

Ekla Cholo Re Song | Kahaani | Amitabh Bachchan

この歌の歌詞は、以前『女神は二度微笑む』の公開時にもブログに載せたことがあるのですが、今回は下段を単語の逐語訳にしてみました。やさしい歌ですので、一緒に歌ってみて下さい。

Ekla Cholo Re

ジョディ・トル・ダク・シュネ・ケウ・ナ・アシェ・トベ・エクラ・チョロ・レ
Jodi  tor  dak     shune    keu   na   ashe   tobe   ekla  cholo re
もし    君の 呼ぶ  聞いて    誰   ない  来る     でも 一人 歩め/行け
(くり返し)

トベ・エクラ・チョロ、エクラ・チョロ、エクラ・チョロ、エクラ・チョロ・レ
Tobe   ekla   cholo,    ekla   cholo,   ekla   cholo,   ekla   cholo  re
それでも一人  歩め、一人で    行け、一人     歩め、  一人で 行くんだ
(くり返し)
(英語歌詞)
ジョディ・ケウ・コタ・ナ・コイ、オレ・オレ・オ・オバガ、ケウ・コタ・ナ・コイ
Jodi    keu   kotha  na  koi,   ore  ore   o  obhaga,  keu  kotha na  koi
もし   誰(も) 話 ない する     おお  不運な人よ    誰(も) 話 ない する

ジョディ・ショバイ・タケ・ムク・ピラエ・ショバイ・コレ・ボイ
Jodi  shobai thake  mukh phiraee  shobai    kore bhoi
もし  みんな 止まる  顔    そむける  みんな    怖がる
(くり返し)
トベ・ポラン・クレ
Tobe poran khule, 
それでも 着る 開く(胸を開いて)
(くり返し)
オ・トゥイ・ムク・プテ・トル・モネル・コタ・エクラ・ボロ・レ
O    tui   mukh  phute  tor    moner kotha   ekla     bolo  re
おお 君は   顔を   上げて君の   心の    思いを 一人   言うんだ
(くり返し)
ジョディ・トル・ダク・シュネ・ケウ・ナ・アシェ・トベ・エクラ・チョロ・レ
Jodi    tor   dak    shune   keu   na   ashe   tobe   ekla   cholo  re
もし     君の   呼ぶ 聞いて   誰   ない 来る   でも   一人 歩め/行け

「Ekla Cholo Re」は英語版Wikiがあって、ベンガル語文字、それからローマナイズで原語歌詞が載せられており、さらに英語訳が付いています。で、ちょっと問題になるのが、この英語版Wikiでは、歌のタイトルが「Ekla Chalo Re」になっていることです。「Cholo」「Chalo」どちらが正しいの? 実はこれ、歌詞のベンガル語文字「 একলা চলো রে 」をそのまま機械的にローマナイズすると「Ekla Chalo Re」になり、発音に即してローマナイズすると「Ekla Cholo Re」になるんですね。「 চ」は「cha」なんですが、ベンガル語の短母音「a」は通常「o」と発音されるので「cho」になるわけなのでした。ほかにも、文字を素直に読んだ発音とは違う発音になる単語がベンガル語にはいくつかあって、ベンガル語学習者には頭が痛いのです。そういう私はもう40年ぐらい前に1年あまり、毎週日曜日にベンガル人研究者の方のもとに通ってベンガル語を習っただけなので、ちゃんとモノにしたとはとても言えません。というわけで、もし上記歌詞の発音や意味に間違いがあれば、ぜひご指摘下さい。

最後に、『タゴール・ソングス』の予告編を付けておきます。予告編の中でもこの歌が流れますので、聞いてみて下さいね。

『タゴール・ソングス』予告編 / Tagore Songs_Trailer

 


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