アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

チェンナイで見た「女性映画」3本

2018-03-23 | インド映画

チェンナイでは、実は3,000字の原稿を書いていたりしたので、1日1本ずつしか映画が見られませんでした。自宅で書く時は、何度か手を入れるたびにプリントアウトして読み返すのですが、旅先ではプリンタがないのでそれができません。でも、もしかしてワードのファイルにしておいたら、こちらでもプリントアウトできるのかも、と思いつき、ファイルを入れたUSBを持ってスペンサー・プラザに行ってみました。すると、パソコン屋さんというか、パソコンを2台とコピー機兼用のプリンタを置いて商売している小さな店で、見事に日本語文が印刷されて出てきました。これで最終チェックができる、と喜んだものの、ホテルに戻って直すとまたプリントアウトしたものがほしくなります。それを何とかやりくりして、やっと拙稿を送稿したのでした。そのメール送信も、うまく流れる時と流れない時がある(OCNが送信を拒否してくる)うえ、なぜかパソコンが立ち上がらない時があったりと、今回も電子機器トラブルでだいぶ消耗しました。

そんな中で見たので、希望する作品が全部見られたわけではなかったのですが、偶然にも3本の作品が「女性映画」というか女優さんががんばっている作品だったので、まとめてご紹介してしまおうと思います。まずは、ヒンディー語映画『Pari:Not a Farytale(「パリー」は妖精、という意味なんですが、妖しい精霊、と言った方がいい作品で、そのため副題が「おとぎ話ではありません」とついているのでしょう)』から。

『Pari:Not a Farytaleは先日のインド映画講座でも取り上げた、アヌシュカー・シャルマーの主演作です。今回も彼女がプロデューサーの一人で、『NH10(国道10号線)』(2015)や『Phillauri(フィッロールの人)』(2017)と同じく、自ら製作し、主演しています。今回は、コルカタとその近郊のベンガル地方が舞台となり、『女神は二度微笑む』の若き警部パラムブラト・チャテルジーが共演者です

Pari - Poster.jpg

ある雨の日、父親の運転する車で母親と共にコルカタに戻る途中だった新聞社勤務のアルナブ(パラムブラト・チャテルジー)は、父と母が早く結婚をと勧めるのを困った顔で聞いていました。父が顔を一瞬こちらに向けて話していた時、車に衝撃が走ります。道に倒れていたのは年老いた女性で、車に飛び込んできたのではないかと思われました。彼女を病院に運んだものの、彼女は亡くなり、3人は警官からも事情を聞かれます。その後、警官とアルナブは女性の身寄りを探して再び事故現場に行き、村人から教えられた彼女が住むあばら屋へとやってきます。犬が何匹も飼われている小屋の中には女性の娘だというルクサーナー(アヌシュカー・シャルマー)がいましたが、なぜか鎖につながれていました。ルクサーナーが連れて行かれて母親を確認したり、葬儀の手はずをととのえるのをアルナブは罪悪感もあって手伝いますが、その後なぜかルクサーナーはアルナブが一人で住むアパートに姿を現し、彼のもとに住みついてしまいます。その頃、昔バングラデシュにいたカーセム・アリー教授(ラジャト・カプール)とその仲間は、ルクサーナーを探していました。どうやらその背後には、過去のいまわしい事件が存在しているようなのでした...。

Pari Poster

とにかく、ショッキングなシーンが続きます。過去のシーンで、おどろおどろしい宗教儀式があったかと思えば、カーセム・アリー教授らが女性を無理矢理出産させようとしているとか、いくつもそういうシーンが出てくるのですが、残念ながらそれが有機的につながっていかないので、本当の意味での恐怖はあまり感じられません。アヌシュカーが演じるルクサーナーも、正体に一貫性がなく、血まみれになろうが闇夜を飛ぶように駆け抜けようが、全然怖くないのです。これは脚本の失敗としか言いようがなく、まだ『NH10』の方が、あれも思わせぶりが過ぎるところがあったけれど、怖かったです。アヌシュカーは汚れ役をがんばって演じていますが、むしろ無名の若い女優とかの方がよかったかも、です。アヌシュカーより存在感があったのは、アルナブの見合い相手で、この事件に巻き込まれる看護師を演じたリーターバリー・チャクラボルティーという女優さん。ベンガル人独特の美しさがありました。監督は、これが長編劇映画のデビュー作となるプロシト・ロイという人です。最後に予告編を付けておきます。

Pari Trailer | Anushka Sharma | Parambrata Chatterjee | Releasing on Mar 2


2本目は、タミル語映画『Naachiyaar(ナーッチヤール)』で、主演はジョーティカ。以前チェンナイで見たジョーティカの女性応援映画というか女性が起業するお話『36 Vayadhinile(36歳になって)』(2015)が面白かったので、今回もジョーティカの作品を見つけてぜひ見ようと思っていたのですが、チェンナイでご自宅にお邪魔した研究者Fさんのお話だとバーラ監督作品だとのことで、よけいに見なくては、と思ったのでした。バーラ監督は、サルマーン・カーン主演作でヒンディー語映画でもリメイクされた『Sethu(セードゥ)』(1999)や、スーリヤとヴィクラムの共演作『Pithamagan(偉大なる父)』(2003)、それに『Naan Kathavul(我は神なり)』(2009)など、かなり特異な作品を作ってきた人です。そのバーラ監督がジョーティカと組むとあっては、見逃すわけにはいきません。

In front of a table, spread with masonry equipments like Drill, Hammer, Wedge and others a visibly upset women wearing black shirt, neck-scarf and tingy blue baseball cap is seen with a gunny sack covering her right hand upto elbow over which she twirls with barbed wire using her left hand.

