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アジア映画巡礼

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明日から開幕!アジアフォーカス・福岡国際映画祭/インド映画『ジャッリカットゥ』のこと

2020-09-19 | インド映画

明日9月20日(日)にいよいよ、第30回アジアフォーカス・福岡国際映画祭が開幕となります。詳しくは映画祭の公式サイトを見ていただければと思いますが、明日早速インド映画『ジャッリカットゥ』が上映されますので、ご覧になる方のために、ちょっとだけ頭に入れておいていただいた方がいい予備知識を書いておこうと思います。

『ジャッリカットゥ』 上映日時:20日(日)12:45、23日(水)13:00、24日(木)15:30

 2019年/インド/マラヤーラム語/91分/原題:Jallikattu
 監督:リジョー・ジョーズ・ペッリシェーリ
 出演:アントニ・ヴァルギース、チェンバン・ヴィノード・ジョーズ、サーブモーン・アブドゥサマド、ジャーファル・イドゥッキ、シャーンティ・バーラクリシュナン

<公式サイトより>南インドの田舎町。ある日の早朝、肉屋の処理場から脱走した一頭のバッファローを追い、町を挙げての壮絶な追跡劇が始まる。“ジャッリカットゥ”とはインド南部タミルナードゥ州伝統の牛追い祭りのこと。本能むき出しで、強大な野生動物を追い詰めようとやっきになる人々の姿はまるで原始人のよう。次第に“人間”と“動物”の境界さえあいまいになってくる。

**************

本作の舞台となっているのは、南インドの西南端にあるケーララ州。おそらくケーララ州の南部で、タミル・ナードゥ州との州境にも近い、西ガーツ山脈の一部をなす土地にある村ではないかと思われます。標高が比較的高く、森が広がる地域で、1947年の独立後に平地から移住してきた人々が切り開き、ゴムの木や、タピオカになるキャッサバ芋、各種スパイスなどの小規模プランテーションを営んでいるようです。これら村の様子は、映画の冒頭に出てくる早朝の仕事をする男女――ゴムの木に刃物で傷を付け、ゴムとなる樹液を受ける容器をセッティングする――や、村人の会話の端々から見て取ることができます。村にはキリスト教徒とヒンドゥー教徒が平和的に暮らしているようで、本作では主としてキリスト教徒の人々が登場します。 

 本作の主人公となるのは、肉屋に関係する人々です。キリスト教徒の人々にとって、肉はご馳走として歓迎され、何日かに一度、他の場所で仕入れた水牛が早朝の村で屠られて売られます。この仕事をするのは、親の代から肉屋のカーラン・ヴァルキ(チェンバン・ヴィノード・ジョーズ)と助手のアントニ(アントニ・ヴァルギース)、そして下っ端の青年で、青年は骨から肉をこそげ落とす役でした。数年前までアントニは下っ端役の仕事をしており、ヴァルキの助手としては、押しの強い男クッタッチャン(サーブモーン・アブドサマド)が幅をきかせていました。ヴァルキの妹で早熟なソフィ(ジャーンティ・バーラクリシュナン)はクッタッチャンに気があり、クッタッチャンも大いにその気だったようですが、実はアントニもソフィに片思いしており、それが元である事件が起きます。その事件のためクッタッチャンは村を離れていたのですが、今回逃走した水牛を捕らえるために鉄砲名人の彼が村に呼び戻され、アントニとの間で不穏な空気が高まっていきます...。

JallikkattuFirstLook.jpg

というようなストーリー展開になるのですが、このほかに、ヴァルキの友人でかつては極左過激派の活動家だったとおぼしきプラバーカランや、平地から移住してくる時にゴムの苗木を持ってきて、今ではゴム農園を持つ裕福な男クリアッチャン(ジャーファル・イドゥッキ)、薬用ハーブを育てている小柄で頑固な初老の男ポール 、村のヒマな若者連中の代表格である、赤いTシャツ男シャングとひょろりとした横シマのポロシャツ男サニ、そして教会のジョンソン神父など、様々な人が登場します。

プラバーカラン以外にも、かつての過激派活動家は村に多く住んでおり、それというのも彼らが平地からこの高地の村に移住したのは、官憲の目を逃れるためでもあったようです。ケーララ州はインド共産党マルクス主義派(CPIM)を中心とする左翼統一戦線が何度か政権を握っており、左翼思想の強い土地柄ですが、CPIMはマオイスト(毛沢東主義者)などの極左過激派とは一線を画しています。本作中ではあまり明確には語られないのですが、活動家を記念する旗が逃げた水牛にめちゃめちゃにされて村人が怒るシーンなどから、そういった村の背景が見えてきます。とはいえ、映画の最初の方でプラバーカランは、銀行から差し押さえの紙を自宅に貼られるなど、必ずしも映画自体としては過激派に心を寄せている風でもないところが、『ジャッリカットゥ』の面白いところです。

