インドでは、映画館の営業が正常化しているとはまだまだ言いがたいようです。デリー、ムンバイ、チェンナイ、プネーの映画情報ページを時々チェックしているのですが、デリーのページはフリーズしたままです。他の都市のページも、ロックダウン前に公開された映画、例えばヒンディー語の『Tanhaji(ターンハージーまたはターナージー:ターナージー・マールスレーという17世紀の軍人の物語)』や、カンナダ語の2018年ヒット作『K.G.F.:Chapter 1』のヒンディー語版上映とかが目玉で、加えて小粒な新作が1本か2本公開中、という状態です。ベンガルール在住で、カンナダ語映画を中心とした南インド映画に詳しいカーヴェリ川長治さんが、長い沈黙を破ってブログに新作映画の紹介をして下さったので喜んでいたのですが、元のような状態に戻るのは、新型コロナウィルスの感染がさらに沈静化してからになりそうです。
そんなわけで、以前にも書いたようにインドではというかボリウッドでは、上のロゴにあるような配信に乗せての映画お披露目がまだまだ続いています。今後の予定はこちらの12月を見ていただければと思いますが、映画館での公開作はまったくリストアップされていません。2021年の公開作の予定もすでに出ているのですが(こちら)、来年1月からは元にもどるのでしょうか...。
そんな中、日本のアマゾン・プライム・ビデオは知らないうちにインド映画の古典的作品のリリース数を増やしてきています。こちらでご紹介した時は3本だったのに、今や10本も、1930~50年代の作品がアップされています。字幕は相変わらず「問題大あり!」なのですが、配信に詳しい方に聞くと、アマゾン・プライムに抗議してもムダとのこと。インド本国で入れているらしいのですが、自動翻訳機製としても、ある程度読める日本語なので、誰か日本人がチェックしているのでは、と思います。その人が、「字幕には句読点を付けない」という超・基本事項さえ知っていてくれれば、ぐんとマシになるのに、と見るたびに嘆きとため息を誘発する字幕ですが、作品自体はインド映画史上重要な作品が多いので、お時間がある方は見てみて下さい。下に作品一覧と、いくつか、ヒット曲のクリップも貼り付けておきます。
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『Awara(「バガボンド」という邦題はぜひ「放浪者」に)』1951
監督:ラージ・カプール
主演:ラージ・カプール、ナルギス、プリトヴィーラージ・カプール
見所:ラージ・カプールの監督・主演作の中で、『詐欺師』とならぶツー・トップ作品。日本では、1988年の「大インド映画祭1988」で上映され、その時の邦題が『放浪者』。1950年代のソ連(現ロシア)や中国でも人気を博した。生まれと育ち、人間は何によって規定されるのか、という問題を提示しているが、表現等のモダンさに驚かされるはず。
Awara Hoon | Awaara Songs | Raj Kapoor | | Mukesh | Shankar Jaikishan | Ultimate Raj Kapoor Song
『Anarkali(アナールカリー)』1953
監督:ナンドラール・ジャスワントラール
主演:プラディープ・クマール、ビーナー・ラーイ
見所:ムガル朝時代、アクバル大帝の宮廷の踊り子アナールカリー(「ザクロのつぼみ」の意味)と、アクバルの息子サリーム王子との許されぬ恋を描く。その後に作られる『偉大なるムガル朝』(1960)ほど有名な作品ではないが、ラター・マンゲーシュカルの歌った多くの歌が今も親しまれている。
Yeh Zindagi Usi Ki Hai (1) - Anarkali Song
『Baiju Bawra(夢中のバイジュー)』1952
監督:ビジャイ・バット
主演:バーラト・ブーシャン、ミーナークマーリー
見所:声楽家として音楽の道を進むバイジューとゴウリーの恋、そして名歌手ターンセーンとの歌の競い合いを見せる音楽映画。ラスト近く、ムガル朝のアクバル大帝の前でターンセーンと闘う歌合戦シーンは、どちらの歌で大理石が水に溶けるかを競う熾烈なもの。このシーンと、著名作曲家ノウシャードによる歌の数々が、インド映画ファンに忘れがたい印象を残した。
