アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

ヒンディー語映画『Judgemental Hai Kya』は↘、タミル語映画『Comali』は拾いものでした

2019-08-27 | インド映画

相変わらずの映画ノルマ消化状態@シンガポール。昨年と同じく、シニア料金で7回見たらホットドッグと飲み物をプレゼント、というGV(ゴールデン・ヴィレッジ)のスタンプカードをもらったこともあって、特に平日(土日は原則としてシニア料金は適用されません。シニアの皆さんは、映画館がすいている平日の昼間に見ましょう、ということを推進するためのカードです)はせっせと映画を見ています、なのですが、だんだん見たい作品がなくなってきました。仕方がないので、GVのサイトでは2.5/5と評価が非常に低いヒンディー語映画『Judgemental Hai Kya(ジャッジメンタル=決めつけること、なの?)』を見ることにしました。市内で1館しかやっていないのですが、こんなのを残すぐらいなら、アーユシュマーン・クラーナーの『Article 15』とかリティク・ローシャンの『Super 30』を残してくれればいいのに、と恨んでみてもしょうがない。歩いて行けるシティ・スクエア・モールの映画館なので、行ってみた次第です。


ところが、Gemini City Squareという館名になっていたので?と思っていたら、これがシネコンのスクリーンのうち、ペアシートだけになっている部屋のことで、なるほど、「ジェミニ(双子)」かあ、と感心したのですが、料金はどの席も13ドルだと言います。そう、シニア料金や、午前中の割引料金が適用されない、豪華(というほどでもないけど、ちょっと広い)ペアシート席のみがずらーと3列に並んでいるスクリーンなのです。シニア料金スタンプももちろん押してもらえず、踏んだり蹴ったり。この時の窓口のお姉さんは何と日本語ができて、ばーっと英語でこの特殊なスクリーンの説明した後、「13ドル? なんでや、シニア料金と言うたのに」と「?」の私に「日本人ですか?」と話しかけて、日本語で簡潔に説明し直してくれたのでした。すごい人材がいるものだ、と踏んだり蹴ったり度が少し下がりました。


で、作品は、確かにせいぜい2.5しかあげられないものでした。主人公は売れない女優のボビー(カングナー・ラーナーウト)。南インド映画のタビング・アーティスト、つまりヒンディー語吹き替え声優が主な仕事で、彼女に好意を持っているマネージャーのヴァルン(フセイン・ダラール)が一生懸命仕事を取ってきてくれるのですが、えり好みをしたり、セクハラしようとするプロデューサーを殴ったりと、トラブルが絶えません。ついには傷害罪で訴えられ、高額の罰金か、それとも精神に障害がある、ということで病院で改善プログラムを受けるか、と裁判所で迫られます。お金のないボビーはもちろん後者をとり、プログラム修了後、医者からは薬を飲むようにきつく言われて家に戻ります。経済面を心配した伯父は下宿人を置くよう手配してくれ、家ができるまで一時的に部屋を捜していた若夫婦、ケーシャヴ(ラージクマール・ラーオ)とリーマー(アマーイラー・ダストゥール)がやってきます。ところがボビーには、ケーシャヴが嘘つきで、妻を殺そうとしている、と思われ、その思い込みは日に日に強くなっていきます。そんなある日、ボビーが家に帰ってみると、焼死したリーマーの遺体が運び出されるところでした。ボビーは警察にケーシャブへの疑いを訴えますが、誰も聞いてくれません。それどころか、ボビーが精神に異常を来している、としか思われないため、最後にボビーはとんでもない手段に訴えます...。

映画は後半、この2年後になり、ロンドンに行ったボビーが名前を変えて従妹と結婚しているケーシャヴに再会、また同じ事件が蒸し返される、という展開になります。異常なのはボビーなのかケーシャヴなのか、観客が揺れ動く心で見るサスペンス、というわけですが、ボビーのエキセントリックさが際立ち、観客としては全然味方したくないヒロインのため、映画の後味もまったくよくありません。元のタイトルは『Mental Hai Kya(頭が変なの?)』で、それに対して検定局だったかからクレームがつき、『Jugdemental Hai Kya』となったそうです。カングナー・ラーナーウトもラージクマール・ラーオもいい俳優なのに、気の毒な役柄でした、てか、作品を選んで出なさい! 予告編はこちらです。

