アジア映画巡礼

アジア映画にのめり込んでン十年、まだまだ熱くアジア映画を語ります

『PS-Ⅰ 黄金の河』に溺れる幸せ①タミル語映画のマニ(至宝)が帰ってきた!

2024-03-30 | インド映画

久々に、見応えたっぷりのタミル語映画がやってきます。かつては、南インド4言語の映画界をリードし、多くの名作とスターを輩出した「コリウッド」ことタミル語映画界ですが、ここ10年は「トリウッド」のテルグ語映画界に押され気味。S.S.ラージャマウリ監督の『バーフバリ 伝説誕生』(2015)から一気にテルグ語映画が隆盛に向かったためですが、やっとタミル語映画の神髄を見せてくれる作品が登場しました。それが、マニラトナム監督作『PS-Ⅰ 黄金の河』(2022)です。下は、1998年の東京国際映画祭の折に来日した、マニラトナム監督です。

マニラトナム監督と言えば、1990年代に『ロージャー』(1992)、『ボンベイ』(1995)、『ディル・セ 心から』(1998)と全国規模のスーパーヒットを放ち、南インド映画をボリウッド映画に負けない地位に押し上げた人。2000年代に入ってからも、2010年には「ラーマーヤナ」を独特の解釈で描いた作品をヒンディー語とタミル語で発表し、それぞれに演じる役者も一部変えて、ヒンディー語版『ラーヴァナ』とタミル語版『ラーヴァナン』で観客の心を揺さぶりました。『バーフバリ』に先駆けること5年、同じく水と森とをたっぷりと使い、神話的世界の中に人間の両面性を描いて見せたのです。その時の配役は以下の通りでした。

        ヒンディー語『ラーヴァナ』 タミル語『ラーヴァナン』
  ラーヴァナ アビシェーク・バッチャン      ヴィクラム
  ラーマ      ヴィクラム      プリトヴィーラージ・スクマラン
  シーター  アイシュワリヤー・ラーイ  アイシワリヤー・ラーイ

その後は少し小粒の作品が続いた印象がありましたが、コロナ禍の頃聞こえてきたのは、タミル語の時代劇大河小説「Ponniyin Selvan(ポンニ河の息子)」の映画化に取り組んでいる、というニュースで、タミル語圏の人々はどよめきました。この、カルキことラーマースワーミー・クリシュナムールティによる大河小説は、1950年代に雑誌に連載され、その後1955年に5巻の単行本となって出版された人気小説だとか。主人公は、「ポンニ(カーヴェーリー河)の息子」と呼ばれたチョーラ王朝の王ラージャラージャ1世(?ー1016/在位985-1016)で、まだアルンモリと呼ばれていた第二王子時代の彼を中心に、その兄で第一王子のアーディタ、姉クンダヴァイ、友人のデーヴァン、そして謎の美女ナンディニらが画面を彩ります。配役は以下の通りです。

      

アーディタ(ヴィクラム) クンダヴァイ(トリシャー) アルンモリ(ジャヤム・ラヴィ)

   © Madras Talkies ©Lyca Productions

デーヴァン(カールティ)   ナンディニ(アイシワリヤー・ラーイ)

このほか、歴史物なので、またまた武将たちというかおじさんたちがわんさか出てきて、顔の区別が付きません。人物相関図が現在制作中、という話もあるのですが、顔写真を付けてもらっても区別は至難の業。名前も長ったらしくて覚えにくく、『K.G.F:CHAPTER1&2』の時以上に高度なおじさん見分け術が必要とされます。それさえクリアすれば、渦巻く陰謀とだまし合いのつるべ打ちもなんなく理解できて、物語をさらに楽しめることでしょう。とりあえずは、上の5人を憶えておいて下さればOKなのですが、予告編もその方針で作られているようで、5人の中心人物の顔と名前がバッチリ出てきます。マニラトナム監督お気に入りの名優ヴィクラムとアイシワリヤー・ラーイは、この5人の核となって物語を引っ張っていきますが、他の3人も素晴らしい演技を見せてくれます。特に、『囚人ディリ』(2019)のキャラを裏返しにしたような、陽気でおっちょこちょい、でも凄腕の剣士を演じるカールティは、画面を縦横無尽に暴れ回り、最高に魅力的。別途詳しくご紹介しますので、しばらくお待ち下さいね。最後に映画のデータと予告編を付けておきます。

© Madras Talkies ©Lyca Productions

『PS-Ⅰ 黄金の河』 公式サイト  
 2022年/インド/タミル語/167分/原題:Ponniyin Selvan Part One பொன்னியின் செல்வன் 1 /字幕:大西美保・監修:小尾淳・協力:安宅直子
 監督:マニラトナム
 出演:ヴィクラム、アイシワリヤー・ラーイ、ジェヤム・ラヴィ、カールティ、トリシャー・クリシュナン
 配給:SPACEBOX
5月17日(金)全国順次公開ロードショー/6月14日(金)より続編『PS-Ⅱ 大いなる船出』公開予定!

 

映画『PS1 黄金の河』予告編

 


コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« ラーム・チャランの新作『Gam... | トップ | NTR Jr.主演作ソフトがダブル... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

ブログ作成者から承認されるまでコメントは反映されません。

インド映画」カテゴリの最新記事