Tu Ganga Ki Mauj (HD) - Baiju Bawra Songs - Meena Kumari - Bharat Bhushan - Naushad Hits
『Boot Polish(靴磨き)』1954
監督:プラカーシュ・アローラー
主演:クマーリー・ナーズ、ラタン・クマール、デヴィッド
見所:ラージ・カプールの製作作品で、親を亡くした兄妹があやしげな商売をしている叔母に引き取られ、物乞いをさせられるが、隣人の助けで靴磨きとなって生計を立てていく。その2人に降りかかる様々な苦難を描いたもので、子供たちの演技が涙を誘った。
Lapak Jhapak Tu Aa Re Badarwa - David - Boot Polish - Manna Dey - Evergreen Hindi Songs
『Jeet(勝利)』1949
監督:モーハン・シンハー
主演:デーウ・アーナンド、スライヤー
見所:独立直後のインドを描いた作品で、未見。スライヤーは歌手でもあり、1947年の独立後、歌の吹き替えが急速に定着する中で、自らの声で歌った女優として有名。
『Jhanak Jhanak Payal Baaje(シャンシャンと足鈴が鳴る)』1955
監督:V.シャーンターラーム
主演:ゴーピー・クリシュナ、サンデャー
見所:富豪の娘がカタック・ダンスに精進する若者の踊りに魅せられ、自らも踊りの道に飛び込むお話。一昔前のインド映画で人気ジャンルだった「芸道もの」に分類される作品で、実際にカタック・ダンサーであるゴーピー・クリシュナの超絶舞踊が見られる。『コートニース博士の不滅の生涯』(1946)など名作を数多く世に出したV.シャーンターラーム監督作品。国際交流基金の「インド映画祭1988」では、『この命 踊りに捧げて』のタイトルで上映された。
Gopi krishna in Jhanak Jhanak Paayal Baaje (1955)
『Naukri(仕事)』1954
監督:ビマル・ラーイ
主演:キショール・クマール、シーラー・ラマーニー
見所:『2エーカーの土地』(1953)の名監督ビマル・ラーイ監督作品。のちにプレイバック・シンガーとして頂点を極めるキショール・クマールの主演作。吹き替えた映画は1000本、俳優としての出演作も100本近くにのぼり、特に1960・70年代はキショール・クマールなしではボリウッド映画界は存在できなかった。当時の世相を反映した職探しドラマで、キショール・クマールの軽やかな演技が見もの。
『Nirmala(ニルマラー)』1938
監督:フランツ・オースティン
主演:デーヴィカー・ラーニー、アショーク・クマール
見所:ドイツ人監督で、サイレント時代からインドで映画を撮ってきたフランツ・オースティンの監督作。ヒマーンシュ・ラーイとの共同監督作品『亜細亜の光』(1925)はサイレント期の日本でも公開された。デーヴィカー・ラーニーとアショーク・クマールという『Acchut Kanya(不可触民の娘)』(1936)コンビが主演している。未見。
『Shree 420(詐欺師)』1955
監督:ラージ・カプール
主演:ラージ・カプール、ナルギス、ナディラー
見所:『放浪者』と並ぶ、ラージ・カプールの監督・主演作品中の代表作。都会に出てきた大卒の男が職を求めるうちに、詐欺に手を染めるようになる。冒頭で主人公が歌う「私の靴は日本製」は大ヒットした。
Mera Joota Hai Japani | Raj Kapoor | Nargis | Shree 420 | Evergreen Bollywood Hits {HD} | Mukesh
『Sikandar(アレキサンダー)』1941
監督:ソーフラーブ・モーディー
主演:プリトヴィーラージ・カプール、ソーフラーブ・モーディー
見所:日本でも配信中のインド長編ドラマ『ポロス 古代インド英雄伝』と同じ、アレキサンダー大王とインドの王ポロスの出会いを描く物語。未見。 プリトヴィーラージ・カプール(ラージ・カプールの父)、ソーフラーブ・モーディー共にインド映画の前身となるパールシー演劇で活躍しており、その演技に舞台のあとがうかがえて面白い。