Judgementall Hai Kya Official Trailer | Kangana Ranaut, Rajkummar Rao | 26th July 2019


で、そこからブギスの書店に寄ったりして、今度は北の方のイーシュンに移動。地下鉄で30分ぐらいかかります。20年ぐらい前までは、インド映画というとここのシネコンとかさらにマレーシアに近いウッドランドの映画館とかでしか上映していなかったので、よく来ていたのですが、今回久しぶりに足を伸ばしてみました。タミル語映画『Comali(ピエロ)』が、残るインド映画の中では一番よさそうに思われたからです。ほかには、女子カバディ・チームの話という『Kennedy Club(ケネディ・クラブ)』(シャシクマールとバーラディ・ラージャ監督が主演)が上映されているのですが、どうもスポ根もののステレオタイプ作品みたいで、見る気が起きなかったのでした。

Comali poster.jpg

『Comali』は平日昼間にしてはよく、と言っても20人くらいですが入っていて、インド系とマレー系の人が、カップル、家族連れ、女性同士といろいろな形で見に来ていました。実は移動の疲れで最初の肝心なところを寝落ちしてしまったのですが、主人公のラヴィ(ジャヤム・ラヴィ)は16年間昏睡状態だったあと、病院で目覚めます。まだ学生だったのに、鏡を見るととんでもないおっさんが写り、ラヴィはびっくり仰天。高校時代の親友だったマニ(ヨーギ・バーブ)が説明してくれますが、16年間の間にはいろいろ変化があり、マニはラヴィの妹と結婚して男の子が二人もできていましたし、以前の恋人ニキータは別の男と結婚していました。仕事もできないままマニの家の居候となったラヴィは、世の中の発展ぶりに目をぱちくり。町にはきれいなマンション群が建ち並び、コンピュータ時代で携帯もスマート。物価ももちろん上がり、金銭感覚についていくだけでも大変です。しかしながら妹に非難され、ラヴィも働くことに。博物館の守衛となったラヴィは、そこで職員のリーティカ(カージャル・アグルワール)と知り合い、付き合うようになったものの、マニの変なアドバイスが影響して彼女に対してちぐはぐな行動をするなど、どうもうまく行きません。そんな時、地元のドンの家に乗り込んで隠しカメラでYouTubeライブ配信、という企画にいやいやながら取り込まれたラヴィは、マニと共にドンに会いに行きますが...。

目覚め前

目覚め後


決していい出来の脚本ではないのですが、前半インド版浦島太郎のラヴィで大いに笑わせ、後半になるとなぜか博物館にあった昔のラヴィ一家の所有物を巡るあれこれや、最後には高齢出産を控えたドンの妻を大洪水の中病院に送り届けるラヴィの活躍などが描かれて、シリアス&感動のシーンへと突き進みます。特に洪水のシーンは、数年前のチェンナイ大洪水を思い出させ、破水したドンの妻を無事病院に運び込めるのか、大いにはらはらするシーンとなっていました。あの水はCGとは思えないのですが、かなりリアルな大洪水シーンが作り込まれていましたし、実際の映像もつかわれていたようです。というわけで、無事に赤ん坊が生まれてドンが会いに来たシーンでは、思わずホロリとしてしまいました。


出演者では、カージャル・アグルワール(右側)は『バードシャー テルグの皇帝』(2013)等でお馴染みですが、あとはコメディアンのヨーギ・バーブ(左側。すでに日本語版Wikiもある人気者)ぐらいしか顔を知らず、主人公役のジャヤム・ラヴィは初めてお目にかかりました。本名はラヴィ・モーハンと言って、現在38歳。兄のモーハン・ラージャーが監督した『Jayam(勝利)』(2003)で大人の俳優としてデビューしたので、芸名をジャヤム・ラヴィとしているそうです。タミル語映画、まだまだヒーローがいっぱいいるのですね。最後に予告編を付けておきます。

Comali - Official Trailer (Tamil) | Jayam Ravi, Kajal Aggarwal | Hiphop Tamizha

あと、ちょっとゴキゲンなソング&ダンスシーンがあったので、こちらもどうぞ。

Comali - Paisa Note Video | Jayam Ravi, Kajal Aggarwal | Hiphop Tamizha



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