アジア映画巡礼

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終了後拍手が起きた! インド映画『Batla House』

2019-08-20 | インド映画

バンコクではもう1本、インド映画を見ました。ジョン・アブラハム主演の『Batla House(バトラー・ハウス)』です。こちらは全然期待してなくて、というか、昨年の夏やはりバンコクで見たジョン・アブラハム主演作があまりにもひどかったので、あ~あ、またああいうエセ愛国映画かぁ、と半ばイヤイヤ見たのでした。ところがこれが、すごく緊迫感のあるいい出来の映画で、最後には観客の10人ぐらいから拍手が起きてびっくりしました。バンコクでインド映画を見始めてからもう10数年経ちますが、終了時の拍手なんて初めての経験でした。

 Batla House - First look.jpg

この映画も、2008年にデリーで実際に起こった事件を元にしています。人名などは変えてありますが、「バトラー・ハウス」という事件が起きたアパートというか4階建ての集合住宅の名前と、L-18号室という現場の部屋番号はそのまま使われています。この日、デリー警察の警視サンジャイ・クマール(ジョン・アブラハム)は、1週間前に起きた複数の爆破事件犯人がバトラー・ハウスをアジトにしていることを突き止め、突入する計画を立てていました。彼らはイスラーム教徒の大学生で、爆弾製造のためのアジトとしてバトラー・ハウスの部屋を借りていたのです。先遣隊は警部のK.K.ヴァルマー(ラヴィ・キシャン)が率い、サンジャイ率いる後続隊の到着を待って突入、というのが当初の計画でした。ところが、K.K.はサンジャイを待たずに突入し、サンジャイたちが到着した時には銃撃戦が始まっていました。この銃撃戦で、K.K.ともう一人の警官が負傷し、犯人側は抵抗して射殺された男が2人、逮捕された男が1人、そしてディルシャドという男が逃亡してしまいます。その後K.K.は病院で死亡、サンジャイらは逃げたディルシャドを逮捕しようとやっきになります。ところが、ディルシャドの出身地では、地方政党が彼をかばい、イスラーム教徒たちがこぞってサンジャイらのデリー警察に反抗して実力行使したため、ディルシャドを目の前にしてまたしても逃げられてしまいます。サンジャイたちは策を練り、ディルシャドの周囲にいる人間の協力を仰いで、やっと彼を逮捕しました。ところが裁判では、被告側の弁護士は「この事件は警察のでっち上げだ」という論を展開していき、サンジャイたちはそれを論破するために、大変な苦労を強いられることになります...。


以上のメインのストーリーに加えて、サンジャイと若い妻ナンディター(ムナール・タークル)の間に溝ができていて、家庭は崩壊寸前、という危機も描かれます。ナンディターは衛星放送テレビのニュースキャスターで、バトラー・ハウス銃撃戦を知った時には取り乱し、ニュースが読めなくなったりするのですが、そこから夫への愛がよみがえり、彼を支えて裁判に立ち向かわせる、という夫婦愛のストーリーが後半に向けての見所となります。様々なストレスでとても裁判での証言などできそうになかったサンジャイが、ナンディターからしゃべりのテクニックを伝授され、見事に裁判で口述する姿は、それまでの陰鬱な展開を吹き飛ばすようで、ものすごいカタルシスを与えてくれました。被告側弁護士を落ち着いた声で論破していき、最後に裁判官の制止にも耳を貸さずに自らの主張を述べるサンジャイは、見ていて拍手したくなるほど...と思っていたら、エンドクレジットになったとたん、客席から拍手が起きたのでした。これから見る方がいらっしゃるかも知れないのでサンジャイの主張はここに書きませんが、それは被告席にいたディルシャドの胸をも打つものでした。


ここに登場するサンジャイ警視は、スーパー警官ではありません。度重なる事件の心労で精神を病み、精神科医のもとに通ったりする弱い人間です。その一方で警官として犯人逮捕の執念を燃やし、策略を弄してそれを実現させたりします。後半に出てくるディルシャドの逮捕劇は見事なサスペンスに彩られており、それも含めた全体として、とても見応えのある作品になっています。監督はニキル・アドヴァーニーで、インド映画に詳しい方なら、シャー・ルク・カーン主演作『たとえ明日が来なくても』(2003)の監督だとすぐに思い至るでしょう。この監督デビュー作でプロデューサーであるカラン・ジョーハルと衝突し、以後の作品は『チャンドニー・チョーク・トゥ・チャイナ』(2009)などいまひとつのものばかり。アニメまで作ったりもしたのですが、ずっと苦闘が続いていました。本作『バトラー・ハウス』も、映画評論家の評価はあまり高くありません。唯一、「ボリウッド・ハンガーマー」のサイトが「今年一番の作品だ!」と高く評価してくれたものの、興行収入もやっと製作費を回収した、というところ止まりのようです。ですが、バンコクの映画館で思わず拍手した観客を生んだように、観客を映画に引き込む力を持ち、感動を与えてくれる作品だと言えます。


ジョン・アブラハム始め、出演者の演技も素晴らしいです。来年の賞レースで、ぜひ何らかの評価が出てくることを願っています。予告編を付けておきます。

Official Trailer: Batla House | John Abraham,Mrunal Thakur, Nikkhil Advani |Releasing On 15 Aug,2019

 


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