で、探し方にはちょっとしたコツが必要です。PCのブラウザ利用を前提として、まずprime videoのカテゴリーで「ヒンディー」をキーワードに検索すると、400本以上のヒンディー語動画およびヒンディー語字幕の付いた諸言語動画が表示されます。
次に画面左側下部の"元言語"の「ヒンディー語」をクリックするとそのうち約130本のヒンディー語動画(映画)が表示され、さらに同じく左側下部の"年代"で絞り込むと1930年代、40年代、50年代の映画がそれぞれ表示されます。
マザー・インディアのリメイク元(監督は同じ)の『Aurat』、名作芸道もの『この命踊りに捧げて』、ヌータンの魅力あふれる『Seema』、I.S.ジョーハルのサタイア『Nastik』等、なかなかのラインアップだと思います。
あとクラシック以外の比較的最近(2000年代以降)の日本未公開映画もいくつか配信されています。
やっと時間が出来て、さっきからいろいろやってみているのですが、確かに以前「プライム・ビデオ」の検索箱(サイトのトップに出てくるもの)に「インド映画」を入れて検索した時とは違うものが、「ヒンディー」と入れると出てきますね(でも、数は100で、よけいな作品も多い)。
で、「Hindi」と入れると、また新たな作品も混じったものが登場します。
こういった情報を根気強く整理なさった(すごいです!)結果が、「76本」ということなのでしょうか。
今、いろいろチェックしてみたら、字幕も少しはマシになっているようですね(でもまだ句読点が)。
インド本国では今、古い作品の修復が進んでいる、と聞くので、修復された作品を順次アマゾンが買い上げているのかも知れません。
字幕さえよければ、日本中に誇れるインド映画コレクションですのに...。
76本を目標に、いろいろ捜してみます。
ご親切に、ありがとうございました。
>"元言語"の「ヒンディー語」をクリックするとそのうち約130本のヒンディー語動画(映画)が表示され
の段階での画面のURLがこれです。現時点(12月4日)で検索結果134と表示されると思います(但し実際に数えるとちょっと少ない)。
https://www.amazon.co.jp/s?k=%E3%83%92%E3%83%B3%E3%83%87%E3%82%A3%E3%83%BC&i=instant-video&bbn=2351649051&rh=p_n_feature_six_browse-bin%3A5871523051&dc&__mk_ja_JP=%E3%82%AB%E3%82%BF%E3%82%AB%E3%83%8A&qid=1607071696&rnid=5871471051&ref=sr_pg_2
あとは左側カラムの"年代”チェックボックスで各年代の作品が絞り込めます。
なお、ヒンディー語以外にタミル語、テルグ語、ベンガル語、マラヤーラム語、ウルドゥー語、シンハラ語の映画(動画)も数は少ないのですが同様の方法で見つかります。
今回、付けて下さったURLで見てみたら、何と!フィアレス・ナディアの『ミス・フロンティア・メール』もあって、ちょっと見てしまいました。
久しぶりに、ジョン・カヴァスが線路に横たわる彼女を助ける名(”迷”かも)シーンを見ました。
やはり修復されて、デジタル化された作品のようです。
「ラージ・カプール」「V.シャーンターラーム」「マハブーブ・カーン」というように、それぞれのプロダクションが権利を持っている作品をまとめて修復して、アマゾン・プライムでかけている、という感じですね。
私も、ちょっと暇になったらリストを作って、この大量OTTの謎解きをしてみます。
60年代以降、特に60&70年代の作品もアップしてくれると嬉しいのですが。
それまでに、字幕をどげんかせんといかん!です。
『ミス・フロンティア・メール』はセリフを全訳してしまったようで、画面の両側からはみ出している字幕がいっぱい出てきます。
どうやって読めっちゅーの、ですね(笑)。
では、また耳寄りな情報がありましたら、ぜひご教示下さい。