少し前に、原美術館で開催中の「ミン ウォン展:ライフ オブ イミテーション」を3回にわたってご紹介しましたが、あの中で取り上げたシンガポールの映画コレクター、ウォン ハン ミン氏の来日が決定しました。そして、7月31日(日)に「ミン ウォン:ライフ オブ イミテーション」展関連イベント第2弾として、ウォン ハン ミン氏によるトークが開催されます。タイトルがちょっと素敵です。
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ウォン ハン ミン氏によるトーク
「カチャンプテからポップコーンまで:シンガポールの初期映画館(1896~1945年)」
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詳細はこちらをご覧下さい。人数に制限がありますので、ご興味がおありの方はお早めにお申し込み下さいね。
カチャン・プテ(kacang puteh)というのは、「ポップコーンが普及する以前にシンガポールの映画館でよく食されていた豆菓子」とのことですが、ひょっとしてこれではないでしょうか。2009年8月に、シンガポールの街角で撮った写真です。
いろんなお豆がガラスやプラスチックの透明容器に入っていて、それを選んでこの逆円錐状の紙筒に入れてもらうのです。最後に売り子さんは、上部の紙を折ってふたをしてくれます。食べる時は中の豆を指で挟んで取り出したり、紙筒を傾けて出したりしてはポリポリかじる、という形になります。シンガポールの映画館でも、シネコン以外の所ではこの多種類の豆ディスプレイをよく見かけました。
この豆菓子、もしかしたらインド起源かも知れません。北インドでは「チャナー」と呼ばれていて、道端で売っていたり、肩から豆の入った入れ物を下げた売り子が売り歩いたりしています。下の写真は、1975年(こらまた、えらい昔や~~~)にボンベイ(現ムンバイ)で撮った、豆売りのケードゥ君です。何せ36年前の写真なので、かなり退色してますがお許しを。
チャナーは元々はヒヨコ豆を指しますが、この豆スナックはどんな種類の豆であっても「チャナー」と言っていたような気がします。『ラジュー出世する』 (1992)の中でも、就活にことごとく失敗して海辺でクサってるラジュー(シャー・ルク・カーン)に、朗報を持ったレヌ(ジュヒー・チャーウラー)が近づき、「チャネー・カーオーゲー?(お豆、食べる?/チャネーはチャナーの複数形)」とかいたずらっぽく言って紙筒を差し出していましたね。
マレー語では「カチャン(kacang)」が「豆」ですが、「カチャン」と言えば、アジア映画好きの方なら、昨年のNHKアジアフィルムフェスティバルで上映されたマレーシア映画、『アイス・カチャンは恋の味』 (2010)をすぐ思い出されることでしょう。シンガポールの知人は、「カチャン」はお汁粉のこと、とも言ってました。元々は、甘く煮た小豆や白インゲンの上にかき氷をかけたのが「アイス・カチャン」だったのかも知れません。今は中の具も様々な上に、いろんなトッピングがされたりして、「アイス・カチャン」の定義は幅広くなっているようです。
下は、2008年8月にシンガポールで撮った、というか、食べたアイス・カチャンです。
こちらは2010年8月にやはりシンガポールで食べたものですが、底に小豆が入っています。これは容器が違うので、「アイスカチャン」には入らないのかなあ。
スイーツの話に脱線してしまいましたが、7月31日は「カチャン・プテ」片手に、という感じで、ウォン ハン ミン氏の古き良きシンガポール映画話をお楽しみ下さいね。そうそう、今展示されている彼のコレクションに関しては、せんきちさんがブログ「まぜるなきけん」で詳しく解説して下さっています。 7月8日の記事「原びじつかんへ行ってきました」をぜひご参照下さい。
それにしても、1945年以前の資料なんて、どんなものが登場するんでしょう。ワクワク~♪です。