アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

シンガポール映画三昧(上)

2023-09-06 | インド映画

シンガポールは、以前にも増してインド映画の公開が多くなった感じです。以前は、インド映画を専門に上映する映画館が3つあり、1つはショウ・タワーにあるヒンディー語映画を中心としたボンベイ・トーキーズ、それからタミル語映画中心の南インド映画を上映する、昔からの一戸建て映画館レックス劇場、そしてやはり南インド映画の上映をやっているビーチ・ロードのゴールデン・マイル・タワーにあるカーニバル・シネマなんですが、まず5年ほど前にレックスが閉鎖となり、建物が取り壊されました。続いて今年は、ショウ・タワーが改築されるようで、ボンベイ・トーキーズが姿を消しました。

上は2016年8月に撮ったレックス劇場なんですが、ここで映画を見るために、すぐ前の安ホテル(名前が何度も変わったホテルだった)に泊まったこともいくたびか、という感じでした。今回のアルバート・コート・ホテルも、ここから徒歩5分なので、今もあったらなあ、とコロナ前の再開発が一向に進んでない跡地を眺めています。でも、こういう専門劇場がなくなったおかげか、GV(ゴールデン・ヴィレッジ=ゴールデン・ハーベスト系)の系列シネコンで、インド映画がいろいろ上映されるようになったのです。一番上映率が高いのが、今回私が通い詰めている感のあるリトル・インディアの東端にあるショッピングモール、シティ・スクエア・モールにあるGVシティ・スクエアです。

6つか7つスクリーンあるのですが、スクリーン4というのが50席ぐらいしかないミニホールで、ここを使ってあまり客の入らない作品や、少し前に上映した作品をやってくれていて、時間さえうまく合えばいろいろな作品が見られます。というわけで映画館滞在時間が長くて、ちっともブログを更新できないでいるのですが、今日と明日でシンガポールで見た映画を一覧紹介してしまおうと思います。まずはメインの2本から。

『Jailer(刑務所長)
2023年/タミル語/168分
監督:ネルソン・ディリープクマール
主演:ラジニカーント、ヴィナーヤガン、ラムヤ・クリシュナ、ヴァサント・ラヴィ、タマンナー、スニール、ヨーギ・バーブ、ジャッキー・シュロフ(カメオ)、モーハンラール(カメオ)、シヴァ・ラージクマール(カメオ)

元警察官のムトゥヴェール・パンディアンは今は退職し、妻(ラムヤ・クリシュナ)と現職警部である息子アルジュン(ヴァサント・ラヴィ)夫婦、その息子と共に平穏な暮らしを送っていました。妻に言われて買い物に行き、孫息子のYouTube撮影を手伝うなど、のどかな隠退生活を送っていたパンディアンでしたが、息子アルジュンは凶悪なヴァルマン(ヴィナーヤガン)が率いる神像窃盗団を追っていました。そんなある日、アルジュンは突然行方不明になります。警察本部ではヴァルマンに殺されたのでは、と疑いつつ、そうなると警察の威信低下となるため、アルジュンは自殺した、という見解を発表します。それに納得できないパンディアンが自ら捜査に乗り出したところ、ヴァルマンの手が孫息子にも及びそうな事態になり、ついにパンディアンは本気で彼らと戦い、おそらく彼らに囚われているアルジュンを助け出そうとします。実はパンディアンは、かつて「タイガー」という別名で知られた鬼の刑務所長として犯罪者たちに恐れられていたのですが、その中で大物たちの心を掴み、彼ら(ジャッキー・シュロフ、モーハンラール、シヴァ・ラージクマール)と固い絆を結んでいたのでした。彼らの手勢や武器の助けを借り、パンディアンはインド中を巡って息子の行方を追いますが....。

Jailer  Photos

正直言うと、どうしてこれがインドで60億ルピーを超す大ヒットになっているのか、納得できない作品でした。考えられる理由としては、①ラジニカーントの年1回の、待ちに待った新作リリース作品である、②ジャッキー・シュロフやモーハンラールなど、大物スターがカメオ出演している、③途中で映画界裏ネタ部分があり、タマンナーやテルグ語映画の俳優スニールらが出演している、④悪役ヴァルマンを演じるマラヤーラム語映画の俳優ヴィナーヤガンの演技がすごい、かなあ、と思うのですが、どうもこれといった強力な魅力は感じられません。それに対して欠点は、①結末が悲しく、ラジニカーントにこんな非情な役をやらせなくても、と思う、②悪役ヴァルマンの怖さが、時々マンガチックになりすぎて小者感がもろ出てしまう、③あの大規模な悪の巣窟はいくら何でも無理があるだろう、等、細かく挙げるといろいろあって、『エクスペンダブルズ』の真似がしたかったのかしら? とか、ツッコミどころも満載でした。この日の劇場は、封切りからすでに1ヶ月近く経つせいか数パーセントの入りで、もうすぐ上映も終わりかな、というところ。まずは見られてよかったです。