ただ、十分にこの作品を楽しむためには、人の顔の見分けがつくことが大切で、ちょっとおせっかいなのですが、役者たちの素顔を使ったりもしながら、顔を憶えていただけるよう工夫してみました。(ネットの様々な「images」から写真を借りています)

●肉屋の店主カーラン・ヴァルキ(チェンバン・ヴィノード・ジョーズ)~普段の服装は、ルンギー(腰布)にタンクトップ、頭には手ぬぐいを巻いている。首に十字架のチェーン。

(本作の写真ではありません)

 

●肉屋の店員アントニ(アントニ・ヴァルギース)~普段の服装は、ルンギー(腰布)にタンクトップ型シャツ。回想シーンでは髪の毛もヒゲも短い(下写真右上)が、現在は髪が少し伸び、ヒゲがもしゃもしゃと生えている。

(本作のシーンを集めたもの)

 

●もと肉屋の店員クッタッチャン(サーブモーン・アブドゥサマド)~村に現れた服装は、このページの最初にあるようなダイヤ柄のシャツにルンギー(腰布)。回想シーンでは髪が五分刈りぐらいだが、現在はほとんど坊主頭。

(本作の写真ではありません)

 

●ゴム農園を持つ裕福な男クリアッチャン(ジャーファル・イドゥッキ)~50歳がらみの小柄で陽気な伊達男。演じているのは、ケーララでは有名なコメディアンらしい。

(本作の写真ではありません)

 

●ヴァルキの妹ソフィ(シャーンティ・バーラクリシュナン)~兄とは年が離れている美人。かなりの「あばずれ」という設定だが、美しい。

(本作の写真ではありません)

 

字幕でもっといろいろ情報を出せればよかったのですが、字数に限りがあり、至らなくてすみません。でも、ここまでに述べたことがわからなくても、水牛を追いかける村人のドタバタ、それが主人公たちの執念に引きずられて次第にとんでもないクライマックスへとなだれ込んでいくサスペンスは、十分に味わっていただけると思います。ご覧になった方からのコメントをお待ちしています! 最後に予告編を付けておきます。

Jallikattu Official Trailer | Lijo Jose Pellissery | Chemban Vinod | Antony Varghese  

 


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『ジャリカットゥ』見ました (エドモント)
2020-09-25 17:16:41
cinetamaさん こんにちは お久しぶりです。

7月から映画館へ行くのを再会しましたが、『WAR』はぶっちぎりの面白さでした。
さて、連休を利用して海外へは行けないので、奈良国際映画祭、アジアフォーカス福岡映画祭へ、いつものながら駆け足で出かけて来ました。
『ジャリカットゥ』も見て来ました。
chinemataさんおBlogでの事前勉強と日本語字幕が無かったら、かなり戸惑いお手上げ状態となった作品だったと思います。
それでも、夜間のシーンが多くかつ暗いので、正直なところ消化仕切れませんでした。
ケララ料理は食べたことがあっても、ケーララ州には行ったことが無いので、次回以降でインドへ旅行する時に行路組めたらと、思っていたのですが、私のイメージするケーララ州はコーチンあたりなので、映画の舞台となった地域とは、離れているようですね。
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エドモント様 (cinetama)
2020-09-25 18:05:05
コメントをありがとうございました。
『ジャッリカットゥ』@アジアフォーカス、どうだったかなあ、と思っていたので、コメントを下さってとても嬉しいです。
しかし、エドモントさんでさえ、わかりにくかったですか...。
実は私も、一度目では「何のこっちゃ?」という感じで、字幕をやりながら数回見ているうちに人の区別がついてきて、やっと物語の筋がつかめた、という感じでした。
途中でマラヤーラム語監修者の粟屋先生にいろいろ教えてもらってわかった点も多く、とても助かりましたが、監督が来日していたら、行ってインタビューしながら疑問解消したいぐらいでした。

でも、料理の話がいろいろ出てきて興味がそそられ、私もまたケーララ州に行ってみたい、と思い始めています。
冒頭で、DV夫が「朝飯がいつも同じだ!」と怒っていたのは「プットゥ」というココナツご飯みたいなもので、コレです↓。
https://en.wikipedia.org/wiki/Puttu
確か、『ムトゥ』にも出てきたと思います...と調べようとしたら、『ムトゥ』の主題歌を歌った人気歌手S.P.バーラスブラマニアムが亡くなった、というニュースが。
え~ん、一度危篤状態から回復していたのに(泣)。
話がそれましたが、インドに行ける日が早く来ることを願っています~。

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