ナーッチヤール(ジョーティカ)は正義感あふれる女性警部。時には突っ走ってしまうのが難点ですが、今日も身重の女性を拉致して逃げる車をとことん追いかけ、運転していた男たちが逃げてしまうと、後部座席に乗せられていた若い娘アラシ(イヴァナ)を救出しました。アラシは警察で、別の罪で逮捕され、少年院に送られるところだった若い男カータヴァラヤン(G.V.プラカーシュ・クマール)を見つけて顔を輝かせます。カータヴァラヤンの方も嬉しそうでしたが、実はこれには訳があるのでした。アラシとカータヴァラヤンはある結婚式の手伝いで出会い、やがて恋に落ちます。アラシがお手伝いさんとして雇われている家で、主人一家の留守番中に結ばれた二人でしたが、赤ん坊はその時の子供かと思いきや、生まれた子をDNA検査にかけると、「カータヴァラヤンとはDNAが一致しない」という結果が出てしまいます。ナーッチヤールはアラシをレイプした男がいるに違いない、と追求していきます...。

Fさんも言ってらしたのですが、本作ではむしろ、若いカップルが主人公と言えます。フラッシュバックで過去の出会いを詳しく描き、みずみずしい恋が展開するのは、ちょっとバーラ監督作とは思えません。特に、青年役のG.V.プラカーシュ・クマールがすばらしく、もう30歳だというのにとてもそんな年には見えない童顔と演技力でした。この人、A.R.ラフマーンの甥だそうで、自身も作曲家としての実績があるほか、プレイバック・シンガーとしても活躍しているとのこと。演技もうまくて、ちょっと背が低いのが難点ですが、これから人気が出るかも知れません。最後に予告編を付けておきますが、ジョーティカのアクションシーンは警部としては暴走するシーンなので、見ている時は拍手喝采というよりも「これこれ、いけません」と止めたくなりました。

Naachiyaar - Official Theatrical Trailer | Director Bala | Jyotika, G. V. Prakash

そしてもう1本は、『Baagamathie(バーガマティー)』という、『バーフバリ』に出演したアヌシュカ・シェッティの主演作です。本年の1月26日(インドの共和国記念日ですね)の公開なのに今もロングラン中で、見られて嬉しい限りです。こちらは、ラジニカーントとジョーティカが主演した『チャンドラムキ』(2005/すみません、副題省略)にちょっと似た部分があり、古びた館に赴いたアヌシュカ・シェッティ扮する主人公に、バーガマティという女性の霊が取り憑く、というお話です。

Bhaagamathie poster.jpg

お話の初めで、多くの村人が殺され、寺院の神像が盗まれるシーンが出てきます。そして政治家イーシュワル・プラサード(ジャヤラーム)が集会で、自分の政治生命をかけてこの像を取り戻す、と言っているシーンが続きます。その後、サンチャラ(アヌシュカ・シェッティ/テルグ語版ではチャンチャラ)という女性囚人の独房に、彼女と交代する女性が連れてこられます。不審を抱くサンチャラが連れて行かれたのは、古びた屋敷でした。サンチャラは婚約者のシャクティを撃ち殺した罪で服役しているのですが、元は行政長官で、農村開発プロジェクトの担当者に労働運動の活動家だったシャクティを抜擢し、それ以来2人は親しくつきあうようになったのでした。ところがサンチャラはシャクティを射殺。シャクティの兄である警部(ムルリー・シャルマー)は、今回CBI(中央捜査局)の女性捜査官(アーシャー・サラト)の尋問を受けさせるため、サンチャラを連れ出してバーガマティの霊が出るというこの屋敷に隔離したのでした。サンチャラは1人で屋敷に住みますが、CBIの監視カメラには不思議な光景が次々と写ります....。

Anushka Bhaagamathie Movie HD Poster Image

元々はテルグ語映画なのですがタミル語版での上映で、珍しく英語字幕というか英語訳(直訳の全訳で、長くて読み切れない...)が付いていました。いろんな謎が解き明かされていくのと、最後まで謎めいた出来事になっているものとがあって、うまい作りだなあ、とちょっと感心。アヌシュカ・シェッティは演技の中の演技(実はあれはサンチャラの演技だったんだ、とかいう部分)も要求されて、大変な役を全力でこなしていました。「マダム」と呼ばれていた長官時代の威厳に満ちた姿は『バーフバリ』のデーヴァセーナをほうふつとさせ、また、バーガマティになって現れる時も、伝統的な衣装姿になるのでデーヴァセーナと二重写しになります。最後は政治劇の決着という形になるのですが、バーガマティの憑依に関してはすべてが解き明かされているとは言えず、これは続編ができるのかも。最後に予告編を付けておきます。

Bhaagamathie - Official Trailer | Anushka Shetty | Unni Mukundan | Ashok G | S S Thaman | 4K

私の旅は、もうちょっと続きます。(いつになったら日本に帰るんだ!?)



コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« チェンナイのインド映画関連... | トップ | 第42回香港国際映画祭に来て... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

インド映画」カテゴリの最新記事