なお、悪役ヴァルマンを演じて、裏切り者を情け容赦なくコンクリート詰めにしていたヴィナーヤガン(上はWikiの写真です)は、『ジャッリカットゥ 牛の怒り』(2019)のリジョー・ジョーズ・ペッリシェーリ監督の作品『イエス様、マリア様、ヨセフ様』(2018)に出演していたのですが、この時は村の議員だかの役で、突然父親を亡くした主人公(『牛』の肉屋さん)に寄り添い、いろいろ手助けしてやるとってもいい人役を物静かに演じていました。この人に悪役をやらせようと考えたネルソン監督は、いいセンスしてますねー。面白かったのは、英語字幕にいちいち、彼がしゃべるシーンで<Mal.>(だったと思う)と「マラヤーラム語」であることを示す表記が出てきたことで、ケーララ人の狂気のボス、というイメージが新鮮でした。『イエス様~』でも何か映画賞を獲っていましたが、今回も賞が狙えるかも。最後に、『Jailer』の予告編を付けておきます。

JAILER - Official ShowCase | Superstar Rajinikanth | Sun Pictures | Anirudh | Nelson

 

『Rocky Aur Rani Kii Prem Kahani(ロッキーとラーニーの恋物語)』
2023年/ヒンディー語/168分
監督:カラン・ジョーハル
主演:ランヴィール・シン、アーリヤー・バット、ジャヤー/バッチャン、シャバーナー・アーズミー、ダルメーンドル

こちらは、家庭背景の違う男女が出会って恋に落ちる、というよくある物語。それが、カラン・ジョーハル監督の手にかかると...という作品です。ロッキー(ランヴィール・シン)はデリーの有名菓子店の三代目。祖母(ジャヤー・バッチャン)は健在で、今も菓子店のトップに君臨し、息子ティジョーリー(「金庫」の意味)と嫁、一応会社の役員だけれど遊び人の孫息子ロッキーと太った孫娘を自分の支配下に置いていました。パンジャーブ人で教養はあまりない一家ですが、お金はうなるほど持っているのでかえってやっかいと言え、何でも祖母が采配を振るいます。実は祖母の夫(ダルメーンドル)は記憶をなくし、体も不自由になっているのですが一応元気で、妻には無視されながら、ロッキーやその母らに世話されて暮らしているのでした。

そんな環境にいるロッキーは、物事をズバリと言いすぎるテレビのパーソナリティ、ラーニー(アーリヤー・バット)と知り合い、付き合い始めます。ところが、ラーニーの家はベンガル人の教養があふれかえる一家。祖母(シャバーナー・アーズミー)、カタック・ダンスの教師である父、大学で教える母という家族は全員ベンガル文化をこよなく愛し、家で友人たちと共にタゴールの詩を朗読したり、タゴールソングを歌ったりする集まりを持っています。ラーニーが連れてきたロッキーには、たちまち「教養のかけらもない」という判断が下されるものの、結局ラーニーとロッキーがそれぞれ相手の家に住み込んで、互いの家をよく知ること、という結論になり、2人はまったく環境の違うところにほうりこまれますが...。ちょっと複雑な話でもあるので、まずは予告編を見ていただきましょう。

#RockyAurRaniKiiPremKahaani - OFFICIAL TRAILER | Dharmendra, Jaya, Shabana, Ranveer, Alia | Karan

 

それぞれにいろんなエピソードが語られるのですが、中でもちょっとびっくりなのが、ロッキーの祖父とラーニーの祖母が昔恋人同士だったことで、ダルメーンドルとシャバーナー・アーズミーでは一世代違うのでは、という気もするものの、ま、いいか、です。ジェンダー問題もきちんと折り込み、派手派手しくて騒がしい作品ながら、1本筋の通った作品になっていました。やっぱりカラン・ジョーハル、力がある監督ですね。もう1本動画を、ということで、たくさんの若手スターがカメオ出演しているソング&ダンスシーン「♫Heart Throb(心を奪う人)」を付けておきます。

Heart Throb | Rocky Aur Rani Kii Prem Kahaani | Ranveer Singh | Pritam | Amitabh | Dev Negi

 

では、あとはまた今夜か明日、ということで。(続く)

 


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