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アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

格差社会を”臭い”で描く韓国映画『パラサイト』

2019-08-22 | 韓国映画

バンコクでは現在、ポン・ジュノ監督作『パラサイト』がロングラン上映中です。7月25日からの公開なので間もなく1ヶ月になります。もちろん、劇場ごとでは1日1回とか2回とかの上映形態なのですが、バンコクのほとんどのシネコンでの上映が続いているので、これはロングラン・ヒットと言ってもいいと思います。今年のカンヌ国際映画祭で最高賞パルムドールを獲得したから、ということもあるのでしょうが、タイ人の心にどこか響くものがあって観客が途絶えないのでは、と思い、見に行ってみました。

主人公は、ソウルの下町に住むキム・ギテク(ソン・ガンホ)の一家。半地下の家に住むこの家族の構成は、失業中のギテクに、いかにもアジュンマ(おばさん)という感じの妻チョンソク(チャン・ヘジン)、娘のギジョン(パク・ソダム)、そして息子のギウ(チェ・ウシク)でした。ギウは大学に行くことを望んでいたのですが、それが叶わず、今は海外留学に望みをかけていました。そんなギウのところに先輩がやってきて、海外留学をするので自分の代わりに家庭教師をしてくれないか、と言い出します。彼は教えている女子高生ダヘと恋人関係なのですが、留学中に別の男に奪われては困ると、ギウに見張っていてほしいと頼み込みます。こうしてギウは、大学の卒業証明書を偽造し、大金持ちであるパク氏の家にやってきました。

高台にあるパク家は、まさに大邸宅。ギウを迎えたのはいかにもやり手の家政婦(イ・ジョンウン)で、まだ若いパク夫人(チョ・ヨジョン)は家政婦に頼り切りのようでした。ギウはこの二人はもちろん、ダヘ(チョン・ジソ)にも気に入られたようで、やがてダヘとは恋仲に。さらに、ダヘの弟で小学生のダソンにパク夫人も家政婦も手を焼いていることを知ったギウは、「友人に児童心理の専門家がいるんです。家庭教師の謝礼はちょっと高いんですが、頼んでみましょうか」と進言し、姉のギジョンをまんまとダソンの家庭教師にしてしまいます。するとギジョンは、策を弄してパク氏(イ・ソンギュン)の運転手をクビに追い込み、その後釜に「叔父です」という触れ込みで父のギテクを就職させます。さらにさらに、ギジョンの悪知恵はとどまるところを知らず、桃アレルギーで咳の出る家政婦を結核に見せかけて追い出したあとには、母のチョンソクを雇わせ、パク家に住み込ませてしまいます。こうして、パク家の一家4人がキャンプに出かけたあと、ギテク一家は豪邸で大宴会。ところがその時、思いがけない事件が出来します...。


上のポスターでは、中側の4人がパク家のメンバーです。服装もセレブ風で、きちんと靴を履いています。かたや両サイドにいるのはギテク一家のキム家で、足は裸足の上、ジャージだったりTシャツだったりと服装もラフの極みです。この対比によって、お金持ちで上流階級のパク家と、半地下の家にしか住めず、お金がないばかりにいろんなことに窮している貧困家庭キム家との格差が如実に示されますが、実は画面に表れること以外にも面白い格差表現が出てきます。『パラサイト』では、臭いによって格差が表現されるシーンが何カ所かあるのです。それが最後のクライマックスへとつながっていくのですが、この使い方はうまいなあ、とうならされました。「臭いが出る映画」形式で上映されたら、観客はみんな、「うっ」と顔を背けるかも知れません。

ところで上のポスターで、前にニョッキリ出ている2本の足ですが、誰のものかはご覧になってのお楽しみ。この足の背後には、とんでもない謎が隠されているのです。あと、その後方、テーブルの上に置いてある盆石みたいな石も、これまたご覧になってのお楽しみということで、謎のままにしておきましょう、というか、この盆石はいまいち意味がよくわかりませんでした。

すでに日本での公開も決まっていて、来年1月から『パラサイト 半地下の家族』というタイトルで、ビターズエンドの配給により公開予定だとか。早くも日本語版Wikiもできているのですが、その中で、ポン・ジュノ監督がカンヌ出発前のソウルでの記者会見時に、「おそらく、海外の観客はこの作品を100%理解することはできないだろう。この作品はあまりにも韓国的で、韓国の観客が見てようやく理解できるディティールが散りばめられている」と語ったことが記述されています。前述の盆石も、そういうディティールの一つなのかも知れませんが、バンコクでこれだけヒットしているということは、「あまりにも韓国的」であることを超えて、万人に訴えるものがあるということでしょう。その証拠に、現在シンガポールでもロングランしていますし、フランスでもヒットしたとか。韓国ではもちろん大ヒット、アメリカでも10月から公開予定とのことですが、今後公開のアメリカと日本ではどうなるのか、楽しみですね。最後に、アメリカ版予告編を付けておきます。

Parasite [Official Trailer] – In Theaters October 11, 2019  



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