アジア映画巡礼

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「香港映画発展史探究」東京上映は『野バラの恋』で終幕

2022-02-01 | 香港映画

恭喜發財! 虎年大吉! 龍騰虎躍! 身軆健康! 萬事如意!

今日は農暦新年(旧正月)の元旦です。本年もよろしくお願い致します。

一昨日1月30日(日)で、約1ヶ月間続いた国立映画アーカイブの企画上映「香港映画発展史探究」のプログラムが、すべて終了しました。フィナーレを飾ったのは私の大・大好きな作品『野バラの恋(野玫瑰之戀)』(1960)。葛蘭(グレース・チャン)が主演し、王天林(ウォン・ティンラム)が監督、服部良一が作曲した2曲と、クラシック音楽がベースになった歌が4曲入っていて、グレース・チャンの歌声がたっぷり聞ける名作です。グレース・チャンはもともとクラシック音楽を学んでおり、その発声はそのままオペラの舞台に立てるぐらい美しいです。この映画、香港版ソフトは持っているのですが、日本版DVDも出してほしいなあ。

The Wild, Wild Rose 1960 HK poster.jpg

物語は「カルメン」がベースになっており、クラブの花形歌手と新顔のピアノ弾きとの、恋と破滅を描いています。ピアノ弾きにはハンサムな張揚(チャン・ヤン)が扮し、彼の婚約者役は穌鳳(スー・フォン)、母親役が歐陽莎菲(オゥヤン・シャーフェイ/母親役と言えばこの人!)、ヒロインの年上の友人役が王萊(ワン・ライ)、そのパトロンである金持ち役が劉恩甲(リゥ・ワンジア)と、当時の映画会社國泰/電懋(キャセイ)ではお馴染みのメンバーです。キャセイと言うと航空会社を思い浮かべる方が多いと思いますが、こちらは元々マレーシアの娯楽コンツェルンで、シンガポールに本社があるのですが、戦後香港に進出して邵氏(ショウ・ブラザース)と覇を競った映画会社です。映画の冒頭にビルが出て来て、会社名のロゴがそれに被さるのですが、あのビルはシンガポールにあるキャセイの本社ビルで、日本軍がシンガポールを占領していた時は軍本部として使われました。

とまあ、この映画のことを書き出すと一晩中かかってもまだ終わらないぐらいで、挿入歌のことを書くだけでも2、3時間すぐにかかってしまいます。クラシック音楽をアレンジした歌曲は、ビゼー「カルメン」から「ハバネラ」、ヴェルディ「リゴレット」から「女心の歌」、レハール「メリー・ウィドウ」から「♫楽しき思い出尽きぬ♫」という歌詞の歌、そしてプッチーニ「蝶々夫人」から「ある晴れた日に」です。「ある晴れた日に」は、クラブでいろいろ問題を起こしたヒロインが、友人の紹介で別のクラブのテストを受けるシーンで歌われますが、過去を消すために「日本人」ということにしてあるため、まるで芸者さんのような格好で登場して「ある晴れた日に」を歌います。YouTubeに動画がありましたので、こちらをどうぞ。

葛蘭 - 蝴蝶夫人 電影《野玫瑰之戀》Grace

 

いい声でしょう? トリビアによると、この衣裳は日本の女優八千草薫から贈られたものだとか。画面奥で座って聞いているのが、左がワン・ライ、その右がリゥ・ワンジア、一番右はこのクラブのマネージャー役の人です。クラシックの選曲やアレンジは服部良一がしたのでしょうか? 終映後は場内から拍手が起きました。

今回は結局、古い作品9本を見ることができました。『女性の光』(1937)、『秘めたる思い』(1947)、『黄飛鴻正伝 鞭風滅燭の巻』(1949)、『寒い夜』(1955)、『蝶影紅梨記』(1959)、『野バラの恋』(1960)、『英雄本色』(1967)、『忠烈図』(1975)、そして『跳灰 ジャンピング・アッシュ』(1976)です。このうち3本は以前にも見ていたのですが、『野バラの恋』以外は細かい筋をすっかり忘れていました。面白かったのは梁普智(レオン・ポーチ)と女優の䔥芳芳(ジョセフィーヌ・シャオ)が共同監督を務めた『跳灰』で、麻薬の一味を追う刑事(陳星)と、そのガールフレンドである歌手(ジョセフィーヌ・シャオ)、悪者一味の殺し屋陳恵敏(チャーリー・チャン)が結構派手なアクションを見せてくれるアクション・サスペンス映画でした。冒頭はヨーロッパロケで、香港部分も街中でのロケが多く、1970年代中期の香港が記録されている画面に見入りました。そう言えば、私は1976年1月に、初めて香港の土を踏んだのだった....。

いろいろ楽しませてもらった今回の企画、できればぜひ第2弾をお願いしたいです~。国立映画アーカイブの皆様、字幕を担当したアテネフランセ文化事業株式会社制作室の皆様、字幕翻訳をなさった鈴木真理子さん、最上麻衣子さん、樋口裕子さん、そして水野衞子さん(お元気そうで何より!)、さらには古い作品数本の監修に当たられた東大の韓燕麗先生(私がお名前を確認できたのはこの皆様なんですが、他にも字幕翻訳者がいらっしゃるかも)お疲れ様でした&本当にありがとうございました。明日から3月6日は福岡市総合図書館映像ホール・シネラ、そして2月26日(土)、27日(日)は京都国立近代美術館でも上映があります(あら~、京都は2本だけなんですね。もったいない)。お近くの方はぜひいらしてみて下さいね。

 


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